コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


神の剣 異聞 古本屋の姉妹 1 お約束な出会い

 織田義明、又の名を“影斬”。
 とはいっても、剣技が人並み以上とか性格がどうこう言う点では、普通なのかもしれない。
 その力は人に見せるものでなく、最悪な事態になる前に封じる力。“弱き”を助ける力と迄は行かないが。

 それはそうと、彼もまた学生である。色々資料を調べ、レポートを書かなければならない。
「どこかに民俗学やら神秘学が無いものかな?」
 と、ぼやく彼。
 彼が角から歩いて……
 いきなり人とぶち当たった。
「いたた……。大丈夫?」
「え、え、だ、大丈夫です!」
 いつも気を引き締めているのか、義明は倒れず、豪快に体当たりした少女を抱き留めていた。
「あ、ありがとうございます!」
「急いでどうしたの?」
 尋ねる義明。
 少女は長い銀髪に赤い瞳。
 少女は、普通ぶつかるとお互いしりもちをつくというのに、抱き留めてくれたこの少年に……。
「いま、本屋が大変なんです。……早く手伝いに行かないと……」
「……ふむ」 
 慌てている事は分かった。
「何かの縁、手助けしよう。俺も本屋に用事があるし」
「え、ええ!?」
 少女は驚いた。
 驚き半分、少し嬉しい半分の複雑心境である。

 その少女は佐伯紗霧。
 元・吸血種と現役超越者の出会いであった。


〈黒崎狼〉
 俺はどうして此処にいるのだろう?
 と、黒崎狼は悩んでいた。
 目の前は文月堂、そして……。


 黒崎狼が、こう考えているのは……自分の性格などらしい。
 暇をもてあましていた狼は丁度義明を見つけて、
「よう、義明!」
 と、声を掛けたのが始まりだった。
「お、狼。丁度良かったお前も来い」
「え?」
 と、義明に行きなり手を引っ張られる狼。
「お、おい! いきなりどこに!」
「人手が必要なんだよ」
「その前に説明……」
「あの、お知り合いですか?」
 銀髪の少女が首を傾げる。
「腐れ縁」
「勝手に決めるな! 義明!」
 と、言いあいながらも先を進む3人。


「いあ、もう言わないで良い……。確かに必要だ」
 と、狼は今の文月堂をみて、片手で頭を抑えている。
「きゃー! 逃げないでぇ!」
 と、飛び跳ねて行く沢山の本を追いかける女性がいるのだ。
 手足が生えて走る本や、そのままで飛び跳ねる本と、多種多様。
――頭痛い。
 そう言葉で出そうな状態の狼。
「お姉ちゃん!」
 急いで、義明の隣にいた少女が走っていった。
「かなり忙しそうだから、ここに来るまでに簡単に事情を聞いたんだが……。あれは、想像以上だ」
 苦笑している義明。
「本屋が大変な事になっていると聞いて、直ぐにそんな事言ったのか?」
 狼が聞く。
「まあ、こういう事件に離れているだろ? お互い…… あの、手伝います!」
 と、義明は上着を脱いで、逃げまどう本を追いかけた。
「いや、こんな状況を無視するわけ行かないじゃないか……」
 と、狼も自分の性格を呪いながらこの惨状(?)の舞台に躍り出たのである。


 しかし、辞典ほどの大きさもある本の癖に走るの(飛ぶ、転がる、跳ねる)が速い。人間レベルの身体能力で追いかけるのは、骨が折れる。義明の方はやたらと危ないところまで悠々と追いかけては捕まえるのだが、流石に本屋の姉妹は苦労していそうだ。
 車の下に隠れ怯えて居る何かを何とか捕まえようとする姉妹。
 狼が、不思議そうに
「そちらは……どうしたんですか?」
「『猫の本』みたいですが、怯えて出てこないんで……」
 と、先ほどの銀髪の少女が言った。
「……」
 猫の本?
――落ちつけ、落ちつけ。落ちつけー!
 狼は心の中で叫んでいた。
「猫は無理に追いかけるのは……」
 と、確認のために下を見る。
 確かに本だ。しかし、何故――
 猫に見えるのか?
 今は考えないようにした。
「こっちおいでー」
「おーい」
 と、2人で猫になった本を手招きするが……。
 悪戯の本が狼の尻目がけて、本の角でアタック。
「いっ! いったあ!」
 大声を上げてしまったので、今度は猫の本が驚き、狼をひっかいた(ひっかき方が非常に謎だ)。
「ぎゃー! ッてこの野郎! 大人しくしろ!」
 と、苦痛を我慢しながら狼は猫の本と悪戯の本を捕まえたのである。

 と、数時間かけて捕縛は成功した。

 外では雨と雷が激しく音を立てている。
 本はそこら中で暴れている。
「な、何があったんですか?」
 汗だくの義明、狼が2人の姉妹に聞いた。
「虫干ししようとして、いきなり本が暴れ出したので……」
 と、最初に本を追っていた少女は言う。
「うーん。原因は九十九神っぽいですね」
 と、義明。
「結構、面白い物を売っているんだ……でもさ……封印とかしないの?」
 と、狼が近くにあった本をポンポン軽く叩くと……、
 本が怒って、角で狼を殴った。
「ぐ……本の角は……最強の凶器だ……」
 その本は、何かの小説だったらしく、自分を“開いて”、
『無礼者』
 と書かれたページを何度も開けていく。
「あの、……義明? えっと……おねえさん? えっと、これはどういう……事でしょう?」
「私(本)を大事にしろと、それか、この愚か者が気安く触るなと言う感じじゃないかな?」
 と、義明が考えた事を言った。
「これは江戸時代頃の逸話集かしらね? 主に侍がでているわね……封印はしようとしても数……!?」
 と、隆美が『無礼者』と開いている本を持って、読んでみるとそう言った。
 
 しかし、狼は、状況の把握が追いつかず真っ白になっていて燃え尽きているようだ。

「だ、大丈夫ですか!?」
 紗霧が驚いて狼を揺すった。
「勉強していないからか?」
 義明が意地悪そうな笑みを零した。

 
 そのあと、何とか九十九神を落ち着かせ事は収まった。
 言う事を聞く本はしっかり自分の持ち場に戻るのだが、腕白な本はあやすのにも一苦労である。
 しっかりその前に、各自自己紹介は済ませているし、狼が真っ白になっているのも回復している。
「今日は本当にありがとうございます」
 と、深々と紗霧が礼を言った。
「いや、こっちも……おっとっと。目当ての本が見付かったし」
「九十九神化した本で良いのか、義明」
 暫くこういう本はゴメン被りたいなとおもう狼が言うと、
「たいくつはしない」
 と、爽やかに答える義明。
――コイツの順応性ははかり知れない……
 そう、彼は九十九神化した民俗集を持っているのだ。活きが良いようで、良く暴れている。
「お茶が入ったわ。スイカ、どうぞ」
 隆美が、よく冷えた麦茶とスイカを置いた盆を持ってきた。
「ありがとうございます」
「此方が助かったから、ありがとう織田君に黒崎君」

 と、九十九神でもそんなに暴れるものだろうか? と疑問がよぎるわけだが。
――色々ありそうなので不問にしておこう。
 と、4人は思ったに違いない。



 これがきっかけ。
 これから狼は彼女と義明とどう接するかは……次回かと?

 続く



■登場人物
【1614 黒崎・狼 16 男 流浪の少年(『逸品堂』の居候)】

【NPC 織田・義昭/影斬 18 男 学生・天空剣師範代】
【NPC 佐伯・隆美 19 女 大学生・古本屋のバイト】
【NPC 佐伯・紗霧 16 女 高校生】


■ライター通信
 滝照直樹です。
 『神の剣 異聞 古本屋の姉妹』に参加して下さりありがとうございます。
 今後どんな事が起きるのか、狼君はどんな形で姉妹と仲良くなるかは次回になりそうです。
義明の方は此方で深く関わりやすい(積極的に行動が必要と言う事があります)ですが、佐伯姉妹のほうは、藤杜錬ライターのNPCのため、彼女たちとより親好を深めたい場合は、藤杜錬ライターの『文月堂奇譚 〜古書探し〜』に参加してみると良いでしょう。

 

 では今回はこの辺で。