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海の蛍火
◆みんなのカレー準備編
海キャンプの夜。いつもと同じ夜なのに、どうしてこんなにワクワクするのだろう。いつもと違う何かが起こる様な気がして、とても落ち着いていられない。もっとも表情は普段と変わらなかった筈なので、自分がこんな風に浮ついていることなどきっと誰も判らないだろう。主がすぐ側にいる。この姿ならば戦いの時だけでなく、いつでも主に何かすることが出来る。なんて幸せなのだろう、と灰司は鍋から立ち上る辛そうな香りを感じながら強く思った。思うだけではもう我慢出来ず思わず、とうとう灰司はディオシスへ抱きついた。
「ディオシス〜」
「どぅわぁあああぁぁ」
異常な反応だった。さして力を入れたわけではないのに、ディオシスは大きく体を前のめりにさせたのだ。いつもの様に抱きついただけなののに、ディオシスは本当にひどく驚いた様だった。悲鳴じみた声をあげるなど、今までに1度もなかった事だった。
「え? ディオシス、どうかしたの?」
灰司はディオシスを見上げて言った。この身体は決して貧相なものではないが、大柄なディオシスと話す時はいつも見上げる事になる。
「ど、どうもしないに決まってるだろう。ったく暑苦しいなぁ、離れろって」
ディオシスは視線をそらせた。嘘だと思った。一体、どんな秘密を抱えているのだろう。それは自分の様な存在には明かせない事だというのだろうか。急に身体の温度が下がった様な気がした。自分が元々の姿だった時のように、硬く冷たいモノに戻った様だ。ディオシスの腕を抱いていた両腕から力が抜けた。すり抜けて移動していったディオシスを追って行く事が今の灰司には出来なかった。
◆それぞれの結末
海の上からの探索にも当然ディオシスは自分を同行させてくれた。その行動に不自然なところはない。いつも通りのディオシスだった。その後月の光に輝く石を海底から見つけだし、ディオシスはそれを繭神陽一郎に手渡した。ディオシスがそれでいいと判断したのならそれでいい。もう遥か昔から灰司はディオシスに従ってきた。それに疑問もない。
「本当によかったのか?」
浜辺へと向かいながら灰司が尋ねたのは、だから他愛ないものだった。急いで帰らないとカレーがどうなっているか心配だったが、歩く速度は一向に速まらない。
「いい。あいつにはあいつの信念がある。俺はそれがわかったから石を渡したんだ」
揺るぎないディオシスの言葉だった。
「‥‥わかった」
灰司はうなづいた。
◆後日談
後日、灰司はディオシスのカバンからハバネロの空き瓶を見つけた。
「なんだ、そういうことだったのか」
笑いながら灰司はそれを元通りに戻しておいた。
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■ 登場人物 ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
【3734/壬生・灰司/男性/ハバネロのスナック菓子】
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■ ライター通信 ■
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このたびは海キャンプダブルノベルにご参加いただきまして、ありがとうございます。カレーの具として書いてありましたスナック菓子、食べた事が在りませんでしたの実際に買って食べてみました。なんとも後味に辛さの効いたものですね。お茶とだったら美味しく頂けたかなぁと思いました。ご主人様とは良い感じになれなかった様で誠に申し訳ないです。機会がありましたら今度こそ挑戦したく思います。
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