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真実の追究
携帯電話が短い音楽を奏で、メールの到着を告げたことを知った。
新着メールあり
小窓から表示される言葉に気付いて、メールを開く。
ひどく簡略な文章で一言二言述べられた文章は、それでも用件だけはしっかりと伝えようと足掻いていた。
……多分、伝わった。伝わったと思いたい。
確信の持てぬメールは一方的に意思を届けられ、不安気にその心に深い色を落としていた。
多分、気付かないような姿でにゅっと現れ、彼は微笑んで言った。聞き取れなくてもう一度とせがんだら、愉しそうに口ずさんだ。
「どうも、“奇術師”です」
制服姿の“奇術師”に一瞬誰かと思って思考は止まり、こずえは大声を出して指差した。
「“奇術師”!?」
知らない顔ではない。それが服装一つでここまで他人に見えるとは、全く思いもしなかった。壁から体を起こし、いつの間にか壁に背を預けている“奇術師”の前に立った。身長が負けているので見上げた形になるが、気にせずに言った。
「何してるの?」
「高校生」
ひどく簡潔な答えに、こずえは納得しかけ、急いで首を振った。
「ここで何をしてるのか、って目的の話」
“奇術師”は数日前に見たものと同じ笑みで一言、
「高校生活を送っています。君達と同じく。一応、高校生ですから」
そだったね、とこずえは妙に納得し、当初の位置に戻った。
今何してるの、とか、専攻は何、とか、部活は入ってる、とか。
適当な質問が二人の間でなされ、然程会話に広がりを持たれることなく終了した。
「ここは“創られた世界”なんだね」
こずえの言葉に、“奇術師”は眉をひそめた。ええ、と答えを返す。
「でも、此処で“奇術師”と話しているのは事実……でいいんだよね?」
「事実は真実とは異なりますから」
「……うーん、難しいや」
「ですね」
時に行われる思考遊戯に踊らされ、言葉を交わす。それすらも愉しむように、会話は進む。
子供染みていても、大人気ないと言われても。
止める権利は誰にもない。
手を振って、“奇術師”と別れた。
また会うだろうな、と何の気なしに思って空を見上げる。
会いたいな、と思って眼を伏せた。
太陽の光を瞼越しに感じた。
とても、暖かかった。
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■ 登場人物 ■
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【整理番号 / PC名 / 性別】
【3206/神崎こずえ/女性】
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■ ライター通信 ■
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御久し振りです、千秋志庵と申します。
依頼、有難う御座います。
幻想的な感じの終わりが好きです。
幻想、というよりは、夢のような感じのような気がするような気がします。
もしかしたらこずえと“奇術師”は夢の中で出会ったかもしれません。
そんな感じが好きなので、伝わればいいなと思って書き上げました。
如何だったでしょうか?
兎にも角にも、少しでも愉しんでいただけたら幸いです。
それでは、またどこかで会えることを祈りつつ。
千秋志庵 拝
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