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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


CHANGE MYSELF!〜時を越えた復讐〜


 東京の繁華街・渋谷に金髪で長身豪腕の男が歩いていた。彼の名はレイニー・ブラスト。多くのセキュリティーサービスらしき男に囲まれ、彼はある高級レストランへと足を向けていた。その剛健な男の正体は、なんと世界に名立たる剣士である。年は三十路を過ぎたあたりだろうか。街を行けば誰もが振り向くほど身の丈がある。彼はある目的で誰にも告げずに日本へやってきた。今ごろ、彼が籍を置く組織では大騒ぎになっているだろう。
 レイニーは異能力者を優れた人間として用い、世界の覇権を握ろうとする『アカデミー・オセアニア支部』の教頭だ。普通なら東京の某所に存在する日本支部に足を向けるべきところではある。しかし彼は今日、仕事でここに来たわけではない。レイニーは誰にも言えぬ激情を胸に秘めていた。ヨーロッパの名門であった頃の由緒あるブラスト家のことだけをただひたすらに思っていた。

 変遷するヨーロッパの歴史の中で忠節の剣を振るったとされる騎士の中に『スクィージ・ブラスト』という名が残されている。彼はレイニーの先祖であり、指折りのサーベル使いとしても有名な人物だった。スクィージは激しい戦乱を乗り切るために、密かにある研究を行っていた。それは自慢の腕前であるサーベルに魔力を通しすべてを斬るという魔術を用いた剣技『魔導剣』である。努力の末、それは完成した。だがそれを待っていたかのように、スクィージはある魔女に暗殺されてしまう。そして魔導剣の成果をすべて奪われ、魔法と剣を操る最強の騎士は日の目を見ずに消えたのだった。戦乱の色が濃くなるにつれ、主のいなくなったブラスト家は周囲から忘れられていく。一族はただ没落していくのみであった。結局、ブラスト家の名声はこの代で地に落ちた。
 しかし魔導剣は密かに子孫へと継承されていた。スクィージが別の書物にその奥義を残していたのだ。息子たちは悔しさを胸にその技を鍛え、今のレイニーの代までそれを守り通した。その間、人の知らない影の世界で貴族であるプライドをかなぐり捨てていくつもの仕事をこなした。そのおかげでブラスト家、そして魔導剣の名は不動のものとなり、現在ではアカデミーに迎えられ昔のような華やかな生活を保証されている。彼はアカデミーの待遇に満足していた。
 だがある日、彼は知ってはならないことを聞いてしまった。日本支部で教頭を務める『レディ・ローズ』はヨーロッパの戦乱を生き抜いた魔女であるという部下の噂話を小耳に挟んだのだ。彼は杞憂と知りながら、親たちから伝え聞いたことを頭の中で整理する。没落の原因となったのは名もなき魔女のせいだと聞いていた。まさかという思いで信頼できる部下たちに日本支部にやったところ、信じ難いことではあるが彼女がスクィージを殺した犯人である可能性が高いという結論に達っした。相手は魔女を自称している。ある秘術を自分の施すことで今まで生き長らえていたとしても何の不思議もない。レイニーはその報告を信じ、東京に向かう決心をした。もちろん宿敵『レディ・ローズ』を倒すためである。

 すでにアカデミーの情報網で『レイニー来日』の報は伝わっているだろう。だが、彼は逃げも隠れもしない。ただ、先祖の仇を取るためならいつでもどこででも戦うつもりだった。ところが、この情報は『絆』にも伝わっていたのだ。絆のメンバーは数人の仲間と通行人を装い、彼らの横を通り過ぎる。その中に混ざっていた霧崎が頭ひとつ大きいレイニーを見て驚いた。

 「大きいな〜。あれでサーベル使いか。このレイニーはレディ・ローズと必ず敵対する。もしかしたら日本とオセアニア、ふたりの教頭を一気に倒すチャンスかもしれない。さて、ここは皆さんにご協力願わないとな。」

 レイニー率いるオセアニア支部軍団に、日本支部を束ねるレディ・ローズ。そこに『絆』が加わる複雑な構図。果たして最後に笑うのはいったい誰なのか。運命の瞬間は海の側にある草原で行われる。すでにレイニーが魔女に果たし状を送っているのだ。時間になれば彼女は現れるに違いない。部下とともに最後の晩餐をするつもりなのか、彼らはレストランから長い間出てこなかった。もちろん外には『絆』のメンバーがその様子を伺っている。ゆっくりと時間が過ぎ、日は傾いてそのまま沈みそうな勢いだ。それでも彼らは出てこない。見張りの青年は首を傾げた。


 「絶好のチャンスだ」と声を弾ませる霧崎を心配し、集合場所からかなり離れたところで落ち合う約束をしたのは天薙 撫子だ。霧崎は決闘すると目されている場所で合流するつもりだったが、事情を聞いた彼女がそれを嫌がった。協力をお願いする立場上、ここは自分が折れるしかない。結局、そこから2キロほど離れた自動販売機の前でふたりは顔を合わせた。海水浴にはまだ早いこの季節、海岸に向かう車や人は極端に少ない。しかも、もう夜になろうとしている。霧崎は目印の自販機で買ったコーラを飲みながら彼女を待った。
 すると撫子はいつもの艶やかな和服姿でやってきた。その姿は自販機のライトで半身だけ照らされている。手にはいつものように御神刀『神斬』を携えていた。戦う気は十二分にあるのに、なぜこんな場所を指定してきたのか。それが霧崎の疑問だった。彼はさっそく理由を聞く。

 「撫子さん。ここからだと草原が遠いんですが……」
 「そうですわね。もしかしたら、お電話ではわたくしの言葉足らずで誤解を招いたかもしれません。それは謝ります。ですが今回の件は霧崎様が思うほど簡単なことではないように思えるのです。事情がかなり込み入っているようですし、日本支部の教頭であるレディ・ローズの実態はまだはっきりとしていない。この状況で性急にことを進めるのはいささか問題があると思いますわ。」

 理路整然とした彼女の言葉に思わず息を呑む霧崎。そして先のレディ・ローズとの戦いを思い出し、防戦一方となった事実を今一度受け止めた。確かに彼女の能力は周知の事実となってはいるが、打開策まではまだ見出されていない。それにレイニーが操るという『魔導剣』も秘密のヴェールに包まれている。漁夫の利を得ようとしても、結局はどちらかと戦うことになるのだから苦戦は必至……と霧崎にそこまで考える間を与えてから、撫子は改めて言う。

 「わたくしはレイニーさんの長き時を越えた復讐を止めるつもりはありません。彼とレディ・ローズは存分に戦われたらよろしいと思います。逆にそれを邪魔する権利は何人にもないでしょう。ですから、決闘をしている間はふたりの戦法を遠くで観察したいのですが……」
 「アカデミーの連中がそれをタダで見せてくれると助かるんですけどね。もしかすると戦いに付き合わされるかもしれませんよ?」
 「それはその時に考えましょう。戦いの中でも相手を冷静に見ることは戦いの基本ですし、横目で見る分には誰も文句は言いませんわ。」
 「減るもんじゃあるまいし、か。わかりました。我々は見る方に徹しましょう。ではそろそろ参りましょ」

  ピリリリリリリリ、ピリリリリリリリ……
 「おっと、ケータイが……すみません。ちょっと待っていただけますか。はい、渉で……なんだって、レイニーがいない?!」

 電話の主はレイニーを監視していたメンバーの男だった。あまりにも食事が長いので店の中に潜入すると、彼らはかなり前に裏口から出ていったらしい。抜け出した時間から考えると、彼らはもう決闘の場所に着いている可能性もある。絆の追跡はとっくの昔にバレていたのだ。霧崎は悔しさを随所ににじませながら「わかった」と言って乱暴に通話を切ると、電話の内容をすべて撫子に話した。

 「状況はどうあれ、わたくしたちは落ちついて行動すればいいでしょう。しかし開演時間に間に合わないというのはよくないですわね。」
 「途中入場は演技者に失礼ですからね。そろそろ行きましょうか。」

 ふたりはマジメな顔をしながら冗談混じりにそんなことを話すと、自販機から海の方に向かって走っていった。幸いなことに、空には大きな円を描く月が目の前を明るく照らしている。とりあえず暗闇で視界を遮られることはないだろう。ふたつの影は長く伸びていくのだった。


 まんまと絆を出し抜いたレイニーはすでに草原にいた。直属の部下4人とともにレディ・ローズの出現を待っている。なんと言っても相手は魔女。何をどう仕掛けてくるかわからない。部下たちは目を皿のようにして警戒する。
 するとその草原のど真ん中を堂々と歩いてくる長身の男性がいた。右手には派手な装飾が施された剣を携えているが、埋めこまれた宝石には光沢がなく明らかに模造品であることがわかる。部下たちはサーベルに手をかけ身構えるが、男からは警戒心も殺気がまったく感じられない。レイニーは魔女の手先かと思いつつも部下を抑えて自らが前に出た。

 「青年よ、ここは君の来るような場所ではない。早々に立ち去るがよい。」
 「まだ待ち合わせの時間には早いようですね。結構なことです。レイニーさんとお見受けしますが……」

 クールな外見からは想像もつかないほど紳士な態度を取る青年だったが、その口から発せられる言葉は相手を警戒させるには十分すぎた。とっさにサーベルを抜き、剣先を青年に向けて威嚇する。そしてゆったりとした動作でレイニーも武器に手をかけた。

 「魔女の使いではなさそうだな。名を聞こう。」
 「私は広瀬 和彦。そしてまたの名を断罪天使アーシエル。貴様とは一度手合わせをしたかった。今こそ勝負だ……!」

 レイニーたちは奇妙な感覚に陥っていた。広瀬の言葉だけ聞くのなら特に悩むことはない。だが目に見えない部分で大きな変化が生じていた。胸の奥から沸き立つ力は全身へと満ちていき、それは手にした剣にまで及ぶ。そして敵と同じく剣を抜いたアーシエルこと広瀬はその恐ろしく鋭利な刀身で自らの顔を映すほどだ。いつの間にか、剣の鞘も月の光を浴びて輝きを増している!

 「広瀬……お前は能力者だったのか!」

 気づいた時にはもう遅い。先手を打ったふたりの部下がすさまじい勢いの突きでアーシエルを貫こうとするが、それを一瞬の判断で恐るべき瞬発力を秘めたジャンプで回避した。そして続けざまに空中から敵に向けて一閃すると、距離が離れているにも関わらず部下がその太刀筋を防ぐことができずにあっけなく倒されてしまうではないか。そして着地際に体勢を整えたアーシエルこと広瀬が、剣でレイニーを指しながらゆっくりと迫った。彼は迷いを振り払うかのようにサーベルを一振りすると、圧倒的な力を秘めた敵に向かって言う。

 「今の攻撃は部下たちに剣が届いていなかった。相手は突きに行ったのだから、そのまま斬り返してくることは予想できたはず。ところがお前はその一手先まで読んでいた。自信があったのだ……距離があっても攻撃ができると。それに対応できるとな。お前はそういう能力を持っているのだ。」
 「さすがはアカデミーの教頭。私の力を見切ったか。しかし今のはほんの挨拶代わりなのだよ。本気でこの技を打てば……貴様は魔導剣を使わざるを得ない。受けてみるか、渾身の力を込めたソニック・スラッシュを!」

 徐々に間を詰めるふたりだが、どちらも攻撃を仕掛けようとはしない。アーシエルの必殺技『ソニック・スラッシュ』は瞬時に使うことのできる技であることはすでにレイニーが見切っている。その気になれば居合斬りの要領で繰り出すことができるのだろう。一方、レイニーの魔導剣はどのような性質を持つのかはわからない。一子相伝の奥義でない限り、間違いなく残った部下のふたりもこれを操ることができるはずだ。アーシエルの攻撃に不意を突かれたとはいえ、さっきのふたりからそれを繰り出す素振りがまったく見られなかった。ということはどんなに魔導剣に威力があろうとも、早さで勝っているアーシエルが勝つはずだ。上から見下すような表情を浮かべながら再び剣を構える広瀬。
 その瞬間、二者からかなり離れたところに目映い光の柱が立ち上った! 光は徐々に薄れていき、その中からは妖艶な女性が姿を現す。真紅のロングドレスを着こなし、腕や腰などを超金属のオリハルコンリングで飾っているその女性の名をレイニーが地を轟かせるかのような声で叫んだ。

 「レディ・ローズ!!」
 「ラブレター、ありがと。暇だったから来てあげたわ。心配しないで、教師は全員出払ってて私しかいないから。」
 「スクィージの代から恨み……今、晴らさん!」
 「ほう、貴様。横見している暇があるのか。」

 烈火のごとく逆上したレイニーを冷静にさせたのはアーシエルの言葉だ。彼の足元にはいつの間にか部下の無様な姿が転がっている。怨敵を目の前にしてすっかり我を忘れてしまったようだ。しかし地面で悶え苦しむ部下に一瞥もくれず、レイニーは初めて本気で構える。そしてレディ・ローズに向かって駆け出した! どうやら一気に勝負をつけてしまおうという腹づもりらしい。徐々に蒼く輝き出すサーベルは時を越えて生きる魔女を確実に狙っていた!

 「とりゃあぁぁぁーーーーー……なっ、何っ!?」
 「世界最強のサーベル使いと永遠の時を生きる魔女か。俺とも手合わせしてほしいんだがもちろん受けてもらえるよな?」
 「レイニーの渾身の一振りを見切り、さらに持ち手をつかんでそれを阻止している。ただの使い手じゃなさそうね。名乗りなさい。」
 「彼瀬 春日。なんでもすごい有名な剣士が来日してるって女房が言うからよ、ただいま参上したってとこだ。さぁどっちからでもいいぜ、かかってきな。」

 アーシエルと化した広瀬、そしてレディ・ローズ。その上に彼瀬が登場して、いよいよ場が混沌としてくる。そこは年の功なのか、レディ・ローズが大きなサークルを使って瞬時に召喚の儀式を行う。黒い光を放つ円は大鎌を持った少女を出現させた。彼女は魔女にうやうやしく礼をすると、さっそく用件を聞く。

 「私の名を呼んだのはあなた様ですか。ご用向きをお聞かせ下さい。」
 「堕天使を呼ぶ時にすることなんて、そんなに数は思いつかないわ。とりあえずレイニー・ブラストの相手をしたいから、その彼瀬とあの辺に潜んでる連中を相手に遊んでおあげ。前みたいに手加減することはないわ。ただ殺しちゃダメよ。入校審査も兼ねてるから。私の目的が達成されたら、帰還してもいいわよ。」
 「わかりました。」
 「なんだ、あの鎌は! とんでもない瘴気を放ってやがる……!」
 「さぁ、どこからでもどうぞ。来ないのなら、こちらから参ります。」

 彼瀬は相手がまさか邪魔者を、しかも本物の堕天使を差し向けてくるとは思っていなかったので大いに驚いた。2メートルを超える巨漢がかよわき華奢な少女を警戒している。それはアーシエルもレイニーも同じだ。そして……こっそりこの事態を茂みの中から伺っていた撫子と霧崎もである。実は彼女たちはすでにこの場にやってきていた。じっくりと戦いを観察するはずだったが、再び出現した堕天使の姿を見て霧崎は思わず苦笑いをする。

 「堕天使ゼハールを召喚したのはレディ・ローズだったんですね……しまったなぁ、そんな能力まで持ってるのか。」
 「霧崎様、気をつけて下さいませ。あの方は『潜んでいる連中』と言いました。もしかしたらもう……」

 月に雲がかかったせいか少しあたりが暗くなった。遠くの状況が見えにくくなったので霧崎は中腰になって前を見る。眼鏡の撫子は少し位置を動かした。そして次にふたりが視線を合わせるまでにはそれほどの時間はかからない。お互いに声を発していなかったが、示し合わせたかのように両脇に大きく跳躍すると即座に臨戦体勢を取った。ふたりの姿は戦いの場に晒す結果になってしまったが、ダメージを受けるよりもマシだ。霧崎はすでに金狼に、そして撫子は神斬を抜いている。鋭い爪と剣身は月光に照らされて輝いていた。
 戦士たちが新手の登場に一喜一憂する中、撫子と霧崎はさっきまで隠れていた茂みを見つめていた。そしてしばらくすると時間差でグリフォンの翼を持つ大蛇が落下してきたではないか! 正確に言うなら『ふたりに向かって空から体当たりをしてきた』と言う方が正しいのだろう。ふたりは頭上から空を切る音や不思議な影を察知していたのだ。一方の大蛇は地面でその身をよじらせながら刺すような視線で霧崎を睨みつける。どうやら彼が目標にされてしまったらしい。

 「誰も持ち物かは一目瞭然ですね。ったく。」
 「貴様は霧崎……このアーシエルを先に働かせ、自分は高みの見物をするとは偉くなったものだな。」
 「すみません、広瀬さん。実はいろいろありまして……」

 霧崎と広瀬の話を聞き、状況を整理する撫子。どうやら彼は味方らしい。そんな彼女と同じように、他の人間も目を活発に動かし始める。そのような動きが他にもないか確認するためだ。そんな状況を無視して、ゼハールは草むらに横たわる大蛇に命令を出す。

 「我が使い魔たるハイレス。主の言葉に耳を傾けなさい。そこにいる者を駆逐するのです。」
 「餌付けもままならんようなペットまで飼ってるのか。こいつぁ、とんでもない奴だ。そして召還する方はもっと面白ぇ!」
 「下らぬ。得体の知れぬ堕天使など使役して力を誇示するなど、アカデミーの教頭として情けないと思わないのか!」
 「あんたたち一度に喋らないでくれる? とにかく私はレイニー、あんたを倒したらそれで満足よ。それにあんた、人に文句言ってる余裕あるの? 部下もあっけなく倒されちゃってさ。外野はみんなあんたを狙ってるのよ。」

 レディ・ローズの言う通りだ。『絆』に協力する広瀬と撫子ではあるが、レディ・ローズが負けたり逃げたりすれば状況が変わるだろう。それにアーシエルになった広瀬はさっきから積極的にレイニーと戦おうとしている。彼瀬は誰とでも戦いたいようだが、その原因を作ったのはレイニーだ。一度は手合わせしたいはず。彼女の召喚したゼハールはレイニーを片付けることを指示された。もはや彼にとっては四面楚歌の状況である。戦士たちの思考もレディの言葉を受けてどんどん変わっていく。彼女が何気なく放った『言葉の呪文』にこの場の全員がはまってしまっていた。
 ところが均衡を破るかのように彼瀬がレイニーではなく、レディ・ローズに向かって強力な拳を繰り出した! それを浮遊術で簡単に避けたレディは全身を美しく飾るリングを魔力で飛ばし、周囲に刃の結界を作り出す!

 「武器を持たない彼瀬には、これを避ける術はないわ。」
 「奇妙な音が鳴ってると思ったらなんてことはねぇ。リングがお互いにぶつかってるんだな。こんな小細工、通用すると思うか?」

 それでも魔女は不敵な笑みを崩さない。彼瀬がお喋りしている間にも円の反射で、背後からひとつのリングが迫っていたからだ! ところが彼瀬はその場でジャンプし、リングが飛んでくるであろう位置までタイミングを見計らって下がった。このまま足を地面に突き下ろせば、リングの勢いを止めることができる。ところが彼は空中でニヤリと笑った。

 「このリングを装飾に使ってる以上、内側が刃物ってことはないよな……」
 「し、しまっ」
 「ゴールにシュートだぜ、おりゃあぁぁぁぁっ!」

 なんと彼瀬はつま先を器用に回してヴァリアブルサークルを見事に操り、それをレディに向けて勢いよく飛ばす! 今度は彼女が防御する番だ。その強靭な肉体から放たれた勢いのあるリングは、防御のために弾かれた他の小さな円を砕きながらまっすぐにレディに向かう! そして目前まで迫った時、しみじみと彼瀬が語った。

 「策士、策に溺れるだな。レディ・ローズ……っと、さすがに簡単にはいかんか。」

 彼瀬は休みなく身体を動かすことで、自分の中でリズムを作りながらリングの攻撃に備えている。その目前では彼の放ったリングを指先ひとつで止めているレディの姿があった! なんと彼女は逃げることなくリングを止めたのだ。そしてそのリングを輪舞の中に戻す。

 「このヴァリアブルサークルには私の魔力が込められているわ。全部を意識して乱反射することはできなくても、そのうちのひとつを止めるのも動かすのもこの私の自由にできるのよ。このリングで私が自滅することは絶対にあり得ないわ。これは……魔導剣の応用技術よ。喜びなさい、レイニー。スクィージの苦労は無駄ではなかったわ。」
 「外道め……絶対に許さんっ!!」
 「愚か者めが……!」

 結界の中にいるレイニーに向かって一喝するのは専用バイク『ミストラル』から降り立った魔導師らしき青年だった。その服はレイニーが着ている物とよく似ている……彼の味方かと思われたが、実際はそうではなかった。彼は冷徹な表情を崩さず、片手に凶々しき悪魔の文様が刻まれた大鎌を持って静かに歩を進める。

 「先祖の栄光にしがみつき、過去の怨讐に縛られるとは。醜いにも程があるな。」
 「お前は……ウルフィアス・ローラン! アヴァロンの園を裏切っておきながら、よくもそんなことを言えたものだ! 恥を知れ!」
 「過去の誇りで今、何が生み出せる。その答えはあの世で考えろ。私が引導に渡して呪縛から解き放ってやる……変身!」

 コマンドワードを読み取った黒き鎌『烈空の戦斧』はさまざまなパーツに変形し、それをウルフィアスの全身に装着されていく。そしてそれが鎧として装着が終わると、その場には死神の風貌を漂わせる戦士が目の前に現れた! ウルフィアスは挨拶代わりと言わんばかりにその場を一閃すると、突如レイニーの目の前に出現するではないか! レイニーは慌ててサーベルで防御の構えを見せた。

 「烈空の戦斧は空間を斬ることができる魔道器だったか……え、裏切り者のウルフィアス?」
 『我が名はエリゴル。この鎧を傷つけられる者はいない。なぁ、武道家さんよ?』
 「もうこの右手が今、痛ってーのなんのって。俺はレイニーを殴ってるつもりだったんだがな。エリゴル、気に入らねぇよ。お前のやり口。」

 まさかエリゴルの鎌が『空間を裂いて移動できる』などと知るはずもない彼瀬はリングを巧みに避けながら「レイニーに一撃を」と思ってダッシュしながらパンチを繰り出した。しかしそれが突如前に出てきたエリゴルの鎧に命中したのだから堪らない。恐ろしく強固な鎧は拳が砕けんばかりの衝撃を与えた。痛いのを我慢して今度はエリゴルに攻撃を始める彼瀬。まずはフェイントを織り交ぜながら装甲の弱い場所を見つけようと観察し始める。ところが相手は大鎌から煙のような闇を作り出し、周囲をそれで包もうとしていた。彼瀬が毒かと思って身体をわずかに引いた瞬間をエリゴルに狙われ、鎌の持ち手の部分で身体を薙がれてしまう!

 「うごあっ!」
 『邪魔するな……ゼハール、仕事だ。レイニーを始末する!』
 「お前の指示は受けない。」

 凛とした声でそう叫んだ彼女だったが、実際にはそれどころではなかった。目の前には広瀬と撫子がおり、ハイレスは金狼と化した霧崎と戦っている。それに今度は彼瀬まで飛んできた。彼の言うように行動しようとしても、状況がそれをさせてくれない。今の彼女にとって、主人の決闘を演出するだけで精一杯なのだ。それを証拠に、あの可憐な印象を思わせるメイド服はボロボロになっていた。エリゴルは気づいていない。彼女は劣勢に立たされていることを……
 それに彼女が戦っているのは契約の上での話だ。それとはまったく無関係のエリゴルに命令されてもゼハールは動けない。主人たるレディ・ローズの命令でなければ何もできないのだ。ところが今の時点で彼女からの指示はない。ということは、目の前の敵に対峙することが彼女の仕事ということになる。エリゴルは憤りを隠さずに「ふん」と鼻で笑うと、どんどん広がっていく闇の中へと消えていった。


 時間はわずかに遡る。
 レディ・ローズが戦いを仕掛けた時から、結界の外でも戦いが繰り広げられていた。美しい黒髪に忍ばせた妖斬鋼糸でゼハールを縛った撫子に続き、アーシエルこと広瀬が絶妙のコンビネーションを見せた。剣を持つ手に力を込め、海の風を背中に受けながら空中からあの必殺の一閃を繰り出す!

 「我が剣に集え、疾風よ! 必殺っ、ソニック・スラッシュ! うおおおぉぉぉーーー、とりゃああぁぁぁっ!!」
 「うぐ、うわぁぁーーーーーぁっ!」

 必殺剣が唸りを上げ、ゼハールもそれをまともに受けてしまった。大きなダメージを負ったが、彼女も負けてはいられない。そのまま一気にアーシエルに突っ込んで大鎌ミッドガルドを振りかざす! さっきの必殺の一撃で彼女を束縛していた妖斬鋼糸が切れてしまったらしい。無防備な状態であの一撃を受けると死に追いやられることを知っている撫子は慌てて神斬でそれを防いだ。そして着地際に広瀬が下から斬りかかるが、今度は攻撃を読まれてしまい鎌を大振りすることでふたりの攻撃を一気に退ける!

 「うおっ! はぁ……貴様、なかなかの使い手だな。必殺のソニック・スラッシュを受けて立っている者はそう多くいない。」
 「広瀬様、あの鎌で切られると瘴気が体を駆け巡り死に至らしめられます。お気をつけ下さい。」

 そんな冷静なやり取りをしている最中、使い魔ハイレスと格闘する金狼の霧崎はひとりでなんとか持ち堪えていた。いくら並みの動物よりも知恵があるとは言え、動物は動物。霧崎はフェイントを織り交ぜながら攻撃し、ゼハールと連携を組ませないように距離を保ちながらとにかく動き回っていた。撫子はたまにその様子を見ながら、動きが鈍っていないかを確認しつつ堕天使と戦っている。メインで戦っているのは広瀬だ。
 ところがそこに彼瀬が入ってくると、また違う局面を迎えた。レディ・ローズ、レイニーに嫌われた彼の鬱憤はゼハールへと向けられたのである。なんと言ってもふたりがかりでも倒せない相手だ。彼の興味を引くには十分である。もちろん彼はチームワークなど考えていない。とにかく強い相手と戦うことが目的なのだ。彼瀬はその場で気を練り、ゼハールに向けてとっさに手をかざす。

 「避けられるか……?」

 恐ろしい勢いで放たれた光線はゼハールの左肩を貫いた! 驚きと痛みで今までに見せなかった表情をあらわにする堕天使。それを見た撫子と広瀬はとっさに攻撃を繰り出そうとするが、なんと彼瀬はふたりの方に向き直って白く巨大な爪で攻撃を仕掛けるではないか! 思わぬ攻撃をまともに食らったふたりはそのまま地面に叩きつけられる。

 「うぐわああぁっ!!」
 「きゃあぁぁーーーっ!」

 予想外の反撃を食らった広瀬と撫子はお互いに胸をさすりながら彼瀬を見た。彼は身体中に牙や勾玉のような装飾品をつけていたが、そのうちのひとつである右腕の飾りを左手に持って仁王立ちしている。そしてそれをあるべき場所に戻し、地を這う戦士たちに不敵な笑みを見せつけた。

 「そういうのは興醒めだからやめようや。でないと危ない目に遭うぜ?」
 「貴様……奴は堕天使だぞ!」
 「命を賭けた戦いを楽しんでる最中なんだ。さっさと魔界に送還するってのが面白くないんだよ。」
 「楽しんでいる場合では……ありませんわ!」
 「だから俺が送還するんだって。そしてエリゴルもレディ・ローズもレイニーも倒せばいいんだろ。それでお前らは満足なんじゃないのか。だったらそこで見てろよ。絶対に邪魔はするな。」

 確かに彼瀬は強い。抜群の戦闘センスを持っている。それなりに経験も積んでいるはずだ。だが、それを黙って見ていられるはずがない。広瀬と撫子は再び立ち上がり、ゼハールの攻撃に備えた。その瞬間、闇からレイニーの声が響く。暗黒に染まった空間で蒼い光が何度も弧を描く……間違いなく魔導剣だ。すると状況が動いた。レディ・ローズがゼハールに命令を下したのだ。

 「ゼハール、来なさい! 一気にレイニーを倒すわ……!」
 「御意。ご心配なく皆さん。あなたたちには最高の瘴気を吸わせてあげますから。」
 「はっ、皆様! 霊的防御を!!」

 撫子がゼハールの行動を読んだまではよかったが、不幸にもこの場にいるメンツにそれを実行できる能力者はいなかった。ゼハール愛用の武器であるミッドガルドから怪しげな色をした空気が吹き出したかと思うと、それは一瞬にして彼瀬たちを包み込む。瘴気はじわじわと身体を浸透し、徐々にダメージを与えていくのだ。完全に個々の身体にまとわりついた瘴気はいくらその身を振るっても消えることはない。彼瀬もとっさのことで対処できずに片膝をついた。

 「うぐっ、またおいしいとこだけ取っていくのかよ……とことん気に入らねぇ連中だ!」
 「また彼瀬様のお相手はして差し上げます。少々お待ち下さい。主の命とあれば背けませんので。それまでは……」
 「ぐはあぁぁっ!」
 「おうわっ! しまった、もう一匹敵はいた……」

 ゼハールがそこまで語った時、彼瀬はおろか撫子や広瀬まで上空からの攻撃に不意を突かれ倒れこんだ! いや、潰されてしまった。瘴気に苦しむ彼らの隙を突いて、霧崎を乗せたままハイレスが飛び上がって彼らを圧殺しようと企んでいたのだ。身体を蝕む瘴気を晴らそうと撫子が懐に忍ばせていた妖斬鋼糸で結界を作ろうとしたまさにその時の出来事である。

 「一手遅かったですわ……くうぅっ!」
 「ハイレス、ここは任せました。」

 そう言って闇の中へと消えたゼハールを4人はただ見送るしかなかった。彼瀬くらいならハイレスの重さくらいなんとかできそうなものだが、いかんせん瘴気が身体中を駆け巡っている最中で底力が出ない。さっきの霊を出そうにも巨体に抑えつけられて身体が動かないと、まさに踏んだり蹴ったりだった。悔しそうな表情を浮かべ、地面を叩く褐色の男・彼瀬。広瀬も撫子も、そして霧崎も同じ気持ちである。


 闇の決闘場ではレイニーの繰り出した魔導剣でレディ・ローズの『運命の輪舞』を破壊しようとしていた。サーベルに鋭く研ぎ澄まされた魔力を乗せ、その軌跡を残しつつ次なる攻撃を繰り出すという軽い武器でなければできない芸当であった。しかもオリハルコンリングであるヴァリアブルサークルを砕くほどの魔力を備えている。これに危機感を感じたレディは迷うことなくゼハールを呼び寄せたというわけだ。
 命令通りにやってきたゼハールはさっそくエリゴルと連携を組んで、リングをやたらめったら鎌で弾き始める。円の結界は目まぐるしく動き出し、そのうちレイニーの感覚ではついていけないほどの早さになった。業を煮やしたレイニーは迫るリングを砕こうと再び剣に魔力を宿らせる。しかし……運命はその行動を嘲笑うかのごとき仕打ちをした。注意力を集中力に変換した瞬間、背後に迫った大きなリングに気づけなかった。そして、その時は来た。わずかな身体の揺れと熱い感覚が同時にレイニーを襲う。

 「う……お……ま、まさか……」
 「ここまで魔導剣が昇華されているなんて……驚いたわ。さすがは教頭、さすがはブラスト家。レイニー、悪いことは言わないわ。過去の栄光など捨てなさい。私が先祖の遺産から生み出したものなど、それに比べたら小さなものよ。」
 「う、奪っておきながら、すべてを奪っておきながら情けをかけるか……! この魔女め……うぐうぐうぐ、うがっ!!」

 エリゴルから容赦なく打ちこまれるリングを受けて、レイニーはもはや虫の息だ。レディはウルフィアスの働きを見て、心の奥底にある複雑な思考を感じ取る。そして長引かせるのはよくないと思い、オリハルコンリングを操ってレイニーに向かって一列に並べた。もちろん自分の手元には小さなリングを、そして順に大きくなっていき最後は巨大なリングが配する。レディ・ローズ必殺の『連環の儀式』の序章だ。

 「勝負はすでに決したわ。でも、私は敢えてアカデミーのために聞く。レイニー、今を捨てて死ぬ気なの?」
 「生き恥を晒して生きろというのか……お前は……」
 「これがスクィージの残したものの集大成よ。防げたらあなたの勝ち。消え去ったらあなたの負けよ。行くわ……」

 レディ・ローズが手をかざすとすべてのリングが光り輝き、送られてくる魔力を今か今かと待ち受ける。すべてのリングは彼女の放った魔力の増幅器である。巨大な光弾となってレイニーを襲うのか、それとも何らかの手段で逃れるのか。すべてはこの攻防にかかっていた!

 「過去を清算しなさい、できるものなら! ファイナル・サバト!!」
 「この技には、弱点がある……この円の中を通しさえすれば、すべての魔力を増幅させてしまうという致命的な欠陥がある! 魔導剣よ、あの女の胸を貫けぇっ! うおおおおおぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 闇の中から響く声。それは確かに撫子の耳にも聞こえた。徐々に身体に入りこんだ瘴気は薄れつつある。あとは天位覚醒さえすればこの状況を脱することができるが、決着の方が先になりそうな気配だった。今はただ、その状況を聞いているしかなかった。
 レディの魔力の光が中ほどまで迫ると、レイニーが体力と魔力を振り絞って投げた魔導剣は一直線にエネルギー弾へと迫る! そして剣先がそれに触れた瞬間、エネルギーを裂いてそのまま突き進んだ! レイニーの読みは正しかった。そのままサーベルは魔力を蓄え、レディの胸元へと剣が突き刺さる……と思われたその時、ゼハールが大鎌ミッドガルドの瘴気を、エリゴルが闇のオーラから生み出したレーザーをリングに送りこむではないか!

 「消えなさい。主の命は私が守ります。」
 「過去に追いすがった時点でお前は負けていたのだ! 死ね!!」

 ふたつの力は実に素直に増幅され、直前まで迫っていた剣を消滅させた。そしてそのままレディの光弾と合流し、今までにない威力を秘めたエネルギーとなって渦巻く。レイニーは最後のリングがそれを通り抜けるまでにポツリとつぶやいた。

 「完敗……だ。」

 そして複合する力は最後の円を潜り抜け、すべてが終わった。その刹那、闇が晴れる。なんともやりきれない表情を浮かべる撫子が天位覚醒し、天女のような姿となって手の一振りでその状況を明らかにしたのだ。その場に残っているのはレディ・ローズとエリゴル、そしてゼハール。3人は寄り添うようにして立っていた。しかしレイニーがいない。あのエネルギー波なら人間を塵ひとつ残さず消し去ることができるだろう。あまりの酷さに撫子は目を背けた。ちなみに使い魔のハイレスは覚醒した撫子に投げ飛ばされ、遠くでのた打ち回っている。
 だがその時、アーシエルが戦いの跡からあるものを見つけた。今の彼は『断罪天使アーシエル』である。いつもの人のいい性格ではないのと同じで、いつもとは違う思考で物事を捉えるのだ。そして導き出された答えをレディに向けて言った。

 「レディ・ローズ。貴様、敵に情けをかけたな。相手に気づかれないようにリングを置き、エネルギーが命中する寸前にどこか安全な場所へレイニーを転送した。そうだろう?」
 「まさか……お前は……」

 エリゴルが怒気をはらませながらそう言い放つと、レディはあっけらかんと答えた。

 「ご名答。でも最初からそんな気はなかったわ。このふたりが邪魔するまではね。さすがに3人でかかったら勝つのは当たり前だし。そんなのつまんないし、レイニーは私に恨みはあるかもしれないけどアカデミーに対しては恨みがない。だったらオセアニア支部に戻しちゃえって思ってね。でもゼハールの目的は達成されたし、エリゴルの契約も遂行できたし、あなたたちも生きて帰れるのよ。いいことじゃない。」
 「スタイルのいい姉ちゃんだが、俺はお前らが嫌いだな。そんなややこしいことやってられねぇぜ。さっさと消えちまいな。」
 「だ、そうよ。ウルフィアス、提携による補助はご苦労様。次に出過ぎた真似をしたら……躊躇なく殺すわ。」
 「負けそうになっておきながらそのセリフか。呆れるな。」

 捨て台詞を吐いたエリゴルは鎌で空間を切り、その中に入って逃げていった。そしていつの間にか目覚めたハイレスが高速で空を飛び、両者の間に降り立つ。そしてその大きな背にレディ・ローズとゼハールを乗せ、彼女たちもその場を去っていく。

 「魔方陣で逃げようとすると……撫子にキャンセルされちゃうから、このまま行くわ〜。」
 「読まれていましたのね。さすがは教頭ですわ。」
 「彼瀬さん、楽しめなかった分はまた今度。教師にでも相手をさせるわ。」
 「そいつらを叩きのめしたら、お前が出てくるんだろうなぁ?」

 彼瀬の返事には答えず、そのまま彼女は空の旅へと洒落こんだ。レディ・ローズは戦いに勝ち、レイニー・ブラストは戦いに敗れた。しかしアカデミーの結束は完全に砕かれたわけではない。今回の作戦が次の戦いに活かされるかどうか……それは彼ら次第である。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/ PC名 /性別/ 年齢 / 職業】

0973/広瀬・和彦       /男性/26歳/特撮俳優
4563/ゼハール・―      /男性/15歳/堕天使
4451/彼瀬・春日       /男性/42歳/鍼灸整体師兼道場主
3738/ウルフィアス・ローラン /男性/20歳/TI社特殊強化服装着員
0328/天薙・撫子       /女性/18歳/大学生(巫女):天位覚醒者

(※登場人物の各種紹介は、受注の順番に掲載させて頂いております。)

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■         ライター通信          ■
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毎度のご発注、本当にありがとうございます。シナリオライターの市川 智彦です。
今回は「CHANGE MYSELF!」第9話は教頭であるレディ・ローズとの対決でした!
最近の傾向としてはアカデミー側につく方もいらっしゃって盛り上がってますね!

広瀬さんは初めまして! 序盤から大活躍して頂きましたがいかがでしたか?
役名がカッコいいので、その辺を配慮しながら書きました。お顔も端正ですしね!
謎解きに戦いにと見せ場たっぷりでお送りしました。今度もぜひよろしくです!

今回は本当にありがとうございました。次回は第10回なんでよろしくお願いします!
それではまた、別の形式の依頼やシチュノベでお会いできる日を待ってます!