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祭のあと< 祭の後 >
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校庭の中央で、燃え盛るファイアストーム。
楽しそうに目の前で踊っている友人たち。炎に照らされて、彼らの笑顔は一際輝いて見える。
……その輪には加わらず、日和は悠宇と二人校庭の隅にいた。
「俺は、日和のことが好きだ」
「悠宇くん……」
「誰に何と言われようとその気持ちは変わらないし、何が起こったって俺のその気持ちは変えられないよ。
俺はずっと、日和のことをとても大事に思ってる。それは夢だろうが現実だろうが変わらない。
何があったって、俺はお前の側にいるよ」
「……ありがとう」
気がつけば口を開いていた。
腕の中で肩を震わせている日和をなんとか力づけてやりたかった。
……夢だろうとなんだろうと、自分が側にいることを分かってほしかった。
無我夢中で宙を舞ったあの時。背中に翼が生まれ、気がつけば窓ガラスを蹴破っていた。
自分にこんな力が眠っていること、長い間忘れていた。……いや、眠らせていた。
それを呼び覚ましたのは日和だ。
――日和のおかげで、俺はどこまでも強くなれる。
いや。俺は日和がいなきゃ、強くなれないんだ。
日和のおかげで、強く在れる。
と、急に我に返って悠宇は赤面した。
「かぁ……っ、俺、何恥ずかしいこと言ってんだろ」
自分らしくない言葉にうなだれる悠宇。と、日和はくすくす笑っている。
「何笑ってんだよ」
照れ隠しにぶっきらぼうにそう言うと、日和はさらりと髪をなびかせかすかに首をかしげた。
「悠宇くんらしい」
「ん?」
「白露ね。私が行こうとしたら噛み付いてまで邪魔をしたの。
……ううん、引き止めてくれたの。きっと、危ないことを分かってたんだと思う」
「え! お前、ケガしたのか?」
「そうじゃなくて」
途端に慌てだした悠宇に、日和は苦笑する。
「そこまでして白露は私を守ってくれたわ。……そんな一生懸命なところまで、悠宇くんに似てる」
そして、悠宇くんありがとう、と日和は言った。
いつの間にかファイアストームも消えうせ、辺りは真っ白な空間になっていた。
――真っ白な空間に、ただ二人。
彼方から光が一筋差し込んでくる。あれが目覚めの光だろうか。
例え体験したことが全て夢だったとしても。
――こうして俺の中で、全ての想いがしっかりと焼きついている。
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登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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【3525 / 羽角悠宇 /はすみ・ゆう/ 男 / 2-A】
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ライター通信
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こんにちは、つなみりょうです。
この度はご発注下さり、誠にありがとうございました。
大変お待たせして申し訳ありませんでした! その分、ご期待に添えていればよいのですが。
今回は幻影学園忌憚、そしてこれが「学園祭」最後(の方の)ノベルになるだろうなーという考えから(笑)「別れ」をテーマとさせていただきました。
そして皆様には、それぞれの大切な方にお迎えにあがっていただいてもらっています。さて、いかがでしたでしょうか?
悠宇さん、連続のご発注ありがとうございました!
今回は……締めくくりにふさわしく、びしっと決めていただいたつもりなんですが、いかがでしょうか。
せっかくなので、現実にお戻りになっても覚えておいてくださいね(笑)
あと、「背中の黒い翼」は初めてお会いした時からずっと話中に出したかったのですが、ようやく今回書く事が出来ました。
そちらも、読んでいただければ嬉しいなーと思います。
ご感想などありましたらぜひぜひお寄せくださいね。今後の参考にさせていただきますので!
それでは、つなみりょうでした。
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