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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


■甦りの未来−懐かしの未来・最終章−始まりの為の別れ・千影編■

 眩しさが頂点に達したあと、急に静かになった。物音も何も聞こえず、そろそろと目を開くと、目に痛くない不思議な真っ白に近い虹色の空間が、あった。
 その空間には何か見えるようでいて、そうでもないような気がする。
(あ……)
 そして千影は、自分の前世を思い出す。
 ただそれは、漠然としたものでしかなかったけれど。
 千影は前世では、古代の中国の王宮で若くして命を失った妃だった。
 小鳥のような無垢な心を持ち当時の王に愛されていた。
 何故だろう、涙が出る。
 嫌な涙ではない。ただ、前世の自分も何もかもが懐かしかった。
 ぐしぐしと涙を拭い、「詠子ちゃんも陽一郎ちゃんも、だいじょぶかな」と、誰にともなくぽつりと呟いた。
 空間には、千影ひとりしかいない。
『精神世界』
 ふと、そんな紫藤・聖治の声が聞こえた気がして、千影はキョロキョロと辺りを見渡した。だが、やはり誰もいない。
 虹色の空間にしゃがみこもうとすると、不意に人の気配を感じて、振り向いた。
「あ……無事だったんだぁ」
 そこには、詠子と陽一郎の姿。少しの隙間を置いて、隣同士立って千影を見つめている。
 その二人の顔のどちらにも、安らぎの笑顔が浮かんでいた。
「ね」
 詠子が、口を開いた。
「ボクのシグナルを感じてくれて、有り難う」
 ちゃんと助けだと分かってくれて、有り難う───。
 何かを察して、千影は急に不安になった。詠子の腕を掴もうとしたが、すり抜けた。
「いっちゃうの?」
 問いかける自分にも不思議に思った。いっちゃうの───どこに?
 だが、静かに陽一郎が頷いた。
「いくよ。いくことにした。きみ達皆の意識が、気持ちが───あまりにも純粋でわたし達を想ってくれるものだったから。いくよ───0地点へ」
 0地点?
 小首を傾げる千影の額に、詠子が自分の額を当てる。
「そう───皆の記憶を消して、ボクも陽一郎も記憶を消して───0からやり直すんだ。それがどういう結果になるのか分からないけれど……でも、ボクは幸せだよ」
 気づくと、二人の傷はもう癒えていた。
 人の想いは、こんなにも凄い。それなら、望みどおり二人ともちゃんと、0からやり直すことが出来るのだろう。
「いや……二人と別れるなんて、いや。あたしは絶対に二人のこと覚えてるから」
「覚えてなくていいんだよ」
 陽一郎が、言う。
 覚えてなくていい───だって、またきっといつかどこかで、出会うのだから。
 そのための、別れなのだから───。
 そうしているうちに、ふぅっと千影の意識が薄れていく。
「願わくば」
 願わくば───現世のキミの未来が、前世より一歩だけでも幸せなものであるといい。
 そうしたら───そうして転生を繰り返し、その度に幸せになるのなら───人はきっと、生物はきっと、「本当の幸せ」が「いつでも」掴めるに違いないのだから。
 最後に、詠子のそんな声が、
       聞こえた───気がした。



《完》




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■   登場人物                  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】


3689/千影・ー (ちかげ・ー)/女性/1年B組
3636/青砥・凛 (あおと・りん)/女性/2年B組
3604/諏訪・海月 (すわ・かげつ)/男性/2年B組
3629/十里楠・真癒圭 (とりな・まゆこ)/女性/2年B組
1883/セレスティ・カーニンガム (せれすてぃ・かーにんがむ)/男性/3年A組
3524/初瀬・日和 (はつせ・ひより)/女性/2年B組
3525/羽角・悠宇 (はすみ・ゆう)/男性/2年A組


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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東瑠真黒逢(とうりゅう まくあ)改め東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。今まで約一年ほど、身体の不調や父の死去等で仕事を休ませて頂いていたのですが、これからは、身体と相談しながら、確実に、そしていいものを作っていくよう心がけていこうと思っています。覚えていて下さった方々からは、暖かいお迎えのお言葉、本当に嬉しく思いますv

さて今回ですが、ダブルノベルの2作目、大幅に遅延してしまいまして、まずは先にそれをお詫びします。体調不良が重なるとコワいもので、皆さんも季節柄どうぞお気をつけください。
この「甦りの未来」はタイトル通り、幻影学園奇憚でシリーズとして書かせて頂いたものの最終章となりました。個別の部分があまり個別でないようなところもありますが、皆さんには皆さんへのメッセージがこめられていますので(詠子からも陽一郎からも)、というかこめたつもりですので、他の皆様のノベルも是非お暇がありましたら。輪廻転生とかけて最初から狙ってみたのですが、シリーズの全ノベルに参加してくださった方々には、ちゃんと謎の部分は解けましたでしょうか? 因みに、わたし個人として気に入っているのは中編である「切望の未来」だったりします。

■千影・ー様:初のご参加、有り難うございますv ゴスロリ系の服という部分と可愛らしさをもう少し出したかったのですが、あまりに表面に出すと物語もPC様のプレイングも毀してしまうかなと思い、とどめてみました。月神・詠子=月詠の「シグナル」を感じ取ってくださる重大な役割をして頂きましたが、如何でしたでしょうか?
■諏訪・海月様:連続のご参加、有難うございますv ある意味、凛さんより脆い部分を持っているのかなと思って個別ノベルのほうを書いていたのですが、真実は如何なるものでしょう? いえ、凛さんとはまた別の脆さがあるのかなと、普段お強いお二方に対して思った結果なのですが。繭神・陽一郎とは偶然にも前世の海月さんと同じ職業でしたので、多少親近感を覚えて頂いてもよいかなと、個別の部分の一文になった次第です。
■青砥・凛様:連続のご参加、有難うございますv 今回、凛さん特有の「天然からの鋭いボケとツッコミ」が生かせなかったのですが、そのかわり「空気や雰囲気に敏感」な部分を出してみました。個別の部分ではもう少し長めに書いてみたかった感もあるのですが、それはまた機会がありましたら、是非書かせてくださいね。
■十里楠・真癒圭様:連続のご参加、有難うございますv 今回あまり男性恐怖の部分が出ていませんでしたが、わたしが思っている性格からして、多分こんな状況では人のことをまず最優先すると判断しましたので、日和さんとほぼ似たような行動になりました。始終怯えているかもということなので、最初から怯えさせてしまいましたが───個別の部分をお気に召されて頂けましたら、幸いです。
■セレスティ・カーニンガム様:連続のご参加、有難うございますv やはり今回もリーダー役にさせて頂きました。最上級生ということもあるのですが、石に触れていたのはセレスティさんだけでしたので、必然的にそうなったというか……(爆)。そうでなくとも、いつも冷静な対処をするセレスティさんならこうするとは思いますけれど、如何でしたでしょうか?
■初瀬・日和様:連続のご参加、有難うございますv 前世の部分をあまり書けなかったのが残念ですが、真っ先に人の心配をするという点では、やはり日和さんらしいなと思いつつ書き進めさせて頂きました。悠宇さんに対しての想い(悠宇さんが陽一郎の胸倉を掴み上げる展開)は、わたしが勝手に感じただけですので、もし全然違いましたらご容赦ください;
■羽角・悠宇様:連続のご参加、有り難うございますv こちらも前世の部分をあまり書いてさしあげられなかったのが残念ですが、悠宇さんの日和さんに対する想いというのは個別の部分で少し触れてみましたが、こちらもわたしの勝手な想像でしたらすみません; ただ、陽一郎に「ふざけるな」発言をして「叱ってあげた」のはこのメンバーでは悠宇さんが適役かなと思ったのと、悠宇さんならこう言うだろうなと思いまして、あんな展開になりましたが如何でしたでしょうか。

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回は、幻影学園奇憚というコンテンツに便乗してわたしの訴えたいことも書かせて頂きまして、ライター冥利につきる作品となりました。皆様は如何でしたでしょうか?

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆