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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


科学部の危険な喫茶店

「お疲れ様でしたーー」
 喫茶店エディションの中に数人の声がこだまする。
 皆で顔を見合わせてちりぢりになって帰っていく中、巳杜靜だけ、そこに残っていた。
「後片付けなんて皆でやればいいじゃないの……」
 そう、彼女は当番制の後片付けの初日当番だった。
「でも僕と草間と後もう一人くらいで十分なんだよ。他の皆には学園祭の間、交代でやってもらう予定だから」
 にっこりと月神にそう言われてしまうと、靜としてもやりたくない、という訳にもいかない。
「で、どれをやればいいの?」
 箒を持っている草間にそう尋ねると、
「とりあえず食器洗いだな」
 との答え。
 食器というか、科学機器だ。
「普通に洗剤であらっていいの? それだけでいいの?」
「ああ。朝に他の者が綺麗にあらってくれたから、巳杜は普通に洗ってくれればいい」
「ふーん」
 そうして準備室の食器入れに山済みになっている科学機器をみやる。ビーカーはもちろんのこと、かき混ぜ棒、温度計、色々とある。
 実は靜は食器洗いというものをあまりやった事がなかった。元は男なので余計に。
 だが、たかが食器洗い。やって出来ないことはない。
 スポンジに洗剤をつけてあわ立てる。
 それで色んなものを擦ればいいのだ。簡単だ。
 が……洗剤がついたガラスは滑りやすく、ちょっと気を抜くと落としそうになる。細心の注意を払ってコーヒーに使ったビーカーを洗っていく。
 ビーカーを全部洗い終わってほっとした反動か、靜は、次に洗ったものを盛大に床に落としてしまった。
 ガシャン、と耳に痛い音が聞こえる。
「あちゃ〜〜」
 思わず声が出てしまう。
 失敗を謝ろうとして振り向くと、月神が大きな声で叫んだ。
「大丈夫だった? 怪我してない? 指とか切らなかった?」
「あ……大丈夫。全然平気。それより食器割っちゃってごめん……」
「そんなのはいいよ。どうせ学校が買ってくれるものなんだし」
 月神がそう言うと、科学室を掃除していた草間が音に驚いてやってきた。
「どうした?」
 靜は頭に手をあてて苦笑する。
「食器割っちゃった。ごめん☆」
「ああ……本当だな」
 草間は床に散らばったガラスの破片を見ると、持っていた箒とちりとりでそれを掃除し始めた。
「ごめんね」
「かまわん。続けてくれ」
 口数すくなく掃除を済ませた草間はそのまままた科学室の方へと向かう。
 月神が遠慮がちに靜に声をかけた。
「ねえ、僕と交代しようか。僕、机拭いてるだけだから」
 それに靜は笑顔で答えた。
「大丈夫☆ やって損な事はないし。今日だけだしね」
 そう言ってまた食器を洗い始めたのだが、二度目の食器破壊の為、月神と交代する事になったのだった。
             ☆END☆




登場人物               
【整理番号 / PC名 / 性別 / クラス】
2283/巳杜 靜   /男性だが、夢の学園では女性/中学二年生


ライター通信   
 お約束のお皿を割ってもらいました。
 普通時男性なら、あまり食器洗いをやった事がないのではないのかと思いまして。
 アルバイトとかでなら経験はありそうですね。
 今回発注有難うございました。
 有月 加千利 拝