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楽しい学園祭〜心霊写真コンテスト〜
「ちっ、あいつ何処に行きやがった」
「みーつけた♪」
「誰だ、ってこら、背中にしがみ付くなっ」
ずん、と子泣きじじいのように背中へ加わった重みに、嵐が思い切り顰め面をしながら振りほどく。
「うっふっふ〜♪あのねあのね。ほら、これなんだと思う?」
「あ!お前、何でよりにもよってあんな写真に賞やるんだよ。商品受け取ったあの野郎、全部持って逃げやがったんだぞ…って、これ!」
「そう。最後に撮った写真よ。――ねえ、本当に調査させてくれない?あなたの背後をしっかり調べてあげるんだから」
「勘弁してくれって。俺はそんな事望んじゃいねえよ。…でも、何なんだこれは。俺だけにだよな」
「そうみたいねー。それに、カメラが違ってもって事は、やっぱり嵐ちゃんに原因があるって事が照明されたわけよね!」
実に嬉しそうに言い放つSHIZUKUに恨めしげな視線を向けて、最後の最後で写真を撮っていた男に毒づく。
「ていうかちゃんづけ止めろよ」
「え〜?いいじゃないのー。特別にSHIZUKUちゃんって呼ばせてあげるからさぁ」
「特別でもなんでもねえしそんな名前で呼ぶ気はねえっ」
「残念。…でも、どうするの?単にたまたま、ならいいけど、ホントに憑いてたら洒落にならないわよ」
「――んなこたぁ、分かってる。俺だって少しは見える方なんだしよ…でも、ずっと憑いてるとは思わなかったしな。只の偶然じゃないのか?」
「もしくは、嵐ちゃんのこと気に入っちゃった誰かさんだったりね」
「生霊ならもっと嫌だろうが。本当にお前って奴は遠慮がないな…」
その言葉には、肯定も否定も無く、ただくすくすと楽しげに笑うのみだった。
「あ…こんなところにいたのね」
大人しい声がかかったのはそんな時。SHIZUKUがぱっと表情を輝かせてぱたぱたとその声の主、ヒミコへと駆け寄って行く。
「ねえねえヒミコちゃん。嵐ちゃんったら酷いのよー。背中に憑いてるものの調査をやらせてーってこんなに頼んでるのに、駄目だの一点張りなの」
「雫ちゃんったら…無理やりは良くないでしょ?事情だってあるんだろうし。――あ…頭痛、引きました?」
「ん?ああ、そう言えばもうすっかり。手間かけてすんません、先輩」
ううん、と首を振るヒミコ。
「私達の力が至らなくて、余計な能力使わせてしまったのはこっちの責任ですから。でも、痛みが引いて良かったです」
…アレを押し込む時に、咄嗟にほとんどフルに能力を使ったのは、こっちへ来られると危険だと言う感覚が強くなって来たためだ。お陰でその反動の頭痛は本気で割れるかと思ったのだったが、先輩2人に介抱してもらって間もなくすぅっと引いていった。普段もあまりこの頭痛に対しての対処方法が無いために、今回痛みを覚悟で能力を解放して、寧ろ良かったように思っている。
「俺も出来る事があれば、ああやって手伝えますからね」
「本当に助かったんですよ、あの時は」
にこにこ笑うヒミコ。
「…そう言えば、あの…会長に何か言われたんすか?」
「え?どうしてその事を?」
ヒミコが驚いた顔をして訊ねる。
「えと、だってほら、あん時会長が先輩の事凝視しててじゃないですか。だからてっきり何か言われたものかと――って、他に何か言われたんですか?」
「ええ…でも、特に大事そうな事は聞かれませんでしたよ。この世界は楽しいか、とか…新鮮か、とか」
「…随分変な事聞くんですね」
「そうねえ。ね、ヒミコちゃん。会長、もしかして…」
「ち、違うと思うわ。だってそれだけだったもの。後は、あと少しだから楽しみなさいって…ほら、学園祭、もう少しで終わっちゃうでしょ?だからだと思うのよ。別に特別どうとか、って事は無いわ」
にや、っと笑ったSHIZUKUに、ヒミコがちょっと頬を染めて首を振る。
…たったそれだけを聞くために、そしてそんな言葉を告げるために、ヒミコの所へわざわざやって来たのだろうか?あの、会長が?
――どうしても、嵐にはヒミコへ話し掛けたと言う陽一郎と、自分が抱いているイメージを結びつける事は出来なかった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
【2380/向坂・嵐 /男性/1-B】
NPC
SHIZUKU
影沼ヒミコ
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■ ライター通信 ■
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お待たせしました。「楽しい学園祭」個別ノベルをお届けします。
真相に繋がるもの…この話でほぼ見えたのではないかと思います。思うところは各自あるのでしょうが、楽しい筈の学園祭にもこうした陰の部分はある訳で、その辺りを見ていただければと思いながら作成しました。
狙い済ましたようなチームワークが組めるパーティになりましたので(笑)あのようにタッグを組ませていただきました。楽しんでいただければ幸いです。
尚、今回はあえて月神詠子本人には登場願っていません。話題に出たり写真に載っていたり、――で出たりしている位です。最後のは曲者ですが、お分かりになったでしょうか。
それでは、またのお話で会えることを願って。
間垣久実
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