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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


花見に行きましょう 2005

 3月下旬、ポカポカ陽気の洗濯日和。桜前線報告もほぼ当たっている。
 あやかし荘管理人因幡恵美は、洗濯物を干している。嬉璃はぬくぬく縁側でひなたぼっこ。
 そろそろ本当の春も近い。
 あやかし荘にある桜が、少しずつ綺麗な花を咲かせている。
「そろそろあの時期ぢゃな」
「ええ、そうね、嬉璃ちゃん」
 ふたりはにっこりと微笑む。
「花見をするべく皆を呼ぼうぢゃないか」
「はい、場所は大所帯を考えて近くの桜並木公園が良いでしょう」
「うむ。今から楽しみぢゃ」
 桜は数日もすれば8分咲きを知らせている。心躍る良い天気である。

1.お誘い。
 恵美はあやかし荘の住人や入り浸る人達に花見をすることを伝えた。
 さて、何処まで人が集まるのだろう?
 去年の花見もかなりの数だった。
 各自分担で連絡を取ることになる。
 その時に電話より便利なのは
|Д゚)b ←この理不尽御都合の謎生物であるのだ。
 なにせ、時間無視、空間無視で伝達可能らしいからだ。
 起動式など全く謎。多次元屈折現象とは違う。
「おまかせしますね」
|Д゚)ノ おういえ〜

 天薙撫子と榊船亜真知は連絡を受け、参加すると言う。
 いや、参加しなきゃどうする、だ。撫子には愛しの恋人がいるし、亜真知サマには楽しい友だちと父親がいるのだから。行かなければなるまい。そして、恋人や父親と二人っきりで花見をするのだ。
「料理はわたくしたちに!」
「はい、デザートも♪」
 と、やる気満々だ。
 料理の修業(?)の長谷茜も頷いている。
 女性の団結力はこの時をもって最強となるものなのだ。
「皆を驚かせるほど美味しいモノを作りましょうよ、撫子さん」
「そうですわね」
 台所から立ち入りを禁止されているのは、
 宮小路皇騎と織田義明だ。のんびり居間で茶をすする。
 少し気まずい皇騎と、相変わらずぼうっとしている影斬ならぬ義明。
「ま、場所取りや、力仕事のあと、のんびりとしますか? 皇騎さん」
「ああ、お互いホワイトデーを台無しにしてしまいましたから、埋め合わせしなくてはいけませんね」
|Д゚) 男はつらいね〜 WDって300倍返しらしい
「いや、それは行き過ぎじゃないですか? かわうそ?君」
 皇騎は苦笑した。


2.当日準備
 当日になった。
 快晴、桜も見頃という、この上ない花見日より。
 前日から、三下人形という謎物体を杭のように刺して、場所取り完成。もちろんシートは茣蓙だ。
 最も、ここは私有地に近く、あやかし荘の連中以外は全く来ないのだ。三下君は、他の仕事にかり出されてしまった。バーベキューやら野点をするやら忙しいらしい。
 狩野は、参加している女性の多さを見て大いに喜んでいるが……、どうも、上手く動けないかもと考える。即ち、恋人持ちだったり、既に割り込める程隙がなかったり、下手したら……怒って自分が吹っ飛ばされる程の威圧感を持つ強力な神がゾロゾロいるからだ。
 その筆頭に御隠居ではあるが抑止の一エルハンド(怒ると怖いので)、桜の振り袖姿に身を包む榊船亜真知(ヤッパリ怒ると怖い)、天薙撫子(以下同文)、そして、影斬こと織田義明(補欠)と神の力を少し得ている鹿沼デルフェス(多分エヴァ絡みで怒るだろう)。
「花と、女性を愛でることにとどまろう」
 と、すこし溜息を吐く宴だった。
|Д゚) 無礼講でも礼儀は必定。
 かわうそ?に言われても説得力がないよと思う狩野。

 殆どの男性陣は力仕事に精を出し、女性陣は料理と、食器類を纏めている。
 シュライン、撫子のお手製お重に、らせんと千春のバーベキュー、各自揃えたデザート、ジュース。
 30人近くいれば、其れぐらい簡単に無くなるだろう。
 酒は酒の神である狩野が全て用意するらしいが、エルハンドが人の気持ちがこもったモノを好む事を知る人が多く、何本か大吟醸がある。エルハンドが神の即興で作った酒でなく、人の作った心のこもった酒を好むのは“情”という陽の精神に他ならない。
「狩野宴、だな?」
 エルハンドが狩野に声をかける。
「なんでしょう?」
「君は快楽を司る柱だな」
「難しく考えてはいないけど、そうですね」
 エルハンドに普通に答える狩野。
「むやみに力で酒を引き出すのは好ましくはないが……」
「堅苦しいことはおやめになりましょう、お父様」
 と、なにやら説教を始めるエルハンドを止めたのは、亜真知とデルフェスだった。
「む」
 と、エルハンドは表情を変えず去っていく。
「お酒瓶の量が多くなると、男の人が大変ですから助かりますわ」
 と、2人はニコリと笑った。
「いえ、此方こそよろしく」
 狩野が握手を求めた。
「あまり、目に付くようなことをされますと、お父様は老若男女問わず怒り、キツいお仕置きをする方ですから。……私もですけどね」
 亜真知はニコリと、握手を交わしながら、トンデモナイコトを口にした。

|Д゚) ――程ほどに。

 嬉璃と歌姫が先に現地に待っており、のんびり桜を眺めている。のんびり出来る分、暇である。
「ひまぢゃ」
「……」
 確かに、何か手伝う事も良いがなにやら面倒なので場所取りもどきを選んだのが裏目に出たようだ。嬉璃は楽しいときに暇と感じるのは好きではない。しかし面倒なことは大嫌いだ。歌姫は苦笑するしかなく、桜と春に関する歌を歌う事にした。
 その歌声が桜並木公園を包み、より一層桜の咲き具合が良くなっていく。
「おお、なかなか風情がある」
 嬉璃は満足した模様。
 周りを見ていると、ぽつんと背の高い金髪女性が立っている。
「だれぢゃ?」
 嬉璃は首を傾げた。
 宮本まさおだ。少しフルフル震えている。
「どうした? まさお。皆は未だ準備しとるぞ?」
 と、嬉璃がちょこちょことやってきて訊いた。
「き、きいて! マキったら二日酔いでドタキャンなのよ」
 と、泣いている。
 マジ泣き。
「いきなり愚痴るな! 馬鹿者〜 おい! お前の目当ては未だあやかし荘ぢゃ! そっちにいけぇい!」
 と、彼女をけっ飛ばすかのように追い払った。
「折角の風流も台無しぢゃ」
 溜息を吐く嬉璃であった。
 そうこうしている内、野点の台、バーベキュースペースが出来上がり、皆も揃って和気藹々と会話している。
「そのお重はここで、お酒のみお摘みはあっちね」
「お湯を沸かすのにはバーベキューを借りるか」
「はじめまして〜」
「おひさしぶり〜」
 と言う感じだ。

「済みません。田中裕介です」
「た、田中さん! ど、どうして私まで」
「呼ばれました〜」
 と、田中裕介が星月麗花とユリウス・アレッサンドロを迎えてやってきたのだった。

「ぢゃ、皆揃ったな? 汐耶は遅れると聞く」
 はーいと、元気の良い声がする。
「では、エルハンド頼んだ」
 仕切魔嬉璃がいきなりエルハンドに音頭を頼む。
「? む なら 子供はジュース 大人は飲めるものをコップに注ぐように」
 と、言った。
「では、今年の花見が良き思い出になる事を……乾杯!」
「乾杯〜!」


3.宴会開始
|Д゚)ノ 花見に欠かせない。お弁当から紹介すべきと! 
|Д゚)ノ かわうそ?が説明!
|Д゚) シュライン、作ったお重の中身。なかなかバリエーション、富んでる。おにぎりにすし飯入り稲荷。チキンロースにカリフラワーの田楽、アスパラチーズの玉子巻き(もちろんコレはだし巻きだろう)、かまぼこキャベツ巻きにニラのゴマ和え、おからコロッケ、カボチャ巾着絞りと菜の花のおひたし、ヨーグルトソースのサラダ
|Д゚) もうコレで彼女の家にあったお重は埋まってしまった
|Д゚) そのためデザートは其れににあったパックにて持ってきてる。中は、苺のタルト。ブルーベリーリキュールやジャスミン茶も持ってきている気配りぶり
|Д゚) 一方、天然巫女さん撫子のお重。おにぎりは、ウメ、鮭、高菜、からし明太子。白身魚のフライと、だし巻き。竜田揚げに豆腐田楽、お節料理によく見かける栗きんとんと黒豆に、かまぼこ、出しが無くても大丈夫なようにした肉じゃが。春野菜の煮物各種
|Д゚) 酒飲みが好みそうな珍味類も別口で揃えている。からすみ、するめ等々
|Д゚) デザートはやはり和の人? 手作り桜餅。じっちゃんからいただいたらしい大吟醸もありゅ
|Д゚)b 亜真知サマは桜と春をベースにしたフルーツのゼリー寄せ。アクセントに桜の花の塩漬けを添えておるよ。ちくしょう
|Д゚) 千春とらせんの料理はもちろんバーベキュー、山海の幸全部揃っている。何しろ本マグロのトロをその場でステーキにするとか。そう言うことで、バーベキューの周りには新鮮な春野菜とお肉と海鮮類いっぱい
|Д゚) いっぱいあるのは“箱”ではない。念のため
|Д゚) お茶を淹れるためや、焼酎のお湯割りの為に大きなやかんがあるのはご愛敬
|Д゚) 酒の類。狩野が殆どコンプリートするので説明むりっひ。しかし、あらゆる酒と言っても、ライセンス必須の高級ワインやリキュール、手の届かない大吟醸レベルなどは作れず、中堅レベルの市場で売られている物だけ。抑止が働いていると思われ
|Д゚) つまり、“情”やこだわりのある一級品を作るなと“世界”が制限をかけた
|Д゚) まあ、2〜3000円前後の代物でも美味い
|Д゚) 無理に富裕階層の密の味を楽しむのは後々罰が当たる

皇騎「あのう、私、財閥御曹司……」
らせん「あたしも玩具会社社長令嬢……」
|Д゚) あんたら庶民過ぎ。
ふたり「うう……」

|Д゚;) ふぅ 一気に喋った。疲れた、水くれ
|Д゚) 半ページぐらいは埋まったかもしれねぇ

 と、ナマモノが説明している時間は数分として、皆が食事に舌鼓、桜を眺めて楽しんでいる。
 メイド姿の千春はらせんと一緒にバーベキューを切り盛りして頑張っているし、撫子は桜の木の下で野点を行っており、大体グループは出来たようだ。
 デルフェスやシュラインも、他の人に酌をしていたり、亜真知サマは嬉璃と遊んでいたりする。
 メノウというと……見知らぬ人が多いので、姉が言っていた人物、エルハンドの隣で縮こまっているかんじだが……じっと、ちょこまか動く小麦色を見ているようだ。追いかけているまさおや他の人など眼中にない。
「気になるの? あれに」
 狩野が声をかけたが、メノウはぷいっと避けた。
「狩野さん、酒無くなりました」
「あ、はい」
 製造するだけで一日が終わりそうだ。しかし、
「こう、女の子を眺めることが出来て幸せだね」
 とか。

「あ、お姉さん!」
 と、メノウは、目を輝かせる。
|Д゚)ノ 汐耶―
「遅れて御免なさい」
 と、遅れてくると連絡が入っていた綾和泉汐耶が一升瓶と大きな鞄、包みを持ってやってきた。
「結構早かったよ、お姉さん」
「そうかしら?」
「いや、仕事で遅れることは承知済み」
 エルハンドは裕介と酒を飲み交わして、微笑む。
 コレで完全に揃ったとも言うだろう。

3.頃合いを見計らう
 さて、時間軸的には狂いはあるが、各人の行動を詳しく見てみよう。

 力仕事などをこなして、皇騎は茜と一緒に賑やかな宴会を楽しんでいた。
 従妹の野点や、バーベキューの手伝い、謎生物達のからかいからの回避と一際忙しい。
 おそらく、この中で1〜2を争う美形ではあるが、既に恋人がいる。しかし、その茜をあのメイド魔神から守らなければならない。
 いや、そのへんは複雑心境の模様。茜はメイド魔神をおっきな弟とからかって遊んでいるわけで、止めたいと思って求められるモノではない。主導権は既に彼女。哀しいものである。
|Д゚) 尻に敷かれる御曹司確定?
(⊃Д`) いやー
 式神の御隠居さんが代わりにかわうそ?を怒ってくれた模様です。

 静かに飲むエルハンドのグループに混じって歓談するわけだが、そろそろ皆が遊び始めている。
「茜さん」
「ん?」
「散歩しませんか?」
「いいよ♪」
 と、席を立つ。
 何となく自然に。

 彼は、忘れてはならないことがある。
 ホワイトデーなど時間が合わず、全く茜と一緒に居る時間を作れなかった事が申し訳ないという気持ちだ。
 なので、こっそりプレゼントを用意している。
 とは言ってもココは人が多くなっている。幾ら広い公園とは言え、どこからでも見渡せる能力者や超越者がいるので恥ずかしいのだ。

 と、茣蓙から離れて数分、
「裕ちゃんだいたーん♪」
 どうもメイド魔神がトンデモナイコトをしたらしい。
 殴る蹴る音がココまで響いている。
「何があったか知りたくはないですね……」
 皇騎は苦笑した。
「茜さんもう少し静かなところに行きませんか?」
 と、少し照れながら言う。
「いいよ」
 茜は少し酔っているのか、頬が赤い。甘えてくる仕草も女性らしく色っぽかった。

 緊張してしまう皇騎君20歳。
 静かな場所で、他愛のない会話をして、時間を過ごす。
「あ、凄く遅くなったけど。バレンタインのチョコ」
 と、茜はシックな蒼の少し赤いリボンで包んだ小さい箱を渡した。
「ありがとうございます」
「ううん。一緒にいる時間が少なく、淋しかったのは同じだし」
 皇騎の肩に頭を載せる茜。
 そのまま、すうすうと寝息を立てていた。
「疲れていたんですね」
 皇騎は、チョコの箱を大事に開け、食べる。
 苦みと甘味が丁度良い。
 恋とはそんな感じなのかな? と思って皇騎はこの時間を大事にしていた。

4.宴終了
 シュラインが既にビニールなど所持し、皆でてきぱき掃除を始める。
 その後は各自バラバラに気ままな時間となった。

「ところで、茜」
「茜様」
 蓮也と義明、デルフェスまでも茜に訊く。
「な、なによ?」
「愛しの彼氏様とはどうされましたか?」
「え? そそんなこと! いきなり訊かないで! あんたたちも同じじゃない!」
 とか赤面茜、ハリセンをふるう。
 からかいのターゲットが何故か茜に向かっている。
 からかってみたい好奇心が強かったのだろう。
 いつもハリセンで叩かれる分、仕返しみたいなものだ。

 皇騎は止めようと思うのだが、余計拍車がかかるので戸惑う。
「皇騎ちゃんらしくない」
 撫子にからかわれるし……。
|Д゚) キスした? 2人とも?
|Д゚) ふひひ
 小麦色にからかわれるのだけはいやだったので。
 奥の手で、小麦色を吹っ飛ばした2人であった。
(⊃Д`) なしてー?!


 茜を長谷神社まで送るという皇騎。当然断ることなんてない茜。
 神社近くまで来て、一度立ち止まる。
「茜さん。渡したいモノがあります」
「ん? あ、一寸まって……」
 何か慌ただしくなる茜。
「静香、先にかえって」
「わかりました……」
 そう、彼女の隣には常に純真の霊木たる精霊・静香がいるのだ。
「えっと、なにを?」
「お詫びのプレゼントです」
 と、長細い箱を渡す。
「開けて良い?」
「はい」
 開けると其れは、
 茜にとても似合う、プラチナ細工の髪飾りであった。
「すごい♪」
「つけますか? いま?」
「うん! ありがとう! 皇騎さん!」
 そっと、頭にリボンの代わりにその髪飾りをつけて髪をとめる。
 黒髪に、白金が光る。
 まるで、
 夜空の星のように。
「素敵です」
「ありがとう」
 と、茜は皇騎の頬にキスをした。

「あ、茜さん」
 それだけで、赤面する皇騎。
「もう少し押しがないと……だめだよ。裕ちゃんみたいに」
「彼は彼であって、私は私ですよ。それに、あれは事故というか小麦色の仕業で……しかも……」
「あれ? ライバル視していると思っていたんだけどなぁ」
「茜さん……そこからは言わないで下さい」
 恋人にまでからかわれるという、皇騎。
「そこが良いのだけど。しっかりするときはしっかりしてるもん」
 彼女は笑った。
 いつもの明るい茜。
 
「おやすみなさい、皇騎さん」
「はい、お休みなさい。茜さん」
 と、2人は軽く口づけして、茜は神社に、皇騎は隠れ家に帰っていった。
 お互いが、見えなくなるまで手を振って……

End

■登場人物
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0170 大曽根・千春 17 女 メイドな高校生】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生・巫女・天位覚醒者】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【1098 田中・裕介 18 男 孤児院手伝い+なんでも屋】
【1449 綾和泉・汐耶 23 女 都立図書館司書】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体…神さま!?】
【2066 銀野・らせん 17 女 高校生(ドリルガール)】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2213 御柳・狂華 12 女 中学生&禍】
【2276 御影・蓮也 18 男 大学生 概念操者】
【3071 九条・真夜 22 女 守護者】
【2865 宮本・まさお 22 女 ロックバンド】
【3452 不動・望子 24 女 警視庁超常現象対策本部オペレーター 巡査】
【4648 狩野・宴 80 女 博士/講師】

■|Д゚) 通信
|Д゚) ……
|Д゚) らぶこめ〜? ですか?
|Д゚) 皇騎君受難?
|Д゚) 茜のペースになりますたが?

|Д゚) 恋はチョコの味。其れはホントか否か、それは……
|Д゚) またこんど。