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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


球体関節人形の想い出

【T】

 晩夏。風は冷たく、夏の夜とは違った静寂が辺りを包んでいる。靴音だけがやけに大きく響いて、よりいっそう静寂を引き立てるようだった。夜闇のなかにまっすぐと伸びる道に等間隔で街灯が輝き、時々明滅するそれが闇と光を交差させる。城ヶ崎由代は特に目的もなく、茫洋とした気持ちのまま散歩のつもりで夜の道、アスファルトの上を歩いていた。
 特別広いわけでもない道を通る車はなく、すれ違う人もいない。ただ独り歩いているという感覚だけがリアルになるその道で、ふと目の前に夜闇を裂くように光を漏らす店があることに気付いた。こんな時間に営業しているのかと時計を確認しながら店の前で足を止めると、無防備なドアが営業中であることを伝えている。僅かな躊躇いを感じながらもドアノブを掌で包むとしんと冷えた無機質さに妙な好奇心を刺激される。見上げた看板には「アンティークショップ・レン」という文字。聞いたこともない店名だったが、こうして今目の前に立っているのも何かの縁だろうと思いドアを押し開けると少し場違いな雰囲気を漂わせて涼やかにドアベルが鳴った。
「いらっしゃい」
 多くの品々に埋もれるようにして設えられたカウンターの向こうから女主人の碧摩蓮が気のない声をかける。落とされた視線は自分の仕事に集中しているのかあげられることはない。商いをする気などさらさらなにのではないかと思わせる様子に、店主と言葉を交わすことを諦めて視線を巡らせると鄙びた雰囲気が板についた品々があるべき場所に収まっているのだとでもいうように棚やショーケースのなかにしっくりと馴染んで並んでいた。一見無秩序に並べられているようにさえ思える雑然とした店内ではあったが、それぞれの品々を順に視線で追いかけていくとある一定の法則によってしっくりと馴染んでいることがわかる。
 不思議な店だと思った。
 こんな時間に営業していることが一番の不思議でもあったが、それ以上に店内を満たす雰囲気がどこか別の世界の一端であるかのように思えて踵を返すことができない。触れれば崩れてしまいそうな品々の間を静かに歩く。どれも新品の持つ真新しさのようなものとはかけ離れているものばかりであったが、懐かしさを呼び起こすような鄙びた気配をまとって静かにそこに収まっている。商いをする気はなくとも、大切にされている品々なのだろうと思って硝子のショーケースから顔を上げると城ヶ崎の視線を待っていたかのような人形と目があった。
 少し伏せ目がちに、どこか淋しげな雰囲気をまとったビスクの面。白磁に映える栗色の髪と決していやらしくない紅色の唇。長い睫毛に縁取られた透き通る南国の海のような青色の眸が印象的だったが、惜しいことに片方の眼孔は空白に支配されていた。古めかしいという言葉とは違う。時間というものの支配を逃れたような美しさをまとったそれは、わけもなく城ヶ崎の心を惹き付ける。
 明るすぎない店内の照明が余計にそう見せるのかもしれなかったが、どこか淋しげだと思った。伏せた目や長い睫毛が色濃く影を刻むからだけではないだろう。白く抜けるような肌の色や長く胸元に流れる栗色の髪の一本一本にまで淋しさが染み付いてしまったとでもいうように、何か訴えかけられるような淋しさを感じる。
 城ヶ崎は静かな足取りで人形の前に立ち、腿の上で両手を組み合わせて姿勢良く椅子に腰掛けたままの人形の顔を覗き込む。
『眸を探して……』
 不意に声が響いた。空気の振動ではない、脳髄をそっと撫ぜるような柔らかな声だ。
『総てを忘れてしまう前に、眸を探して下さい』
 伏せられたままの目がまっすぐに自分を見ているような錯覚に陥る。そんなことがあるわけもないのに、つい確かめるように深く人形の眸の奥を覗き込んでしまう。青色の眸が涙に潤んでいるような気がした。
「聞こえるのかい?」
 いつの間にカウンターを出て傍に来ていたのか、城ヶ崎の傍らに立って蓮が云う。勝気な声ではあったが威圧的な雰囲気はなく、城ヶ崎は自然と言葉を漏らしていた。
「この人形は一体なんなのでしょうか?」
 印象的なバリトンに蓮はさらりと答える。
「見ての通り不良品の人形さ」
「自動人形といったような類ではないと?」
 城ヶ崎の言葉を一蹴するかのように蓮は鮮やかに笑う。
「そんな高価なものじゃないさ。未練がましく想い出を追いかけるだけの人形だよ。聞こえただろ?」
「えぇ……。眸を探してほしいと」
「あんたにそれができるかい?」
 挑むように問われて城ヶ崎は言葉につまる。視線を人形に向けると淋しげなまま沈黙に沈む、相変わらず目を伏せたままだ。
「できないならできないでいいさ。こいつはずっと待ち続けるだろうからね」
「待ち続けるとはどういうことですか?」
「探してやるって約束したのさ。ただ眸じゃなくて、探してくれる人間をだけどね」
 蓮のぶっきらぼうなやさしさもこもらない言葉を聞きながら人形を眺めていると、ふと放っておけないような気持ちが生まれる。まるで人間に対するような気持ちは急激に色彩を鮮やかにし、このままにしておいてはいけないような不思議な感情を決定的なものにする。
「わかりました。お引き受けしましょう」
 大きく息を吸い込んで城ヶ崎は答える。
 蓮は何も云わなかった。


【U】


 博物館といえども平日の館内はしんとしている。静寂が保たれる場であるせいか、過去と現在が交錯する奇妙な静寂が鼓膜を刺激する。
 あの夜、アンティークショップ・レンの店主から聞いた情報を元に、城ヶ崎がまずしたことは同作家の人形が展示されている博物館を探すことだった。同じ作家の作品を見れば共通の何かによって手がかりが掴めるかもしれないと思ったからだ。
 しかしそれは徒労に終わりそうだった。
 人形作家の人形は数えるほどしかなく、展示されている博物館も人形を専門に扱う小さな博物館を含めても片手で足りるほどしかない。
 今、城ヶ崎が訪れている博物館はひっそりとした路地の奥に佇む人形を専門に扱う博物館でリストアップしたものの最後の一館である。呼び鈴を鳴らして料金を支払い、ぽつりぽつりと人形が並ぶ展示室を歩く。目的の作家の人形はメインの展示物のようで最後の展示室に展示してあることは薄いパンフレットの解説によってわかっていた。
 特別な思いもなく人形を眺めて歩いてきたが、最後の一館に辿り着く頃には城ヶ崎の人形に対する考えは変わっていた。人形だからといって何もないわけではないのだということに気付く。グラスアイも作り物の肌も、髪の一筋にさえも感情がある。それは喜びであったり快楽であったり、幸福であったり絶望であったりする。こめられた思いが人と同じ形をしているせいではっきりと伝わってくるのかもしれなかったが、恐怖にも似た不思議な気持ちを抱かせた。言葉を発するのではないか、不意に笑い出すのではないかと思わせるリアルの人形たちはひっそりと感情に包まれた硝子ケースのなかに収まって何かを訴えかけている。不思議な芸術だった。人の奢りの集合であるのかもしれないと思わせるほどに鮮やかな感情が渦巻いている。
 ゆっくりといくつかの展示室を抜け、目的の場所に辿り着くと城ヶ崎の目に真っ先に飛び込んできたのは一人の硝子ケースの前に設えられた椅子に腰を下ろす生身の女性だった。女性と呼ぶにはどこか幼い雰囲気と癇症な気配を感じさせる。肩の辺りで切り揃えられた黒髪と喪に服すかのような漆黒の装い。彼女自身さえも人形ではないのだろうかと思わせるほどに精彩が感じられない。細い頤は僅かに上を向いて、硝子ケースのなかでひっそりと眠る少女人形を見つめたまま微動だにしない。寝椅子にもたれるようにして眠る少女人形が目覚めることはないだろう。閉ざされた目蓋と流れ落ちる黒髪は永遠の眠りを約束されたかのように柔らかな雰囲気に満たされている。
 その人形と女性を交互に眺めて、城ヶ崎はふとあることに気がついた。
 似ている。
 人形が女性に似ているのか、女性が人形に似ているのかは判然としなかったが一人と一体は確かに似ていた。
 それに気付いた城ヶ崎の行動は早かった。なるべく足音を響かせないように女性に近づき、驚かせないよう細心の注意を払って声をかける。女性は驚いた様子も見せずゆっくりと城ヶ崎のほうへと顔を向けた。笑いもしなければ迷惑そうでもない。感情の一欠けらもない能面のような顔と向き合って、人形よりも生身の人間のほうがこんにも空っぽなのかという事実に驚いた。
「何か御用でしょうか?」
 女性は今にも掻き消えてしまいそうな細い声で問う。
「突然申し訳ありません。この人形の作者と関係のある方ではありませんか?」
 城ヶ崎の問いに女性ははっと我に返ったように目を見開くと、逃げるように立ち上がる。反射的に城ヶ崎が手首を掴むと、思いきり振り払われた。空を彷徨う自分の手に呆然としながあら、去っていく女性の姿を追いかけると展示室の出口に佇む人影が目に入った。制服姿の少女だ。女性と同じ黒髪を一つにまとめて、走りこんできた女性を抱きとめたまま城ヶ崎を見ている。
 そして抱きついた女性をなだめるようにしてゆっくりと城ヶ崎に近づき、すぐ目の前に立つと勝気な双眸でまっすぐに見つめ、凛とした声で云った。「もうそっとしておいて頂けませんか?私たち家族の事情はあの頃騒がれたことだけです。他に何もありません。私たちが父を殺した。それで十分じゃありませんか」
 少女の言葉に城ヶ崎は言葉を失う。小さく頭を下げた少女はすっかり怯えきった女性を伴って展示室を出て行く。
 その姿が視界から消えるのを合図に、城ヶ崎は駆け出した。
 今ここで逃してはいけないと思った。触れたばかりの微かな発端を離してしまったら、もう二度と触れることはかなわない予感がした。展示室を抜け、出口付近で二人に追いつくと少女の肩を掴んでいた。明らかに迷惑そうな、そして嫌悪感に満ち満ちた顔で少女が振り返る。少女に肩を抱かれた女性はすっかり怯えきっていた。
「僕は君が思っているような業界の人間じゃない」
 少女は訝るように目を細める。
「人形の眸を探しているだけで、私利私欲のために動いているわけではないことをわかってほしい」
 初対面であることよりも今ここで手を離してはいけないという気持ちが先行して、礼儀などという言葉はすっかり抜け落ちてしまっていた。
「人形の眸?」
「片方の眸がない人形の眸を探している。君のお父さんの人形だ。それだけで君たちの何かを暴こうとしているわけではないんだ」
 城ヶ崎の切迫した様子に少女は暫し逡巡するような気配を見せたが、一つ溜息をついて、どうしたいの?と問うた。
「仕事場を見せてもらいたい」
「ついてきて。でも、母には何も訊かないで。父を失ってから不安定なのよ」
 云って少女は城ヶ崎に背を向けて歩き出した。


【V】


 少女の家は博物館のすぐ傍にあった。少女は多くは語らず、城ヶ崎を仕事場に案内すると勝手にすればいいと云い遺して監視するでもなく母親の元に戻っていってしまった。
 仕事場は本当にここで製作が行われていたのか疑問に思うほどに整えられていた。作業台の上には置き忘れられたような道具箱が置かれ、ドリルや筆が展示されているかのようにきちんと片付けられている。一つ一つを丁寧に確かめ、ここで作業に没頭していたであろう人形作家の残した何かを探そうとしたが出てきたものは何もなかった。
 途方に暮れた。
 作業台の傍に置かれた一脚の椅子に腰を下ろして、辺りを見回しても何もない。
 もう見つからないのではないかと思ったその時、作業場のドアが開いた。
「どうしてそんなに必死になっているの?」
 少女が問う。
「わからない。……でも、探し出さなければならない気がするんだ。それだけだよ」
 少女の砕けた言葉のせいかいつの間にか城ヶ崎の言葉も砕けたものになっていた。
「父の人形を見た人はみんなそう云うわ。探し出さなければならないものがあるような気がする。まるで口癖みたいにそう云うの。あなたが探しているのは片目の人形の眸でしょ?」
 城ヶ崎が図星をつかれて言葉を失うと、有名な話よ、となんでもないことのように少女が云った。
「父の最期の作品なの。今はもうどこにあるともわからないわ。熱狂的なファンの間では眸を探すことが伝説みたいになってる。でもそれでどうなるの?見つかったからって父が戻ってくるわけでもないし、私たちが被った迷惑がなかったことになるわけじゃないわ」
 少女はまっすぐに城ヶ崎を見て、視線をそらすようなことはしなかった。
「天才人形作家とその作家を殺した家族。それが私たちに貼られたレッテルよ。でも他人になんて理解できない。私たちがどんな生活をして、どんな気持ちでいたかなんて。人形しか見ていない父が家の中でどんなに私たちを無視していたかなんて理解できるわけがないわ。確かに父の作品は美しいし、人形として完璧なものを持っているのはわかる。でも父は芸術家であったと同時に私たちの家族でもあったのよ。母のしたことが悪いなんて誰が云えるの?」
「……君のお母さんが人形の眸を奪ったというのかい?」
「そうよ。もう限界だったんだもの。母には父しかいなかったの。だからその父に見捨てられたらどうしようもなかったのよ。母も私も人形に嫉妬してた。でもそれは自然なことだと思う。家族なのに人間よりも人形を選んだ父に少しでも振り向いてもらいたかっただけ。母だってこんなことになるとは思わなかっただろうし、こんなことになってしまったから余計にどうしようもなくなってしまったのよ」
 少女の言葉に城ヶ崎はこの親子をあの店に連れて行くべきなのではないかと思った。その目で確かな現実を受け止めてもらわなければ、少女も母親もずっと過去に囚われたままなのではないかと思ったのだ。
「人形の眸は……?」
「母が持ってるわ」
「譲ってほしいとは云わない。けれどそれを持ってお母さんと共に僕と一緒にある場所に来てもらえないだろうか?」
「どうして?」
「多分、答えが出ると思うんだ」
 少女は城ヶ崎の言葉に目を伏せた。長すぎる沈黙の果て、不意に少女の背後から声が響いた。
「どこにあるの?」
 母親だった。
 ずっと少女との会話を聞いていたのか、蒼白の顔をして不安げに脆そうな双眸で城ヶ崎を見ている。
「なくなってしまった人形はどこにあるの?」
「なくなった?」
 母親の言葉に疑問を覚えて城ヶ崎が訊ねると、母親を気遣うようにしながら少女が、盗まれたの、と呟いた。
「どこにいったのかもわからないわ」
「僕はどこにあるか知っている」
「連れてって。お願いだから」
 母親が叫ぶように云った。
 城ヶ崎はゆっくりと母親に向かって頷くと、少女にこれから出かけられるか否かを問うた。


【W】


 親子を伴いアンティークショップ・レンのドアを潜る頃には、既に陽は傾き橙の光が辺りを染めていた。一日で大きな進展があったと思う反面、本当にこの親子と人形を引き合わせていいものかどうかという不安もないわけではない。それでも母親の真剣な姿に押されるようにして城ヶ崎は二人を伴ってアンティークショップ・レンのドアを潜っていた。
「いらっしゃい」
 相変わらずやる気のない蓮の声が奥から響く。そして城ヶ崎の姿を見止めると、見つかったのかい?と軽い口調で訊ねてきた。
「えぇ」
 どこか不安の気配が香る城ヶ崎の答えに蓮は、勝手におやり、と云いカウンターの上に広げていたファイルに視線を戻した。人形の行く末になどまるで興味がないのかもしれないと思わせるような態度だ。
「どこにあるのよ」
 少女が苛立たしげに問うので、城ヶ崎はすっと人形が置かれたほうへ視線を向けると、誰よりも早くその人形に駆け寄ったのは母親だった。その手には小さな宝石箱がある。白い細い指が愛おしむように人形の頬を撫ぜるとそれまでの幼い脆い雰囲気など微塵もない顔で振り返り、場所を貸してほしいと云った。
「眸を嵌めこむのよ。母も人形を作っていたのからできるわ。私には作れないけど」
 少女が呟く。
「二人は人形教室で知り合ったのよ」
 その言葉に少女もまた父親に母親が奪われることを怯えていたのかもしれないと思った。共通の愛するものを持つ二人に疎外感を覚えていたが故に脆くなった母親にこんなにも尽くすのかもしれないと思ったのだ。
 けれどそれを敢えて言葉にすることはなかった。作業を進める母親を見つめる少女の目があまりに哀しげだったからだ。それとは対照的に母親は人形に向かい、滞りなく作業を進めていく。どれだけ少女と二人、肩を並べてそんな母親の姿を眺めていただろう。
 母親が満足げに笑って振り返る。
 人形は二つ揃った青色の眸が懐かしさを呼ぶように長い睫毛の下にある。
『ありがとう……』
 不意に声が響いた。
 溢れるヴィジョンは遠く懐かしい風景のように暖かく、些細な慈しみに満ちたものだ。
 そっと抱きしめられるように想い出に呑まれる気がした。
 他人が見ればなんの変哲もない日常の風景。
 季節は巡り、繰り返される一日一日のなかに満ちた幸福。
 ご苦労様と微笑む母親の姿と人形制作に打ち込む父親にじゃれ付く幼い少女。
 人形の面に色を入れる父親の膝の上には少女がいて、何事かを囁きあっては笑いあう。
 緩やかに流れ去る、けれど愛おしい日常の風景に想い出の意味を知った気がした。
 言葉はない。
 ただ温かなヴィジョンが溢れるように店内を満たす。
 二度と戻ることのできない風景。
 きっと今までの所有者はこれを肌で感じていたのかもしれない。
 人は誰しも懐かしさと共に、過去と共に生きている。
 失うことを約束されてしまっているからこそ大切だと思うもの。
 できる限り記憶の中に留めておきたいと思うもの。
 それが果敢なくも美しい想い出というものなのかもしれない。
 人は弱いと思った。
 けれど同時に強い生き物だとも。
「君は独りじゃないよ」
 傍らに立ち尽くす少女に呟き、城ヶ崎は踵を返して店を出た。
 いつまでもここにいてはいけないような気がした。触れることができるのは母親と少女だけで、もう他人には侵犯されることのない想い出を誰よりもすぐ傍に感じることを許されているのもまた母親と少女だけなのだと。
 人は不器用に想い出を紡ぎ続けるのだろう。
 いつか遺していくことになる人々のために、夥しいほどのささやかな日常のなかから哀しいものを丁寧に取り除いて、暖かく幸福な日々だけを想い出として遺していくのだ。
 それはどこか哀しく、切なげで城ヶ崎は親子の遅れてきた幸福の日常に僅かな哀しさを感じた。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【2839/城ヶ崎由代/男性/42/魔術師】


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■         ライター通信          ■
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初めまして。沓澤佳純と申します。
少しでもこの作品がお気に召して頂ければ幸いです。
この度のご参加、本当にありがとうございました。
また機会がありましたら、どうぞよろしくお願い致します。