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芸能演芸大舞台!
アンコールの拍手の中、再びイツルが登場した。玲於奈の混乱をまとめるため、また登場する羽目になったのだ。彼は遠慮気味に手を振りながらステージ中央に走った。そしてテープの裏面に入っていた曲の頭がかかった……
『アクションッ!』
その曲の歌い出しとともに動き出そうとしたイツルだったが、自分に向けられた殺意を感じて後ろに飛び退いた! すると自分の目の前にチェーンソーを持ったCASLLが出てきたではないか! もちろん今は彼の出番でもなんでもない。しかし彼の持つチェーンソーの刃は轟音を立てて回転しており、彼の左目も控え室で見た時とは違う冷たい鋭さを秘めていた。狂気の表情のまま舌を出し、CASLLはイツルを口汚く罵り始める。
「てめぇだけカッコつけようなんて……ふざけんじゃねぇぞ、ボケ!!」
「……お前、本気なのか?」
「俺が本気かどうかはてめぇで判断しなぁあ!!」
本人もイツルも気づいていないが、CASLLは『アクション』という言葉で悪役に入りこんでしまう性癖があった。逆に『カット』と言われればいともあっさりと我に返る。もちろんその事実を気絶している部長も副部長も知っていたが、誰もあえてそれを言おうとはしなかった。それはなぜか……それはCASLLが乱入はヒーローショーのような即興劇仕立ての企画だと勘違いしたからなのだ。
「くっ……演技かどうか見分けがつかない以上、手は抜けないな。」
「ブツブツ言ってんじゃねぇ! 死ねぇ!!」
CASLLは手加減なしでチェーンソーを振りかぶった! 説得は無理だと判断したイツルはとっさに右手を観客の死角に回し、その隙に愛剣『黒風』を出現させて回転する刃を食い止める!
ギギギギン!!
「おおっ、止めたっ!!」
「キャーッ、イツルさ〜〜〜んっ♪」
「お兄ちゃんカッコいいーーーっ!」
イツルのとっさの行動はどんどん誤解を広げていく……今度は観客までもが勘違いし、女性どころか子どもまで騒ぎ始めた。イツルにしてみれば想像だにしなかったとんだアンコールになった。しかし敵役のCASLLはまったく攻撃の手を緩めない。一度は弾かれたチェーンソーで今度はイツルの身体を横に裂こうと襲いかかる!
「ぶった斬れろぉぉ!!」
「ふ、副部長ぉ、さすがにヤバいっすよ!」
「カーーーーーーーーーーーット!」
「んん??」
どこからともなく響く魔法の言葉……観客はそれを気にもしなかったが、ひとりの男は過敏に反応していた。もちろんCASLLである。自分の目の前で回ってるチェーンソーと真剣な表情のイツルを見てはじめて自分のしていることを理解したのだった。
「しまった、またやっちゃった!」
「お前、さっきより目の色が……?」
「もしかして誰か『アクション』とか言いませんでした? 私、条件反射でダメなんですよ〜。」
「ふ、そういうことか……だから『カット』なんだな。とりあえず適当に動いてくれ。俺はこれで終わってもいいんだが、会場がな……」
「なんだ、急に止まったぞ?」
「戦えーっ、悪者を倒せーっ!!」
「イツルさーーーん、カッコいいーーーっ♪」
もはや会場にいる誰もが、ふたりの戦いを『ヒーローショー』としてしか見ていない。CASLLのせいでイツルは筋書きのないドラマをすべてアドリブで演じなければならなくなった。
「まったく……面倒なことをやってくれたな。」
「ごめん、本当にごめん! 適当に喋ってくれたら俺もそれに合わせるから!」
「そんなことで済ませないよ。ものすごくカッコ悪い負け方させてやる。」
「それは困る。そんなことやらされるくらいだったら、俺が勝つ……!」
大興奮の渦の中、ふたりの戦いは再開されるのだった……
「ここで控え室でメシ食ってる女幹部の名前を呼んだら、イツルさん怒ります?」
「収拾がつかなくなってもいいのならご自由に。」
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
3453/CASLL・TO /男性/3−C
2554/春日・イツル /男性/1−B
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■ ライター通信 ■
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こんにちわ、市川智彦です。今回は幻影学園奇譚ダブルノベルをお届けします!
今回の個別ノベルはCASLL・TOさんと春日 イツルさんまったく同じです。
設定を見ててどうしても戦ってほしいと思い、こういう形での戦いをして頂きました。
どちらも筋金入りの役者さんなんで、本当に緊迫したドラマが見れたんでしょうね。
お客さんは幸せですね〜。実際の出し物は共通ノベルをご覧になって下さい!
今回は本当にありがとうございました。また本編や別の作品でお会いしましょう!
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