コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


永久秋温泉旅行記 1日目


 あやかし荘に一通の手紙が届く。
「あら、永久秋の猿渡さんから♪」
 と、因幡恵美はうきうきと手紙を開けてみる。

 手紙の内容というのは以下が過ごしていますか、とか他愛のない事が書かれているわけであるが、最後にまたお越し下さいという事が書かれている。ご丁寧に、招待券も付いていた。
「これは楽しそうね♪」
「どうしたのぢゃ?」
「なになに〜?」
 TVショッピングを見ていた嬉璃と、エヴァが顔を覗かせる。
「ほほう。また温泉か……」
「かなり良かったし、また行きません?」
「ふむそうぢゃな」
「温泉だ〜!」
 と、恵美は、電話で知り合いを誘う事に……。

 一方、草間興信所……
「近頃かわうそ?を見かけないが?」
 と、何か居たら迷惑だが、居ないと淋しく感じる謎生物を気にする草間。
 そんなときに、電話が鳴った。
「たけぴー ちゃー」
「ナマモノ……どうした? オマエが電話なんてめずらしい」
「今年、永久秋……くる?」
「……ああ、2年ぐらい前にいたあの温泉か……しかし手持ちが……」
 なにやら経費がかさんだのか旅行できるほどではないらしい。
「バイト」
「オマエじゃないんだから……」
 と、やりとりをしているときに……
「私入ってみたいです。温泉に。秋の景色も……みたいです」
 零が、上目遣いで頼み込んでいた。
 草間は妹のおねだりに弱い。とことん弱い。
「……うう……」
「決定」
 ナマモノが勝手に決めたようだ。
「やったぁ!」
「勝手に決めるな、おい! 未だ色々とだな……。くそ、切りやがった……」
 
 さて、永久秋という不思議な地域に足を踏み入れる?
 秋の風景をみて、世俗を忘れるのも良いだろう……。


〈あやかし荘にて〉
 因幡恵美が友人などに誘いを掛けて数時間後、支度等の打ち合わせに現れたのは、天薙撫子、榊船亜真知、海原みそのである。
「お電話ありがとうございます♪ 恵美様」
「いえいいえ、皆さんで温泉を満喫するのは楽しい事ですから」
 と、撫子と恵美がほんわかと会話している。
「つまらないものですがこれを」
 そのあとに、みそのがお土産を持ってやって来た。サラダ油セットのようだ。
「妹たちは学業で忙しいので、わたくしが参加させて頂きます」
 と、ニコニコ微笑みながら、恵美達に挨拶する。
「ありがとうございます。はい。どうぞ、どうぞ」


 黒電話しかないあやかし荘だが、エヴァが其れを使って鹿沼デルフェスを誘った。彼女は嬉々として、あやかし荘にやってきた。
「温泉は楽しみですわ♪」
「だよね〜」
「あ、そうそう、SHIZUKU様やカスミ様もお誘いしたいのですが宜しいでしょうか?」
 デルフェスは訊いてみると、
「メグミー。大丈夫?」
「エヴァちゃん、一寸待って。……はい、大丈夫ですよ♪」
 エヴァが恵美に確認してOKが出た。
「では早速、お知らせしなければ」
 と、デルフェスは電話もしくは直に相手に話をするために足を伸ばした。
「……というわけですがどうでしょうか?」
 と、カスミとSHIZUKUが丁度学校に残っていたので、話をするデルフェス。
「温泉、いいわねぇ♪ いいのかしら? 私がお邪魔しても……」
「松茸……そして、永久秋〜! 一寸書き込み会ったから気になってたの〜! まさか行けるなんて! 観光の他にも不思議スポットして噂になりつつあったの! やった〜!」
 口調の差はあれ、既に行く気満々なカスミとSHIZUKU。
「大丈夫ですわ♪ カスミ様」
「ええ、SHIZUKUさんが行くとなれば、付き添いとして参加するわ」
 と、カスミは言い訳を考えていたらしい。
 温泉に、お肌が艶々になると言う効果があるとなれば女性ならば一度は行きたいだろう。

 撫子は恵美に、
「義明君もお誘いしても宜しいでしょうか?」
 と、少し頬を染めながら訊いた。
「はい。私も彼にはお世話になっているから、大丈夫です」
「ありがとうございます!」
 と、撫子さんはとても喜んでいた。
 義明を呼んでみたのは良いモノの、
 ――何かオプションが付いている。
「著者、オプションて何よ――!」
 ――そう、ハリセン娘の長谷茜である。
「私も松茸食べたい――! 温泉に浸かりたい――! いっつもよしちゃんだけってずるい――!」
「色気より食い気とは、未だ子供だな」
「ぶぅ、なによぉ」
 ――これ茜、お誘いになられた撫子様に失礼ですよ。
「ううぅ」
 義明にからかわれて、静香にも怒られ、ハリセンフグになっている、茜。
「まあ、まあ、茜さん。皆さんで楽しみましょう」
 茜を宥める恵美に撫子だった。
 当然、撫子さんは少し照れながらの支度をしている。可愛いところが大ありなのだった。


 亜真知はというと、嬉璃とまた二等身キャラになって遊んでいるのであった。
「お菓子を用意しておきますから♪」
 と、当日が待ち遠しいようだ。

 そして、あやかし荘では大人数になるためにデルフェスの案でマイクロバスを借りる事になったのだ。


〈あやかし荘ご一行様〉
 静香は暫く黙っておくようにと茜に言われている。目の前にカスミという先生が居るからだ。それだけで分かるだろう。初日から気絶という事は避けておきたい。

 あやかし荘のメンツは、マイクロバスを借りて一路永久秋に向かうのだが、少しその前の出来事を書いておこう。海原みそのの格好に、一同は少し固まった。
「どうなさいました?」
「いや、頭、頭……」
 茜がみそのの頭の物を指した。
「ああ、これですか? 温泉には必要と思いまして♪」
 にっこり微笑むみその。
「手ぬぐいは今とって置いた方が宜しいかと思うのですが……」
 彼女の姿は、黒字に赤い紅葉の浴衣に、其れに見合った下駄である。其れはよい。彼女の綺麗な長い髪と見事に似合う。しかし、彼女の頭に手ぬぐいがたたまれて乗せられているのだ。そう、温泉で手ぬぐいを頭に乗せる感じである。彼女らしいと言えばそうだが、感覚の“チャンネル”が一般とずれている彼女からすれば、「?」な感じであろう。

 そして、驚く事はもう一つ、鹿沼デルフェス。
 そろそろ、マイクロバスが着く頃になってもデルフェスが居なかった。
「どうしたのかしら? 事故でもあったの……?」
 と、カスミが心配してしまう。
「そ、そんな。デルフェスさんは“堅いん”だよ〜」
 と、SHIZUKUや他の人と言っているときだ。
 バスがやってきた。
「お待たせ致しましたわ♪」
 バスガイドさんがお出迎え。
「デルフェスさん!」
 因幡恵美や響カスミも驚いて声を上げる。
 デルフェスがミニスカでブレザーっぽいバスガイドの服装をしていたのだ。マイクロバスの運転手は、普通の人だ。

 バスはゆっくりと安全に、永久秋を目指す。
「運転手はAさまとガイドはわたくし鹿沼デルフェスが、一路永久秋温泉までご案内します」
 と、かなり堂に入っている。
 思わずノリで、エヴァやSHIZUKU、茜が口笛を吹いたり、やんやと歓声を上げたりした。
「永久秋は伝説には四季の四神のうち秋の女神が人と恋に落ち、その地にずっと住み続ける事になりました。しかし、他の神々は其れに怒り、天罰が起こりましたの。其れは悲しい事でした。災害が起こり、その被害は甚大になったため、神々は解決策を図り永久秋は秋だけの世界になったとされております」
 と、解説する。
 目の前にこの伝承に起因となった女神(亜真知のこと)が居るのだが、彼女は黙っていた。デルフェスはガイドブックのみならず過去の歴史さえも調べ、其れを暗記し、ほぼ間違いなく説明しているのだ。なかなかの技である。
 ガイドのお仕事もやってのけながら、彼女も一息ついて、カスミとSHIZUKU、エヴァが歌う時、音頭を取ったり、撫子の弁当に舌鼓を打ったりと快適であった。

 みそのも永久秋の独特の“流れ”を感じ取ってか、過去の悲しみを感じたが、それ以上に此処の雰囲気がとても穏やかな事を感じ取り、存分に家族の分も楽しもうと思った。
「お土産は何でしたっけ? ああ、かなり力強く言われていましたね……」
 と、呟いていた。

 撫子と義明は一緒の席でゆったりとしているわけだが、義明はすっかり寝入ってしまっている。彼女は肩を枕にしてあげて、幼さが残る義明の寝顔を眺めて、髪を撫でていた。
「よほど疲れているのですね」
「いつもの事ですよ。相変わらず無防備な寝方しているなぁ」
 茜は呆れていた。
「落書きしてみたいな。珍しく“気の寝言”がないから」
「いけませんよ、茜さん」

 亜真知はそんなマイクロバスの雰囲気を眺めながら、再び永久秋の事を思いめぐらせた。
 ――彼女はどうしているだろうとか、エヴァ達とどう遊ぼうか、と。
 永久秋にはいってから、彼女は念話で「暫くお世話になります」と念を送った。

 そして永久秋温泉に着いたとき、あやかし荘一行は、どこかでよく見る車が永久秋温泉の駐車場に止まっているのを見つけたのだった。


〈遭遇〉
「いらっしゃいませ。お久しぶりです」
「お世話になります♪」
「おせわになります〜」
 と、女将に案内されて各自部屋に移動。
「空気がオイシいし眺めも良いわね」
 シュラインが背伸びして窓を眺めている。
 草間は既に卓袱台の前に腰を落ちつけ、茶を淹れていた。
 梧と焔寿はすでに部屋に入って荷物を置いたら直ぐに、何処かに遊びに出かけているようだ。お互い別行動で散策か土産屋に向かったらしい。皇騎の方は部屋でゆっくりするとの事だ。
 
 人気のないこの永久秋なのだが、この時期になると観光バスが多い。
 ロビーの方が騒がしくなって、草間とシュラインが出かけようとしたとき、バッタリ恵美達に出会って
「あ」
 と、声を上げた。
「あら、草間さん、シュラインさん」
「恵美か!? ナマモノの誘いなのか?」
 草間が恵美に訊く。
「いいえ? 招待状が来ていまして、草間さん達は?」
「かわうそ?からよ。去年は恵美さんの紹介だったわね♪」
「そうですか」
 と、話し込むモードにはいるや否や、
「わーい」
「温泉だぁ!」
 SHIZUKUとエヴァがはしゃぐ事はしゃぐ事。
「はい、先生の言う事を聞いて下さい〜」
「エヴァ様SHIZUKU様! カスミ様の言う事を〜」
 カスミとデルフェスが彼女らを纏める事に四苦八苦している。
「どうされたので……きゃぁ」
「大丈夫ですか! みその様!」
 みそのが何にもない平坦なところで転ぶ寸前、義明が上手く抱き留めた。
「ありがとうございます。義明様」
 何かと騒がしいメンバーなのだ。
「ああら、皆さん温泉は逃げませんよ」
 亜真知サマは笑う。
「あやかし荘組は騒がしいか……」
 と、草間は苦笑した。
「元気があって良いじゃない?」
 シュラインが笑う。
「ご無沙汰してます。草間さん、シュラインさん」
 茜が草間とシュラインに挨拶する。
「はい、お久しぶり♪」
「また騒がしくなりますがよろしくおねがいしたします」
 天薙撫子と織田義明は秋葉に挨拶していたが。
「天薙さま、今回は恋人とご一緒ですか?」
 と、秋葉がニコニコ聞いてきた。
「え、そ、そんな……そんなこ……と……は……」
「いっしょ〜」
「いっしょです」
 と、いつの間にか足下にいる小麦色と同時に喋った義明であった。
「よ、義明君! それにかわうそ?さまも!」
「仲が良いから、そうでしたか。ごゆっくりしてくださいね♪」

 ロビーでこうも出会うと何かの偶然と言うより、陰謀を感じさせると思っている者が数名いるという事はさておき、あやかし荘組も各自女将に案内されて、落ち着きを取り戻しつつある。否、秋景色が見事なので、窓に釘付けなのだ。目があまり見えないみそのだけは風でその素晴らしさを感じている。しかし、子供達亜真知やエヴァやSHIZUKUは1時間もすれば定位置にいる事は飽きてしまい、散策と赴くのだ。草間組の零も誘ってである。
「ね、ね、デルフェスさん。散策しにいこう」
「温泉や夕食……どんなのか気になるけど先にたんけん〜」
「え、はいSHIZUKU様、エヴァ様」
 もちろん、SHIZUKUを誘ったデルフェスも、
「先生として……ではなくて、一緒に散策したいですね」
 響カスミも彼女たちに連れられていく事になるのだった。

 入り口手前で、かなりの人数に圧倒されている鞘子だが……。
「あ、恵美さん!」
 因幡恵美を見つけては手を振る。
「牧さん? どうしたの、そんな格好で?」
 かなりボロボロの格好である鞘子を見て驚く恵美。
「いえ、実は」
 と、事情を話し始める鞘子に対して、小麦色が割り込んで一言言った。
「また遭難」
「またですか? ヒョッとして極度の方向音痴?」
 恵美が首を傾げる。
「いえ、違います……」
「そうだ」
 ナマモノが突っ込んだ。

 因みに、部屋は4〜5人用部屋をいくつか借りる形になっている。
 1.草間、シュライン、零(※家族なので)
 2.皇騎、梧
 3.デルフェス、エヴァ、カスミ、SHIZUKU、亜真知
 4.撫子、茜、恵美、みその、焔寿
 5.義明(ある意味寝相が悪いので)
 6.鞘子(遭難者用の部屋でまったり?)

 では、各自の行動を覗いてみよう……。





〈散策組3〉:焔寿、焔、義明、撫子
 真っ先に風呂に入って一息ついていたのは撫子と焔寿と虹猫たち、そして義明だった。
「普通、猫は水など嫌うのに。おかしい奴だな」
 と、虹猫の焔の体を洗ってやる義明。
「にゃあ」
 かなり気持ちが良いようだ。
 柵越しから、焔寿が答えた。
「アルシュも焔ちゃんも不思議な子ですから〜」
 と。
「義明君どうですかぁ?」
 今度は撫子の声。
「きもちいいよ」
 義明は答える。心なしか眠たそうだ。
 のんびりとした空間の中、時間だけが過ぎていく。3人と2匹は温泉から上がり(チャームは普通の猫なので、部屋で待機)、浴衣に着替えてから、のんびり散策する事にしていたのだ。焔寿は指輪をはめて、いる。前に動物と会話できる指輪を手に入れていたのだ。其れで楽しむ事が出来るのだ。
「お待たせしました」
「じゃ、行こうか」
 と、デルフェスやみその達と違う散策路を向かう。

 永久秋は山に囲まれているため、彼方此方に道がある。山のルートと川のルートの二つがメインだ。世間一般で言う夏では、川にキャンプをしに来る家族連れで賑わう。丁度牧鞘子がかわうそ?二より救助された場所でもある。
 川のせせらぎも心地良く、釣りをしている人も見かけられ、小鳥もさえずっているのどかな世界を3人と3匹の猫は歩いた。ゆっくりしたい者同士であるため、雑談や、小鳥のさえずり、猫の漫才を焔寿に訳して貰って笑っていた。
 着物の少女を見つけた撫子は、
「彼女が秋の女神様ですよ」
 と、2人に話しかける。
 彼女は、木陰に隠れて様子を見ている。
 目の前に、抑止の一が居るのが怖いのだろうか? と、撫子は思った。
「大丈夫です。」
 おずおず、女神が近寄る。
「大丈夫です。初めましてよろしく」
 義明が手をさしのべた。
 にっこり笑う女神。握手を求められたので、しっかり義明の手を握った。
「良かったです」
 ホッとする撫子。
「アルシュが、“捕って食わない人間”と言っておるのう……」
 と、焔寿が言う。
 焔樹の口調が変わっていることでその場にいた2人と猫、秋の女神も、目を丸くした。女神は2年前に彼女を遠くから見ているため、憶えている(焔寿とは話はしていないが)。猫たちも間近で彼女の“もう一つの声”を聞いたのははじめてらしい。
「どうかしたのか? 私は焔寿じゃ。ああ、慣れぬもむりはないか」
「?」
「ああ、たまに“通常の焔寿”は意識がなくなって“別の焔寿”になるようだ。焔寿自身には変わりない」
 1人納得しているのは義明。其れを撫子に説明する。
 過去に、いつもの焔寿に“この事について”相談に乗ってくれと言われたのである。突発的に入れ替わるので、少し驚いたらしい。
「その言い方はおかしい気もするが……構わぬか」
 少し、
「女神、はじめて顔をあわせる。よろしくなのじゃ」
 と、焔寿は笑ってお辞儀をした。
 女神も、ニコリと笑いお辞儀する。
 そして、4人になって川沿いを歩いたのであった。

 途中、山に戻ると女神が言ったので別れたが、
「いつもの焔寿が目を覚ましそうであるの」
 と、焔寿が言う。
「じゃ、急いで帰った方が良さそうだな」
 と、一路温泉に戻る。
 そして、丁度、部屋に戻った時、焔寿は目覚めた。
「あれ? 私は?」
 と、辺りを見渡すのであった。
 


〈宴会と卓球〉
 謎に大きい温泉なので古いところもあり、今回恵美や草間は知っている者同士なので、30人程度が食事など出来る宴会場にて食事を取る事になった。
 必然的に酒を飲む大人とジュースでワイワイ話し合う子供側と自然に別れるわけだが。
「おいしぃ!」
 SHIZUKU、エヴァ、カスミ。
「涙が出てきましたわ。美味しいですわ」
 デルフェス。
「でしょう? とても美味しいので驚きました」
 零。
 焙った松茸と松茸ご飯、そして零が気に入っている土瓶蒸しで感動している永久秋初参加者の声。
「ホント美味しいわねぇ♪」
「酒が足りなくなったんじゃないか?」
「もう、武彦さんったら……はい、お酒」
 シュラインはしっかり、草間の世話をする。

「ホントあれだね……草間さん変わってないなぁ」
「其処が良いのではないでしょうか?」
 と、義明と撫子。2人も酔っているが、落ち着いているようだ。
「この味は昆布が良いのを使って居るみたいですね」
「家で再現するため?」
「はい♪ 義明君のために♪」
「皇騎さん、あーん」
 茜が酔っ払って皇騎に“おくちあーん”攻撃をしている。
「え? 皆が見ているまでそんな!」
「おーあついー! 其処が熱いー。ひゅーひゅー!」
「梧! いきなりなんて事! だ、だから茜さん」
「みそのさーん、あそこのバカップル(茜と皇騎)写真に収めましょう♪」
 梧、出来上がっている鞘子がはやし立てる。
「えっと、はい、かしこまりました。確か妹たちは問答無用に撮っていたようですし……。はいチーズ」
 と、しっかり、写真を撮る、みそのさん。
「“はいチーズ”は要らないぞ、みその。其処はこっそりと……此処はナマモノ……って俺を撮るなぁ!」
「油断。そっち、悪い」
 草間に対して勝ち誇るナマモノ。かなり酔っ払っている草間の間抜け面がカメラに収まったのだろう。
「茜様酔っていらっしゃりますわ……誰がお酒を飲ませたのでしょうね?」
「あ、これも美味しい。お酒って良いな」
「ほんとうね」
 今までジュースだったが、カスミとエヴァと亜真知、デルフェスはお酒も調達し、マッタリし食事をしている。
(誰か茜を止めて下さい……ううう)
 静香が泣いているのだが、カスミに聞こえたようだ。静香の存在を知っている亜真知とかわうそ?は青ざめた。
「きゃ! 今、何か声がしたような!」
「先生其れは気のせいです! かわうそ? さんと私で腹話術を!」
 亜真知が急いでかわうそ?を持って、そんな仕草をしてみる。
 口パクするかわうそ?
 ――実際亜真知も静香は見えないのだが……。カスミが気絶すると後々大変なのだ。ここで気絶すると、折角の土瓶蒸しの味を忘れてしまうのである。
「ああ、いいなー大人は。私もお酒飲みたいな」
 ジュースで我慢はSHIZUKU、焔寿、梧ぐらいである。
「あとで、とんでもない事になるから、学生は学生らしくジュースで我慢だよ。ま、俺も飲みたいけどさ」
「ですね」
 梧の言葉に焔寿はにっこりと笑って同意している。

 そして宴会も終わり、小休止ののち……。
「これから卓球大会しようぜ! 全員参加!」
 梧が言う。
「お前が仕切るな! 希望者だけで良いだろう!」
 草間が突っ込んだ。
 まあ、十数名もいれば、ギャラリーオンリーでもいいだろうという。怪我人や運動音痴も居るのだから。
「卓球なら任せて!」
 と鞘子が挑戦。
「俺の勘だがな 身体能力的に互角であろうとおもう」
 草間が言った。

 審判かわうそ?
「サーブ権 梧」
 と、数回白熱したラリーが続くも、梧が勝利する。
「よっし!」

 みそのさんが写真係、デルフェスは記録係で、卓球大会は盛り上がった。

 もう一度(湯当たりしない程度で)温泉に入る者もいたが、男性陣は全員、腰に手をあて牛乳瓶を一気に飲み干していた。
「やはり風呂上がりにコレが一番!」
「ビールも格別だけどな!」

 其の後、鞘子は猿渡に呼ばれる。遭難したので一応書類を書く方向になるのだとか。
「あまり人様に心配掛けないようにと、役場の方が怒って居られましたよ」
「済みませんでした」


〈夜は更けて〉
 皆が寝静まっていると思われる夜、屋根の上で静香が佇んでいた。
 静香は外世界をみて感動していた。
「こんなに素敵な景色を眺められるとは幸せです」
 と、着物姿の少女がヨジヨジ屋根を登って来た。秋の女神だ。
「これは、女神様。明日もお世話になります」
 静香がお辞儀をするとコクンと少女は頷いた。
 静香は彼女には見えるように設定するのは礼儀だろう。
 ただ、もう1人起きている。海原みそのだ。
 真下のバルコニーから、静香に声を掛けた。
「大丈夫なのですか? 静香様」
「ええ、茜という“契約者”が居れば、大丈夫でございます」
 みそのは目が良くないために、“見る”より“感じる”方が良く分かる。
「明日は、松茸狩りです」
 みそのがにっこり笑う。
「皆様が楽しんで過ごせますように」
 と、3人は各々が祈りを捧げるのであった。

 風が、心地良く吹いている。

■本日の旅行者
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生・巫女・天位覚醒者】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【1305 白里・焔寿 17 女 神聖都学園高校生・天翼の神子】
【1388 海原・みその 14 女 深淵の巫女】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体・・・神さま!?】
【2005 牧・鞘子 18 女 人形師見習い兼拝み屋】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップ・レンの店員】
【5698 梧・北斗 17 男 退魔師兼高校生】


■ライターに代わり女将から
 永久秋温泉女将の猿渡秋葉でございます。本日は永久秋温泉にお越し下さいましてありがとうございます。楽しんで頂けましたでしょうか? 色々とハプニングもあった事のようですが、何より皆さん無事で一日を過ごされた事は大変良かったと思います。憶えて下さった方々も居られて、嬉しい事と思っております。
 2日目は、皆さんおそろいで松茸狩りをする事になっております。詳しくは滝照直樹が2日目オープニングに記載されますが、大体のスケジュールは起床、松茸狩り、祭り参加と言う事になるでしょう。

 秋の心地良い風が、あなた達に良き思い出とならん事を祈っております。

 女将:猿渡秋葉