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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


神の剣 異聞 古本屋の姉妹 1 お約束な出会い

 織田義明、又の名を“影斬”。
 とはいっても、剣技が人並み以上とか性格がどうこう言う点では、普通なのかもしれない。
 その力は人に見せるものでなく、最悪な事態になる前に封じる力。弱きを助ける力と迄は行かないが。

 それはそうと、彼もまた学生である。色々資料を調べ、レポートを書かなければならない。
「どこかに民俗学やら神秘学が無いものかな?」
 と、ぼやく彼。
 彼が角から歩いて……、いきなり人とぶち当たった。
「いたた……。大丈夫?」
「え、え、だ、大丈夫です!」
 いつも気を引き締めているのか、義明は倒れず、豪快に体当たりした少女を抱き留めていた。
「あ、ありがとうございます!」
「急いでどうしたの?」
 尋ねる義明。
 少女は長い銀髪に赤い瞳。
 少女は、普通ぶつかるとお互いしりもちをつくというのに、抱き留めてくれたこの少年に……。
「いま、本屋が大変なんです。……早く手伝いに行かないと……」
「……ふむ」 
 慌てている事は分かった。
「何かの縁、手助けしよう。俺も本屋に用事があるし」
「え、ええ!?」
 少女は驚いた。
 半分驚き、半分少し嬉しい、の複雑心境である。

 その少女は佐伯紗霧。
 元・吸血種と現役超越者の出会いであった。


〈櫻紫桜〉
 文月堂の様子を見てみる。
 古本屋にしては異様に客の出入りが激しいなか、佐伯隆美が必死になって働いている。
 もともと、文月堂はそれほど賑わいのある古本屋ではない。大きな組織の一つではないし、取り扱っているのは“曰く付き”のモノが多い(比較的)。大忙しになるとすればそれは、一寸したきっかけだろう。
 資料としての本が豊富という事が口コミで広まったか、そこの姉妹目当てなのか、なのだ。
 うさみみで賑わったことは、世間一般では知られていない。


 櫻紫桜は、この狭い店の中、あるモノを探しているようだ。モノと言っても、古書しかないだろう。ここでパンを買うなんて出来ないのだ。刀剣類の書籍を探しているらしい。しかし、なかなか見付からない。
 と、此処だけ異様にゆったりとした雰囲気になっている。
 元々、平和思考である彼。思考は今の時代からかなりずれているかもしれない。そうした性格から、人と線を引いて関わる様に思える。

「はい、85000円になります」
 奥にあるレジで女性が重たい古書を纏めている。
 これだけ繁盛するのも嬉しいのだが、賑わいようは異常と思える。
「……どこだろう……しかし、あの人に聞くにも何か気が引ける」
 と、心の中で独り言を言う紫桜。
「すみません 混み合っているので立ち読みは止めて下さい〜」
 と、女性が注意している。
 流石に異様な混み具合に立ち読みは迷惑だろう。注意するのは当たり前だ。
「お姉ちゃんごめん、おそくなっちゃって」
 と、裏から可愛い声が聞こえた。
「もう、遅いよ、紗霧……でこのかたは? はは〜ん……紗霧やるわね」
「ち、ちがうって! たまた……」
 と、なにか言っている(言い争いではないようだが)。
「この気配は? 何処かで」
 どうも、角度的に裏の様子が見えない。しかし何処かで感じた気配だった。
 そう、奥底にかなり力を持ったような……

「この本を棚の上に?」
「はい、お願いします」
 と、男の声が聞こえる。
 その男が、一応櫻紫桜は先日に知った顔だった。
 織田義明だ。
 前に一度あったが、あちらは覚えているだろうか?
「? どうかしましたか?」
 と、愛用のエプロンを着ている紗霧が紫桜に尋ねる。
「あ、いや、自分で探しますので、他の方の……」
「しかし、何をお探しかで変わりますから……」
 と、丁寧に銀髪の少女は説明してくれる。
「は、はあ。実は刀剣の逸話集を探しているのですが……」
 断るのも悪いので、何を探しているか言う紫桜だが
「えっと、それはですね。あちらのお手伝いさんの方の棚にあります」
 と、義明の方に案内する紗霧。
「これでいいかな? って、あれ?」
 と、脚立の上から確認で紗霧に言おうとしたときに、紫桜に気付いた。
「やあ、こんにちは。花火以来か、な?」
 義明はどうもうろ覚えらしい。
「はい、こんにちは」
 お互い挨拶する。
 刀剣辞典は丁度義明のところにあったのだ。
 顔も知りでもそれほど縁が深いわけでもないのだが、今はお客(紫桜)と手伝い(義明)の立場。
「済みません。其処にある刀剣逸話辞典をとっていただけますか?」
「あ、これかな?」
 と、器用その本を引き出す。丁寧に、丁寧に。
「どうもありがとうございます」
 その本はかなり立派なもので、おそらく明治時代からか、過去の悠久の時の様々な逸話を調べたものと思われるものだ。
「これで宜しいでしょうか?」
「はい」
 と、会計を済まし、帰ろうと思った紫桜なのだが、
「どうして、織田さんが此処に?」
「ああ、本探すところだったけど、成り行きで忙しいから、『手伝いする』っていったんだ」
 と、あっけらかんと答えたのであった。
 その後と、言ったら紫桜も何か手伝う事はないかと言うものだから、佐伯姉妹は目を丸くする。
 たしかに、今日は異常に客が多い。レポートとか卒論で其処までするものだろうか? と思うぐらいだ。
 なりゆきで、紫桜も手伝う事になった。
「おかしいね?」
「おかしいですね……」
 姉妹は首を傾げた。
 繁盛する事に問題はないし、嬉しい事だが、割りと不思議と思うことだった。

「済みません。お世話になっちゃって」
 と、一段落し、店の裏側に案内された紫桜と義明は隆美に礼を言われる。
 スイカと、麦茶をごちそうになった。
「まあ、俺も必要な古書が手に入ったので……困ったときはお互い様だよ」
「ええ、俺も助かりました」
 と、のんびりする4人。

 さて、何故義明が佐伯姉妹の手伝いを申し出たのか?
 其れが今回の最大の謎だ。
 ただ、紫桜は何か理由があって来たのだろうと、その事については触れる事はしなかった。
 
 何れ分かるだろう、と。
 
 紫桜は、帰った後に、文月堂は過去にうさみみが生えた事で騒ぎになったり、自分と同じかそれ以上の特殊能力者が屯していたり、という話を聞いたのであった。

――縁があるのだろうか?
 と、紫桜は何となくだが其処に足繁く通う事になった。


続く

■登場人物
【5453 櫻紫・桜 15 男 高校生】


【NPC 織田義明 18 男 学生・天空剣師範代(装填抑止)】
【NPC 佐伯・隆美 19 女 大学生・古本屋のバイト】
【NPC 佐伯・紗霧 16 女 高校生】


■ライター通信
滝照直樹です。
『神の剣異聞 古本屋の姉妹』に参加していただきありがとうございます。
今回は、少し線を置いた感じにしました。
義明の方は此方で深く関わりやすい(積極的に行動が必要と言う事があります)ですが、佐伯姉妹のほうは、藤杜錬ライターのNPCのため、彼女たちと親好を深めたい場合は、藤杜錬ライターの『文月堂奇譚 〜古書探し〜』に参加してみると良いでしょう。

この『神の剣異聞』関係ノベルは、NPC達と絡んで友情を育む趣旨であるため、行動如何で結果が変わります。どれだけ、義明と佐伯姉妹との仲が良くなるか頑張ってみては如何でしょうか?
これからどうなっていくかは他の話で……。
しかし、義明は何故手伝うと言ったのでしょうかね?

親好を深くできれば分かるかも知れません。

では、2話でお会いしましょう