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真実の追究
携帯電話が短い音楽を奏で、メールの到着を告げたことを知った。
新着メールあり
小窓から表示される言葉に気付いて、メールを開く。
ひどく簡略な文章で一言二言述べられた文章は、それでも用件だけはしっかりと伝えようと足掻いていた。
……多分、伝わった。伝わったと思いたい。
確信の持てぬメールは一方的に意思を届けられ、不安気にその心に深い色を落としていた。
琉人と"奇術師"。
似たような一組を眼前に置き、そして彼らがのほほんとお茶について議論しているのを見ながら、"盾"は自身の湯飲みに口を付けた。味はまあまあ。否、殆どそのようなものを飲む機会がないだけで、味が良く分かっていないだけかもしれない。
琉人のお茶の勧めに従って、"盾"は新たに一杯飲むことにした。
琉人の突然の呼び出し。しかも"奇術師"と"盾"のコンビで呼んだくらいだから、それはあまり喜ばしいものではないかもしれない。そう思って軽くぴりぴりしたムードの中、待ち合わせ場所で出会うなり彼は一言言った。
「お茶、しませんか?」
もとより、不意打ちを狙われても負ける気はしないし、毒を盛られても判別するくらいの知識はある。とは言え、そんな危惧を抱いているのは当の"盾"一人だけで、"奇術師"は全く気にも介していないようであった。杞憂なら、それに越したことはない。
「で、何の用ですか?」
遅い遅い本題への突破口を開いたのは、"奇術師"からだった。他に出された甘いものと一緒に渋すぎる緑茶を飲み食いし、一通り胃に収めた後の発言であった。
「一応これでも忙しい身ですし、手早くちゃちゃっとすませてくださいね」
……嘘だ。今日も今日とて、我に新しい遊戯の相談をしていたくせに。"盾"は喉の奥で声を潜めて笑い、熱いお茶を一口飲んだ。
「あ、そうそう。言ってませんでしたね」
琉人がやはりお茶を手に微笑む。
「お茶会です」
「なるほど、お茶会ですか」
「そうです、お茶会です」
「てっきり果し合いかと思ったじゃないですか」
「そんな、戦闘能力のない私達がやったら、変なのになるでしょ」
「それもそうですよね」
「でしょ? "盾"さんを使えば別ですけど、"緑茶同盟"の一員たる彼女に、攻撃は出来ませんしね」
「……"緑茶同盟"だと? 我は紅茶の方が好きだ」
……。言って、ぴたりと声が止む。空気が変わり、異質なものへと変容するのが感じ取れた。"盾"は眉を顰めて顔を上げ、珍しく表情を奇妙なものにさせた。
「……そんな顔しても無駄だ。我は紅茶派だ」
……時折思うことがある。どうして人間はこうもぐるぐると表情を変え、意見を人にまで貫かせようとするのだろうか、と。我は我だ。緑茶も好きだが、あの渋さは苦手だ。
「"盾"の味覚は子供だからね」
"奇術師"の発言に、"盾"の口端がひくひくと引きつる。何か言おうとして口を開きかけ、不服そうに片肘をテーブルに付けて頬杖付ける格好になった。
「……敵わないな」
元からこういう人物に勝てるようになっていないのだとしたら、大人しくしといた方が身のためだと。思って再び、"盾"は一気に緑茶を飲み干した。
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■ 登場人物 ■
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【整理番号 / PC名 / 性別】
【2209/冠城琉人/男性】
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■ ライター通信 ■
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初めまして、千秋志庵と申します。
依頼、有難う御座います。
こちらは本編と打って変わった味付けになってますが、如何でしたでしょうか?
琉人と“奇術師”の雰囲気が似ていて、どうしても日常的な一コマを書きたくて創ったのが、一番最後の話になっています。
この二人のやり取り(+“盾”)は私自身書いていて愉しいもので、どこか別の場でも共演させたく感じてしまいました。
また何かの機会がありましたら、彼ら二人の“遊戯”に付き合ってやってください。
兎にも角にも、少しでも愉しんでいただけたら幸いです。
それでは、またどこかで会えることを祈りつつ。
千秋志庵 拝
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