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楽しい学園祭〜心霊写真コンテスト〜
「うぅーん。これなんかどうですかねえ」
「甘いわねー。もうちょっとインパクトのある写真じゃなきゃ」
現像した写真を何枚も並べられたSHIZUKUが、うーむ、と腕を組んで唸りながら首を傾げる。
あの後、何だか写真を撮るのが楽しくなってしまった虎太郎が、フィルムの残りを消化するために校内中を駆け回って撮影してきたのだ。もちろん、現像は写真部に頼み込んで行ってもらっている。
「心霊写真と言うのは難しいものですね」
校内を撮影してまわった所、それらしいモノは撮れてはいたが、SHIZUKUの言う通りインパクトに乏しいものばかり。
「そりゃーそうよ。必ず写るカメラがあるんだったらあたしが欲しい位だわ」
「曰く付きのカメラなら、写るかもしれませんね。今度調べて見ましょうか」
「ホント!?――あ、でもカメラ自体呪われてて同じ被写体しか写らないっていうのは無しよ。それじゃ詰まらないもの」
曰く付きとなれば、確かにそう言った『必ず同じモノが写る』と言う物の方が多そうだ。そう思った虎太郎が、確かに、と頷く。
「ところでSHIZUKUさん。あなたご自身は、写真撮影なさらないんですか?」
「痛いところ突くわね。…でも駄目。何だかスランプ気味なのよ。あれだけ写真を撮っても、怪奇探偵クラブとして出せるような写真が1枚もないのよ。1枚も。この悔しさ、分かる?」
ちょっとした――虎太郎が持って来た写真並のものなら撮影していたらしいが、それでは詰まらないと今回展示はしなかったのだと、彼女が語る。
「はあ…なる程、それはそれはお気の毒に」
「そうよね…はああ。腕、鈍っちゃったのかしら。あんなに危険地帯とか行ったのになぁ」
虎太郎が撮影したフィルム1本分の写真を見る続きに移りながら、またSHIZUKUがぼやく。その手が、ぴたりと止まった。
「あ、これ。こう言うのはいいわねー。ほら、いかにも怖いわーって感じでしょ?」
それは、あの騒動の最中に撮影したもの。虎太郎の目では捕らえられない現象があの場には起こっていたらしい。
――写真の中に収まっている者達の身体に纏わり付くように、白と黒の煙状のものが腕や足に巻きついていた。それは、意思すら感じさせるもので、
「確かに、こんな写真を撮られたら怖いですねえ」
なるほどなるほど、と自分の取り込んだ知識の中に新たに心霊写真の撮り方を入れていく。
「それから、これは……って…」
「ああ、これは会長を撮影したものですね。撮るつもりは無かったんですが」
「そう言うんじゃなくて…この霧みたいなの、真っ直ぐ彼に向かって無い?」
言われて良く見てみると、ブース内にあったもやのようなものが、全て彼へと向けてなびいているのが分かる。
「…関係者…まさか、ね…」
あの時、空間を抉るようにして現れた存在と、生徒会長が?
「いくらなんでも…多分」
「そうよね、無いわよね」
互いに笑いあったものの、しっくりしないものがあったのかその笑いは中途半端に収まった。
「じゃ、じゃあこれ…って。あーあ。やっぱりまだ憑いたままじゃない」
気を取り直して、最後に残った写真を手にとったSHIZUKUがくすくす笑う。
「これ、貰ってもいい?彼に見せに行くわ。やっぱりあれよ、調査よ調査!」
「構いませんよ―」
そう言いつつ、最後の写真を除きこむと、そこには最優秀に輝いた、被写体の彼。――そして、その彼を撮った写真にも、しっかりその白いもやは取り巻いていた。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
【1511/神谷・虎太郎 /男性/2-A】
NPC
SHIZUKU
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■ ライター通信 ■
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お待たせしました。「楽しい学園祭」個別ノベルをお届けします。
真相に繋がるもの…この話でほぼ見えたのではないかと思います。思うところは各自あるのでしょうが、楽しい筈の学園祭にもこうした陰の部分はある訳で、その辺りを見ていただければと思いながら作成しました。
狙い済ましたようなチームワークが組めるパーティになりましたので(笑)あのようにタッグを組ませていただきました。楽しんでいただければ幸いです。
尚、今回はあえて月神詠子本人には登場願っていません。話題に出たり写真に載っていたり、――で出たりしている位です。最後のは曲者ですが、お分かりになったでしょうか。
それでは、またのお話で会えることを願って。
間垣久実
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