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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


IN THE MOOD ―分岐点―
●西瓜割りによくある光景【6C】
 西瓜割りに付き物のかけ声が、砂浜に響き渡っていた。
「右右右! もっと右!」
「違うっ! 左だよっ、左! 半歩左に動けってっ!」
「そのまままっすぐまっすぐ! まっすぐだってばっ!」
「目標は2時の方角だ! 調節しろ!」
「行き過ぎ行き過ぎ! ほら、戻って戻って」
 銘々が勝手なことを言っている。どれが本当でどれが嘘か、割り手には分かったものじゃない。
「ええと……。右? 左? どっち?」
 目隠しをされ、割り手となっていた詠子はあっちへふらふら、こっちへふらふらと砂浜を歩き回っていた。足跡だけみれば、ちょっとした酔っ払いである。
「まっすぐ! まっすぐだよっ!」
 みあおが元気よく詠子に声をかけた。
「まっすぐ行けばいいんだね?」
 みあおの言葉を信じ、詠子がまっすぐ歩き出す。が――。
「おいおいおいおいっ! そっちは海だ!!」
 詠子が波打ち際まで来た所で、1人の男子生徒が慌てて詠子を呼び止めた。そう、みあおの言葉は大嘘だったのである。
「まっすぐじゃなかったの?」
 やや抗議するような声を上げる詠子。
「月神さんごめーん。間違えちゃった」
 それに対し、みあおは舌をぺろっと出して言った。
 そのうち詠子も何とか戻ってき、上手く指示を聞いて見事に西瓜を割ったのだった。
「やったねっ☆」
 大きな拍手を送るみあお。目隠しを取ってみあおの方を振り返った詠子は、くすっと笑みを浮かべた。
「西瓜割りって楽しいものだね」

●夕日を受けて【12A】
 西瓜割りの後も、みあおは詠子とともに色々と遊んでいた。皆でビーチバレーをしたり、お約束とばかりに砂に埋めたり埋められたり、それからビーチフラッグ……はパスしたが、海での定番の遊びはほとんどやったと言っていいだろう。
 そして今、2人は空気で膨らましたいかだに並んでつかまり、夕日の中で海を泳いでいた。
「……神さん、月神さんってば」
「うん? 何か言った?」
 みあおが何度も呼ぶ声に、明後日の方角を向いていた詠子がようやく反応した。
「どうしたの。時々ぼーっとよそ見してるし。ほら、ビーチバレーの時だってー」
「別に。何でもないよ」
 くすりと笑みを返す詠子。みあおは少し引っかかるものを感じたが、それ以上は追及しなかった。
「で、何か言いたいことがあったから、ボクを呼んだんじゃないの?」
「あ、そうだった」
 呼んでいた本人が用件を忘れてはいけない。みあおはすぐに、自分が言いたかったことを口にした。
「んーっとね……今日は楽しかった?」
 非常にごく普通、ストレートな質問である。
「楽しかったよ。西瓜割りも、ビーチバレーも、ビーチフラッグは……やってないけど、どれもこれも初めてだったからね」
「買い食いも、だよね?」
 ふふっと笑うみあお。詠子がこくこく頷いた。実は合間合間で、先生たちに見付からないようこっそりと買い食いしていたのである。もちろんメニューも定番、焼きとうもろこし、いか焼き、焼そば、エトセトラエトセトラ。
 ちなみに今こうして泳いでいるのは、夕食に向けてお腹を空かせるためでもあるということは、抜群に秘密だ。
「どれも美味しかったよ」
「あれ、そう? ほとんど値段の割りにはたいして美味しくないんだけど……美味しかったんなら、まあいいかっ」
 今のみあおの言葉に、ちょっとした偏見が入っていたのは内緒である。
 それからしばし、無言で泳ぎ続ける2人。少しして、みあおがまた口を開いた。
「夕日が沈んでくのって、綺麗だよねー」
 水平線の向こうに、太陽が次第に沈んでゆく。それに伴い、空には少しずつ星が瞬き始めていた。
「こういうのって、いい想い出になるよね?」
 みあおが詠子に話を振った。
「想い出か……うん、そうかもしれない」
 何故か詠子は真顔で頷いた。そしてまた沈黙する2人。
「ボクの……何者で……なのかな」
 太陽がほとんど水平線の向こうに沈んでしまった時、詠子がぼそりつぶやいた。だが、その大半は残念ながら聞き取れなかった。
「えっ、何か言った?」
 きょとんとして聞き返すみあお。しかし、詠子はただ笑顔をみあおに返すだけだった――。

【IN THE MOOD ―分岐点―・個別ノベル 了】


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■   登場人物                  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                 / 性別 / クラス / 石の数 】
【 1415 / 海原・みあお(うなばら・みあお)
                  / 女 / 2−C / ☆00 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談・幻影学園奇譚ダブルノベル』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全23場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・OMCイラストのPC学生証やPC学生全身図などをイメージの参考とさせていただいています。
・『幻影学園奇譚』の本文において、高原は意図的に表現をおかしくしている場合があります。
・この度はノベルをお手元にお届けするのが大変遅くなり、申し訳ありませんでした。ここにようやく、海キャンプの模様をお届けいたします。
・今回諸々のことは個別ノベルへ回っていますので、他の方の個別ノベルもご覧になっていただくと、より深く分かるかもしれません。ちなみにタイトルの元ネタは、あの終わりそうでなかなか終わらない曲のことです。海といえば、この曲でしょう。
・海原みあおさん、ご参加ありがとうございます。唯一詠子に関わって遊んだ方になるでしょうね。詠子も色々と思う所があった模様です。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、またお会いできることを願って。