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祭のあと< 祭の後 >
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校庭の中央で、燃え盛るファイアストーム。
それを彼方に見やりながら、セレスティは一人校庭の隅のベンチに座っていた。
楽しそうに目の前で踊っている友人たち。炎に照らされて、彼らの笑顔は一際輝いて見える。
見ているだけでも心が弾み、セレスティはこっそり、その指を叩いてリズムをとった。
と。
「セレスティさん」
目の前に、青い髪の少女が立った。視線をやると、彼女はにこりと微笑んでみせる。
「初めまして」
「初めまして。私になにか御用ですか?」
優しく尋ねると彼女は一つうなずき、にっこりと笑った。
「お礼を言いたくて」
「お礼……ですか? さて、あなたとはどこかでお会いしましたでしょうか」
その問いには答えず、彼女は静かにセレスティの横に座った。
「セレスティさんは、誰か待っている方がいますか?」
「……待っている、とは?」
「例えば、いまここで体験してることが全て夢だったとして。
……迎えに来てくれる方がいますか?」
「おもしろいことを言いますね」
セレスティは微笑んで……それからふと、ファイアストームに視線をやった。
「……そうですね、おりますよ。
口が悪い庭師ですとか、作るもの全てが一流の料理人ですとか、道に迷ってばかりの学芸員ですとか……。
ああでも、彼らには日ごろ厳しく当たっているばかりいますから、今更言っても迎えに来てくれないかもしれませんが」
「でも、その人たちが大好きなんですね?」
彼女の問いに、セレスティはそっと目を閉じる。
「……そうですね。私は彼らのこと、嫌いではありませんよ……」
と、彼女が立ち上がる。
「ごめんなさい、お邪魔して。私もう行かなくちゃ」
「そうですか……ああ、あなたお名前は?」
そう尋ねると、女の子はかすかに寂しそうに笑った。
「内緒です」
「それは残念ですね」
そう言うと、女の子はぷっと吹き出した。
「ふふ。日和ちゃんなら、きっと教えてくれます。興味があったら聞いてみて下さい。
……あら。」
と、彼女はセレスティの背後に視線をやった。
「本当ですね。お迎えがいらしたみたいですよ」
いつの間にかファイアストームも消えうせ、辺りは真っ白な空間になっていた。
自分がまとっている服も、ブレザーから仕事用のスーツへと変わっている。
少女もいつの間にかいない。
――真っ白な空間に、ただ残されている自分。
彼方から光が一筋差し込んでくる。あれが目覚めの光だろうか。
「遅いですよ」
背後にいる人物の表情を思い浮かべながら、セレスティはゆっくりと振り向いた。
例え体験したことが全て夢だったとしても。
――こうして私の中で、全ての想いがしっかりと焼きついている。
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登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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【1883 / セレスティ・カーニンガム /せれすてぃ・かーにんがむ/ 男 / 3-A】
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ライター通信
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こんにちは、つなみりょうです。
この度はご発注下さり、誠にありがとうございました。
大変お待たせして申し訳ありませんでした! その分、ご期待に添えていればよいのですが。
今回は幻影学園忌憚、そしてこれが「学園祭」最後(の方の)ノベルになるだろうなーという考えから(笑)「別れ」をテーマとさせていただきました。
そして皆様には、それぞれの大切な方にお迎えにあがっていただいてもらっています。さて、いかがでしたでしょうか?
セレスティさん、今回もありがとうございました。
えと、お出迎えは恋人さんも考えたのですが(笑)このようにさせていただきました。
よくよく読み返してみると、実は私のNPCである夏本さららとのからみがなかったので、個人ノベルはこのようにさせていただきました。
もしかしたらまたお会いするようなことがあるかもしれません……その際はどうぞよろしくお願いしますね。
ご感想などありましたらぜひぜひお寄せくださいね。今後の参考にさせていただきますので!
これにて『現実』に戻りますが、そちらでもどうぞよろしくお願いいたします。張り切ってお出迎えさせていただきます。
それでは、つなみりょうでした。
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