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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ヒッピーを捕まえろ type A


------<オープニング>--------------------------------------


「あーあ」
 ひっくり返った陣の顔を上から覗き込み、彼はその、可愛らしい顔に笑みを浮かべた。それは、言葉さえ発さなければ天使と謳われても否定できない、本当に可愛らしい微笑みだった。
 しかし、陣はその本性を知っている。
 彼はその笑顔のまま、何処の物とも分からない汚い泥のついた靴を陣の腹に乗せた。
 無造作に伸ばした、毛糸のようなドレッドヘアを垂らし、そして言う。
「ねえ。僕に勝てると思ってンの?」
 顔だけは、天使のままで。

×

「つまりさ。そいつを捕まえて欲しいわけよ」
「校内に侵入したホームレスを、だな」
「そっ」
 短く答え、高井陣が体を乗り出す。
「もう、何つーか。ありえねえくらいズル賢くてさ。しかも、何? 早いわけ」
 大きな身振り手振りを加えながら陣はそう説明する。
 草間興信所の所長である草間武彦は、調査依頼書にボールペンを走らせながらもそんな陣の姿を時折見上げ、これで本当に生徒会長なのかと胸の中で呟いた。
 T市にある海星学園高等学校は、武彦でも名前くらいは聞いたことがある有数のお坊ちゃま学校である。通っているのは金も名誉も手に入れて、後は老後を楽しむばかりという親を持つ少年達ばかりだ。
 俺の時代とは、お坊ちゃまの定義が違うのか。
 武彦はジェネレーションギャップを感じずにはいられない。
 ソファに浅く腰掛け股を大きく開いて座り、腰までずらしているのであろうズボンが、股座でたるんでいる。これでは以前、うちに居た馬鹿バイトと余り変わらない。それでも海星学園の生徒会長なのだ。
「で。さ。やってくれるんっしょ? ここってほら。何でも屋っていうか」
「興信所だが」
「違ィわね〜」声を荒げて陣がまたソファの踏ん反り帰る。「大差ないっしょ」
「大差は、ある」
 武彦は溜め息でもつきたい気持ちで答えた。
「ま、どっちでもいっけどさ。金ならいくらでも払うから、捕まえてよ。ホームレス。うちの理事も困ってるし、とにかく学校中、アイツには迷惑してんのよ。いつからか学校内で住み出しやがってよ。俺ら。ホンット追い出す為にいろいろやったんだわ。でも俺らの力じゃどーにもアイツを捕まえることはできねえの。追いかけても逃げるの早いし。学校に鍵かけておいてもいつの間にかまた侵入してるしさ。頭使って金使ってもヒョヒョイのヒョイよ。なんでうちの学校なんだっつの。意味わかんねえ。生徒会としてもマジで困ってっし。アホな大人、ああ、まあ。教師らだけど。あいつらはまあはなっから期待してないとしてもさ。俺らですら捕まえらんねって、これほんとどうよって思うわけ。だからさ。捕まえて、追い出して欲しいンだよね」
「なるほどね」
 素っ気無く答え、依頼調査書にまたペンを走らせる。
 そこで陣がポンと手を打った。
「あ! でもお」
「なんだ」
「もし本当にアンタらが捕まえられたらさ。始末する前に、俺にとりあえず見せて欲しいんだよね」
 始末という単語を突っ込むべきか、見せてくれという意味を突っ込むべきか考える。ペンの尻で頭をかいた。
「とにかく……俺達は捕まえるまでは依頼として請け負う。その後の処分については。そうだな。お前に引き渡す。それでいいんじゃないのか」
「あーうん。まあ。それでもイイけど? でもホンット手ごわいんで、相当頑張ってね。いろいろちゃんと作戦とか練ってさ」
 意味の通じない激励をし、陣がポケットに手を突っ込んだ。煙草を取り出す。
「ごめ。火、ある?」
 こんな若造に、言われる言葉じゃない。
 武彦は、やれやれと眉を寄せた。


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 ブラインドの白が赤黄色に染まっている。
 温かいような切ないようなその色は、秋という季節を代弁しているかのようにも見える。ブラインドから差し込むそんな光に照らされ、武彦の白いシャツ、そしてその背中は、何だか少しだけ淋しそうに見えた。
 けれど街中は、喧騒のただなかにある。表通りに建ち並ぶファーストフード店やコンビニエンスストアーから排出された人々は、裏通りに建つ雑居ビルの前にも溢れ通り過ぎている。時折、人々の笑い声や怒鳴り声、車のクラクションが窓の向こうから飛び込んできた。
 武彦はその道行く人々を眺めているのだろうか。
「ねえ」
 三十分ほど前から微動だにしない背中へ向かい、シュライン・エマはとうとう声を上げた。
「んー?」
 武彦本人は振り向かず、声だけが飛んでくる。
 一体何を考えているのだろう。
 シュラインは手に持ったボールペンを柔らかくリズミカルに頬へと突き刺し、赤黄色に染まった白いシャツの背中をじっと眺める。
「調査。さっさと始めましょうよ。後、つかえてるんだし」
「んー」
 これでもかとばかりに気のない返事が返ってきた。
 気持ちは何処か遠くを彷徨い、声にも安定感がない。シュラインは小さく肩を竦めて、目の前に開かれてある調査書を指で弾いた。日が暮れ始め、外が騒がしくなり出した頃、武彦の興味は突然窓の外へ移り戻ってこなくなった。何を考えているのか、何がそんなに気になるのか、今の段階では全く分からない。話の腰を折っておいて、平然としている。武彦は時折、そういう非常識な面をシュラインだけに見せることがある。幼児性の抜けない、少年のままのようなところを自分にだけ、見せるのだ。
 それが嬉しいことなのか鬱陶しいことなのか、今では微妙だ。始めて彼のそんな所を見た日は、いつだったか結婚した友人が旦那のだらしないところを自慢げに話していた時の気持ちを思い知ったような、甘い気持ちに酔ったものだが、何度も見ていると新鮮さも無くなってくる。
 信頼の成せる技だと、嬉しい気持ちを噛み締める時期はもう、終わったのかも知れない。
 だからと言って、そういうところが嫌いなわけじゃない。それが、決してベストではないけれど、ベターな二人が一緒に居る理由なのだろう。
「なあ」
 また空を彷徨うような柔らかい声が飛んでくる。
「なに?」
「俺。もう歳かなあ」
 シュラインは俯き、小さく笑う。
 そういう声も、そういう質問も、可愛らしいなと感じてしまう。だからきっと、離れられないのだ。
 興信所がいくら赤字経営を続けても。
 出世できない男の世話をしているよりも、本業の翻訳やゴーストライターの仕事に力を入れた方が生活面では良いと分かっていても、それでも草間興信所の経理を担当し、調査に首を突っ込んでやり手伝いをしてしまうのは、武彦が自分にとってベターであり、そして武彦にとっても自分がベターであるからだ。
「そんなことを考えてたの」
「まだ若い連中がさ。いきり立っているのを見ると歳を感じたんだ。今日、依頼に来た男といい。今この下を歩いている連中といい。若いパワーみたいなモンが滲み出てる」
「ふうん」
「おいおい」
 武彦がやっとこちらを振り返る。
「貴方だってまだ若いわよ、なんて励ましてくれないのか」
「励ます必要がないからよ」
 シュラインは指先で弄んでいたペンを、くるりと返す。
「思うに……そうね。時代云々の話じゃなくて、たぶん。いろいろな人間が居るということなんじゃないかしら。若いからいきり立っているんじゃなくて、元々いきり立ちたい人間なのよ、きっと。そういう人は大人になってもいきり立ってるわ。パワーだってそう。個人差じゃない。貴方はただ、そうじゃなかった。若くても貴方はきっとジジ臭いわよ。それだけなんじゃない」
「なるほどね」
 苦笑して首をかいた。
「そうかも知れない」
「パワーを羨むのは勝手だけど、とにかく今、目の前にある依頼を片付けること。貴方がやるべきことはとにかくそれだわ」
「女は現実的だな。いや、うちの女将が特別なのか」
「男ってやあねえ」
 調子を合わせていい加減な返事を返してやった。
「とにかく」
 気を取り直すように手を叩き合わせる。椅子に座り、デスクに肘を突いた。少年のような淡い感慨はその表情から消え失せ、草間興信所の所長である武彦の顔つきに戻る。
「今日のところは、協力者を探すことかな」
「そうねえ。うちの居候くんは、ヘソ曲げて出てっちゃったし」
「しかしなあ。こんな馬鹿げた依頼に付き合ってくれる奴、居るかなあ」
 腕を組み武彦が電話を見つめている。
「うーん」
 武彦の呟きと重なるようにして、興信所の薄い扉が雑な音を立てた。はめ込まれたガラスが振動で揺れ誰かが入り口の扉をノックしたのだと告げる。
 スリガラスの向こうに人影を認め、シュラインは立ち上あがりドアを開けた。



 短くなった煙草の吸殻をその場に投げ捨ててしまいそうになり、雪森雛太はポケットから慌てて持ち運び式の灰皿を取り出した。誰にも見られてはいないしちゃんと灰皿に捨てたのだから誰にも咎められることはないのだが、酷く後ろめたい気持ちになった。妙に神経が過敏になっている。昼間、ガキに言われた言葉を思い出した。
 一緒にするな、とまた胸の中で毒づいた。
 舗道の脇にある花壇に腰掛け、流れる人込みをぼんやり眺める。体を通り過ぎていく秋の風は、あくまで透明だ。目的が見つからないまま座っていると、うとうとしてしまいそうになる。
 雛太はポケットに灰皿を仕舞い入れ、変わりに携帯電話を取り出した。暇を潰すために誰かと話でもしようかと考える。そして思った。誰に電話をかけようか。
 しかしそう自分に問うた瞬間に、答えは出ていた。唐突に用もなく電話をかけて、それなりに暇を潰せる人間といえば、そう多くはない。
 メモリを呼び出し暫くすると、「はあい」と間延びした声が聞こえた。
「よー」
 負けず劣らず、雛太も脱力した声を出す。
「俺、雛太。元気してンの?」
「おー」1オクターブ上がった声が耳を突く。「なーん。元気かよォ。久しぶりぶりじゃんすか」
 洋輔の懐かしい声だった。
「うんまあ。こっちはボチボチ?」
「っていうかさ。お前さ。響子さんと連絡取り合ってンだって?」
 唐突に話を振られ、雛太は眉根を寄せる。
「なんでお前が知ってるわけ?」
「だって。京都に住んでるし」
「カンケーないだろー」
「や。まあ。何つーか? 雛太のことは全部把握しておきたい系?」
「もっと意味わからんだろー」
「何にしても。隅に置けない奴だよなあ」
「んーなんじゃないって。何かただ。成り行きっていうか。別に大した話してねえし。今日は店が忙しかったとか云々とか」
「ふうん」
「何、その何か含んだ感じは」
「ま。いっけどさあ。で? オマ、最近どうしてンの? 興信所にまだ居ンの?」
「お前みたいに居場所ころころ変えないんでね」
「うわっは。何それ、感じ悪〜」
「それでさあ。何かさ。今日、依頼入ったンだけどさ。お前をもっと悪化させたみたいな奴、来てンよ」
「意味不明」
 洋輔が小さく笑う。
「もう何つーかさ。口が悪くて? がさつで? 人舐め腐った感じでさあ。おまけにまだ高校生のクセに煙草吸ってんだぜ? 態度デカイし」
「お前だって昔っから煙草吸ってんだろォ?」
「うーわ。クソガキと同じこと言いやがる。あのな。そういう問題じゃなくて。ムカつくのは親のすねかじってンのに態度デカイっていう話なわけ。いいか。煙草っつーのは嗜好品、嗜むモンなの。嗜むっていう言葉には、慎むって意味もあンの。つまり煙草は、慎みを知ってる「大人」が楽しむためのモンなの。わかる?」
「なるほどねえ」
「親の金食って生きてるクセに、態度でかいってどうなわけ? 許されるわけ? ムー。くそう俺もう、ストレスではげるかも知んない!」
「そらそうだ、そらそうだ。でもまあ、そうカリカリすんなって。とりあえずさあ。また一回京都来いよ。酒でも酌み交わしながら語っとこうぜ、友よ。つーか俺もまた草間に顔出すわ。一応昔、世話になってたしな。そろそろ姉御とかも淋しがってンじゃないかって思ってんだけど」
「ないね。心配するな。お前の後釜は俺が立派に努めてやってる」
「あっそう。ふうんだ。まあいいや。とりあえず京都には顔出せよ。響子さんも会いたがってるし」
 にやついた声で言われ、雛太は舌打ちする。
 からかわれたことにも腹が立ったが、それ以上に引っかかることがあった。
 響子は祇園でクラブを経営する女性である。以前、草間興信所の元アルバイトである洋輔にちょっとした手伝いを頼まれたのだが、それで京都へ行ったおりに知り合った。女性特有の柔らかそうな体つきも、嫌味のないデカさの胸も、嫌いではもちろんないが、だからといって付き合いたいなどという感情を抱いているわけではない。お互いにそうだろうと思う。雛太自身、尊敬できない女性は余り好きではないから、その尊敬すべき女性のラインナップに、響子も居ると。それだけだった。
 なのに。
 だいたい響子響子って。
 雛太は胸の中で悪態を付く。
「お前は」
 感情が言葉になって、口からポロリと飛び出していた。しまった、と思い慌てて飲み込む。
「うん?」
「なんでもない」
 受話器の向こうで、微かな引き笑いが聞こえた。
「逢いたいなあ。愛してまっせ。雛太さん」
「は?」
「俺も逢いたい。っていうか、俺が逢いたい。ホント、はね!」
 気恥ずかしいような、嬉しいような、甘酸っぱい感情が胸に広がる。
「気持ち悪ィ。何言っちゃってンの? 俺は全然逢いたくないぜ」
 足元に転がっていた空き缶を蹴った。
「いいよ。俺が逢いたいンだから。来いよ、ぜったいに」
「うるせえ。逢いたいならオメーが来い」
 一気にまくしたて電話を切った。にやついた口元を自分で気持ち悪いと思う。
 それでも。
「しゃーないなあ。ポンコツでいつか行ってやっかあ?」
 大声を上げて背伸びをしたら、道行く人々に振り返られた。



 足元に軽い衝撃が走り、龍ヶ崎常澄は後を振り返った。
 そこに、空き缶が転がっている。どうやらそれが自分の足にぶつかったらしい。
 常澄は小さく息を吐き出すと、しゃがみ込みそれを拾い上げた。何の変哲もないアルミ缶である。一体何処から飛んで来たのだろう。
 缶を手に持ったまま、行き交う人々に視線を馳せた。
「しゃーないなあ。ポンコツでいつか行ってやっかあ?」
 能天気な声が耳を突いたのと、常澄がその男を見つけるのとはほぼ同時だった。
 あいつ。
 小首を傾げる常澄と、自分の大声に対し振り返る人々へ気まずそうな視線を向ける男の視線が、空中でぶつかった。
 あいつ。
 常澄はもう一度胸の中で呟く。
 確か、雪森雛太という男ではなかったか。頭の中で記憶を探る。以前、アトラス編集部の取材調査で出逢った男ではないだろうか。ああ、たぶんそうだ。間違いない。
 缶を握り締めたまま立ち尽くす常澄を見て、男の方も記憶を探り当てたようだった。片手を挙げ「ヨ」と声を出した。通りを行き交う人間の視線を浴びて、気まずかったのかも知れない。小走りに駆け寄ってくる。
「えーっと。龍ヶ崎、だっけ? 久しぶり。元気?」
 気さくに肩を叩かれ、面食らう。
 若干の距離を置き、眉を顰めた。雛太は常澄の手の中にある空き缶に視線を移す。
「あ。何それ、ぶつかっちゃった? わりい。俺が蹴ったンだよね」
「君はいちいち僕に構いたいのか」
「うわっはっは。いきなり感じ悪ッ。冗談、勘弁してよね」
「勘弁して欲しいのはこっちだ。缶なんか蹴るな。迷惑だ」
 自分の手の中にある空き缶を、傍にあった自販機の横のゴミ箱に投げ捨て、常澄は歩き出す。
 何故か雛太もその後をついてきた。
「で? お前、こんな所で何してンの?」
「散歩だ」
「は?」
「散歩だ」
 今度は一言一言、区切るように言ってやる。雛太は小さく肩を竦めた。
「散歩ォ? ジジくせえ。何で?」
「補修工事中だからだ」
「補修工事? 何が?」
「僕の自宅。悪魔の館だよ」
「ふうん」
 いい加減な返事から、興味がないのだと検討がついた。だったら聞くなと言いたくなった。
 意味のない会話を交わすのは好きじゃない。
 二人の間の沈黙を冷たい風が押し流していく。常澄は目的もなく誰かと歩いていることに、またらない居心地の悪さを感じた。沈黙に押し潰され、息が詰まる。
 限界だ、と思った時に隣からふわりと浮くような声が聞こえた。
「で? お前ってさあ。歳、幾つだっけ?」
 唐突な質問だった。
 常澄はこっそりと息を吐き出し、そして吸い込む。
「21だ」
「ふうん。もっと若いかと思ってた」
「僕を馬鹿にしてるんだな」
「でもさあ。お前より年下で、お前よりムカつく奴が居るんだよね」
「それはつまり、僕のことを腹立たしいと思っていると言いたいのか」
「悪魔、出せるンだっけ?」
「え?」
「悪魔だよ。悪魔。出せるンだろ?」
「出せる、けど」
「この間見たみたいなんじゃなくてさ。何かこう……もっと悪魔っぽいやつも?」
「質問の意味が分からない」
「だからああ。禍々しい奴だよ。分かンだろォ? ゲームとかさ。映画とかさ。出てくるやつさ。ゾンビみたいな」
「ゾンビと悪魔を一緒にされたら困る」
「誰が一緒にしてンんだよ」
 呆れたように雛太が溜め息を吐く。
 溜め息をつきたいのはこっちの方だ。
「みたいな、って言ってンだろ。みーたーいーな。分かる? ゾンビじゃないの。それくらい禍々しくてグロテスクで気持ち悪くて、エイリアンみたいな」
「エイリアンと悪魔を一緒にされても困る」
「誰が一緒にしてるんだよ! チッ。全くオメーとは話になんねえな!」
「僕も君と話なんかしたくない」
 眉根を寄せ目を見張り、口元を微かに膨らませた雛太は「こんのやろお」と、歯の間から吐き出すように言った。
「アホ! お前なんか可愛くない!」
「別に可愛がられたいと思ってないからね」
 だからさっさとこの場を離れてくれればいいのだ。
 常澄は胸の中でゆっくり呟く。
 そして僕は一人で散歩を続ける。明日になればまた、悪魔の館の館長という退屈で平穏な仕事が僕を待ってる。このままフンと踵を返して、そして僕を一人にしてくれればいい。
 孤独は安堵をもたらせてくれる。どうせ人は皆、離れていくのだ。あの、死んでしまった母のように。ならば一刻も早く、そして出来れば自分の力で人を遠ざけたいと思う。
 心を許し、愛してしまった人を失うことは、きっともっと酷く辛いのだ。
「オマエさあ」
 まだ居たのか。
 常澄は鬱陶しさを瞳に込めて、雛太を見やる。何故か彼はニヤニヤと笑っていた。
 そういう顔は、酷く調子が狂う。
「んーなことゴチャゴチャ言ってえ。もしかしてもう、依頼の話、知ってンじゃねえのォ?」
「依頼?」
「またまたとぼけちゃってぇ。武彦のおっさんから連絡入ってたんじゃねえのォ? でも。あれだろぉ。夜のガッコが怖いからって? 断ったとか?」
「何の話だ」
「そうだよなあ。夜のガッコに幽霊が出るっていうのは。まあなんだなあ。冬は寒いってくらい常識だからなあ。お前それ、怖いんだろ」
「な。何を言ってる。誰が怖いなんか」
「じゃあ、決定」
「はあ?」
 調子が狂う。このまま何処までも調子が狂って、いつか、僕は僕でなくなってしまうんじゃないだろうか。
 雛太に腕を引かれながら、常澄はそんなことを思った。



「ふうん」
 十里楠真雄はテーブルの上に書類を投げると、溜め息を吐くかのように頷いた。
「やっぱり厄介な依頼、抱えてたんだねえ」
 幼児性の抜けないような、少年特有の甘ったるい声を出し、彼は言う。甘ったるい彼の声は、けれど張り付くような粘っこさはなく、さらさらと流れるような声でもあった。
「ねえ、シュラインさん」
 真雄の目が自分を捉え、微笑みかけてくる。シュラインはそれに微笑みを返し軽い調子で「ええ、そうね」と答えた。
「厄介興信所だもの。だいたい、不精者のあの人が、普通のことをして興信所を経営していけるなんて思わないわ。広告も打たない、愛想もない。電話帳やらインターネットやらで大きく宣伝してる大手には、どうやったって勝てないわよ」
 空席になっている所長の席を見て息を吐く。武彦はさきほど、他の依頼の主に呼ばれ出て行った。貧乏暇なしとはこれなのか、と考えずにはいられない。
 顔を戻すと、真正面から真雄と対面した。
「そっかあ。そうだよねえ」
 じっと瞳を見つめ返しながら、真雄が頷く。
 この赤く大きな瞳が、シュラインはどうも苦手だった。深い森の奥にある湖の水面のように澄んでいて、じっと見つめ返していると真っ白な部屋の中に投げ込まれたような、そんな心細さを感じさせる。純真無垢を絵に描いたかのような可愛らしい童顔に、その瞳は余りに不釣合いだった。
 この顔に騙されてはいけない。この瞳の前で心を許してはいけない。
 彼を目前にする度に、シュラインはそんな緊張をいつも感じる。
「姉貴に頼まれてたんだよねえ」
 能天気な声で彼が呟き、ソファに寛げる。
「頼まれた? 何を?」
「草間家の人々が元気にしてるか見てこいってさ。姉貴ってば暇なら家でグウタラしてないで、草間興信所にでも遊びに行っておいで、だって」
 ふああ、と欠伸をする。
「でもさあ。ボクもう十七歳だよ? 遊びに行っておいで、はないよね」
「姉は幾つになっても弟を子供だと思ってしまうんだわ」
「女は、でしょ?」
「え?」
「女は幾つになっても男のことをガキだと思ってンでしょ?」
 確信を持ったように言われ、シュラインはまた軽い調子で「そうね」と答える。
 歳にも顔にも似合わない、大人びた言葉を彼が吐くのは、彼がもう一つ持っている「顔」あるいは「職業」のせいだ。
「で? これ」テーブルの上の書類に視線を落とし、それからまた顔を上げる。「これからどうするの?」
「手伝ってくれるのかしら?」
「海星学園、かあ」
「知ってるの?」
 少し間を置いて、真雄は首を振る。
「わかんないな」
 知らないのではなく、わからない。引っかかる言葉だ。
 しかし、今の彼に聞いてもきっと、何も答えないだろう。いや、答えないのではなく答えられないのかも知れない。
 彼は、覚醒し変化する。その仕組みは良く分からないが、変化した後の彼は全くの別人だ。本人自身も良く分からないままその能力に操られているのか、意図的にそれを使い分けているのか、シュラインには検討もつかない。ただ彼が「わからない」と言ったからにはたぶん、その能力に関係した記憶ではあるのだろう。
「とにかく。夜の学校に行ってみるべきなんじゃない?」
「夜? 今日?」
「いつでもイイけど、早い方がいいかなって思う。学校の内部の地図とかは、あるの?」
「ええ。用意しているわ」
「さすが興信所の女将だね。依頼主とは? 連絡がつく?」
「ええ。大丈夫だと思うわ。それから一応。依頼主から卒業アルバムも借りてあるの」
「卒業アルバム? どうして……あ、そうか」
「そう。このホームレスは校内にとても詳しいわ。だって、逃げるってとても大変でしょう? 校内を知らなかったら逃げ切るなんてとても無理よ。下調べしているからかとも考えたんだけれど、それにしたってねえ。だから、卒業生とかじゃないかなって、ちょっと考えたのよね」
「僕も今、それを考えたよ。とにかく気になるのは、どうして公園とかじゃくて学校なんだ、って話でさ。その依頼人自体も怪しいよ。二人で組んで、何か企んでるのかも」
「うーん。怪しいというか……どうして引き渡せなんて言ったか。何かそのホームレス自身に特別な想い入れがあるのか、とかは考えちゃったわね。ま。ただ恨みがあるから、パンチの一発でもかましてやりたい、という理由を疑うほどじゃないけど」
「じゃあ。まあ。とにかく行くしかないね」
 ソファに背を預け、真雄はふわりと微笑んだ。
「何かを捕まえるのは、夜と相場が決まってるんだしね」



 大柄、という表現は控え目である。
 鍛え抜かれたような肉体は並外れた筋力を誇示し、内側から衣服を押し上げていた。ぴったりとした黒いシャツを身に着けているものだから、鋼のような肉体は更に強調されている。
 高井陣は自分の目の前に立つ男をゆっくり見上げ、それから同じ速度で視線をそらした。
 たまんねえな。何を食ったらこんなに大きくなるんだ? 
 そしてこの、目の前の男に不快な思いをさせてはいけない、と強く思った。怒らせたら何をされるか分かったもんじゃない。相手はヤクザだ。東京湾に沈められるかも知れない。
 困ったのは、草間興信所にもう依頼してしまったことだった。
 そんな小さなことを男は気にしないのかも知れないし、もしかしたら「いやあもう、別にお願いしちゃったんですよねえ」と軽い調子で言ってしまえば、面倒が一つ減って良かったなんて笑い、帰ってくれるかも知れない。けれどどうしても、想像は悪い方へと転がってしまう。
「もう、他に頼んだだと?」想像の中の男は眉を寄せて凄んでくる。「ここまで来た手間をどうしてくれるんだ」
 成瀬の奴め。
 陣は向かいの男にばれないよう、こっそりと胸の中で舌打ちする。
 言うならもっと早く言えよ。興味ないって顔してたくせに。今更寄越されても困ンだよ。
「もしもし?」
 それまでずっと、アンドロイドのように黙りこくっていた男が口を開く。その強面の顔にとっても似合った、低く凄んだ声だった。
 陣は弾かれたように「はい」と顔を挙げ、それから慌てて「じゃあ……とりあえず。中に入ってもらえますか。ご、ご案内しますんで!」と言った。
「話は聞いてらっしゃるんですよね」
 門を潜り校舎へと歩きながら問いかける。男は黙って陣を見返した。片目は眼帯に覆われた、その鋭い銀色の瞳に射られ心臓が縮み上がる。
「い、いえ。変なこと確認しちゃったかな、俺ってば。ま、まあ。いいんです。ちゃんと仕事をして下さるっていうのは分かってるんで」
 しかしまた成瀬の奴も、よくまあこんな妙な時間にしかもこんな怖そうな男を寄越してくれたものだ。授業はとうに終わり、あとは部活動に励む人間が残っている放課後には違いなかったが、ホームレスが現れるまでにはまだ時間がある。まさか、それまで俺におもりをさせる気か?
 勘弁してくれよ。
 陣はこの男と二人きりで向かい合って座る自分を想像しただけで、冷や汗が出た。
 とにかくこの男を何処に置いておくかだ。学校には話を通しておくとして。さきほど見せた自信ありげな表情からも、ホームレスのことを熟知していると思って間違いないだろう。説明もいらない。やるべきことは全て、彼の頭の中にある。
 図書室か体育倉庫か。
 陣は二つの場所を頭に思い浮かべた。
 たぶん。体育倉庫だよな。
「体育館に」
 その時、陣の思考を読み取ったかのようなタイミングで男が言葉を発した。
 飛び上がりそうなほど驚いてしまい、小さく深呼吸する。
「で。ですよねえ。何だ。あれの出没地点まで聞いてらっしゃったんですね」
 小さく笑い、言葉を濁す。
 また、二つの鋭い瞳が陣を見た。眉根を寄せてぐっと睨みつけている。
「ややや。まあ。む、向かいましょう」
 手を翳し、校舎の隅にある体育館へと向かった。倉庫はその体育館の中にある。外の風はとても冷たいはずなのに、何だかたっぷりと汗をかいていた。
 ズズズ。
 ポケットの中で突然携帯が振動する。続けてすぐに派手な着うたが流れ出した。
 携帯はそもそも勝手に突然鳴り出す物だったが、今の今までそれを意識したことはない。ちきしょう、こんな時に派手な音立てやがって。煩いって殴られたらどうしてくれんだよ。
 陣はマナーモードの大切さを何となく理解したような気がした。
 男に向かい小さく会釈をし、ポケットから慌てて携帯を取り出す。サブディスプレイに表示された文字は、草間興信所。
 何てこった。こんな時に。
「受けないのですか?」
 言葉遣いこそ丁寧だったが、やはり低く、凄んだ声なのには変わりない。
「い、いやあ」
「親切にして頂いて嬉しいのですが。どうかおかまいなく。私、一人で探すことが出来ますので」
 男はまた気味が悪いほど丁寧な言葉遣いで言った。しかしそれがまた怖さを倍増させるのだ。
「あ、ああ。そ、そうです、か? いや、遠慮なさらないで下さいね」
「ご心配なく。ただ、私が動き回っていても不審じゃないように、お話だけは通しておいて頂きたいですが」
「そ。それはもちろん!」
 陣は頷く。そして同時にホッとする。

×

 誰かと間違えられているのかも知れない。そう気付いたのは、体育館に入り込んでからのことだった。
 それまでは、見かけによらず何て心優しい少年なんだろうと思っていた。優しい学校、優しい生徒。理想の楽園に見えていた。しかし、犬を探す如きでこんなに親切にされてしまうのはやっぱりおかしい。
 キャスル・テイオウは人気のない体育館へ入り込んでいく。外には部活動に励む生徒達の姿が見えたものだが、体育館には人が全くいなかった。使われたような痕跡もない。
 不安になった。
 元来、それほど肝が据わった男ではなことは自覚している。けれど強面の顔のせいで、いろいろと勘違いされてしまうことが多い。そういう時は必ず、自分は「人は見かけによらず」を具現化させたものなんじゃないだろうかと考えてしまう。
 不安の根源は、今先ほど思いついてしまった「人違い」ということにあった。
 例えば自分がただ、校内に迷い込んでしまった飼い犬を探す為だけに侵入してきた男だと知ったら、さきほどの少年は、そしてこの学校は、自分をどうしてしまうだろう。
 メーテルを探し出せないまま追い出されてしまうという想像は、テイオウを縮み上がらせた。しかしそれだけではない。その後、警察にでも連れて行かれてしまったら。
 ううううう。
 人気の無い体育館に、ポツンと立っている自分の小ささが身にしみる。
 早く探し出さなければ。何処に行ってしまったんだ、メーテルは。
 飼っている犬の名前を胸の中で呟くと、もっと心細くなってしまう気がした。
 メーテルの正体はケルベロスという守護獣だった。しかし獣というようには全く見えない。まさにテイオウとは逆の意味で「見かけによらない犬」だ。彼にはいろいろと世話になっている。テイオウにとってメーテルは心の拠り所であり、支えだ。彼の居ない生活なんてのはもう、考えられない。
 小さな体とコロンとした瞳。か細い声で鳴き、体を小さく震わせるのだ。
「メーテル!」
 体育館にテイオウの声がこだました。
 暫し静寂が訪れ、騒いだ胸の内を溜め息で沈める。その時、微かな犬の鳴き声がテイオウの耳を突いた。
「クウン」
「メーテル!」
 間違いなかった。メーテルの声だ。
 テイオウは駆け出し、奥まった場所にある倉庫へと向かった。微かにドアが開いている。中だ。中に居るんだ。
「メーテル!」
「クウン!」
 扉を開けたテイオウに向かい、メーテルが駆け出してくる。しっかりと抱きとめ、感動の再会を果たした。目を上げ中を覗き込む。倉庫の中は薄暗く、埃っぽい。
「かわいそうに。かわいそうに。こんな所に居たんだな」
「クンクン」
「じゃあ。さっさとこんな場所は出て行こう」
 身を翻し立ち上がったテイオウの腕の中で、メーテルが大きく「キャン」と鳴いた。
「しー。しー。静かにしないと駄目だよ」
「キャンキャンキャン」
「どうしたんだメーテル」
 胸元に視線を落とし、それからもう一度体育倉庫の中を見た。
「今、オメオメ出て行くよりも。この中で待機してた方がいいんじゃねえの。ここ、中から鍵がかかるみたいだし? それに何かおかしい感じあるんだよなあ。生活した跡とかあんの。まあ。それを調べるのはどっちでも良いとしてさ。とにかく今ノコノコ出て行くのは危険だって」
 メーテルの声だ。彼は時折、こうしてどうしても伝えたいことがある時、心の中へ呼びかけてくる。傍はら見ればキャンキャン喚いるだけだったり、沈黙しているだけのように見えるが、確かに今メーテルはそう言い、テイオウと心の中で会話している。
「うーん」
「まあ。何つーか。匂いにつられてここまで入ってきちゃった俺も悪いけどさあ。ガッコはまずいよ、ガッコは。怒られるって、絶対」
 そして暫く、ここに身を潜めておいた方が安全なのではないか、と考える。



 冷たい風が体の芯を突き刺してくるようだった。
 真雄はスエード素材の軽いコートの襟を立て、自分の体を抱きしめる。
 夜の風はもう、冬の匂いを漂わせていた。
「とりあえず。この先の体育館倉庫ね」
 隣ではシュラインが、懐中電灯で内部の見取り図を照らしながら呟いている。体育倉庫へ行けとは、依頼主である高井陣の命令だ。
 夕方、校内へ侵入する許可を貰う為、シュラインが依頼主に連絡を取っていた。その時彼は一度、キャンセルを申し出てきたらしい。しかしまた暫くして草間興信所に連絡が入り「やっぱり頼む」と言ってきたらしかった。シュラインはワケが分からないと怒っていたが、それを見ていた真雄にも行動の意味は理解できていない。とにかく彼は、捕獲するべき人間がもう一人増えてしまったこと、そしてその男は体育館倉庫にいることをシュラインに告げ、捕獲を命令した。
「とにかく中、入ろうよ」
 鉄で作られた頑丈そうな門の脇にある、小さな通用口の鉄格子を指差した。
「ええ。入りましょう」
 シュラインは見取り図を折りたたみ、コットン素材のコートの中へ押し込んだ。
 通用口を潜り、噴水のある広場を横切った。広場を囲むかのようにU字に配置されている校舎と、その裏手にある運動場とを結ぶ連絡通路に入る。夜の校舎は奇妙な威圧感を持って、狭まってくるかのようだった。連絡通路を歩き暫くすると、ふと背後で気配を感じた。真雄はゆっくりとした動作で振り返る。それから、その気配の元を突き止めた。
 灯りだ。
 校舎の廊下に灯りが点いている。
 しかしそれは認識した途端すぐに消え、校舎はまた沈黙する。
 一体あれは何だ。もしかして、噂のホームレス? 
 校舎を見上げ考え込む真雄の耳を、次の瞬間悲鳴が突いた。すぐ傍。いや、一メートルと空けずに立っていたシュラインの声だ。はっとして視線を戻す。
 シュラインが何かを背負い、そして床に叩きつけているところだった。
「いってえ!」
 叩きつけられたそれは、大声をあげコンクリートの上で海から上げられたばかりの魚のように跳ねた。
「高井さん!」
 驚いた声を上げたのはシュラインだ。
「なんでこんな所に居るの」
「ちょっとアンタ。美人のクセに強ェよ」
 意味の通じない文句を垂れた男は、ゆっくりと上半身を起き上がらせる。
「これ。何?」
 真雄はシュラインに向け、問うた。
「これだあ?」
「彼は、依頼主の高井陣くんよ」
「ああ。そうなんだ。へえ。偉くこっそりと近づいたみたいだね。他に気を取られてたとはいえ。ぜええんぜん気がつかなかったもん」
「別に気を取られてなくても気付かなかったんじゃねえの」
 憎まれ口を叩き、よっこらしょ、と陣が立ち上がる。
「そうだねえ。そうかもしんない」
 軽く答え真雄はまた校舎を見上げた。
 さきほどの光は何だったのだろう。それが、気になっていた。
「ところで貴方。どうしてこんな所に居るの?」
「まあ。心配だから見に来てやったっていうか?」
「それはご苦労なことだわね。有り難いわ」
 全然有り難くないような口調でシュラインが言う。
「あ。ねえ。きみ」
「あん?」
「さっきね。夕方電話した時なんだけど。どうしてキャンセルするとかしないとか。面倒臭いこと言ったの?」
「コイツ。誰?」
「依頼を手伝ってくれてる方よ」
「ふうん。アルバイト?」
 向けられた言葉を無視して、真雄は自分の聞きたいことだけをもう一度問うた。
「ねえ? どうして?」
「うっせえなあ。こっちにもいろいろ事情がアンだよ」
「うん。その事情を聞いてるんだけどさ」
「だからあ。俺の友達に成瀬ってのが居てえ。あ、そうそう。ウチのガッコにはヤクザのジュニアとかわんさか居るんだけどさ。今はほら。何て言うの? インテリのヤクザ? 東大卒とかさ。そういうヤクザ増えてるわけよ。でえ。そのォ、成瀬ってのがちょうどォ、ヤクザジュニアでさ」
「それで?」
「そう。それでえ。そいつにィ、頼んでたわけ。お前ンとこの親父さんに頼んで。組の下っ端とかさ。使って、ホームレス捕まえてくれってさあ。最初は乗り気だったんだけど、何か途中から冗談言った感じで流れちゃっててさ。ああコイツ本気で捕まえる気ねえんだわ、とか思って。だからお宅に伺ったわけ。なのに丁度、今日よ。その成瀬の組の奴が来てぇ」
「それで、うちはキャンセルにしようと思ったわけね」
「そうそう。んだけんどもぉ、その組の奴が組の奴じゃなかったわけでえ」
「え?」
「なんつーの? 勘違い? 俺の」
 やってらんねえよなあ、と陣は溜め息を吐く。
「見た目スッゲ怖いから。ソイツ絶対ヤクザだと思ったわけ。それが成瀬に聞いても知らんっていうしさ。他の組の奴かとも思ったンだけど、なんつーか。一人だったし。良く考えたらおかしいかなって。で。たぶんそいつはホームレスの仲間なんだなって思ったわけ」
「それで……結局、ホームレスの仲間だったわけ?」
「さあ? でも多分、そうだぜ」
 彼はそう言い切った。しかし根拠など何もないのだろう。
「それが、体育倉庫に居るんだ?」
「うん、多分」
 たぶんたぶんたぶん。
 真雄は小さく息を吐いた。
「じゃあ。とりあえず、倉庫見てみよう」
 そしてまた、暗がりの連絡通路を歩き始めた。



「バカ! お前!」
「なんだ」
「灯り点ける奴が何処に居るんだ!」
「ここに」
「やってらんねえ! お前、バカじゃねえの!」
「煩い。真っ暗じゃ見えないだろうが」
 飄々とした顔でとにかく言い返してくる常澄の顔に、唾を吐いてやりたい衝動に雛太は駆られた。しかしここはじっと我慢だ。額を押さえ、息を吐いた。
「お前さ。そういう悪いことばっかしてっと、本当に幽霊とか落ちてくるからな。覚えてろよ」
「ゆ……。そういう言葉を言うな。そういうことを」
「オバケ。オバケ。オバケ。オバケ。出てこい出てこい。怖がってる奴はここにいらっしゃ」
 雛太の口を、常澄の手が覆う。
「静かにしろ。静かに」
 肘元にある常澄の心臓の鼓動が、トクトクと切実な鼓動を刻む。怖がってるんだ。そう思うと、口元がにやついて堪らない。しかし同時に、こいつにも心臓があったのかと妙なことを思った。
「とにかく君の狙いは、ホームレスを捕まえることなんだろ」
 手を離し、身なりを整えながら常澄が言う。雛太は軽く頷いた。
「ん、まあ。基本的には。でも本当の狙いは、そいつと組んであの依頼主をキャイーンといわしてやることだかんね」
「だったらとにかく早くそのホームレスを捕まえるべきだ」
「分かってンよ。だからこうして探してんじゃん」
「だいたい。無謀すぎるんだ。何の手がかりもなしに」
「廊下が怖いからってそう言うなよ」
 大きく息を吸い込んだ常澄は、その反動のような勢いで雛太を振り返り、けれどそこからテンポを落とし、一言一句、言い聞かせるように言う。
「僕は怖いとは思っていない」
「はいはい」
 雛太はいい加減な返事を返して、ポケットの中から校内の見取り図を取り出した。携帯のライトで照らしながら目を走らせる。見取り図は興信所からくすねきた物だった。
 隠れられそうな場所は全て探したつもりだった。真っ先に探したのは、体育館とその倉庫だ。そこには人が生活していたような痕跡はあったものの、その姿は見つけられなかった。
 残るは校舎内。先ほどからそれぞれの教室を見て周っているが、収穫はまだない。
「気長に探すしかないよなあ」
「うんざりだ」
 そのくせしっかりと人の後ろにくっついてくる常澄は、雛太の腰を押し、前へ進めと合図した。
 見取り図を覗き込みながら、階段の踊り場へ出る。
「ぎゃあああああ!」
「うわああああ!」
 突然雛太の耳元で、断末魔の悲鳴が聞こえた。声に反応して、咄嗟に自分も声を出してしまう。体が反射的に逃げ出そうとするも、常澄の手が自分の服をしっかりと握り締めていてそれが出来ない。
「なん! なんだよ! なんだよ!」
 振り返り常澄を見ると、両手で口元を押さえ目を見張らせている。視線の先を見ると、大きな男の影があった。
「わ! なんだ!」
「しー、しー、しー!」
 影が慌てたように言う。そしてゆっくりと近づいてきた。
 次第に姿を現したそれは、犬を抱いた大男だった。
「静かにして下さい。何もしませんから」
 こそこそと闇に紛れるようにして身を屈める大男は、雛太達の元へ歩み寄り小さく会釈する。顔の輪郭が見え、雛太はアレ? この顔何処かで見たことがあるぞ、と考えていた。
「貴方達はこの学校の生徒さんですか? いえ。私は決して怪しいものではないんですよ。信じて下さい。ただ、この学校の中に迷い込んだ犬を、ですね」
「あ!」
 男の言葉を遮るように声をあげ、雛太はパンと手を打った。
「思い出した! オマ、俳優のキャスルじゃねーか?!」
「え」
「え?」
 前と後から同時に声が上がる。
「絶対そうだよ。な? そうだろ? 深夜番組で見たことあんもん。え? こんな所で何してんの? 撮影? な。わけないな。いやあ。お前が出演してた、ホラ。何だ。あれ。名前思い出せないけど格闘のさあ。あのドラマカッコよかったぜえー。いやあ。ファンなんだよー」
 手を差し出すと「は、はあ。どうも有難う」とキャスルが手を差し出した。
「えー。すげえ。こんな所で出会えるとかあるんだあ〜。わー。すっげえええ」
「いやあ。そんなに褒められると照れますね。嬉しいですよ。こんなまだまだチョイ役の男を覚えていてくれてるなんて」
「俺さあ。記憶力には自信あるんだわー。いやあ。それにしてもナマキャスかあ!」
 遠慮なく彼の腕を掴み、その筋肉に触れる。硬くがっちりとした体つきに、感嘆の溜め息が漏れた。
「でもなーんか。雰囲気違くね? めちゃくちゃ優しそう」
「いやあ。そうですかねえ」
「でも俺、そういうギャップみたいなん? 好きだわー。好感持てるっつか。なあ、これからも頑張ってよ。応援してるからさあ」
「ありがとうございます」
「ん、もう。いい体しちゃって〜」
「いやあ、そんな」
 和気藹々とした空気がその場を包み、雛太は一瞬ここが何処であるか忘れそうになる。けれどすぐに、ああそうだ。と思い出した。
 その声が耳に流れ込んできたのは、丁度その時だった。
「そうか。俳優さんだったんだね。思い出したよ。確か、そのドラマの名前はガッツマグナムだったかな」
「ああ。そうだ!」
 雛太は両手を叩き合わせる。深夜放送していたドラマの名称だ。
「そうそう! ガッツマグナム……うん? え?」
 後を振り返り、常澄を見た。彼は咄嗟に首を振る。
 違う。声を発したのは僕じゃない。
「ねえ君らさ。何者なわけ? どうしてこの学校の中、ウロウロしてんの? ってまあ。僕が言う話でもないんだけどさ」
 え。誰?
 雛太は呆然として辺りを見回した。踊り場の壁がガタガタと揺れている。それに気付き、身構えた。
「な。なんだ」
「よいしょっと」
 壁がガタンと大きな音を立て向こう側から外れたかと思うと、そこから一人の男が姿を現した。



 体育倉庫の点検を終えた時点では、手がかりは全くなかった。
 その後、何処を探そうかと話している時に真雄が校舎で光を見つけた、と提案した。
 陣に聞くと、ホームレスが良く出没するという図書室のある校舎だった。
 そして今、シュライン達は図書室へ続く廊下を歩いている。
「あれ?」
 先頭を歩いていた陣の隣で、真雄が突然声を上げた。
「どうしたの」
 シュラインはその背中に問いかける。しかし彼は何も答えず、だっと一気に走り始めた。
「なんなの、一体」
 行動の意味が分からないだけに、後を追うことに躊躇した。暗闇の中へ目を凝らす。彼は一体、何を発見したのだろう。
 そしてシュラインも、廊下の奥に微かな光を発見した。蛍のお尻が光るような、柔らかい光だ。
 陣も同じくしてそれを発見したらしく、走り出した。当然、シュラインも走り出す。
 廊下の突き当たりには人が居た。
「雛太くん!」
 それも、見知った人間だ。ヘソを曲げて出て行った、草間興信所の居候。
「それに。常澄くんも。あら、そちらは?」
「姉御じゃーん。真雄も。久しぶり、元気?」
 雛太の問いにも真雄は答えず、とにかくある一点に視線を集中させていた。シュラインも同じ方向を見る。そしてホームレスだ、と思った。
「お前!」
 誰が言い出すかと思われたその言葉を、陣が言った。
 ホームレスはその顔に笑みを浮かべると、脱兎の如く走り出す。瞬発力のある動きだった。呆気に取られ、動き出すタイミングを逃す。他の人間も全て、そうかと思われた。しかし、予想外の動きをしたのはその場に居た大柄な男だった。
 彼はその巨体からは想像出来ないような瞬発力で腕を出すと、しっかりとホームレスの腕を掴み取っていた。鋼のように鍛え抜かれた太い腕に掴み取られ、ホームレスは動きを封じられる。
 緊迫した空気が流れた。この大柄な男は一体誰なんだろうとシュラインが思いついた時、能天気な声が言った。
「やっぱりそうだ」
 真雄だった。
 やっぱり? どういう意味だと皆が一斉に真雄を見た。
 彼を取り巻く周りの空気が、ピリピリと冷たくなっていく。
「やあ。また逢ったね」
 そして彼は、覚醒した。



 ベットの上に男が横たわっている。
 傷口が何処にあるのか判別が出来ないくらい体中血まみれだった。出血の元は一体何処なのか、恐らくこのまま数時間ばかし放置すれば確実に死ぬだろう。
 病室の柱にかかった時計を見上げた。午前二時。
 突然急患だと叩き起こされたが、寝起きに診るには少しグロテスクだった。
「僕を殺してくれ」
 ベットの上の男はか細い声で言う。
「もう、嫌なんだ」
 真雄はベットの脇に椅子を引き、そこに腰掛けた。
「このまま放置すれば死ねるけどね」
「だったら放置してくれればいい」
 蚊が飛び回るより害のない声で、彼はボショボショと言う。
「別に殺してあげてもいいんだけど。その前に死ぬ理由、聞かせてくれる?」
 真雄はそう問いながら、しかしある程度の予測はついていた。
 自分は闇医者だ。ただ単に交通事故に遭った人間や、平穏無事に生きてきた人間がここへ訪れるとは思っていない。そもそもこの男を運び込んだ奴等。あれはまさに、裏街道の人間だった。
「僕、妾なんだよね。ヤクザの」
 小さな息を繰り返しながら、男は言った。
「始めはアイツ……成瀬のこと。愛していたよ。物凄く好きだった。いや、たぶん。今でも好きなんだろうと思う。でも、だからこそ辛いんだよね。離れられない自分が嫌なんだ。アイツはさ。自分はとっとと結婚してさ。女も沢山囲ってさ。男も囲ってンのかな。ハハ。まあ、何でもいいけど。それでちゃんと子供まで作ってさ。だから。いいじゃんさ。僕、一人くらい居なくなったってさ。それなのに僕が逃げるとこのザマだよ。何処までも執拗に追いかけて来て、ボコボコにされて、次逃げたら殺すって脅されて。毎回そんなん。回を追うごとにお仕置きも厳しくなるんだよねえ。ハハハ。繰り返してたら、逃げ足も早くなっちゃったよ。でも。何が一番嫌かってさ。それで嬉しくなっちゃってる自分なんだよね」
 聞いてるだけで疲れてしまう。溜め息が出た。
「生きてる限り、僕は離れられないよ。そしてこんな歪な形でしかアイツの愛を確かめられない。だから。殺して欲しいんだ。アイツに僕を殺させないで、アンタが今ここで僕の息の根を止めてよ」
「よし。分かった」
 真雄は立ち上がり、ふわあと欠伸をする。
「ボク、眠ィんだよね。とっとと寝たいの。痴話喧嘩するなら今度からさ。もっと真昼間にやってよね」
「今度?」
「殺してあげない。痴話喧嘩に巻き込まれるのゴメンだもん」
 脇にあったキャスター付きの台から手袋を取った。
「さっさと治療しちゃうよ」
×
 ピッピッピッ。
 頭の中に浮かぶデジタル時計が時を刻む。
「君はあの時の急患だ」
 真雄はホームレスに向け、言った。

10

「彼を逃がしてあげるべきだ」
 頭の中に、そんな声が響いた。常澄は驚き何事かと思い辺りを見回したが、声の発信源が分からない。
「よおし。やっと捕まえたぜ」
 向かいでは、学生服の男がホームレスに歩み寄っていた。
 顔には笑みが浮かんでいたが、酷く嫌な感じだった。
「彼を逃がしてあげるべきだ。戻ればまた、帰ってこれなくなる」
 また声が頭の中に響く。元を探し、視線を馳せた。辿り着いたのは、テイオウの胸に抱きかかえられている犬だった。犬? あれはただの犬じゃないのか。
「守護獣です。貴方……獣や魔物の言葉が聞こえるんですね」
 ヒソヒソとテイオウが囁いてくる。
 守護獣。
 常澄は頷き、次の瞬間には両手を前に突き出していた。
「ン? 常澄?」
 誰かが自分を呼ぶ声が遠くで聞こえる。
 常澄は口の中で呪文を唱え、館内補修工事中の為、異次元へと移動させていた館の住人達を呼び寄せた。周りの空間がぐにゃりと歪み、そこから悪魔が飛び出してくる。
「ごめんね。イキナリだから。誰が出てくるかわかんないよ」
「うわああ! なんだこのネバネバしたの!」
 飛び出してきたのは、ブラックウーズのウズウズさんだった。正体は黒い粘着スライムで、張り付いたら中々離れない。
 我ながら上手いな。
 常澄は小さく笑った。

11

「考えて出してね、考えて! 次から」
「次があったらな」
 常澄と雛太が言い争っている。
 そんな二人を鬱陶しげに一瞥した陣は、またシュラインに顔を向け「どうしてくれんだよ」と詰め寄った。
「どうしてくれるって? どういうことかしら」
 しゃあしゃあとして答えてやる。
「捕まえられなかったじゃねえか! 逃がしただろ! あの、ホームレス!」
 苛立ったように声を荒げ、陣がドンとテーブルを叩いた。興信所のボロテーブルが、その衝撃で壊れてしまわないか心配しながら、シュラインはわざとらしく肩を竦めてやる。
「仕方ないわ。あれは不慮の事故だもの。私達だってねえ。わざとやったわけじゃないのよ」
「そこの。そこの赤いコートの奴! あれが何かやってただろ!」
「知らないわ」
「君にはね。手に追えない人なんだよ」
 口を挟んだのは真雄だった。
「どういう意味だ」
「好きだったんじゃないの。君」
「な。なに。何が! 何言ってンの。あったまおかしいんじゃねえの!」
「ま。どっちでもいいけどさ」
 本当にどうでも良さそうに、真雄がソファに寛ぐ。シュラインは陣の顔を見やり、何もそんなにハッキリ言ってあげなくても、と少し思った。
「まあ。知っといた方がいいかも知れないから言うけど。君の。えーっと、なんだ。友達。成瀬だっけ? あれの父親。あのホームレスと付き合ってンよ」
「え」
 言葉を失った陣を気にも留めず、真雄は一人でクスクスと笑う。
「自分の子供の学校に愛人が隠れてるなんてさ、普通思わないもんなあ。上手いこと考えたよ、彼もさ」
 その言葉を聞いてシュラインは考える。
 彼は自分の愛人から逃げ切りたかったのだろうか。
 それともその子供に何かしらの復讐をしようと思ったのだろうか。
 あるいは、それでも見つけてくれることを望んでいたのだろうか。
 しかしどれも疑問系で、逃げてしまった彼から真相を聞くことは出来ない。
 帰りの道中に、真雄が知っていた過去の話は聞いていた。あのホームレスが実はヤクザの妾であったこと。逃げては捕まり、酷い仕打ちにあっていたこと。そして彼が何より本当は、歪んだ形でしか愛情を確認出来ない自分自身から逃げたかったこと。
 あの時、常澄が出現させた気味の悪い悪魔から、彼一人だけはヒョイと逃げ仰せ、気がついた時にはもう、消えていた。たぶんきっと、もうあの学校には現れないのだろう。
「究極のマゾだよ。あの人」
 楽しそうに真雄が言う。
「だからさ。君の手になんか捕まるタマじゃないんだよ」
 彼の言葉に重なるようにして、部屋の隅に居たテイオウの抱く子犬がクウンと鳴いた。










END










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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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type A
【2254 / 雪森・雛太 (ゆきもり・ひなた) / 男性 / 23歳 / 大学生】
【4017 / 龍ヶ崎・常澄 (りゅうがさき・つねずみ) / 男性 / 21歳 / 悪魔召喚士、悪魔の館館長】
【0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【3453 / CASLL・TO (キャスル・テイオウ) / 男性 / 36歳 / 悪役俳優】
【3628 / 十里楠・真雄 (とりな・まゆ) / 男性 / 17歳 / 闇医者(表では姉の庇護の元プータロ)】

type B
【3801 / キウィ・シラト (きうぃ・しらと) / 女性 / 7歳 / たくさん遊ぶこと☆】
【2318 / モーリス・ラジアル (もーりす・らじある) / 男性 / 527歳 / ガードナー・医師・調和者】
【4310 / リュウイチ・ハットリ (りゅういち・はっとり) / 男性 / 36歳 / 『ネバーランド』総帥】
【3419 / 十ヶ崎・正 (じゅうがさき・ただし) / 男性 / 27歳 / 美術館オーナー兼仲介業】
【1537 / 綾和泉・匡乃 (あやいずみ・きょうの) / 男性 / 27歳 / 予備校講師】



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■         ライター通信          ■
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こんにちは。
 ヒッピーを捕まえろ にご参加頂きまして、まことにありがとう御座いました。
 ご購入下さった皆様と
 素晴らしいプレイングやPCをお任せ下さった皆様の懐の深さに感謝致します。


 それではまた。何処かでお逢い出来ることを祈りつつ。
                       感謝△和  下田マサル