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神の剣 異聞 Invisible Blade １ 飛鷹いづみ編
織田義明はなにか違和感を覚えていた。
平穏の時と、死と隣り合わせの己の宿命。
今の状態は満足しているわけでもない。
「他の人もそうだろうな」
と、独り言。
一人暮らしをしてから数ヶ月。
先天性神格覚醒者というのは、ある意味呪いである。神秘関係を否定する親に気味悪がられ、見捨てられたのだから。
このアパートも、天空剣で退魔行をしたときのバイト代とエルハンドの好意により得られたものだ。
さて、逆の立場の人間と出会えば彼はどう思うだろう？
神秘の出であり、その能力を嫌って思って逃げた人間と……
「直ぐに起こるかどうかはさておき、惹かれ合うだろうか？ 考え方が異なるから敵対するだろうか？」
義明はそう思った。
数日後……
毎度の事ながら退魔行を任された義明は、戦いの中で一人の少年と出会った。
戦いが住んだ後……お互いが見る。
歳はおなじぐらい。
「……」
「……」
「「誰だ？」」
同時に喋った。
緊張、相手は非実体の悪霊を何かで斬っている。
「Invisible Blade……？」
義明が、“彼”の能力（一部だが）を見る……。
「見えるのか？ あんたこそ…その刀はなんだ？」
少年が喋る。
おそらく義明の「水晶」の事だろう。刀身が水晶のように透き通っているためだ。そこから発せられる力は尋常ではない。
彼が警戒してもおかしくはない……。
この緊張感のなかあなたはどうする？
〈保護者気取り〉
飛鷹いづみは、未刀が退魔行をすると言うことで心配しているのだが、やはり素直になれない。
「未刀さん、戦うのは良いですが、初めてあったようにボロボロになって帰って来ては困ります」
「とはいっても、今じゃ其れで食っているわけだから……心配しないで欲しい」
「何を言っていますか。医者を呼ぶのにとても手間がかかるのですよ。私が付いていきます。それにまだ、未刀さん世間を知らないですから」
「付いていくって！ 余計危ないじゃないですか」
驚く未刀。
「大丈夫です」
自信持って言ういづみ。
いづみと言い争っても、一度も勝てたことのない未刀君。
此処はいづみの“わがまま”を聞くほかないようだ。だが、
「でも、僕の仕事だから、いづみはあまり近くにいない方がいい。見えるものだけしか“合気道”で避けられないだろ？」
未刀はいづみの頭を撫でた。
いづみは嬉しいやら恥ずかしいやらだが、此処は素直になってみる。
「はい」
と、いづみは未刀と悪霊が渦巻く路地裏まで付いてきたが、
「沢山居るな、また目覚めて厄介なことにならないよう仕留めないと」
「え？ 見えないですが。しかし、やはり、寒気がします……」
冷凍庫並に冷えている空間。いづみは正直見えないのに此処まで異常な空間は怖いと思うが冷静を装う。
「それも、そうだ。大抵の悪霊集合体はこう言うもの。俺は“見える”から、ココは離れて、温かい飲み物買ってきて」
彼がコートを彼女の肩にかける。
「むぅ」
「さむいといったろ」
そう、言って未刀が“未だ見ぬ刀”を具現化させた。
光がなければ、見えないであろう特殊な彼の能力の刃。非実体である霊などを斬り、封門により鬼などを封じ解放で使役できる。衣蒼の後継者として必要な要素だ。
「はい」
いづみは彼の邪魔はしないためその場を離れ、近くの自販機でホットココアを買っている。
「ふ〜、あつつ」
自分の力は見えるものでないとベクトル変換できないのは確か。
自分のことはさておき、今は未刀が無事で居て欲しいと言うのが本音だ。
――ほっとけないんだから。
と、思っている側から危険な状態に遭遇。
「あ、あの人誰？」
茶髪に黒コートで透き通った刀身を持つ日本刀を構える少年。未刀と同じ歳ぐらい。
周りは見えなくてもわかるが、かなりの緊張感が漂う。
未刀と暮らしていて、殺気なども雰囲気を読めるのだが、幸い殺気はない。
ただ、未刀の目の前にいる少年の雰囲気が怖かった。
漠然と、何か自分の現実さえ超越している事が。
「未刀さん！」
と、急いでこの張りつめた緊張感を解くため未刀に近づく。
「いづみ！？」
未刀は構えたまま声をかける。隙は見せていない。
「連れが居たのか」
「……」
沈黙。
「刃を収めよう……」
「ああ１ ２……」
「３」
未刀と少年は同時に刀を収める。
いづみは安堵した。
しかし、相手の警戒は解いていない。相手の力は異常なのだ。
しかし、悟られまいと冷静を装う。
「此処では何かと面倒ですから、何処か落ちつける場所で話をしませんか？」
いづみが口にする。
「待ってくれ」
と、少年は隅に置いていたギターケースから何かを取り出す。
「？」
いづみと未刀は首を傾げる。
「一応退魔師として、最後までしっかりはしないと」
そう、清めの儀式であった。
儀式はすぐに終わり、少年は立ち上がる。
「ギターケースに入れているなんて可笑しいですね」
いづみが言う。
「ま、細かいことは言わないで」
いづみと未刀が“ああ、なるほど”と思った。
中に、木刀や日本刀、その手入れ用具が入っているからだった。
――退魔法具といえ、武器類は堂々持ち運ぶことは結構困難なのだ。
〈ファミレス〉
茶髪の少年は頷いて、彼女に付いていくことにするが、いづみは警戒を解いていない。
未刀にしては、既に彼が危害を加えることはないと確信しておりリラックスしているようだ。
２４時間ファミレスがあるのは幸いであり、そこで適当な夜食を頼む。
未刀がデザートで凄く悩んでいるところ、
「未刀さん、其れより早く選んで下さい」
「あ、そ、そうだな。じゃ、コレと〜」
と、いづみに叱られる。
それを優しそうに見ている茶髪の少年。
「なにか、おかしいですか？」
いづみが努めて冷静に言う。
「仲が良い兄妹だね、と思っただけさ」
少年が言った。
少し恥ずかしいし嬉しい気分になるいづみだが、顔に出さないようにしている。
「ありがとうございます。ではお互い名前も知らないから自己紹介と言うことで良いでしょうか？」
「構わないよ。じゃ、俺から。天空剣剣士織田義明。それ以外じゃ只の高校生、能力以外はね」
「私は飛鷹いづみです」
「衣蒼未刀」
と、それぞれ自己紹介。
「あの、天空剣とは何なのでしょうか？」
いづみが義明に訊く。
「ああ、只の真剣を扱う武道流派名でもあるけど、剣道のような試合などはしてない。刀でモノを斬る事専門の居合いに近くて遠いものと思えばいい」
嘘は付いていないようだ。
「その能力とは？」
「嘘つきと思えば其れで良いけど、俺一寸した神様。願いなど叶えられないけどね」
「……」
のっけからそんなこと言われて信じられるはずはない。しかし、義明から言われた言葉に何故か真実であると納得してしまう。
「神？」
未刀は反応する。
「ああ、だからあの剣とあんたに異常な程力があったのか。本気でやると街１つは破壊できるぐらいだった」
未刀は警戒の理由を納得したようだ。
「世界を変えるほどの力を持つと、世界の制約上できないけどね」
食事が運ばれ、会話がゆったりと進む。
「本当の兄妹じゃないみたいだけど、仲良しでいいね」
「僕が知らないことをいつも教えてくれる」
「未刀さん世間知らずですから」
すこし、不機嫌そうないづみ。
「「悪霊と戦って見ていたけど……」」
と、義明と未刀が同時に言った。
「未刀から」
「ああ、あの太刀筋はかなり実戦慣れしているとおもうけど」
カレーを食べる未刀。
「それは、生死を彷徨っている戦いが多かったからね。一度死んじゃったけどさ」
と、義明が焼き魚を食べて笑っている。
良い雰囲気で未刀と義明が談笑している所（剣技の話らしいが）、
「義明さんはどこか、そう言った“家”の出なのでしょうか？」
いづみが訊いた。
「いいや。家族親戚に“退魔の家”はいないよ」
あっさり答える義明。
「では、どうして、そんな力を持っているのでしょうか？」
「幼なじみが神社の子で、縁で神社を道場として借りている天空剣師範から剣と力を教わった」
と、義明は思い出話のように語り始める。
「僕と違うな……」
未刀が答える。
そして、未刀も少しだけ身の上話をした。
「なるほど。殆ど正反対だ。でもお互い生きて此処にいる。縁だね」
義明はにっこり微笑む。
「ああ、そうだ」
未刀も彼に通じるモノがあったらしく、笑う。
いづみにも見せていない笑顔で。
いづみ自身気付いていませんが、すこし膨れている模様。
「未刀さん、デザート決めましたか？」
と、いづみは話に割り込む。
「あ、そうだった」
「此処のファミレスはチーズトルテがお勧めだな」
義明が言う。
「そうなのか？」
「ああ、前に食ったことがあるからね」
「私はチョコパフェが良い感じとおもいます」
と、何とはなしに、３人の共通話題になっていく。
いづみにとって其れは些細なつまらない話題なのだが、ついつい話をしてしまう。
「あ、悩んでる。悩んでる」
義明が笑う。
「う、うるさい。ああどうしよう。どれにしよう」
未刀がメニューを見て悩んで文句を言っている。
「だから、何故そこまで悩むのですか？ ラストオーダー近いですよ」
いづみも溜息付いていた。
〈気付かない感情〉
ファミレスの代金は義明が払うことに。
「済みません。奢って貰って、ありがとうございます」
お礼を言ういづみ。
「いいよ、知り合ったと言う記念だ。ま、気をつけて帰った方がいいよ」
「大丈夫です。ありがとうございます」
「そうか、“兄”が居るからね」
にっこりと笑う義明。
「“兄”って僕？」
「君以外に誰が居る？ 血が繋がってなくても仲がよい兄妹で微笑ましい」
「そ、そんな……」
赤面するいづみと未刀。
ここでいきがることもできない。
「じゃ、また。おやすみ」
と、義明は未刀に名刺を渡した後、夜の世界に消えていった。
「兄妹だって」
未刀がいづみの頭をなでる。
「……」
何か言い返したかったが、未刀に撫でられるのが嬉しいのでなすがままになった。
数日後。
「え！？ 彼の道場に向かうのですか？」
「あ、うん。いづみ、な、なにかわるい？」
かなりの剣幕のいづみに未刀は驚いている。
「確かに連絡先を貰いましたけど、あ、お礼もしなくちゃ行けません」
「遊びに行くだけじゃないか」
未刀が言う。
「いけません。前に奢って貰ってそのお礼無しでは失礼になります！」
と、慌ただしくいづみは自分の部屋に向かう。
「何か悪いコトしたかな？」
頭をかく未刀。
何故彼女が怒っているのかよくわからない。
実際彼女自身もわかっていない。
「未刀さん、一緒に行きましょう」
しっかりおめかしした、いづみちゃんが現れる。
「ああ、わ、わかった」
２人はまず差し入れ（酒は未成年購入禁止なので甘味に）を買い、義明がいる長谷神社に向かった。
もちろんいづみが彼に連絡してからであるが。
「ごめんください」
と、２人で挨拶
「あ、ようこそ、連絡入れてくれてありがとう」
「いらっしゃい。あら、かわいい♪ 妹さん」
義明と、彼と同い年らしい巫女が迎えてくれた。
穏やかな、晴れの昼下がりのことであった。
To Be Continued
■登場人物
【1271 飛鷹・いづみ 10 女 小学生】
【NPC 織田・義昭 18 男 神聖都学園高校生・天空剣士】
【NPC 衣蒼・未刀 17 男 妖怪退治屋（家離反）】
■ライター通信
滝照直樹です。
『神の剣 異聞 Invisible Blade １』に参加して下さりありがとうございます。
いづみさまの毒舌や未刀君に対しての想いを巧く表現できたか、かなり考え描写しましたが如何でしたでしょうか？
そして、初参加ありがとうございます。
では、次回の２話目に参加して頂ければ幸いと存じます。
滝照直樹拝
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