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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


神の剣 異聞 Invisible Blade 3 セレスティ・カーニンガム編

 あれから友情を深め、退魔行も2人で行う事が多くなる織田義明と衣蒼未刀。
 義明は未刀に剣と神秘を教えていた。
 彼は知識を徐々に物にしていく。
 あなたも未刀の変わる姿が楽しく思えた(半分嫉妬の場合あるが)。

 ある日、2人は大きな仕事に出掛ける。まずは下見だ。
 どうも、おかしなマンションがあるらしい。死人の山を見つけたと通報が入ったのにも、駆けつければ、そんなことは全くなかった。
 警察では全くわからないようになったため、長谷家に“仕事”が来る。其れを通じて、義明達が仕事を受け持つ形になった。
 故に、建築家でもないが、下調べで一度訪れる。義明。
「異様な気分になる」
 未刀が呟く。
「固有異界か? 超越するための儀式なのだろうな」
「超越……こんな能力をもって何を得たいのだろう?」
「何、霊長の魂の高みを目指すなど、魔術師を筆頭に神秘使いにとって基本的なことだ」
「そうか……」
 お互い、まずは間取りを調べた後、本業準備の為に一度戻る。
 “気配”がする。
「魔術師か……三滝を思い出す」
 義明はごちた。
「三滝?」
「ああ、前にかなり戦った死者の魔法使いさ」
 
――あの神の子に封門の剣士か……。
――嬉しいぞ……織田義明、衣蒼未刀……そして……
 
 “気配”は喜んでいた。

〈総帥登場〉
 リンスター財閥総帥・セレスティ・カーニンガムはこういった謎の事件にも関わる。元が力の持ち主なので、当然と言えば当然であろう。
 彼は、建築会社や設計士などからありとあらゆる資料を提供して貰い、細部に渡って情報を得ようとしている。
 因みに、場所はセレスティの書斎で行われている。
 何度も足を踏み入れても義明には落ち着かない、優雅で豪勢な世界なのだ。
「あう」
 故に何も言えない。
「で、セレス。何かわかった?」
「各階が密閉状態にしているには何か意図がありますね。下から上へ力を汲み上げて、何かを成すことはわかりました。ただ、出口を作って力を漏れる様にするには……」
 と、途中からブツブツ考える。
 パティシエが直にやってくると、未刀は目を輝かしてしまった。
「考え事をすると、甘いものが必要かと。紅茶と旬のフルーツでトッピングしたケーキをおもちしました」
 と、パティシエが言う。
「ありがとうございます。休憩しましょう」
「「ありがとう」」
 セレスが微笑んで礼を言う。2人も礼を言うが、未刀の目はとても輝いていた。
――相変わらず甘いモノには目がないようです。

 義明は、緊張した表情で、セレスに訊ねる。
「コレは危険な仕事ですが、いいのですか?」
「私としてこの厄介な事件は見逃せません。お手伝いします」
 その証拠が、テーブルにある。
 未刀はデザートに夢中になっているがしっかり聞いているようだ。
「そうだ、セレス。財閥の総帥がのこのこ現れて、捕まったらどうする?」
「あはは、其れはないでしょう。君たちがいるのですから。其れに私はそれなりに場数を踏んでいますよ?」
 ウサギを撫でながら微笑むセレス。

 と、休憩が終わってから、色々作戦を練る。
 ただ、建造依頼主が全く誰なのかわからないことが謎である。架空名義だったらしい。
 しかし見取り図だけでも大体のカラクリはわかった。
「地下も見た方がいいかも知れませんね」
 とセレスが言う。
 それに異論はない。


〈下見〉
 リムジンで堂々と3人はやってきた。
 建物自体は見た目、変哲のない円形のマンション。非常階段らしいモノが外にはみ出している以外は何もない。
 数歩近づくと、セレスは車いすを止めた。
「……かなり侵蝕しているようですね」
「魔力ですか?」
「完全に漏れていないですが、自然というのは敏感になります」
 と、近くの植物に目をやった。
 枯れている。水をあげないと枯れるのは普通だが、この枯れ具合は違う。
 危機に抵抗した結果、力を使い果たしたようなものだった。
 そして逆の方にも草木はあるが、それは普通である。
「生と死の狭間といったところなのか?」
 未刀は、訊く。
 セレスは頷いた。

 中にはいると閉塞感に襲われた。
 一応片方の居住区には普通に人が住んでおり、会話もできた。
 ただ、死体の山の事件のことを訊いても首を振るだけ。
 隣とのコミュニケーションは全くないか、書類で調べた結果、架空の住人がいることがわかっていた。
「エレベーターは有る時間帯になると、開閉する向きが変わるみたいですね」
 と、確認のためにセレスはエレベーターを調べていた。

――たしか、この辺が私の建築部がつくったとか?

 と、入り口からエレベーターに向かうロビーを見て、
「義明君」
「はい?」
 と、耳打ちした。
「わかりました」
 セレスはステッキを持って、立ち上がる。
「痛いですがすぐに治します」
 と、義明がナイフで彼の指を少し刺した。
「っつ」
「!?何をして!」
 未刀が驚くが、セレスが止めた。
 義明とセレスが念じる。
 すると、血はルビーのような結晶体になったのだ。
 其れは数個である。
 義明はすぐに、神格治癒で彼の傷口を治して、その結晶体をその“財閥関係が作った場所”に置いた。
「これでよし」
「何をしたんだ?」
「保険ですよ」
 と、セレスは微笑む。
 エレベーターは13階までで、14階は完全に封鎖されているため見ることは出来なかった。
 地下駐車場に何か異常があるのはわかった。それだけでも大きな収穫である。
 なお、生きているところと死んでいるところの境目も見出しているためと、セレスに疲労が見られたため2人は一度戻ろうと提案する。セレスは未だ良いというのだが、3分で折れた。
「いざというときは、ロビーに戻って下さい。義明君、未刀君」
 と、セレスは2人に伝えた。


〈時期〉
 夜中。
 リムジンで今度は地下駐車場に向かう。
「お気を付けて」
 と運転手は、セレス達に言葉を交わし、外に出た。
「ここも淀んでますね」
 セレスが呟く。ステッキで、足場を確認している。
「まず、根から破壊する?」
 未刀が訊いた。
「そうですね。世界樹と太極図など、世界のバランスを意味しているモノが多く、4と言う数字が気になります。建築関係では4というのは忌み嫌われていることが多いですから」
「ふむ」
 


『来たか……』
 影は呟く。
 しかし手出しが出来ない。何故だろう?
 神の子に封門に、長寿の人魚と揃えば、この“装置”で魂の昇華が可能となるはず。
 ただ、用心にこしたことがないと“世界の叡智”が留めているようだ。


「中地階が有るのは確かですが、幻術で隠していますね」
 と、セレスが在る地点に立った。
 そこが、中地階に通じる出入り口と言わんばかりに。
「では、解呪してみますか」
 と、義明は一振りの業物を取り出した。
 そして、抜刀しセレスの代わりにその場に立つ。
「セレス、こっちに」
 と、未刀がセレスを支えてかなり遠く離れる。
 義明が、神格を覚醒し、業物の刀に力を込めた。
 解の技で、その空間を“斬った”。
 空間が歪み、ガラスの割れる音がする。
 何か不思議な材質で出来ている螺旋階段が上に続いている。
「なるほど」
 と、3人は頷いた。

〈牢獄からロビーに〉
 階段を上がる。
 そこは機械室に見えた。
 ボイラー、パイプ、送電器……
 しかし、この中地階にあるプールだけは異常だった。
「人の魂が塩漬けにされています」
 と、セレスが吐き気を抑えながら伝えた。
 あまり動けないかわり、彼にはかなりの鋭敏な感覚を持つ。すっと、1秒程度集中するだけでその場所の詳しい内容がわかるのだ(14階は何かに遮られたようである)。
「つまり、生と死の循環エネルギーをこのマンションで作りだして、最終的にその淀んだ力を元に己の魂の昇華を狙ったわけか」
 未刀が、“透明剣”を出す。
『壊されては困るのだがね』
「!?」
 と、声に気付いて未刀は飛び跳ね退いた。
「何者!」
『この塔の主』
 声だけだ。
「こっちの行動はわかっていただろう? 何故、傍観していた?」
 と、義明がどこかにいるであろう“主”に訊く。
 額には冷や汗をかいている。
『その場で戦われても困るし、私とて汝らの力は知っている。人魚の総帥。君の考えていることは大方当たりだが、既に漏らすために穴を開けようとしても無駄だ』
 と、主は言った。
「そうですか。それは下見の時にわかりましたよ」
『聡明だな……不老に神、封門がこの聖域で魂となれば私の目的が成就される』
「あいかわらず、魂の昇華、神か世界になりたいのか……三滝のまねごとで」
 義明は天井に向かって言った。
『三滝…ああ、あの屍術師か。彼は失敗した私はそうはならない。世界の叡智を得たのだ。彼より巧くやれる』
「何を言うか、この装置の改良など全て……」
「三滝という存在の借り物ではないのですか?」
 義明の代わりにセレスが最後を言った。

『おのれ! 私を三滝と同じように!』
 怒りに火がついたのか、主は黒い影で覆われた存在として地面から現れた。

「その影投身体も三滝のまねごとだ。非実体を斬るには、僕が巧い。それが影であろうと関係なく」
 未刀が構える。
 義明が更に覚醒するまでと、セレスを守るために体を張るのだ。
 すでに、この影は目的を言ってしまった。
「ナンセンスですね。この塔の主」
『何?』
 セレスの優雅な物言いが槍の様に鋭く、影の心のどこかに突き刺さる。
『どこが……』
「呪術的にこの建物は完璧です。大きなミスを犯しています。あなたは自力でこの建物を建造することはよかったですが、抑止を呼び込んでしまった。しかもとびっきりの“装填抑止”を」
「“装填抑止”だと?」
「つまり、私や未刀君は、そう言うものではないですが……。あなたに叡智を与えた世界とは、元々……」
――まだ抑止として覚醒していない織田義明に倒された三滝尚恭の現象化なのですから。

 その言葉は、影を混乱させた。
「ばかな! 私の計画は! すべて……」
「今のうちに、セレス逃げよう」
「え? でも、まだ。私は部下のように一寸あの人を論破して……」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃない!」
 未刀は、セレスを横抱きにして、一気に地下駐車場に落ちていく。

 何故逃げたのか……

 未刀は訓練をしていたので知っている。

 義明が“影斬化”し装填抑止として覚醒したのだ。
「たく、現象化とかなんとかって、何なんだよ!」
「私も説明は付きませんけどね。抑止現象よりは低いですが厄介なのは確かですよ」
 セレスは未刀の素早い行動が一寸嬉しかったりする。
 未刀は信じられない走りで、地下駐車場の階段を登り……あのセレスが言った場所にたどり着くと同時に……




 中地階から天魔断絶の光が放たれた。

 マンションは内部だけ半壊。魂も在るべき所に向かって逝くのを未刀とセレスはロビーでみる。
「片方は特殊なゴーレムで、片方がそのゴーレムを動かす為の原動力だった本物のようですね」
 ロビーにセレスの血の結晶が、事前対応で結界を張ったのだ。

「片付けてきた」
 と、灰になっていく業物を持って義明が現れる。
「影だったモノは?」
「なかなか、頭が回っている。あれは本当に影で、本体は別の所に転移したようです」
 始末できなかったことを悔やむよう言う。
「では、また同じ事を……するでしょうか?」
「あの術者の力量に寄りますね。三滝の現象憑依は無くなったと思いますが、憑依した者が実のところ未完の1流であれば、違った形で実験を行うでしょう。その時はIO2にも狙われますから早々簡単にことは起こせないかとおもいます」
 と、義明は答えた。
「それにしても、こんな事を思いつくなんて、セレス」
 未刀は無傷のロビーをみて驚いた。
「私の血はコントロールでき、さらに義明君の力をお借りして、この部分だけ運命を変えるようにしたのですよ」
 セレスは笑う。
「何よりこの部分だけは、私の組織が絡んでいましたからね。責任は取らないといけません」
 彼は苦笑した。


 現象化とは何なのかよくわからないが、この奇妙な事件だけは、解決出来るだろう。
 あとは、依頼先の長谷家がなんとかしてくれるのだ。

 丁度、外に出たら、リムジンが止まっておりウサギがセレスに飛びついてきた。
「大丈夫ですよ」
 セレスはウサギを撫でる。
「お仕事ご苦労様です。総帥、織田様、衣蒼様」
 運転手が、恭しく頭を下げた。


 気が付けば、東の方に朝日が昇っていた。

「一眠りしてからどうしますか?」
 と、相変わらず優しい声でセレスは義明達に訊いてきた。


――何もなかったかのように。


4話に続く

■登場人物
【1883 セレスティ・カーニンガム 725 男 財閥総帥・占い師・水霊使い】

【NPC 織田・義明 18 男 神聖都学園高等部・天空剣剣士】
【NPC 衣蒼・未刀 17 男 妖怪退治屋(家離反)】

■ライター通信
 滝照直樹です。
 『神の剣 異聞 Invisible Blade 3』に参加して下さりありがとうございます。
 財閥と言うことで、何らかの会社を関わらせてみました。総帥自ら責任をとりに行くふうに書いてみましたが、どうでしたでしょうか? 未刀君にお姫様抱っこされましたが気持ちの程はどうでしょう?
 4話はフリープレイングです。ただ、彼らに対してどう思っていることが鍵になります。

 ではまたお待ちしております。