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真実の追究
携帯電話が短い音楽を奏で、メールの到着を告げたことを知った。
新着メールあり
小窓から表示される言葉に気付いて、メールを開く。
ひどく簡略な文章で一言二言述べられた文章は、それでも用件だけはしっかりと伝えようと足掻いていた。
……多分、伝わった。伝わったと思いたい。
確信の持てぬメールは一方的に意思を届けられ、不安気にその心に深い色を落としていた。
「知りたいこと?」
「そ、“盾”の本当の名前!」
……まだ引きずっていたのか。“盾”の少女は嘆息して千影に顔を向けた。
「“盾”」
「だーかーらー、違うって!」
ぺちっと小気味の良い音が、“盾”の頭上から聞こえる。頭をさすりながら、再び“盾”と言うと、千影の鉄槌は何度も下される。
……文化祭翌日に呼び出されて、こんなことを訊かれるとは。“奇術師”以上に厄介かもしれぬな。
「どうして知りたいんだ?」
「“盾”と友達になりたいから、とか?」
「疑問符を最後に付けるな」
「なりたいから!」
「……いや、意気込んで言われても」
“盾は”どうしたものかと頬を掻き、そこで自身の携帯電話の振動に気付く。
「――もしもし」
構わず出た電話に、
『 ! 今どこにいるの? 人手足りないんだから、戻ってきてよ』
「莫迦、名を口にするな――」
「へー、 って言うんだー。可愛い名前だね」
後方で千影が笑顔で立っていた。
「いいじゃない、素敵だよ」
「好かん。女々しい名で、しかも花だか草だかの名だぞ? 誰が気に入るか!」
「そ? でも千影は好きだよ」
「……勝手にしろ。もう戻るからな」
とぼとぼと背を丸めて去っていこうとする に、千影は言った。
「ね、 。またメールするから、今度はどっか行こうねー」
「勝手にしろと言っている」
「ならメールする。他の子沢山呼んで、遊ぼうね」
「人前も好かん」
「なら“石”探しのメンバーだけで」
「……分かった。もう、任せる」
そういえば、“奇術師”の名前は何だろな、と。新しい友達が去ってから思ったが、また今度訊けばいいよね、と千影は思った。
また会えるから、遊べるから、その日のためにとって置いている質問を胸に、千影は とは反対の方向に駆けていった。
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■ 登場人物 ■
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【整理番号 / PC名 / 性別】
【3689/千影一/女性】
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■ ライター通信 ■
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初めまして、千秋志庵と申します。
依頼、有難う御座います。
「愉しく元気に」を千影のテーマに書かせていただきました。
最後の“盾”との二人のやり取りは書いている私自身、とても愉しいものでした。
元気を分けて頂いている、というか、そんな感じです。
千影と“盾”とのコンビは、またどこかで活躍させたいな、と名残惜しい気持ちでした。
兎にも角にも、少しでも愉しんでいただけたら幸いです。
それでは、またどこかで会えることを祈りつつ。
千秋志庵 拝
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