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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


虚無の境界支部に潜入する茂枝萌


 ヴィルトカッツェの二つ名が、闇夜の闇に紛れている。
 即ちそれは光学迷彩、ステルス使用の少女のスーツ。
 NINJA。
 NINJA、とは、IO2における捜査担当、迷彩なやうな潜入に特化したパワードプロテクターを纏い、調査、そして可能ならば犯人を逮捕及び抹殺するのが目的。
 それは、殺しあう異界だろうと変わらない。世界だろうと異界だろうと、14歳の少女はそういう存在なのだけど。だから、今日も、ヴィルトカッツェは、
 山猫という二つ名は。
 背に、鉄すら切り裂く高周波ブレードを負って。潜入対象に――絶海の孤島か、謎の研究所か、
 違う、
「……本当に、ここ?」
 何処からどう見ても、民家だったのだ。
 所在地は住宅地である、逆にそれが怪しいとは思うのだけど忍び込むしかない彼女は。
 事前にリサーチした情報、支部には敵が居るらしい。だが、それらしき気配は無い。だが、
 時々、いや、常に見られている感覚が、茂枝萌の肌に這う。


◇◆◇

 屋外。(茂枝萌との非接触、今回の出来事は爪先で触れている程度

◇◆◇


 正義という二文字、それの多くは誰かを守る事で有り、間違った事を打倒する事であり、弱きを助け、悪しきを挫き、必要悪にすら強い信念をもって疑問符を打ち続ける――
 だが名という物は必ずしも数学のように機能する訳では無く、いやだが寧ろその名前だからこそ彼の性質が反という式で表されているような、プラスに対するマイナスみたいな、
 色々意見はあるけれど、正義が、名前がプラスだとすれば、名付けられた人間は、数学のようにマイナスなのだ、嗚呼そう、
 悪人。
 立花正義は悪人の部類である。何を持って悪人とするか、これもまた数学のように決まってないが、法律では計算出来る、
 ようは、人に迷惑をかける事だ、だから、人に迷惑をかけるなら、
 悪人が悪を裁いても構わないという、矛盾した式、
「と言う訳ですから、観念してください」
 物腰は柔らかそうな口調であろうが、行動は全く持って乱暴な、いや、だが理知的な行動か、
 檻の中に、人食いの家の操り主を囲っているのは。


◇◆◇


 概要説明。
 虚無の境界支部(既にこの情報が罠だったと、外に居た正義は気づく事になる)潜入における茂枝萌を護衛せよとの命を、ある男から受け、ガキのお守は気が進まないが、ヴィルトカッツェという二つ名の場合、自分がお守にされる対象かもしれなく、ともあれ、密かに見守っていたのだが、
 家の外に不信な、フードをすっぽり被った男を発見。彼は家に手をつけて、まるで家に意識を交わしているようで、しかも、家の中迄付いていく事をやめた正義が、五メートル近づいても気づかないくらい、死ね! 死ね! とぶつぶつ言っているので、
 家が突如凍って、それに驚いて男が離れた時、感嘆符が二個並べるように捕獲した。その時も笑って。
 立花正義の能力は、酷く捕獲に優れているのだ。
 檻や手錠などの捕獲用具を具現化できるのだから、あまつさえ、対象が霊体だろうと人の心だろうと、相手の精神力が自分より下等ならば、種類を選ばないのだから。


◇◆◇


 檻は、言うなれば幼稚園の閉じられた入り口、それを箱に仕立てたみたいな。この程度で充分だったのだろう。
「まぁ、私が守られる事にならなくてほっとしましたが」
 檻の中をみつめつつ、膝を曲げる。すると檻の間から手が殴りかかってきたので、よっとという感じで首を横にして避け、
 人差し指を取り、逆に折り曲げた。つまりは骨が折れた。
 声も無く、苦しみを息にして激痛に頭だけでのたうつ男、それを見てにこにこしている正義、さながら陶器で作られたクマを愛でるやうな。クマを愛でるよりは、悪趣味だけど。
 さて、これからどうしよう、と思う。悪人は殺しても文句無いのだから、心臓にワッパをかけて振り回してもいいのだが、自分の任務は茂枝萌の護衛と同時、IO2の職務を真っ当である。虚無の境界に関わるであろうこの男から、何も聞きださず処理すると上から何を言われるか、
 ああ全く持って、前の前と、そして前のとでは、《立場》の意味が違っている。今の立場の効力は、自分は捕獲に秀でているのに、
 自分を動けなくしてるでは無いか、原因の、忌々しい相手を想像すると、
 まるでその絵の声優みたいに、「仕事は終わったのか?」
 殺せれば楽なのにと溜息を付く、あの男の声が聞こえたから、
 振り返る――
「やぁようこそディレクター」
「ディテクター、だ」
 ディテクターという名前を、立花正義、ディレクターと呼ぶ。
 わざとこう呼んでいる、からかいの意味だろうか、自分を管理するという意味で呼んでいるのだろうか? 経緯は知れない、がともかく、ディレクターという《呼び》名は、立花正義のみが使用する。
 ディテクターという名前、探偵の名前、こちらは酷く数学のようだった。今頃のこのこと現れて、氷付けの家と、捕らえられている男、そんな風景を見て、
「護衛はまぁ、間接的に果たしたか」と、推理した。「今は話中と行った所か」
 きょとりとする正義を無視して、檻へと視線を屈めながら、「家を凍らせるのはヴィルトカッツェの能力じゃない、じゃあ敵か? ……敵だとしたら、家の能力を殺す技はしない」「人食いの家の能力は、どうやって知ったんですか?」「民家にわざわざ招き入れるんだ、家自体が何か罠と考えるのが自然だろう」
 そんな風に断ぜられるのは、貴方ぐらいですよと、正義は嫌味っぽく。
「じゃあ敵じゃないならなんだろうな? こんな危険な所でいちいち待ち伏せする奴だ、よほど切羽詰った事情があるんだろう。……何か情報が欲しいとか、だろう」
 何の情報かまでは知らないが、そう言葉を終えた時、
 立花正義は、フードの男の捕らえた檻を消して、

 行動の連鎖、
 首に手錠をかけて、
 木の枝に吊るし上げる。

 かは、と声が聞こえる。ひ、は、と空気が漏れる。腹に酸素がうまく入らない様子、陸に上がった魚。
 見開いた目は酷く弱い光。
「……ああ、今頃気づいたのか」
(既にこの情報が罠だったと、外に居た正義は気づく事になる)
「殺さない必要が、無くなったからお前は」
(虚無の境界に関わるであろうこの男から、何も聞きださず処理すると上から何を言われるか)
 、
(虚無の境界に関わらない男からは何も聞きださなくていいから)
「処理する」
 、
 足、もがく。
 だがやがて、動かなくなる。
 顔が、血で、膨れる。おかめつら、
 ぶくりと、
 死んだ。
 、
 正義という名前が、殺した。


◇◆◇

 前の前の立場は、警察庁特殊能力特別対策情報局局長、と長く、
 前の立場は、つまりこの異界が始まってからの立場は、
 マッドファングと、短いが意味が解らず、
 今の立場は、IO2という今の立場は、
 ディレクターにそれを殺され、彼に従士する事により。

◇◆◇


 チーム、迷惑をかけるチーム、そういう組織。
 面子、構成、若者中心、募集方法、立花正義の能力、
 心の捕獲。
 捕獲というのは実に広い意味合いなのだ、まるでレゴブロックのように、手錠や檻を組み合わせて、ガオーと吠えるロボットも作れるし、肉体の捕獲だけじゃなく、時間の拘束だとか、つまりは、まぁ、なんでも有り。精神力が彼より下というのが、今の所最大のネックだろうが。
 とにもかくにも彼の能力によって作られたチーム、マッドファングという一昔前の名前は、実にチンケな、だが非常に厄介で、頭を悩ませる問題を次々と起こす事になる。コンビニで買った玉子焼きは味は落ちるから、寿司屋に行く。寿司屋の玉子焼きは海老をすり身にしていれて、ふわふわして絶品だから。
 そしてその寿司屋で、実に中途半端に困る事もしたし、卵だけを延々と頼み続けるとか、
 その帰り道銀行強盗を見つけて、警察より早く事件を《穏便じゃなく》済ませたりとか、
 何百かの霊を集めて、デパートをお化け屋敷とし、小遣い程度の稼ぎだとか、
 小さいながらコツコツとやってきたチーム、
 ディテクターが動き出す理由としては充分だった。


◇◆◇

 ただの、おっさんに、近い、男。
 百のメンバーの正義による捕獲を解き、拳銃で治癒は可能だが今は動けないという痛みという檻で捕獲し、
 王を三十年捕獲した檻を、ただ歩く動作だけで打ち破る、男。
 精神力。
 異常に、高まっている。
 何かの、道具を使用したか、それとも、
 元から?
 立花正義はまこと珍しく、面に冷や汗をかいた。
「ディレクター」
 そう、呼んだ。彼が自分で名乗ったディテクターという名前を、そう呼んだ。
 ディテクターは訂正しない。
「ディレ、クター」
 逃げようと思う、プライドに触るが、引き際を知らないのは愚かだ。
 だが、
 ディテクターという、探偵という名前は心底執念深く、四つの弾丸を放つ。それはきちんと壁の機能を果たし、正義を縛り付ける。
 対峙するしかない。正面きって向かい合う、
「便利な能力だな、立花正義」
「ディレク、ター」
「この侭殺しても、法律的には文句無いが」
「ディレクター!」
 叫んで、立ち向かおうと、する振り、
 だが同時、懐に捕獲しておいた十センチ四方の檻を解放する。
 小さいながらの悪鬼がディテクターの心臓に向かう。
 、

「ディテクター、だ」
 そう言った時、
 銃は正義に放たれた。
 正確には、正義の前にあった悪鬼に放たれた。


◇◆◇

 それが立花正義が、ディテクターの下に居る理由。
 裏切れるなら直ぐに裏切る、だが今はこの立場に甘んじよう、……あの力も、手に入れやすい。
「……そういえばな、世界征服倶楽部」
 あの力が、どうしましたか?
「ある女と繋がったようだ、一歩リードされたんじゃないか?」
「何を言うかと思えば、そんなの関係ありませんよ」
「そうだな」
 全くもって、関係ない、この男には、
「それごと捕らえればいい話」

 そして、氷付けの家が崩れた時、正義という名前は、ディテクターと供にIO2に帰還した。
 、
 正義と呼ぶには、IO2は。





◇◆ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ◆◇
 3786/立花・正義(たちばな・せいぎ)/男性/25歳/警察庁特殊能力特別対策情報局局長

◇◆ ライター通信 ◆◇
 ――今回は個別に仕上げております
 初めましてですのに納品ギリギリですいません、七日延ばしておきながら_| ̄|○
 というか直ぐ納品出来るとか宣言もしてたのにね! ち、違うんです、全部世界の任天堂が悪いのです! だってきみしね出すわさワリオだわでも何よりもバンブラでの作曲が楽しいわ!
 すいまへんでした(海よりも深く
 で、今回なのですが、あまり今回の依頼にそった《具体的な》行動が無く、キャラ説明の方に重点がおかれていたようなのでこのような形に相成りました。世界征服倶楽部も、名前だけでの触れ方となっております。
 悪人が出てきたので普通に喜んだのは内緒です(何故に
 んでは今回はご参加おおきにでした、それではまたどこかでいずれー。
[異界更新]
 立花正義、捕獲する能力持ち。チームマッドファングを結成し小事な悪事を繰り返し、ディテクターに殲滅。彼に能力を買われIO2に。裏切る気有り。世界制服倶楽部の技術力を狙っている。何より特筆すべきは、彼は悪人。