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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


神の剣 異聞 古本屋の姉妹 1 お約束な出会い

 織田義明、又の名を“影斬”。
 とはいっても、剣技が人並み以上とか性格がどうこう言う点では、普通なのかもしれない。
 その力は人に見せるものでなく、最悪な事態になる前に封じる力。弱きを助ける力と迄は行かないが。

 それはそうと、彼もまた学生である。色々資料を調べて、レポートを書かなければならない。
「どこかに民俗学やら神秘学が無いものかな?」
 と、ぼやく彼。
 彼が角から歩いて……
 いきなり人とぶち当たった。
「いたた……。大丈夫?」
「え、え、だ、大丈夫です!」
 いつも気を引き締めているのか、義明は倒れず、豪快に体当たりした少女を抱き留めていた。
「あ、ありがとうございます!」
「急いでどうしたの?」
 尋ねる義明。
 少女は長い銀髪に赤い瞳。
 少女は、普通ぶつかるとお互いしりもちをつくというのに、抱き留めてくれたこの少年に……。
「いま、本屋が大変なんです。……早く手伝いに行かないと……」
「……ふむ」 
 慌てている事は分かった。
「何かの縁、手助けしよう。俺も本屋に用事があるし」
「え、ええ!?」
 少女は驚いた。
 驚き半分、少し嬉しい半分の複雑心境である。

 その少女は佐伯紗霧。
 元・吸血種と現役超越者の出会いであった。


〈天薙撫子〉
 従兄から、文月堂の事を聞いて、やってきた天薙撫子は、色々な本があると言う事で、かなりうきうきしていた。

――そのあと、青筋を立てそうになりそうだが。

 様々な逸話、文献など彼女にとって貴重なものだ。民俗学所属としてなら尚更で、なかなか見付からない書もあるというのが嬉しい。最も、裏事情の方でも大活躍の古書である。
 その前に、地図を片手に探したみたいだが、
 
――迷子になってしまったようです。

 地図が悪いわけではないし、撫子が方向音痴というわけではない。
 単に暑さで判断力が鈍っているという事にしておくほうが良いだろう。
 本当に暑いし。
「どうしましょう?」
 汗だくになる撫子。
 夏の着物と言っても、こうも温暖化でどんどん暑くなるこの頃はあつい。紫外線だのどうこうあるのだ。日傘も忘れていない。
 タンクトップに其れに似合う半ズボンかスカートなどの方がいいかも知れないが、肌を露出したモノをあまり着ない撫子。多分、着てしまうと、約一名、倒れるであろう。
 汗を掻きながらも、何とかたどり着いた撫子。
「なかなか良いお店ですね♪」
 と、古い店にご機嫌である。
 彼女はこういった落ち着いたところが好きらしい。
 
「御免下さい…… ?」
 と、撫子が意気揚々と入ってみると……
 
「手伝ってくれてありがとう」
「困ったときはお互い様です」
 と、女性と織田義明が親しく話しているではないか!?
 バックに雷が鳴っていても不思議ではない心境の撫子さん。
 そのままズカズカ先に進んでいき……、
「義明君何をしているのですか?」
 と、珍しく怖い剣幕で義明に声を掛ける。
「あ、撫子? ちょうどよ い? いいい!?」
 状況を直ぐに判断できない状態でビックリ状態になった義明。
「いらっしゃいませ。 ?  知り合い……。 ……えっとごゆっくり〜」
 と、女性が尋ねようとするが、今は関わると怖いので一寸退いた。
 店の奥では、銀髪の少女がどうしたのかしら、と隠れて見ている。
 
「義明君、説明して欲しいですけど」
 撫子は笑っているが、笑顔ではない笑い。
そう、乾いた笑いで、ヤキモチの笑いだ。
「その前に落ち着いてくれ。撫子。何故そんな」
「落ち着いています!」
 怒鳴る。
 声が良く響くので、義明は耳を塞いだ。
「落ち着いていない。単に厄介な事があって……」
「厄介な事とは何ですか?!」
 どんどん迫る、撫子。
 一方、義明も後ろめたい事がないので、耳なりを何とか我慢し……
「だから落ちつけと言っているだろ……」
 と、宥めにかかる。
 何回か言い争いをしているわけだが、撫子は徐々に頭が冷めてきたようだ。
 何をムキになっていたのだろう? と。
 笑顔で話していた義明にヤキモチ妬いていたのかと思うと、すこし恥ずかしくなり……、さらには、レジの奥の方で……此処の店員さんらしい女性2人が見ている(片方は苦笑しながら、片方は赤面してドキドキしながら、と言う事を追記。一瞬何かどこかで見たような、謎生物が見えたのも付け加えておく)。
「ああ! お店で何て事! えっと、あの、わ、わたくし 天薙撫子後申します! えっと、義明君とは……えっと……」
 と、ワタワタしながら2人に挨拶した。
「もう少し落ち着こうな……」
 溜息をつく義明。
「実はいきなり本が崩れてしまって、片付けの手伝いをして下さったのです」
「あ、そうだったんですか……」
 と、事情を聞いた撫子は思わず赤面した。
 自己紹介や経緯などを話している。
 つまり、急いで帰ろうとした紗霧、その事情というのは、本が豪快に倒れ、片付けに忙しくなった事。何故義明が、手伝うのかというのは、困ったときは助けようと言うお節介焼き全開なだけである。それに、 本の下敷きになったら死ぬぐらい怖い。其れぐらいの物量が此処にあるのだ。
 片付けているときに民俗学や神秘学の書籍が見付かれば、其れこそ一石二鳥というのもあるのだが、そんな事を微塵も考えていない義明だった。
「俺もレポートでいるから。向かって待っているよりその惨状を何とかする方がいいだろ?」
「しかし出会い頭で、行きなり『手伝う』と、織田さんが言ったのは驚きました」
 と、紗霧。
 少し焦った義明に、ジトメの撫子、ニヤリと笑っている隆美だった。

「さて、まだまだ残っているから……直さないと……」
 と、隆美が立ち上がる。
「ではわたくしも手伝います♪」
「え? そんな……」
「みんなでやれば早く済みますし、わたくしも書物の扱いになれています」
「では、お言葉に甘えます」
 と、今度は4人で片づけにはいるのだった。

 封印指定物古書を追いかけ回したり、幽霊などに出会うというような事が起こったりと大事な事はなかった様子だが、撫子と隆美と紗霧は竜台をしていくウチに仲良くなっている。その背景に、撫子の従兄とこの姉妹達が知り合いである事に起因するらしい。
 撫子は作業を進めていくうちに、紗霧が何か“別の存在”と気付く。
――彼女は問題ないでしょうね……。
 と、頷いた。
 彼女のそぶりを見て、義明はホッとしているようだ。
 撫子は何となく義明がこの場所に来たか、何となく分かってきた。彼女が吸血種の気配を感じたため、義明がその状態を見てみたかったのだろう……。やはり平穏な暮らしは出来ないのかと少し複雑に思ったのであった。

 しかし……片づけが一行に進まない。
「この蔵書の量は尋常じゃないですね……」
 と、汗だくの義明。
「お、おかしい……わね……? こんなに倒れていたかしら?」
 と、隆美。
 無限回廊ではないが、無限本棚かもしれない文月堂。
 え? 無限本棚?
「一寸 待って下さい……何かおかしいですよ?」
 紗霧。
 そう、この店自体がどんどん拡大していたのだ。其れに伴って、本も増えている……。
「何処かに空間拡張の本があって、それが開いたのか――っ!?」
「よ、義明くんどうしましょう?!」
「おねえちゃ〜ん! た〜す〜け〜て〜」
「紗霧〜!!」
 4人は必死に原因を探すハメになった(何か紗霧が本の山に埋もれていくようだ……)。

――いや、義明の見る力、撫子の龍晶眼があればものの数分だろうけど……。

 結局事が収まったのは8時ぐらいになった……。
「は、腹減った……」
 流石の義明もダウンである。
 紗霧は殆どの能力を封印されているので既にグロッキーだ。
「ご飯の用意していないわ……」
 と、困った隆美。
「冷たい麦茶が残っていたかしら……」
 と、隆美がつぶやいて、向かった。
 麦茶を飲んでから、店を閉めて何処かファミレスで食べようと云う事になった。

 原因であった収納術の本が、丁寧にテーブルの上に置かれている。今ではしっかり封印されている証拠もあった。

 これからも、ゴタゴタがありそうである。


続く


■登場人物
【0328 天薙・撫子 18 女性 大学生(巫女)・天位覚醒者】


【NPC 織田義明 18 男 学生・天空剣師範代(装填抑止)】
【NPC 佐伯・隆美 19 女 大学生・古本屋のバイト】
【NPC 佐伯・紗霧 16 女 高校生】


■ライター通信
滝照直樹です。
『神の剣異聞 古本屋の姉妹』に参加していただきありがとうございます。
撫子さんのヤキモチのシーンになりましたが如何でしたでしょうか?

色々な事が今後起こるかもしれません。

ではまたお会いしましょう。