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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


楽しい学園祭〜心霊写真コンテスト〜
 きちんとブレザーを着こなしている落ち着いたその姿は、まさしく上級生に相応しい。…そう言われている事は、別に気にならなかった。こうした服装を身に付ける事が自分にとって当たり前の事だったし、それに――これが、自分に一番近い気がしていたからだ。一番近い、と言うのも不思議な感覚だと思っているのだが、それ以上に言い様は無かった。
 目がほとんど見えない自分だからこそ、分かる事もある。
 特にこの学園は――はっきり、おかしいと言えた。最初の頃はまるで気付かなかったが、この夏を過ごすうちに次第に糸がほつれるように、少しずつ地が見えて来ているのが分かる。
 その不自然さに気付く事も、最近では『許されて』いるのか、思考が止まる…止められる位置はどんどんと深い部分にまで進んでいた。
 高校3年と言う自分。
 その事に全く不自然さを感じないでいる事は、もう出来なかった――。

*****

 写真と言う存在に何か手がかりは掴めるだろうか、そう思い至ったのは、心霊写真の展示を行う、と言う宣伝を聞いてからの事で。多分、顔見知りが多く集まるだろうと思いながら、いつも通りあまり丈夫ではない身体をマイペースな足運びで進んで行く。…歩いている間にも、違和感が肌を撫でるのは如何ともし難く、これも気付いてしまったためかと内心で溜息を付く。それでも、沢山の生徒達がいる学園祭は、ある種過剰な程の盛り上がりを見せていたためあまりそういった違和感に苦痛を感じる事は少なくて済んだ。
 そして、今。
 その心霊写真と言われている写真群から溢れている2つの感情を感じ取っている。
「………」
 そっと手を伸ばして、一枚一枚の写真に触れれば、周囲の声も聞こえなくなり…そこから導かれる答えを解くために、セレスティは更に深くへと潜って行った。
 写真――そこに写る、『違和感』が、ほとんどの場合心霊とは結びついていない、そう結論付けたのは、いくつもの写真に触れてからの事だった。寧ろ――『心霊』と見られるであろう光の帯や、顔や、在り得ない位置の建物――そこから感じ取れる陽の気に、やはり、と1人ごちる。
 セレスティからすれば、ネガとポジがひっくり返ったようなものだった。…闇を光に、光を闇に置き換えれば、見えるものの『意味』も自ずと見えてくるもので。
 だが…だとすれば、この冷気の原因はなんだろうか。
 これだけの明るい雰囲気がありながら、その4分の1にも満たない10数枚の写真から発する、凍えてしまう程の陰の気――人の運命さえ捻じ曲げてしまいそうな、強烈な悪意を感じ取り…また、その裏側からかろうじて発せられている、もう1つの明るい『気』にふと口元を綻ばせた。
 その写真に誰が写っているのか、もはや聞くまでも無い。
 そう――月神詠子。
 楽しげな声で話し、笑い、そして今激しい冷気を運び込もうとしているものも。同じ、モノ。
 そうやって意識を向けているのが、向こうにも分かったのだろうか。
 セレスティが、写真から手を離すほんの直前に、

『彼女』が、この場へと――到達、した。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】

【1883/セレスティ・カーニンガム/男性/3-A】

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■         ライター通信          ■
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お待たせしました。「楽しい学園祭」個別ノベルをお届けします。
真相に繋がるもの…この話でほぼ見えたのではないかと思います。思うところは各自あるのでしょうが、楽しい筈の学園祭にもこうした陰の部分はある訳で、その辺りを見ていただければと思いながら作成しました。
狙い済ましたようなチームワークが組めるパーティになりましたので(笑)あのようにタッグを組ませていただきました。楽しんでいただければ幸いです。

尚、今回はあえて月神詠子本人には登場願っていません。話題に出たり写真に載っていたり、――で出たりしている位です。最後のは曲者ですが、お分かりになったでしょうか。

それでは、またのお話で会えることを願って。
間垣久実