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『砂浜で花を咲かせよう:栄神・万輝編』
いったい幾つ持ってきたのか、並べた打ち上げ花火が色彩豊かに夜空を染める中、手持ち花火を持った千影や柘榴がはしゃいでいる。
パラシュートが落ちてくるのを二人で競争するように取ったり、火花を散らしながら音を奏でる新型の花火には興味深げに目を大きくしたり。
そんな千影を、万輝は少し離れた所から眺めていた。
と、千影が万輝の方へ顔を向け、ぱたぱたと駆けて来る。
「万輝ちゃ〜ん、おりぼん解けちゃったの、結んでちょうだい」
はしゃぎすぎて髪を結んでいたりぼんが解けてしまったようである。
頭を押さえながら走ってくる千影を苦笑混じりに迎える。
「いいよ、おいで」
快い承諾に、千影は嬉しそうに解けてしまったりぼんを万輝に渡して、万輝の膝の上に乗る。
いつも猫の姿でやっているので、何の違和感も感じていない。
「チカ、暑いよ」
そう言いながらも嫌そうではなく、慣れた手つきで千影の髪を直してやる。
指で梳いて髪を纏め、緑のりぼんであっという間に千影は元のツインテールに戻る。
「出来たよ」
終わり、と万輝が頭を撫でてやると千影は喉を鳴らすように目を細め、万輝の腕にすり寄った。
「ありがとう、万輝ちゃん」
すり寄ってくる千影の頭を撫でると、千影は一層嬉しげに笑った。
「万輝ちゃん、学校って楽しいところね」
上目遣いで笑いかけてくる千影の頭を優しく撫でてやりながら、万輝は小さな苦笑を漏らした。
「学校か……。チカが楽しければ僕はそれでいいよ」
千影を腕に抱いたまま、万輝はまだはしゃぎ回っている柘榴や瑞帆達を眺める。
学校に通うことに、万輝は特に意味を感じていない。
千影が居るから、千影が一緒だから、高校生活が続いているだけの話である。
「チカはね、万輝ちゃんがいるからここにいるんだよ」
万輝の心内を読んだように、千影が言った。
「あたしはぜ〜んぶ、万輝ちゃんのものなのよ」
当たり前のことだと云うように、千影は言葉を紡ぐ。
そして万輝の腕にすり寄る。
猫の時とは違う柔らかい髪の感触に、知らず笑みが零れた。
「チカが居てくれるから、僕は僕でいられるんだ」
互いに相手が一番大切で、かけがえのない存在。
千影は万輝が居るから学校が楽しくて仕方ないのだし、万輝が居るから毎日笑って過ごせるのだ。
それを万輝は知っている。
万輝も同じ気持ちだからだ。
千影が居て万輝が居る。万輝が居るから、千影も居る。
恋人同士という関係ならば、いつか来るかも知れない別れを憂えてしまうかもしれない。が、千影が万輝のものと言い切るのと同じように、万輝も千影が居なくなることなど考えたこともなかった。
居るのが当たり前。
こうして二人で過ごしているの当然なのである。
比翼連理という言葉があるように、お互いが居てこそ、存在が成立する。
万輝の言葉が嬉しいように千影は万輝にすり寄る。
万輝はその千影の頭を、優しく撫でてやるのだった。
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■ 登場人物 ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
【3480 / 栄神・万輝 / 男 / 1−B 】
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■ ライター通信 ■
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初めまして、こんにちは。葵藤瑠です。
この度は『砂浜で花を咲かせよう』にご参加いただき有難う御座います。
千影ちゃんと深いところで繋がっている万輝君、凄い格好いいです。
二人の繋がりを書かせて頂いて有難う御座います。
恋愛より深く、確固たる二人の関係を書き切れていない所が少々心残りですが、とても楽しく書かせて頂きました。
少しでも楽しんでいただければ幸いで御座います。
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