コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


科学部の危険な喫茶店

 学園祭二日目。
 羽角悠宇はその日の昼ご飯を調達すべく、模擬店を見てまわっていた。
 お好み焼き、たこ焼き、とうもろこし、色々とあるが、どれも悠宇にはいまいちだ。
 悠宇はがっつりと食べられる米が食べたかった。
 学食に行って定番の定食を食べるものいいが、今は学園祭なのだ。学園祭でだけ食べられるものがいい。そう思って見て回っている。
 あらかた見終わっても、米を出しているところは見当たらなかった。
 だが。一箇所だけ知っているところがある。
 知っていてもいきたくないところだった。
「あ〜〜やっぱりあそこしかないかなあ……」
 そう。
 科学部だ。
 たしか科学部には「目玉焼き定食」があった。定食というからにはご飯がつくのだろう。
「行ってみるか」

「いらっしゃいませー」
 月神の元気な声に悠宇は手をあげて「おう」と答えた。
 科学室はそれなにり繁盛していた。
 怖いもの見たさの人間は結構いるらしい。
 悠宇は席につくと月神に言う。
「なあ、この前来たとき、「目玉焼き定食」ってのがあったと思うんだけど、それをくれ」
「ああ、「たんぱく質の凝固と加熱による炭水化物の変化の実験」だね。じゃあ、用意してくるね」
(……やっぱり学食の方がよかったかなあ)
 不安を覚えつつ、科学室のテーブルに頬杖をついた。

「じゃあ、よく見ててね」
 テーブルの上には卵が二個と、皿にもった千切りキャベツがある。
 隣には飯ごうに入ったご飯。
 やはり日本人は米だ、と思い、腹の虫が鳴く。
 月神は科学室のガスバーナーを手早くつけると、三脚の上に鉄板を置いて、卵を二つ割って焼きだした。
「目玉焼きはね〜このように少し水を入れて蒸し焼きにするのがいいんだよ」
 そう言って水を少したらし、料理用の蓋をして待つ。
 じゅうじゅうという美味しそうな音と卵のいい香がする。
「たんぱく質は熱するとこのように固まります」
「そんなの誰だって知ってるってーの! それより早く飯!」
「だめだよ。これは実験なんだから。実験結果の感想とかも良かったら後でアンケート書いてね。卵は半熟と堅いのどっちがいい?」
「どっちでもいい」
「じゃあ、半熟ね。僕はその方が好きだから」
 話が終わると、月神はパカっと卵を覆っていた蓋をとる。
 そこにはつやつやとした二つの目玉焼きがある。それにコショウを少しかけて、隣にある皿にうつし、水鉄砲に入れられたソースとしょうゆを差し出された。
(なんで水鉄砲にしょうゆとかソースを入れているんだ?)
 疑問に思ったがそれよりも飯だ。
「どっちでも好きな方使ってね。ご飯はここ」
 飯ごうをまるごと差し出されて箸を渡される。
 あまりのダイナミックさに一瞬たじろいだが、目玉焼きは普通の目玉焼きだ。
「いただきまーす」
 目玉焼き定食は、割と美味しかった。

              ☆END☆



登場人物                 
【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】

3525/羽角 悠宇  /男性  /某有名進学校の男子生徒


         ライター通信
 初瀬様と一緒の参加だったので、二人の話を書きたかったのですが、個別ノベルとして全く別の話にしました。
 水鉄砲のしょうゆとソースのくだりは、別キャラクターササキビ様の個別ノベルと関係しています。
 気になられましたらご一読ください。
 今回発注有難うございました。
  有月 加千利 拝