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<幻影学園奇譚・ダブルノベル>


PRESENCE ―存在―
●演劇に関する2つの模様【10B】
 『大声コンテスト』がある意味面白いことになっていた頃、体育館の中から雄一郎が大泣きしながらハンカチを握り締めて出てきた。
「ううっ……うおおっ……うああ……」
 未だ涙おさまらぬ雄一郎。さっきまで行われていた、演劇部による演劇の内容にやられてしまったのである。まあ、雄一郎が涙もろいせいもあるのだが。
「パ●ラッシュが……パトラッ●ュがぁ……ううう……」
 あ、これだけで何の劇をやったか分かったような気がする。そりゃ泣いて当然だ。
「うわー……号泣してるー……」
 入れ替わりに体育館へ入ろうとしていた圭織は、泣いている雄一郎の姿を目の当たりにして、ほんの少し後ずさっていた。
 いやまあ実際問題、学ラン姿のがっしりした男子生徒が大泣きしていると、圭織でなくとも多少近付き難い訳で……。
「ま、いいわ。それより、ヒーローショー、ヒーローショーっと♪」
 とことこと体育館の中へ向かう圭織。これから『ヒーローアクションショー』が行われるのだ。体育館で僕と握手、である。
 ちなみにこの『ヒーローアクションショー』、飛び入り可ということだったのだが。後に伝え聞く所によると、ジャージ上着に黒スパッツ姿の女子生徒がステージ下から飛び入りしてきたとのことである。
 え、内容? それについては何故か皆、一様に口を閉ざすのだが……いったい何があったのだろう。

●ラグビー部に挑戦してみました【12】
「うふふっ、賞品もらっちゃった〜☆」
 白い紙でラッピングされた小箱を手に、ほくほく顔の圭織。場所は校庭、圭織はラグビー部主催の『ラグビー部に挑戦!』という出し物の1つに参加してきた直後であった。
 参加したのはキャッチングゲーム。これで好成績を上げて、賞品を手に入れたのである。
「ん?」
 と、圭織が校庭から立ち去ろうとした時、少し離れた所でシュラインが仰向けに倒れている所を見付けた。
「シュラインさん、本当に大丈夫ですか?」
 裾の部分を結んだラグビーシャツを着ていた深雪が、心配そうにシュラインの顔を覗き込んでいた。手にはしっかり、魔法のやかんを握り締めている。
「はふぅ……ごめん……もうちょっとこのまま……」
 力尽きた様子のシュライン。きっと起き上がる気力も今はないのだろう。
「あー……タッチフットって運動量激しいんだ」
 ぼそっとつぶやく圭織。確かにそういう面はあるのだが、シュラインの場合はちと事情が違うかもしれない。
「……あうぅ……」
 お腹に手をあてるシュライン。未だに腹痛は治っていないようである……。

●優雅に行こう!(本当です)【16C】
「優雅だわ……」
 ほう……と息を吐く圭織。その表情はとても満足げである。
 場所は図書室、そう『本格英国喫茶店』の場だ。普段は本を読むだけのテーブルには、上品なチェックのテーブルクロスがかけられている。また、花やら大理石のチェス盤といった物を飾り付け、英国らしさを醸し出そうとしていた。
(書物を手に、香り麗しい紅茶を楽しみながら、美味しいスコーンを食する……何て英国気分なのかしら)
 『本格英国喫茶店』の名は伊達でなく、何と手作りのスコーンまで用意していたのだ。紅茶にスコーン、これぞ英国である。
 とっぷりと英国気分を味わっている圭織が手にしている書物は、近頃映画3部作が完結した本格中世ファンタジーの原作本。分厚いが、この雰囲気には非常にぴったりである。
「……今日はずっとここに居ていいかも」
 そうつぶやき、こく……っと紅茶を口にする圭織。事実圭織は、夕方近くまでここに居座ったのである。
「でもこの本、なかなか読み進まないわね……」
 いやまあ、非常に長くて分厚いから、その本。

【PRESENCE ―存在―・個別ノベル 了】


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■   登場人物                  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                 / 性別 / クラス / 石の数 】
【 2313 / 来城・圭織(らいじょう・かおり)
                  / 女 / 3−B / ☆00 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談・幻影学園奇譚ダブルノベル』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全31場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・OMCイラストのPC学生証やPC学生全身図などをイメージの参考とさせていただいています。
・『幻影学園奇譚』の本文において、高原は意図的に表現をおかしくしている場合があります。
・大変お待たせし、申し訳ありませんでした。ここにようやく、学園祭5日間の模様をお届けすることが出来ました。
・今回……といいますか、『幻影学園奇譚』における高原のスタンスは、流れに身を任せつつ『存在』についてをテーマとさせていただきました。ここで言う『存在』は詠子だけに限りません。全員の存在です。高原自身も執筆しながら、『存在』について色々と考えさせていただきました。
・余裕があればもう少し色々と依頼なども出していたかと思いますが、残念ながら時間切れ。『石』についても中途半端で終わってしまったのは非常に残念に思います。ですが、高原の『幻影学園奇譚』はこれで終了です。この約半月後、エピローグに繋がってゆく訳です。
・なお今回のタイトルの元ネタは、今年デビュー20周年を迎えた某3人組ユニットの曲名となります。今回の執筆もその曲を聞きながら行いました。
・来城圭織さん、ご参加ありがとうございます。初めましてですね。色々と出し物を回られていましたね。情報は入って……きたのかどうかは分かりませんけれど。今回の学園祭、楽しんでいただけたのであれば幸いです。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、またお会いできることを願って。