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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


アバンチュールしてみませんか? 〜in海キャンプ〜

ACT.SPECIAL■鹿沼デルフェスの芸術的告白

 海キャンプ4日目の朝。
 美術部員、鹿沼デルフェスは張り切っていた。
「弁天部長。美術部の活動を広報するにあたって、折り入ってお話がありますの」
「ど、どうしたデルフェス。男子の勧誘はひととおり終わったゆえ、残りの時間はゆっくり過ごして良いのじゃぞ?」
 昨日の夜は遅かったので、まだ弁天はテントの中で寝ぼけまなこである。
 とうに身なりを整えているデルフェスは、微笑みながら一礼した。
「お暇が出来たからこそですわ。昨日までは皆様の説得が優先で、弁天部長もハナコ副部長もお忙しゅうございましたもの。ですが部長、やはり部活を行うにあたっては、いかに日々美術部が素晴らしい活動をしているか、この機会にアピールすることも必要だと思うのです」
「おお……。それはそのとおりじゃな」
 部長以上に部長らしいことを言われて、弁天も多少は目が覚めたようだった。
(この分だと、次期部長はデルフェスで決まりかのう)
 ちらりと、そんなことまで考える。
「して、どのような広報をすれば良かろうか? おぬしに妙案があるのかや?」
「はい」
 デルフェスはしとやかに、なおも頭を下げる。
「まずは、水着に着替えてくださいませ。――ハナコ副部長も」
「ええっ!」
 まだ毛布にくるまってごろごろしていたハナコが、それを聞いて飛び起きた。

 ――1時間後。
 砂浜のとある一角に、『海キャンプ特設展示:美術部主催』と看板の立てられたコーナーが設置された。生徒たち、特に男子たちに大人気の大盛況で、大勢の人だかりができている。
「すごい彫刻だな。誰が作ったんだろう。弁天先輩にそっくりじゃないか」
「本当だ。――いやぁ、ハナコ先輩の水着姿をこんな近くで見たことなかったから感激だなぁ」
「弁天先輩って、黙ってると美人なんだよなー」
「うん。こうして見ると、しみじみそう思う」
 ――そう。
 つまり展示作品は、デルフェスの換石の術によって水着姿で石化した、弁天とハナコであった。
 美術品として鑑賞されて半日後、もとに戻ったふたりはちょっぴり微妙な気分になる。
 だが広報は大好評であったので、デルフェスの手腕には感服したのだった。

「偉いぞ、デルフェス。褒めてつかわす!」
「ありがとうございます。お褒めついでにもうひとつ。デュークさまの勧誘に成功したあかつきには、ご褒美がいただけるとのことでしたが」
「そうじゃったかの? まあ良い、何なりと申せ」
「一緒に浜辺をデートして下さいませんか?」
「そんなことで良いのか?」
 怪訝な顔で、それでも弁天は頷いた。

「しかしのう……。未だに解せぬのじゃが」
「何がですの?」
 月光に照らされた波打ち際を歩きながら、デルフェスは弁天の横顔を見る。
「おぬしが自分から、美術部に入部したことがじゃ」
「ああ――それでしたら」
 デルフェスは、謎めいた笑みを浮かべる。
「一目惚れだったからです」
「誰に?」
 弁天は目を見張る。心底判らないという顔で。
 デルフェスはくすくすと笑った。
「秘密です」

 ――波の音が響く。


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■   登場人物                  ■
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【2181/鹿沼・デルフェス(かぬま・でるふぇす)/女子/2年C組】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、神無月です。お待たせいたしました!
この度は、ギャグイベントしか発生しない、いきあたりばったりのおとぼけ恋愛SLG(違)に勇気を振り絞ってのご参加、まことにありがとうございます。
夏の貴重なひとときを、弁天とハナコにお付き合いくださいましたことに感謝いたします。
なお、個別ノベルでの時系列は、大別して「キャンプ前」「キャンプ中」「キャンプ後」となっております。

□■鹿沼デルフェスさま@キャンプ中(勧誘終了後)
そうか! 弁天は自分のことには鈍感極まりないんですねなるほどぽん!(勝手に納得しているライター)それにしても……。ああ……。このような方が。なんて勿体ない……。

ご参加、ありがとうございました。
いつかどこかで、またお会いできますことを願って。