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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


科学部の危険な喫茶店

 学園祭前日のことである。
 手伝い要員も決まって解散した直後、シュラインは草間と家に帰る為に廊下を二人で歩いていた。
「明日から大変ね」
「ああ。そうだな」
 夕暮れの学園をぽつぽつと話ながら歩いていく。
「そういえばさ、私ちょっと不思議だったんだけど、食器ってあるの? その話が出なかったけど、食器くらいなら私の家にもあるから持ってこようと思ってたんだけど」
「ああ、それなんだがな。月神が科学機器でいいだろうって言い出して、それが気に入ったらしい。ビーカーとかを使うんだとさ」
 草間はシガレットチョコを一本咥えた。
「科学機器……って……。それ本当? ちょっとそれはまずくない?」
「いつも洗ってからしまってるし、平気だろ」
「平気じゃないわよ! だって薬品とかを入れて実験してたものなんでしょう! 私、明日の朝、早く来て使うもの全部洗いなおすわ! ただでさえヤバイ喫茶店なのに食中毒でもおこされたら大変じゃない!」
「……まあ、よく考えれば、そうだな」
「化学部員のあんたがヤバイ事になるかもしれないんだよ!? わかってる!」
 こうしてシュラインは明日の朝から食器洗いに来る羽目になった。

 翌日の早朝。
 シュラインは自宅から洗剤やらスポンジやらを沢山もってきて、準備室に入った。
 そこにはすでに草間がいる。
「あ……おはよう、チョコ。早いわね」
「お前が食器を洗ってくれるのに俺がこない訳にはいかないだろう」
 そう言ってビーカーの中のコーヒーを一口すする。
「お前も飲むか?」
「……遠慮しておく。洗ったら飲んでもいいけど」
「これ、コーヒー専用だから汚くないんだけどなあ」
 ぶつぶつとそういう草間にシュラインはため息をついた。

 まず最初は、部屋の空気の入れかえから。科学室というものは、なんだか独特のにおいがしてシュラインはそれがあまり好きではなかった。
 強力ダッシュ―という脱臭剤をもってきている。
 これはノズルを引くだけで霧状に散布でき、気になる所に一吹きすれば除菌、脱臭できるというすぐれものだ。
「チョコはそれを科学室に吹きかけて空気の入れ替えしてね」
 強力ダッシュ―の説明をすると、草間は感心して科学室の方へと去った。
「さてと」
 シュラインは草間が準備してくれた「今日使うであろう、科学機器」の山を見る。
 とりあえず、シンクに水をためて、それらを入れる。後は、家からもってきた「ハイパー漂白」という、漂白剤で漂白した後に、汚れすっきり「ミラクル洗剤」で洗い落とせばいい。
 漂白剤につけると、後は三十分ほど暇になる。シュラインは鞄から二本目の「強力ダッシュ―」を探すと、それを持って草間のいる科学室へと向かった。
 草間は椅子や机に「強力ダッシュ―」をかけている。
「チョコ、私も少しそっち手伝うよ」
「ちょうど良かった……。なにやら手順がよくわからん。どこに吹き付ければいいんだ?」
「とりあえず、カーテンかな。一緒にやろう」
 こうして「エディション」の衛生は保たれたのだった。
              ☆END☆


  登場人物                  
【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】      
0086/シュライン エマ/女性/草間興信所事務員


  ライター通信  

 本文中にいれられなかった、衛生についてのエピソードです。
 科学部の喫茶店はシュラインによって衛生は守られたようです。
 今回発注してくださり、有難うございました。  有月 加千利 拝