コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


真実の追究
 携帯電話が短い音楽を奏で、メールの到着を告げたことを知った。

 新着メールあり

 小窓から表示される言葉に気付いて、メールを開く。
 ひどく簡略な文章で一言二言述べられた文章は、それでも用件だけはしっかりと伝えようと足掻いていた。
 ……多分、伝わった。伝わったと思いたい。
 確信の持てぬメールは一方的に意思を届けられ、不安気にその心に深い色を落としていた。

 多分、気付かないような姿でにゅっと現れ、彼は微笑んで言った。聞き取れなくてもう一度とせがんだら、愉しそうに口ずさんだ。
「どうも、“奇術師”です」
 制服姿の“奇術師”に一瞬誰かと思って思考は止まり、こずえは大声を出して指差した。
「“奇術師”!?」
 知らない顔ではない。それが服装一つでここまで他人に見えるとは、全く思いもしなかった。壁から体を起こし、いつの間にか壁に背を預けている“奇術師”の前に立った。身長が負けているので見上げた形になるが、気にせずに言った。
「何してるの?」
「高校生」
 ひどく簡潔な答えに、こずえは納得しかけ、急いで首を振った。
「ここで何をしてるのか、って目的の話」
 “奇術師”は数日前に見たものと同じ笑みで一言、
「高校生活を送っています。君達と同じく。一応、高校生ですから」
 そだったね、とこずえは妙に納得し、当初の位置に戻った。
 今何してるの、とか、専攻は何、とか、部活は入ってる、とか。
 適当な質問が二人の間でなされ、然程会話に広がりを持たれることなく終了した。
「ここは“創られた世界”なんだね」
 こずえの言葉に、“奇術師”は眉をひそめた。ええ、と答えを返す。
「でも、此処で“奇術師”と話しているのは事実……でいいんだよね?」
「事実は真実とは異なりますから」
「……うーん、難しいや」
「ですね」

 時に行われる思考遊戯に踊らされ、言葉を交わす。それすらも愉しむように、会話は進む。
 子供染みていても、大人気ないと言われても。
 止める権利は誰にもない。

 手を振って、“奇術師”と別れた。
 また会うだろうな、と何の気なしに思って空を見上げる。
 会いたいな、と思って眼を伏せた。
 太陽の光を瞼越しに感じた。
 とても、暖かかった。



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物                  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別】
【3206/神崎こずえ/女性】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

御久し振りです、千秋志庵と申します。
依頼、有難う御座います。

幻想的な感じの終わりが好きです。
幻想、というよりは、夢のような感じのような気がするような気がします。
もしかしたらこずえと“奇術師”は夢の中で出会ったかもしれません。
そんな感じが好きなので、伝わればいいなと思って書き上げました。
如何だったでしょうか?
兎にも角にも、少しでも愉しんでいただけたら幸いです。

それでは、またどこかで会えることを祈りつつ。

千秋志庵 拝