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創詞計画200X:CODE00【SIDE S】
■序(あくまで抜粋)■
声が聞こえる……。
声のようなものが、彼に囁きかけている。
声が聞こえる……、
言葉のようで言葉ではない、
それは
ン――――――ンンン――――ンン――――――――ン、
そんな振動と音楽のようなもの。
彼は被害者の指に被害者の血をつけ、現場にメッセージを残していく。
天使を見た、
と。
2004年の夏、日本に多大な被害をもたらした台風23号。
それに匹敵するほどの巨大台風13号が、この年、小笠原諸島を直撃していた。
ひどい冷夏のはじまりだった。
そしていま、台風に代わって小笠原諸島を蹂躙しているのが、白色の巨大生命体であった。エイにも見え、鳥にも見え、戦闘機にも見える、奇妙な生物だ。翼状のものを広げた状態で、およそ全長60メートルはあるものと思われた。
はじめのうち、マスコミは映画ばりにその生物を「怪獣」と称していたが、やがて「生命体」という表現に落ち着いた。
白い生命体は小笠原諸島のうちのひとつの島を執拗に攻撃していたが、呆気ない最期を遂げた。
出現したその日のうちに、海上自衛隊の砲撃によって死んだのだ。
国と自衛隊の行動は、平和慣れした日本のものとは思えないほど迅速だった。
しかし、ここは北海道――
多くの住民が台風を心待ちにしているような節さえある、呑気な土地だ。いわゆる『ナイチ』で起きた事件は、多くの場合、まさに『対岸の火事』なのであった。
さすがに巨大生命体への関心は大きかったが、海上自衛隊によってその存在が難なく退けられたと知ると、道民の目はたちまち他のニュースに移った。
半年ほど前から、札幌では血生臭いバラバラ殺人事件が相次いでいたのだ。
残虐極まりない殺人は、これまでに3件起きていた。同じような手口から――多くの人間は知る由もないことだが、真似ることなど出来ない手口だった――3件の殺人はすべて同一犯、<切断魔>の手によるものと考えられている。
その<切断魔>は、白い怪獣が呼んだ混乱の陰で、ひっそりと4人目の犠牲者を切り刻んでいた。
彼は今日も、『ママ・セッド』で髪の毛を切断している。ちゃちゃっ、と鋏を回してみせて、彼は視界に次の標的をとらえるのだ、
「どうぞ、次のお客さま。ええと……深町葵さん」
ヒュー・メタリカ、
髪を青く染めた、アメリカ生まれのイギリス人の壮年だ。彼は流れの腕利き美容師であって、けっして殺人鬼ではない。表向きは。
「――どうぞ。僕が切りましょう」
『ママ・セッド』は怪獣騒ぎの翌日も客入りは良かったが、それでも、そこそこの数の予約がキャンセルされているらしい。一日中テレビでいまの状況を確かめておきたい人間もいるのだ。いかに呑気な北海道といえども。
指名を1件キャンセルされたメタリカは、順番待ちをしていた客のひとりを担当したのだ。彼女は、幸運だった。ほんの30分で、セミロングだった彼女の髪は、ショートシャギーに変わっていた。若い女子大生の彼女に、その髪型はひどくよく似合う。
「お疲れさまです。さ、どんなもんでしょう」
「すっごくいいです! なんか別人みたいになっちゃったけど!」
「葵さん、でしたね。髪、すごく痛んでます。ブリーチはほどほどにしたほうがいい。この感じ……パーマかけたその日のうちに、ご自宅でブリーチされましたね」
「……はい。やっぱりマズイですかねー」
「マズイです。せっかい良い髪質のストレートなのに、勿体ない。しばらくトリートメントしてあげて下さい」
「はぁい」
「また機会がありましたら、よろしくどうぞ」
「はぁい!」
会計を終えて意気揚々と帰っていく女子大生を見送り、メタリカは顧客名簿に目をやる。
深町葵。
■『能力者の手』■
殺人課の嘉島刑事に面会を求めたはずが、マリオン・バーガンディが丁重に連行された先は、物々しい道警本部だった。マリオンが車の送迎など必要ないと訴えても、警察の融通はきかなかった。マリオン・バーガンディは、まるで自分が<切断魔>となり、逮捕でもされたかのような気分にさせられていた。それはそれで、彼にとっては不愉快どころか、なかなか興味深い境遇なのであったが。
本部でマリオンを出迎えた嘉島は、彼が初めて会ったときよりも、若干やつれているようだった。その彼にまず頭を下げられて、マリオンは少しばつが悪くなった。
「すまんね。お上からのお達しで」
「私を本部に連行せよというのが、ですか?」
「いや。あんたの協力を仰げというのが」
嘉島は身を屈め、小柄なマリオンに耳打ちする。
「IO2ってなんだ?」
マリオンは苦笑するより他はなかった。
なんでも札幌には、マリオン・バーガンディのほかにも、<切断魔>事件の調査をひそかに行っている民間人がいるらしい。少数では、あるのだが。道警はIO2の命令を受けて、そういったにわか探偵を泳がせている状態らしい。
マリオンは容易に、警察が持っている情報を得ることが出来た。嘉島から差し出された資料を手にし、マリオンは手帳にペンを走らせ続けている。
「足から輪切りにされてる」
「生きているうちからですか?」
「どうもそうらしい」
「生活反応というやつですね」
「ああ。酷い奴だ。しかし、おっそろしいほど短時間で――まあ、アッと言う間に――輪切りにしてるらしい。レーザーメスでもああキレイには切れないそうだ。手段がさっぱりわからん」
「想像もつかないような方法ですよ」
マリオンは呟いてから、付け足した。
「たぶん」
「……ま、何にせよ、4件の殺人は手口が一緒だ。そんな想像もつかないような方法が誰にでも出来る方法だったらこっちはたまらん。同一犯の犯行と見てるよ」
「でしょうね。現場は4件とも……ばらばらですか」
「共通点はないな」
「札幌市内で起きている、ということだけ」
「札幌っつっても広い」
「人も多いです」
「ああ」
嘉島はうんざりした溜息をつくと、短くなった煙草を灰皿でねじ消した。彼は、ほとんど煙を吸ってはいなかった。会話の中で、いつしか、煙草は吸えなくなるほど短くなっていたのである。
「被害者4人の共通点も、ない」
「そうでしょうか?」
マリオンは資料から顔を上げなかった。
「今のところはな。だから、こっちは総動員で共通点を探してる。忙しいんだ、猫の手も借りたい」
嘉島はマリオンの顔を見つめて、ぼんやりと笑った。
「謎の民間人の手も」
何の変哲もない公園だった。4人目の犠牲者の命が絶たれたのは。
そして、坂城朗がいま立っているのは、3人目の犠牲者が発見された場所だった。ここもまた、まったく何の変哲もない道ばただった。彼女はファイルと現場を交互に見つめ、ふう、と大きく溜息をつく。この様子では、1人目と2人目が死んだ現場も、そう特別な場所にはなりそうもない。
「肝心なのは中身、って言いたい?」
連続殺人事件の3人目の被害者は、19歳の主婦だった。18歳で出産し、同年、結婚している。今流行りの『順番を間違えた』結婚だ。しかし、子供を産めば大概の女性は落ち着くもので、死んだ彼女も殺されるまでは、遊び呆けるのをやめて真面目に育児と家事をこなしていたらしい。最近では、浮いた噂もないようだった。
「けれど……殺された」
朗は生前の被害者の写真を見つめ、もう一度溜息をついた。写真の中の被害者は、アニメの登場人物ばりのピンク髪だった。
「しかしすごい髪の色だな」
朗の背後から、声があった。
「<切断魔>の餌食になった女性だな。気の毒に」
いささか前時代的な表現を使い、中年の男が手を伸ばして、朗の手から写真を取った。朗が尋ねる前に、彼は名乗った。
「藤井雄一郎だ、よろしく」
「<切断魔>でも追いかけてる?」
「おう。近所の若い子が殺されてな」
軽口のわりに、雄一郎の目には、暗い悲しみと怒りの光が宿っていた。
「この街には、怪獣より先に何とかしなきゃならんものがある」
朗はそれを聞いて、無言でこれまでに集めた写真を彼に手渡した。どれも若い女性のものだ。一枚は、ファッション雑誌の切り抜きだった。
「みんな輪切りにされて見つかったのよ」
「輪切り?」
「マスコミはそこまで報道してないけど……輪切りなのよ。すぱすば斬ってる。何使ってるのか知らないけどさ」
「……能力者か」
ぴく、と朗はそこで眉を跳ね上げ、雄一郎を見た。
「……何かおかしなこと言ったか、俺?」
「べつに。ただ、40代のひとにしてはアタマが柔らかいな、って思っただけ」
「超常現象は何かと信じるタチでな」
雄一郎はふと屈みこみ、道に落ちていた雑草の葉を拾い上げた。
「俺そのものが超常現象だから」
「……じゃ、一緒に行く? 共同戦線ってやつでも、張りましょ」
初めて、朗は笑みを見せた。切れ長の目が見せる、涼やかなものだ。彼女は雄一郎の手の中で、草が伸び、小さな白い花を咲かせるのを見たのだ――。
続いて、2件目の殺人事件の現場に赴いたふたりは、そこで、新たな探究者と出会うことになった。謎めいた笑みをはじめから湛えた青年で、
「はじめまして」
九尾桐伯と、名乗った。
「『ママ・セッド』?」
「ええ」
桐伯が挙げた店名に、雄一郎と朗は口を揃えて訊き返す。桐伯はにこやかに頷いた。
「ご存知ありませんか? 美容室ですよ」
「私、ここの人間じゃないから」
「俺ァ、美容室なんかに縁ないからなア」
バーテンダーをやっている、と雄一郎と朗に言った桐伯は、見事なほどに長い黒髪を持っていた。常連でもなく、美容室にこだわりを持っているわけでもない彼だったが、つい先日『ママ・セッド』で髪を整えたのは確かだ。
「私の知人が、そこで気になる美容師さんを見つけましてね」
「そいつが犯人なのか」
一見荒唐無稽な雄一郎の質問だったが、桐伯は嘲笑うことなく、真顔で頷いた。
「そうだと思いますよ。ただ、残念ながら――」
「証拠がない、か」
■ママは言う、そんなパーマは変だと 死のう■
「怪獣だってさ、東京」
『ママ・セッド』。
美容室。
「あれ特撮とかじゃないんだー、すごいじゃん」
いつもはポニーテールにしている髪を、今はさすがに下ろしている。ここは美容室で、風見真希は客なのだ。少し、独り言が大きい客だ。
「あたし友だち東京にけっこう居るんだよなあ。東京、なくなっちゃったりしたらどおしよ」
言いながら、彼女はテーブルの上の器に入っていたキャンディをごっそり鷲掴みにし、ポケットにねじ込んだ。もちろん、その中のひとつは封を破り、すでに口の中に放り込んでいる。
「ほんと、どおしよ。札幌は札幌で殺人鬼だしさあ」
「怪獣よりは殺人鬼のほうがいいでしょう。人の力で何とかなりますから。――とりあえずシャンプーしますので、どうぞこちらに」
「あーい。……てかさ、一応怪獣、自衛隊がやっつけたんでしょ?」
「みたいですね」
「怪獣騒ぎあった日、ここ営業してた?」
「してました」
「あー、その日に来ればよかった。ここって混みすぎ」
「はは、どうも、おかげさまで」
顔にかぶせられた布が取られたとき、風見真希の視界に入ったのは、ヒュー・メタリカの笑顔だった。
そして彼女の聴覚がとらえたのは、何とも耳障りな、あの――
ン――――――ンンン――――ンン――――――――ン、
振動のようなもの。
真希は顔をしかめて、耳元を叩いた。
「あ、すみません。水……入りましたか?」
「うーうん。なんかさー、ちょっと前から耳鳴りすげーの」
「……耳鳴り?」
「そ。もう、ウザいったら。水入ったんじゃないよ、大丈夫。気にしないでバッチリ決めてよ」
「お任せで?」
「あんま短くしないでくれれば」
「はい、了解」
ン――――――ンンン――――ンン――――――――ン…………
ヒュー・メタリカの笑顔は、本物だ。営業用ではない、本心からのもの。風見真希には、それが伝わっている。
だが、何故だろうか。
どこかその笑顔は、危ういのだ。
「なんかさー、あの怪獣、天使みたいだって言ってるひといたよね。テレビでだけど」
「いましたか?」
「そ。ま、白い鳥に見えなくもないけど。まあ……天使……一理あるって言うのかなあ?」
「どうして?」
「天使ってさ、聖書とかに書いてある通りのカッコだとしたら、なんかバケモンみたいなのばっかだよ。知らない?」
人の顔、鷲の顔、獅子の頭に牛の顔。千の手。身体を覆い隠す翼。焔の剣、無数の視線。
真希は、嘘をついていない。
天使の姿は、人間離れした神々しさを放っている――。
しゃきん、ちゃきん、しゃ、きん……。
ぱさり、と真希の手元に黒々とした髪がひと房落ちた。随分な長さで切られたものだ。そのひと房だけが、メタリカのこれまでの仕事の中で、唯一の歪みだった。真希は鏡の中のメタリカを見つめた。ヒュー・メタリカは――表情を変えていないようだった。
「……天使は、確かに、人間と同じ姿をしているとは限らない……」
彼はどこか力なく呟いて、鏡の中の真希に目配せをした。
「けれど、お願いです。天使を怒らせないでやって下さい」
「――は?」
メタリカは真希の疑問に答えず、彼女の首からケープを外した。鏡の中、真希は自分の髪がすっきりと軽くなっていることに満足し、天使の会話を束の間忘れた。ヒュー・メタリカの腕は確かだった。
ン――――――ンンン――――ンン――――――――ン…………
……ただ、あの振動音は、鬱陶しいままだったが。
そうして『ママ・セッド』を出た風見真希を呼び止めたのは、癖のある長髪の男だった。
「はじめまして」
彼は、九尾桐伯と、名乗った。
「よくご無事で」
「……は?」
「ヒュー・メタリカは危険人物ですよ」
「いきなりそんなこと言うあんたも結構――」
「はは。まあ、それもそうです。しかし、あなたがカットされている間、私は気が気ではなかったのですよ。耳がいいもので、お話の内容も筒抜けでしたし」
「……ああ。天使の話? メタリカさん、まあ、ちょっとは変わってるかもしんないけど、そんな危ないやつなの?」
「そう、私は睨んでいるのですがね。<切断魔>……ご存知でしょう?」
真希は、気がついた。
『ママ・セッド』に、余談なく視線を送る男たちが何人か、人ごみや陰に隠れて息を殺している。桐伯は微笑むと、真希が手にしていた『ママ・セッド』のメンバーズカードを示した。
「警察もようやく動いてくれました。<切断魔>が殺してきた被害者は、皆それと同じものを持っていましたよ」
「あたしも標的候補なわけ?」
「可能性はあります。あとは、犯人が何をきっかけにして犯行に走るのか……それがわかれば、いいのですが」
ついでに、と桐伯は営業をした。自分が経営するバー『ケイオス・シーカー』札幌店のフライヤーを、ちゃっかり真希に手渡したのだった。
■(事件当夜)■
絶え間なく続く振動は、青い髪のあの男が背負っている……発している。
女をじっくりと料理するように――男は女を、つま先から切断していくのだ。マリオン・バーガンディが携えたハンディカムはそれを冷静に記録していく。
男は、女の口を塞いでいた。ずっと塞いでいた――悲鳴を封じるためか――或いは、聞きたくなかったのか。
もとより黒ずくめのその姿は、いまや血でぐっしょりと濡れていたが、夜の闇の中で、赤という色はあまりにも無力だった。
ン――――――ンンン――――ンン――――――――ン、
ン――――――ンン――――――――ン g. g. g.
ン――――――ン―――――――― d,
「……!」
青い髪の男が……『本来ならばここには居なかったはず』のマリオン・バーガンディに気がついた。ゆっくりと振り向いた彼は、日本人ではなかった。その灰の目が、有り得ざる自分をとらえたとき、マリオンはその時間軸から脱するより他はなかった。
手にしていたハンディカムが、音もなく切断されたのだから。
残していたデータも、斬られてしまった――。証拠と呼べるものはなくなってしまった。しかし、マリオンは、闇の中に浮かび上がった犯人の顔を忘れない。彼は、すべての時間と場所を訪れることが出来る――だが、怒ってしまった事象に手を加えることは、自ら禁じていた。自分は、神にはなれないし、神そのものでもない。
――だからせめて、あなたのことを忘れない。
青い髪の男は、決して、楽しみながら殺しているわけではなさそうだった。必要に迫られ、駆り立てられて、恐らくは生来持っている力を振るったのだ。
ン――――――ンンン――――…………
――生まれ持った運命に苦しむ気持ちは、わからないでもないけれど……。でも、どうして……殺すのです……?
マリオンが忘れられないのは、犯人の顔だけではない。
足から自分の身体が輪切りにされていくさまを見つめ続けていた女性の顔もまた、忘れることなど出来そうもなかった。
■東京の事変、花の報せ■
小笠原諸島を訪れた怪獣騒ぎが、ようやく落ち着きを見せた頃のことだ――。
「怪獣が来た日に、気になることが起きてな」
雄一郎はプリントしたデジカメのデータを朗に山ほど手渡した。どれ、と眉をひそめる朗の目に入るのは、翠、翠、翠……花。
「花がどうかした?」
「うちの店の花と草だ」
「へえ、花屋なの? 意外」
「それはともかくだ、気がつかないか」
「……」
「全部同じ方向を向いてるんだ」
真顔の雄一郎を、朗は真顔で見つめ返す。
「植物って太陽のほう見るもんでしょ?」
「日陰のシダ類も、揃って一晩で南南西を向いてた。そんなことは初めてだった」
雄一郎はついで、ハンディカムを取り出した。何でも持ってるのね、と朗が呟く。
「それが今朝、また、同じことが起きてた」
植物たちが異常な動きを見せて以来、雄一郎はカメラを店内にセットして、目を離している間も記録をとり続けていた。怪獣騒ぎがあってから、植物たちは再び思い思いの方向に顔を向け、雄一郎の手を離れていったり、新しく生まれたりしていた――
そうして、今朝、またしても『奇蹟』は起きたのだ。
店に出た雄一郎は、植物たちが揃って同じ方向を見つめ、
h.9
囁くのを、聞いたのだ。
「……これ、ずっと回しっぱなしにしてたの?」
「間違いない。女房も夜に店には入っていないはずなんだ」
データは、不可思議な白銀いろの光に包まれている。
植物たちが一斉に同じ方角を見る、その瞬間のデータは――ノイズと光に邪魔されていた。画像の乱れがおさまり、再びフラワーショップの店内が映し出されたとき、咲き誇る花々と青々とした葉は、揃って南西の方角を見つめていたのである。
「原理はわからんが……ともかく……この現象が起きたとき、怪獣が出てきて……」
「<切断魔>が人を殺したのね」
雄一郎と朗は、顔を見合わせた。
ふたりは、真顔だった。
静かな市立図書館の中が、やがて、ざわめきにのまれていく。
白銀いろの怪獣が再び現れ、東京を目指しているという報せが、札幌をも揺るがした。
<続>
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登場人物(この物語に登場した人物の一覧)
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【0332/九尾・桐伯/男/27/バーテンダー】
【2072/藤井・雄一郎/男/48/フラワーショップ店長】
【2556/坂城・朗/女/25/美大助手】
【3995/風見・真希/女/23/大学生・稀に闇狩り】
【4164/マリオン・バーガンディ/男/275/元キュレーター・研究者・研究所所長】
【NPC/ヒュー・メタリカ/男/38/美容師】
【NPC/深町・葵/女/19/大学生】
【NPC/嘉島・永智/男/46/刑事】
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ライター通信
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モロクっちが創り出す新たな異界、『創詞計画200X』の世界へようこそ!
大変お待たせしました。第1回をお送りします。皆さんも風邪にはお気をつけ下さい(笑)。
さて、札幌編は東京編よりも時間がゆっくりと流れています。第2回の時間軸は、東京編と違うのでご注意下さい。札幌編第2回は、<メロウ>『キラーズ』出現の日が主な舞台となります。メタリカは神レベルの強さというわけではありませんが、デジカメを一瞬で『切断』するわけで、普通の人間ではありませんので(笑)、ご注意下さい。
東京編に比べて地味な滑り出しですが、こちらの物語も追っていただければ幸いです。
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