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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


■月と石と貝殻と───CASLLと人喰い編■

 皆で詠子をそれぞれに探すことになったCASLLは、入り江からは極力離れ、持ってきていた懐中電灯で足元より少し先を照らしながら、警戒しすぎなほど警戒し、おどおどと歩を進めていた。
 すると、入り江より少し離れたところに、ペンションの従業員である美女が立ち、じっと海の向こうを見つめている。
「あ、あの」
 CASLLは暫く考えていたが、ようやく声をかけた。美女が振り向く。
「そこで、何をしているんですか?」
 美女は、哀悼を感じさせる表情で微笑んでみせた。
「少し、人生に疲れてしまって……」
「えっ……い、いけませんよ、早まったことを考えては」
 CASLLは慌てたように美女の肩をがしっと掴み、
「さ、こっちのほうが安全です」
 と、波がかからないところまで移動させる。
「……優しいんですね……それに、とてもいい香りがします」
 美女が言うと、CASLLは微笑んだ。
「はい。用意していてくださった、湯上がりのもの全て塗りこませていただきましたから」
 クスッと美女は笑う。
「たまには……貴方のような悪者みたいな顔をした人も食べてみたいと思っていたの……」
「……え?」
 途端、蒼褪めていくCASLL。
「も、もしかして」
「ええ……わたしは人喰いのサエナ。神妙になさっててくださいね。味わって食べるのもいいけれど、一口で食べてしまいますから、痛みはさほどないはずです」
「お、美味しくないですよ」
 後ずさりするCASLL。じりじりと岩に追い詰める美女サエナ。
「そんなの、食べてみないと分からないですし」
 食べさせてくださいな、と無邪気で妖しげな微笑を送ってくるサエナに、CASLLの背中がぞわりとする。
(人喰い、人喰いの弱点は一体なんでしょう)
 必死に考えた末、CASLLが思いついたのは。
 咄嗟に、近くを貼っていた比較的大きなカニをひっとらえ、サエナの眼前に突きつける。
「この炎のカニこそがっ! 人喰いを好んで食べるという人喰いガニ! あなたはご存知なかったようですね……」
 ふふふ、と、能力の一つである「迫真の演技」でもって本物の悪者の如く笑みを浮かべる。今までの彼とは違う様子に、サエナは蒼褪めていく。
「そ、そんな……こんなに近くに強敵がいたなんて」
 じゃばっと海に飛び込み、高速クロールで海の彼方へと向かっていく。
「こんなところに一秒だっているものですかーっ……!」
 声がこだましていく。
 CASLLはかくしてカニのおかげで一命を取りとめ、たのだが。
 カニがはさんでいるものを見て、ふとそれを拝借した。カニはちゃんと逃がしてやる。
 それは、月に淡く輝いている不思議な石だった。
「これは、なんでしょう……」
 そして、今は詠子を探すことに専念せねばと思い出す。
 詠子が見つかったら、一緒にお茶でも誘ってみたいと彼は思う。何を隠そう、この悪者面の彼は、茶道部と華道部所属なのだった。




《完》




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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】


1883/セレスティ・カーニンガム (せれすてぃ・かーにんがむ)/男性/3年A組
3604/諏訪・海月 (すわ・かげつ)/男性/2年B組
3636/青砥・凛 (あおと・りん)/女性/2年B組
3629/十里楠・真癒圭 (とりな・まゆこ)/女性/2年B組
3453/CASLL・TO (キャスル・テイオウ)/男性/3年C組


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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東瑠真黒逢(とうりゅう まくあ)改め東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。今まで約一年ほど、身体の不調や父の死去等で仕事を休ませて頂いていたのですが、これからは、身体と相談しながら、確実に、そしていいものを作っていくよう心がけていこうと思っています。覚えていて下さった方々からは、暖かいお迎えのお言葉、本当に嬉しく思いますv

さて今回ですが、ダブルノベルというものを初めて書きました。わたしの作品としては結構コメディ寄りになっています。一番の懸念は、ダブルノベルとしてうまく役割を果たせているか、ということと、お客様皆様の心をちゃんと満たせたかどうかということですが、今からドキドキしています。

■セレスティ・カーニンガム様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いに対してもやはりあんな感じでセレスティさんなら対応するかなと思いましたが、如何でしたでしょうか。ある意味、一番容赦がない人なのかもしれません(笑)。
■諏訪・海月様:連続のご参加、有難うございますv 人喰いの部分を個別と最初に決めてあったため、凛さんとの連係プレーは楽しそうだなとも思ったのですが、今回は会話のみにとどめてみました。ボケツッコミなどはあんな感じだと思うのですが(笑)、如何でしたでしょうか。
■青砥・凛様:連続のご参加、有難うございますv やはり今回もボケさせて頂きました、物語にとっては重要なエキスの一つであるボケツッコミのボケですが、わたしのは生ぬるかったでしょうか(笑)。やはり、人喰いに対しても凛さんとしてはあんな感じなのでは……と思うのですが、如何でしたでしょうか。
■十里楠・真癒圭様:連続のご参加、有難うございますv 罠をしかける、というのが面白そうだったのでやってみたかったのですが中々機会がなく、力不足で申し訳ありません; ですが、過去の真癒圭さんの作品を見るに能力的な能力を使っていなかったのと、今回の人喰い退治を一人でどう解決しようかと考えていたので、「恵安奉」を使わせて頂きましたが、如何でしたでしょうか。
■CASLL・TO様:初のご参加、有難うございますv 悪者顔、というところをもう少し使ったシチュエーションなども入れたかったのですが、こちらも中々機会がありませんでした。力不足で申し訳ありません; CASLLさんは初めて書かせて頂きましたが、能力の「迫真の演技」は、あんな感じで如何でしたでしょうか。ハタから見るとかなり楽しいPCさんだと思いますが(笑)。

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回は、その束の間の休息(というと語弊がありますが)と思っていただければ、と思います。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆