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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


調査コードネーム:チビパンダのお見合い
執筆ライター  :ゆうきつかさ
調査組織名   :おぼろ街
募集予定人数  :1人〜

------<オープニング>--------------------------------------
「チビパンダのお見合いだと!?」
 突拍子もない事を久遠美麗(くおん・みれい)から言われたため、鬼頭一哉(きとう・かずや)が飲みかけのビールを吐き出し汗を流す。
 数ヶ月にも及ぶ家賃の未払いで大家との熱いバトルを繰り広げている最中に美麗から電話があったため、逃げるようにしてアパートから飛び出してきたのだが、美麗の呼び出した理由があまりにも意外な内容だったため一哉が後悔した様子で溜息をつく。
 ‥‥チビパンダのお見合い。
 その時点で何か怪しいと思うべきだった。

「坊ちゃまとわたくしの出会いは今から数年前で御座います。ご主人様が珍しい猫を買ってきたと言って、坊ちゃまの面倒をわたくしに任せた事が始まりです‥‥」
 昔を懐かしむような表情を浮かべ、老齢の執事がクスリと笑う。
 依頼人は豪邸の管理を任されたセバスチャンという名の執事。
 彼の依頼はチビパンダの見合いを成功させるため、一哉達に協力して欲しいという事だ。
「‥‥普通、分かるだろ。買う前にさ」
 この時点で何か間違っていると思ったため、一哉が鋭いツッコミを入れる。
「残念ながら、ご主人様は海外の生活が長かったもので‥‥」
 悲しげな表情を浮かべ、執事が気まずく視線を逸らす。
「いや、それは関係ないだろ。普通に考えて‥‥」
 呆れた様子で執事を見つめ、一哉が困った様子で溜息をつく。
「‥‥報酬は弾みますよ」
 札束をポンと縦に置き、執事が一哉の顔を見る。
「俺‥‥札束が立つのって初めて見たよ」
 目の前の札束をジィッと見つめ、一哉が恐る恐る手を伸ばす。
「‥‥少ないですか?」
 一哉が妙な反応をしたため、執事が躊躇なく札束を増やしていく。
「いえいえ、滅相も御座いません。それでパンダちゃんは何処にいるんですか?」
 だんだん恐くなったため、美麗が札束を受け取りニコリと笑う。
「それが行方不明なんです」
 寂しそうな表情を浮かべ、執事がションボリと肩を落とす。
「行方不明だと!? まったく面倒な事になったなぁ。何か手掛かりになるようなものはないのか?」
 美麗と一緒に札束の枚数を数え、一哉が驚いた様子で執事を睨む。
「半年ほど前から近所の野良パンダとつるんでいるらしく‥‥。今もコイツらと一緒だと思います‥‥」
 懐から一枚の写真を取り出し、執事がペコリと頭を下げる。
「つーか、コレ。パンダじゃねぇだろ!?」
 写真にツッコミを入れながら、一哉が青ざめた表情を浮かべて汗を流す。
 執事の渡した写真には笹をまるで煙草のような咥えたガクラン姿のパンダが座っており、バイクに上でチビパンダが必死に足を伸ばしている。
「‥‥リーゼントのパンダって初めて見たわ」
 驚いた様子で写真を見つめ、美麗が札束をバッグにしまう。
「相当のワルですから‥‥」
 悲しげな表情を浮かべ、執事がハンカチで涙を拭う。
「いや、ありえねぇだろ! ガクランの背中に悪(ワル)って刺繍してあるしさ」
 色々と写真にツッコミを入れながら、一哉が執事を見つめて溜息をつく。
「それは‥‥坊ちゃまが凄いお方だからです!」
 燃えるように熱い涙を垂れ流し、執事が何故か感動する。
「どうやら俺が妙なスイッチを押しちまったようだな」
 執事がブツブツと昔話を語り始めたため、一哉が気まずい様子で頬を掻く。
「‥‥そうね。とにかくパンダを探しましょう。見合いの日までに見つけないと、大変な事になりそうだから‥‥」
 そして美麗は写真の背景にあった公園を睨み、地図を広げて場所を確認するのであった。

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「‥‥チビパンダって思ったほど珍しい動物じゃないのかしら。それに何故このコがこういう道に進んでしまったのかハッキリとさせないとね。ひょっとしてご主人から愛情を貰っていないと感じたのかしら?」
 チビパンダの屋敷を訪れ、シュライン・エマ(しゅらいん・えま)が執事(セバスチャン)にむかって話しかける。
「その可能性は‥‥あるかも知れません。ご主人様は仕事の都合で坊ちゃまと接する時間はほとんどありませんからね。多分、ここに坊ちゃまがやってきてから、一度も‥‥」
 セバスチャンは一瞬困った顔をしていたが、少しでも早くチビパンダを連れ戻してほしいため、エマを見つめて答えを返す。
「そりゃ、グレるわよ。まったく会っていないんでしょ?」
 呆れた様子で溜息をつきながら、エマがジト目でセバスチャンを睨みつける。
「一応、テレビ電話で会話はしているのですが‥‥」
 申し訳なさそうな表情を浮かべ、セバスチャンが困った様子で答えを返す。
「そんなの会ったうちに入らないわ。少なくとも私がパンダの立場なら、それで会ったなんて認めたくないもの」
 あまりにもチビパンダの扱いが悪かったため、エマが不満そうな表情を浮かべてセバスチャンを叱り付ける。
「‥‥そんなものでしょうか」
 ションボリとした表情を浮かべ、セバスチャンが落ち込んだ。
「そんなものよ。本当に分かっていないのね。それじゃ、家出するのも当然よ!」
 セバスチャンがいまいち納得していなかったため、エマが腰に手を当て呆れた様子で溜息をつく。
「‥‥申し訳ありません」
 自分達に非があった事を認め、セバスチャンがペコリと頭を下げる。
「とにかくチビパンダを探してみるわ。‥‥手遅れになる前にね」
 そしてエマはセバスチャンから写真を受け取り、チビパンダの目撃された公園へとむかうのだった。

「意外とチビパンダっていっぱい居るのねぇ。チビパンダ同士の子供ってやっぱりチビパンダなのかしら? ‥‥ブリーダーになったら儲かりそうよね。写真見せてもらっていい?」
 家出中のチピパンダを見つけだすため、大和・鮎(やまと・あゆ)が鬼頭一哉(きとう・かずや)に頼んで写真を貰う。
「‥‥チビパンダの写真か? いいぜ、ほらよ!」
 チビパンダの写真は一哉の手によって焼き増しされており、幼少の頃から今までの写真を束にして纏めてあるようだ。
「あら、アレみたいよね。これによく似たものを見た事があるわよ‥‥。昔、こういうカッコウの猫グッズが流行っていたって聞いたから‥‥。それにしてもリーゼントパンダねぇ。野良パンダグループの中には髪を染めたパンダとか居るのかしら‥‥」
 チビパンダの写真を確認し、鮎が苦笑いを浮かべて呟いた。
「確かアフロパンダにリーゼントパンダ、スキンヘッドのパンダとかいるらしいな。かなり謎だが‥‥」
 つるんでいる仲間達の写真を鮎に渡し、一哉が疲れた様子で溜息をつく。
「うわっ‥‥、スキンヘッドのパンダは駄目ね。太陽の光を浴びて頭に後光が射しているもの」
 あまりの眩しさに視線を逸らし、鮎が大粒の汗を浮かべてツッコミを入れる。
「なんかパンダって言うよりはアザラシだろ」
 スキンヘッドのパンダがあまりにも滑稽だったため、一哉が鮎と顔を見合わせて腹を抱えて笑い出す。
「それって言えてるわね。とりあえず公園に行ってみましょう。ここにいたらパンダ達に妙なイメージがつきそうだから‥‥」
 そして鮎はチビパンダ達の写真を握り締め、一哉と一緒に公園へと向かうのだった。

「ね、ね、イケメンは!? イケメンはいないの!? リュウたんショック! 折角勝負カボパンを穿いてきたのにぃぃぃぃぃ‥‥リュウたんやる気デナーイ」
 お尻部分にある大きなハート模様の中に『裸部or愛(ラブ)』と書かれたいつもと違うカボチャパンツ姿で首を振り、リュウイチ・ハットリ(りゅういち・はっとり)が不満そうな表情を浮かべて久遠美麗(くおん・みれい)に愚痴をこぼす。
「黙らっしゃい! 二日酔いで頭がガンガンしてるんだから!」
 最近バイトでSM嬢を始めた事もあり、美麗がボンテージにコートという格好でリュウイチを踏む。
 しかもハイヒールがSMで使う特殊仕様な事もあり、リュウイチの身体の中に存在するリュウイチポイント(弱点?)を次々と刺激した。
「ああ、ムチ! ムチを! ムチをプリーズ! 女王様っ!」
 恍惚とした表情を浮かべ、リュウイチの口から陽気な魂が抜ける。
「あんた‥‥口からエクトプラズムが出ているわよ」
 エクトプラズムらしき物体を引きずり出したい衝動に駆られナガラ、美麗が高笑いをあげて鞭をピシパシと振り回す。
「おおうっ! 最高っ! エ、エクトプラズムがっ!」
 そのまま昇天しそうな表情を浮かべ、リュウイチの身体がどんどん紫色になっていく。
「ちょっ、ちょっと、こんな場所で死なないでよね! 私が怪しまれちゃうじゃない」
 だんだん野次馬達が集まってきたため、美麗が恥かしそうに頬を染めた。
「みんながリュウたんを見てるっ! ああ、シ・ア・ワ・セ!」
 口からヒョロリと魂が抜け落ち、リュウイチがその場で果てる。
「こ、こらっ! こんな所で死んじゃ駄目よっ! 分かっているの!」
 そして美麗は大粒の涙を浮かべながら、リュウイチの魂を追いかけるのであった。

『この公園でパンダさんを見かけたの〜? いまから会うのが楽しみだねぇ〜v』
 闇に紛れて他の猫達と一緒に公園に向かい、千影・ー(ちかげ・ー)が不良パンダの群れに入る。
 パンダ達は公園のシーソーに寄りかかり、ウイスキーを飲みながら煙草をプカプカふかしているようだ。
『すご〜ぃ、かっこいいーこのりーぜんとどうやってるの』
 チビパンタのまわりをクルクルと回り、千影が興味津々な様子で飛びついた。
『ぐはっ‥‥、いいパンチだな。将来、大物になるぜ!』
 千影の肉球がボディに当たり、チピパンダが血反吐を吐いて親指を立てる。
『このリーゼントはな。‥‥実はヅラなんだ』
 ニヒルな笑みを浮かべながら、チビパンダがリーゼントのヅラを外す。
『ねー、見て〜v チカもリーゼント〜vv』
 妙にアンバランスなリーゼントを頭に被り、千影が嬉しそうにチビパンダに見せる。
『よく似合っているな。‥‥やるよ』
 ポケットの中から煙草を取り出して火をつけ、チビパンダが千影の頭を撫でてクスリと笑う。
『本当に〜vv』
 よほどリーゼントが気に入ったのか、チカがチピパンダに抱きつき微笑んだ。
『ああ、やるよ。俺には必要ないものだからな。今度、見合いをするんだよ。チビパンダの女とさ』
 夜空に浮かぶ満月を見つめ、チビパンダが煙草をふかす。
『ちっちゃいぱんださんおみあいするのぉ? ぱんださん男の子だったんだぁ〜。お嫁さん可愛いといいねvv』
 チビパンダの顔を覗き込み、千影がボソリと呟いた。
『‥‥可愛いだろ? 彼女のためにやり直そうと思うんだ。ダチも分かってくれたしな』
 懐の中から写真を取り出し、チピパンダがベンチに座る。
 チビパンダの持っていた写真は見合い用のもので、チビパンダの女の子が可愛らしくポーズを決めていた。
『いいお友達なんだねぇv』
 チビパンダの横に座り、千影がニコリと微笑んだ。
『当たり前だろ! 親父なんかより‥‥100倍‥‥いや、比べ物にならないほど、いい奴らさ。おっと‥‥お迎えが来たようだな。親父の奴‥‥余計な真似を‥‥』
 そしてチビパンダは煙草を捨て、公園にやって来たエマ達の顔を睨みつけるのであった。

『俺を連れ戻しに来たんだろ? 早く帰ろうぜ』
 寂しそうに顔を俯かせ、チビパンダがポケットの中に手を突っ込む。
「‥‥素直に帰るつもりはないようね」
 エマ達はパンダの言葉が理解出来なかったため、警戒した様子でチビパンダを睨みつける。
『挨拶が遅れたな。俺はジャック。こっちはポールだ』
 彼女が勘違いしているとは予想も出来ず、野良パンダ達がエマの事を取り囲む。
「ひょっとして怒っているんじゃない?」
 エマの耳元で囁きながら、鮎が困った様子で汗を流す。
『そんなに固くなるなよ。兄貴のダチは俺達にとってもダチだからさ。‥‥兄貴をよろしく頼むぜ』
 鮎達が警戒していると思ったため、野良パンダが近くにいたリュウイチを捕まえ肩を叩く。
「のおぉぉぉぉ、リュウたんの肩が‥‥肩が血まみれじゃない! イケメンがいるっていったのに! 嘘つきっ!」
 野良パンダに肩を叩かれ脱臼し、リュウイチが涙目になって美麗を責めた。
「あれ? おかしいわね。確かこの公園にイケメンがいるって聞いたけど‥‥」
 気まずい様子で視線を逸らし、美麗が乾いた笑いを響かせた。
『おっと悪い、悪い! 力が入りすぎちまったようだな』
 リュウイチと美麗が喧嘩を始めてしまったため、野良パンダが間に入って仲裁する。
「まずは俺を倒せって事かしら?」
 警戒した様子で野良パンダを睨みつけ、鮎が困った様子で汗を流す。
「‥‥やるしかないようね」
 何処か寂しげな表情を浮かべ、エマが疲れた様子で溜息をつく。
『ちょっと待って、誤解なの!』
 険悪なムードになり始めてしまったため、千影がエマにむかって訴えかける。
「何て言っているんでショウかぁ?」
 美麗の腕を掴みながら、リュウイチが首を傾げて呟いた。
「誤解だって言ってるわ」
 招き猫の付喪神であるため、美麗が千影の言葉を訳す。
「一体、何が誤解なの! 全治6ヶ月の怪我よ! もうボールを投げる事は出来ないわ」
 大袈裟に右手をプラプラとさせ、リュウイチが涙を流して首を振る。
『なんでオカマ言葉なの?』
 キョトンとした表情を浮かべ、千影が美麗の顔を見つめて呟いた。
「世の中には知らなくていい事があるのよ。それより詳しい話を教えてくれる」
 千影から詳しい話を聞くため、美麗が優しく声をかける。
『実はかくかくしかじかなの』
 しばらく考え込んだ後、千影がチピパンダとのやり取りを簡潔に話す。
「かくかくしかじかじゃ分からねぇだろ」
 その場の空気が読めなかったため、一哉が素早くツッコミを入れる。
「なんで意味が分かるのよ」
 ジト目で一哉を睨みつけ、美麗が不機嫌そうに呟いた。
「俺だってパンダの端くれだぜ! 猫なんて親戚のようなものさ」
 親指で自分の事を指差しながら、一哉がニヤリと笑って胸を張る。
「だったらパンダの言葉も分かるじゃない」
 呆れた様子で一哉を見つめ、エマがボソリと呟いた。
「‥‥あっ、そうか」
 手の平をポンと叩き、一哉が重要な事に気づく。
「本当は馬と鹿のハーフだったりして」
 苦笑いを浮かべながら、鮎がきつい冗談を言う。
「まさか俺はハイブリット怪人なのか。やっぱエリートは違うよな」
 鮎の言葉を褒め言葉と勘違いしたまま、一哉が嬉しそうに頬をかく。
「そんな事よりチビパンダはなんて言ってるの!」
 話が長くなると思ったため、エマが呆れた様子で一哉を睨む。
「‥‥家に帰るってさ。親父のためじゃなく、彼女のために‥‥。相手に恥をかかせるわけには行かないからな」
 チビパンダと会話し、一哉が的確に言葉を訳す。
「結構いいところがあるじゃない」
 ホッと胸を撫で下ろし、エマがチビパンダの事を見直した。
「きっとパンダさんは寂しかったのねぇん。リュウたんでよかったら慰めてア・ゲ‥‥ぐはっ!」
 全身から溢れんばかりの愛を放って両手を開き、リュウイチがチビパンダから必殺のアッパーを喰らって宙を舞う。
『‥‥悪いが男に興味はねえ! それじゃ、出迎えアリガトな!』
 そしてチビパンダはエマ達に別れを告げ、執事達の待つ屋敷へと戻るのだった。
 懐にお見合い写真を忍ばせて‥‥。
 その後、チビパンダのお見合いはうまく行き、パンダ語らしき言葉で書かれた手紙がエマ達に送られてきたらしい。
 ふたりの幸せそうな写真を添えて‥‥。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/ PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 3580/大和・鮎/女/21歳/OL
 4310/リュウイチ・ハットリ/男/36歳/『ネバーランド』総帥
 3689/千影・ー/女/14歳/ZOA

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■         ライター通信          ■
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 どうも、ゆうきつかさです。
 お見合いシーンの行動がなかったため、チビパンダの説得メインで書かせていただきました。