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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


月夜の石集め
〜生を望む者〜

洞窟の探索が終わった帰り道。
丁度鬼斬が一人になったところで、限は声をかけた。

「…なぁ」
「なんだ」

千影に散々洞窟でのことをされてうんざりしていたせいか、鬼斬は不機嫌そうに返事をして振り返る。
しかし限は動じた様子もなく、じっと鬼斬を見ると―――口を開いた。

「…何故、キミはそんなに生に執着しているんだ?」

――――――瞬間、無表情のはずの鬼斬の顔が強張った。

驚きに見開かれた目を見逃さなかった限は、鬼斬をじっと見据えながら更に言葉を募る。

「キミからは生を望む強い感情だけが溢れている。
 …何故、そこまでして生きたがるんだ?」

鬼斬から伝わる感情はただ一種。
―――俺は生きる。
―――絶対に死なない。
―――生き続けてやる。
全て『生』に執着するものだけだ。
ただ限にとって解せないのは、それが己の為だけのようではなく感じたから。
だから、鬼斬に直接聞くことにしたのだ。

鬼斬は自分を落ち着かせるように目を閉じて深く溜息を吐くと、何かを懐かしむような目をしながら呟いた。


「――――――『約束』だからだ」


「約束?」
「そうだ」
訝しげに鸚鵡返しのように繰り返した限に、鬼斬はしっかりと頷いて答える。

「昔の話だがな。
 ……あるヤツに『生き続けて、絶対に死のうとしないで』と言われて…俺は、そうすると約束した」

「…その相手と言うのは、女か?」
「……どうだろうな」
鬼斬にしては珍しい言葉の濁し方。
本当に女なのか、それとも男なのか。
知られたくないことなのか、口数が少ないのも合わせて、彼の真意は測りかねた。
そんな限のことは他所に、鬼斬は更に言葉を続ける。

「…だからこそ、俺は生き続ける。
 生きて、生きて…誰にも殺されることなく、老いても最後の最後まで生にしがみついて…もがく。
 それが…俺がそいつに出来る、唯一のことだから」

そう言って、どこか寂しそうに―――鬼斬は、金色の瞳を細めた。
そこから負の感情を感じ取って、限は不意にあることを思いつく。

「…まさか、その相手は…死んでいるのか?」

その言葉に――鬼斬は細めた目を元に戻し、限を見る。
その瞳に宿る色は―――拒絶。

「……これ以上のことをお前に話す義理はない」

そうきっぱりと言い切ると、話はここまでだと言わんばかりに鬼斬はさっさと歩き出した。
その後姿を見つめながら、限は人差し指で軽く頬を掻く。

「…これは、僕が裁いていい問題じゃないな…」

もし鬼斬が生に固執している理由が単なる富や名声にしがみつきたいとか、そういうどろどろした汚いものだったら心置きなく心の制裁を加えられただろう。
…しかし、彼の持つ思いはただ約束を守りたいと言う想い。
それを裁くほど…限とて、鬼ではない。

限はそこまで考えた所でそっと瞳を閉じ、少しの間を空けてから開くと…ゆっくりと、歩き出した。


<結果>
入手:無し。

終。

■登場人物(この物語に登場した人物の一覧)■
【整理番号/名前/性別/クラス/属性】

【3171/壇成・限/男/2−B/光】

■ライター通信■
大変お待たせいたしまして申し訳御座いませんでした(汗)
学園ダブルノベル(海キャンプ編)個別をお届けします。 …いかがだったでしょうか?
ちなみに今回は残念ながら巳皇と話す方はいらっしゃいませんでした…結構好きなんですけどねぇ、私は(お前の好みは関係ない)
その代わりにB地点…鎖々螺のところが予想以上に多くて驚きました。やっぱり海辺は人気高いんですかねぇ…?(何)
そして例によって例の如く、PC様によっては入手アイテムなぞつけてみました(笑)
GETした人とGETしてない人がいるのは…単に私の趣味です(ぅをい)
場所ごとにNPC達の裏事情を散りばめて見ましたが…どうでしょう?わかっていただけましたか?(笑)
実は鬼斬の裏事情が一番多いのですが、それは単に彼の裏設定が一番多く決まっていたからに他なりません(ぇえ)
裏事情を垣間見て、NPC達に更に馴染んでいただければなぁ、と考えております。
全体的に色々と謎を残す不思議な展開・奇妙な終わり方を目指しておりますので、その謎について色々と考えてくだされば嬉しいです。
なにはともあれ、どうぞ、これからもNPC達のことをよろしくお願い致します(ぺこり)

【限様】
ご参加どうも有難う御座いました。
個別は鬼斬の過去に少々触れるようなお話にさせていただきました。
限様の能力は個人的に好きでしたので、勝手に生に執着してる人も分かるようにしてしまいましたが…大丈夫でしたでしょうか?(汗)
鬼斬の『約束』は有る意味彼が生きる意味でもあるので、恐らくこれから先もずっと生き続けるのだと思います。
誘われて参加…とはいけませんでしたが、鬼斬に半ば巻き込まれる形で参加、と言う展開にさせていただきました(笑)
無表情で暑がるって素敵ですよね(ぇ)その辺りの表現も上手くいっているといいな、と思います。

色々と至らないところもあると思いますが、楽しんでいただけたなら幸いです。
それでは、またお会いできることを願って。