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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


楽しい学園祭〜心霊写真コンテスト〜
「異常発見。除去開始」
 ビーッ。
 キィィィィ!!?
 強化しないビーム光線を浴びた『それ』が、よろよろと何処かへ逃げようとするのを許さず、すぱんッと切り裂いた次元の闇へと放り込み、縫い合わせる。
「一件完了。次だ」
 ぱっと見には単なる女子高生のすばる。その彼女の目から光線が出たり、オプションで様々なモードに変形、常人には及びも付かない速度でそれらの機械を使用可能な事は、ごく少数の者以外には知られていない。
 そして今もまた、本日何匹目かの『異常』を排除し、そして動きを止め――休憩に入る。
「………」
 思い返す、いや…記憶を再生する。しつこいほど表層へ現れるのは、先程仕留めたばかりの最大級の『異常』。すばるのような次元断層を切り裂く装備とは明らかに違い、『素手』でこの世界へ現れようとしていたあの存在。
「――――」
 視覚・聴覚情報を遮断し――つまり目を閉じて、意識を集中し、先程の戦闘の解析を開始する。
 すばるにとって残念な事に、発生の瞬間は、手に持ったカメラの向きが合わず、すばるの目は千影に向いていたため記憶する事が叶わなかった。そこからはずっと記録しながら戦闘に加わっていたため、全て覚えている。
 無理やりこの世界へ入り込もうとした異質な存在の事、『それ』が僅かずつ入り込むうちに、怪奇探偵クラブのブースも廊下も色彩を失い、まるで夜の世界を流し込んだように変わって行った事――。
 その現象が『それ』の持つ力なのか、それともそれが入ると同時に他の何かが浸食を開始したのか、すばるにも判断は付かなかった。
 そして、その情報を脇へ押しのけた時に続けて流れ込んできた映像は、あの場にあった何枚もの写真だった。頭の中で、日付と場所順にぱらぱらと並べて行く。
 …やはり、矛盾する。
 月神詠子と言う存在は、複数いるのだろうか?双子や三つ子で、説明は付けられるだろうか?
 答えは――否。
 一卵性双生児は存在するが、それでも視覚情報だけでほとんどの場合判断が付く。写真の画像を最小単位で調べてはみたがどれも同一人物と推測される。…第一、すばるの情報には詠子のものはあっても、詠子に通じる血族の情報は入っていない。
 ――そうなると、矛盾を認めざるを得なくなる。すなわち、月神詠子は1人のみ。そして、月神詠子は同時に多数の場所へ存在できるらしい。
 常識で考えれば在り得ない話。だが、兄弟の可能性を除外するしかない今は、それを受け入れなければならない。
 それに対して納得の行く解説があれば良いのだが…。
「…解析不能だ。情報が少なすぎる」
 数度再生を繰り返し、細かな部分まで『見』たものの、存在が現れる理由やその存在そのものに付いての手がかりは無く、視覚と聴覚レベルを元に戻してゆっくりと目を開いた。
 詠子に関しての情報も中途で途切れているため、これ以上思考を巡らせても良い結果になる筈も無く、そこまでで止めてみじろぎした。次の『異常』を探し、退治るために。
 そう言えば、もう1つ不可解な事がある。
 生徒会長――陽一郎が、詠子の写っている写真へと視線を向けながら呟いた言葉。それは、月神、でも、詠子、でも無く。
『――つ…よみ』
 つきよみ、と音声を拾い上げて再生した言葉はそうなる。…少し、違うかもしれない。訛りや細かな音の揺れは除外しているから尚更だろう。
「これも情報が足らない」
 あっさりとその記憶を奥へと仕舞い込んで、すばるは身体をチェックし、そして移動し始めた。
 それが、彼女の役割だったから。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】

【2748/亜矢坂9・すばる    /女性/2-A】

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■         ライター通信          ■
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お待たせしました。「楽しい学園祭」個別ノベルをお届けします。
真相に繋がるもの…この話でほぼ見えたのではないかと思います。思うところは各自あるのでしょうが、楽しい筈の学園祭にもこうした陰の部分はある訳で、その辺りを見ていただければと思いながら作成しました。
狙い済ましたようなチームワークが組めるパーティになりましたので(笑)あのようにタッグを組ませていただきました。楽しんでいただければ幸いです。

尚、今回はあえて月神詠子本人には登場願っていません。話題に出たり写真に載っていたり、――で出たりしている位です。最後のは曲者ですが、お分かりになったでしょうか。

それでは、またのお話で会えることを願って。
間垣久実