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東京怪談
何時も笑っている少女が居た。けれどそれはまやかしだった。
本当は、東京だった。
殺しあう。
フリー、フリー、フリー。貴方には自由があって、そして、けして自由は素晴らしくなく。時に優しくても、ある日には厳しく。
雨に濡れた子犬を拾う自由は、路頭に彷徨わざるを得ない自由は、神を信じない自由は、蹴る自由は、殴る自由は、夢を諦めさせる自由は、諦める自由は、自由を奪われる自由は、その自由を取り返す自由は、その自由を殺す自由は、全ての自由は、
もしも貴方が孤独だったら、誰にも邪魔されぬゆえに自由は、素晴らしいのだろうか。だけどもし、皆と居るという自由が無い。自由は、
自由は、必ずしも素晴らしくなく、
だからこそ貴方は行動した。
殺された人も居た。
生きてる人が居る。
何時も笑っている少女が居た。少女はそこで笑っていた。
馬鹿みたいに笑う為の異界で、笑っていた。笑っていた。だから、なんとか、まやかしを守ろうとして、けれど結局敵わなくて。今は眠り続けている。眠っている。
眠って。
死んだように。
これは東京の怪談。
意思ある者、それぞれの怪談。
◇◆◇
SN2.世界の中の二人
役割
◇◆◇
役を終えた者は、舞台に居る必要は無く。ただ客の心にさえ、しかと残れば良いだけだ。
るーふえっと、えるふぃる、訳の解らない音がする。
ならば自身にはもう意味も無い、もうこの自分に出る幕は無い。だって、この思慮こそが暴き出した問題は、己が手を出す範囲では無い。
ちゅーいっくら、でるぜるぐ、訳の解らない音がする。
あの母と娘の問題は、娘の友人に任せればいい。あの鬼の問題は、自分が手を出していい領域ではない。他人の口出しは、許されないと思う。
らすらかりや、けるくなる、訳の解らない音がする。
もう、出番は無いと思った。機動しない機械、倉庫の片隅、イベントが終わったあとの着ぐるみ、そんなような物。
ひるえあるえくるええるえ、訳の、解らない音、
そんなような、彼、
ぶーるずぐろ、解らない、
けれど、彼、
音。
彼の名は瀬戸口春香、意味不明の異音に対し、その霊が用いる言葉が、一定の規則性がある、いわゆる言語だという事を、七時間くらいかけて、座りながら知り、
かしゃど、と、さよなら、を伝えた。
寂しさの所為か、霊は、寂しそうに消えた。
……巫浄霧絵が放った八百万の霊、これだけ数が多いと、様々な種類があるらしく。全ての全てが何も、短絡的に殺そうとする訳じゃなくて。
まぁ実際多くは、弓矢の矢のようにまっすぐに、春香の命を狙ったりもしたけど。
今は、少ない。……多分、
誰かが処理しているのだろうな、と、
予想じゃなくて、知る。
黒雲の隙間から除く月を背後に小さな人影、秒殺するは九十九の霊。
……座って、眺めていた。人影は、すぐ見えなくなった。遠くで、音がする。
近くからは声が聞こえる。「初めまして」
少女の声を放つのは少女、トートロジー。座り込む春香を覗き込み、彼女は名乗る。
赤いリボンが目立つ、服を着ている。
「私は、異界のササキビ・クミノだ」
小柄な、少女。頭にも、赤いリボン。
年の頃は十六か――三年前は十三だ
トートロジーという目前、その後方、遠く、遠くで音がした。獣が星に夢を語るような、美しくも破滅的な響きだ。きっとあの人影が奏でているのだろう、そして、
目の前の彼女と同じ姿をしてたようだから、それが世界の彼女である事を知る。そうすると、彼女もきっと、良く殺してきたんだろう、と、
「殺し屋じゃない」
殺し屋では断じてない。
けれど、七歳児はどう言うんだろう、彼女を。ササキビ・クミノという彼女を。
優しい、お姉さん？
、
「殺し屋」
瀬戸口春香は少なくとも、そう知っている、「三年前までに七百人を殺害、……それからは、更に数え切れずって所だね。何かを守る為に」
そして異界と自称するからには、「世界の自分と、連絡を取り合っている」
それなりにツーカー、お互い立ち入らない程度、か。
語りながら、相変わらず春香は座っている。……ササキビ・クミノというカタカナの響きは、合わせるように瓦礫に座った。テーブルがあれば、ここは喫茶店だろうか。
異界の彼女は、今、戦闘をしない。
兵器という火力は、世界の彼女に預けている。だから、今手に下げているのは、アタッシュケース。それを開こうとする、春香は、
尋ねた。
「バラエテ異界」
もう自分の出番は無いと思った。巫浄霧絵の事、異界の事、全て知ったから。だけど、もう一つの事。
「この殺しあう異界を、一時的に終わらせた男が居たって、青の子は語ったんだ」
それは夢の終りの話、ふざけた異界の最後の物語。
「それじゃ、青の子の霊の中に眠ってしまうその過程は、そして今はどうなってるか」
全部だ。
全部、知りたい、
知りたい。
「決着には、無関係かもしれないけれど」
「無関係なものか」
ササキビ、彼女、
「誰に聞けば解るのか、その事は」
バラエテ異界の事は、
「碇でも無い、霧絵でも無い、それを語るのは私の役割だと思う」
だから彼女は、戦いを、世界の自分に任せた。死なないけれど、殺しはしにくい、そういう存在に敢えて。
「世界の私から聞いた話だ、ふざけた話だ、馬鹿げた話だ、しかし」
きっと、アタッシュケースの中身は、
彼に語る為にもあって。
「今も誰かが悲しむ話だ」
テーブルが無いから、ササキビは、それを瓦礫に置いた。
アフロを置いた。
笑い声が聞こえる、気の抜ける音がする、
二人は笑わない。
◇◆◇
バラエテ異界。
殺しあう東京、それを上から塗りつぶす為に、異界を着ぐるみのように被せる能力を持ったあの男。鈴木、という名前の。
「世界の草間武彦に、料理番組の企画を持ち込んだ地方局のADという肩書きだ」
その男が用意した異界は、自らを核霊として創造したのは、笑いあう大阪。
バカで、道化で、くだらなくて、……死ぬ事とはとても遠い、反する異界。着せたのである、ある探偵事務所を疾走した兄には、串カツ屋の店主を、ある探偵の帰りを待つ妹には、串カツ屋の手伝いを、ある部下が子供になった編集長には知事を、ある怪談アイドルには女漫才師を、
「そして、その能力が発動する切欠となった事は」
殺しあう異界で殺されそうになった、あやかし荘の因幡恵美に、昔死んだ妹である、鈴木恵という存在を着せて。
「……世界の存在である男が、何故殺しあう異界に迷い込んだかは解らない。もしかすれば、元から異界の住人だったかもしれない。ただ、何故因幡恵美を助けるような真似をしたかは、わかっている」
優しかったからだ、と。大勢の殺されそうな女に混じって、彼女が居たからと。……終わらせなければいけない、そう思って作り出したのは、
「バカな異界だった、と世界は知識として語っている。……私の知り合いの医者も、行った事がある」
大阪を模した異界、けれど間違ったイメージの大阪。
目の前にある被り物を使った、アフロンジャー、というネタもあった。
他の異界とも干渉した。
そんな、異界だった。
夢が終わったのは、あの男の策略でただ一人、何の役割も持たせない、つまり何も被らされなかった力も無き青の子が、ある不思議なかばんから出てきた、乗っ取るには都合の良過ぎる少年の身体を長い時間をかけて支配した時にである。
夢は終り、着ぐるみは外れ、皮が消耗し、実が発言して、そして、あの男の妹も、世界の客人である少女二人に、さよならと言って、そして、
「青の子の中で、眠っている」
あの男と供に、
兄と、妹、そして青の子に身体を乗っ取られた少年。
青の子の中で眠っている。
そして、子自身は今、巫浄霧絵の中に。
◇◆◇
その時二人はお互いに銃口を突きつける。
そしてほぼ同時に放つ。
しかしその銃弾は、互いを絶命させる為で無く、
臆病な霊を追い払う為。
……硝煙、
春香は、問う。
◇◆◇
「この異界が、殺し屋であるとすれば」
例えば目の前にある少女だとすれば、「アフロは、バラエテ異界のようなものなんだね」
これを被せてしまえば、目の前の少女は。
……禁じられた遊び。くだらない、から。人の意思はきっと、拒絶する。だが、それだからこそアフロは、
笑うだけの異界は。
「私は、元々似たような世界に生きてきた」
、
「二度目の革命、または回帰」
ササキビ・クミノ、視線をそのアフロに落としながら、
「この異界が作り上げられたのは、死にたくても死ねない人間の願望だ」
しかし同時、世界は異界に自身をこう語る。
「この異界の似姿となる筈の、2nd Evolution」
「……似姿？」
「……確定ではないが、世界の三年後というこの異界の前に、本当に世界が三年間進むという時の流れが、ある意味で正しい流れが存在するはずだったかもしれない。因果律がそう、いわば、年をとるはずだったかもしれない」
この異界程極端では無い、しかし、殺戮はかつてよりもある《世界》――確かに兄は妹の興信所を飛び出し、この異界のようにおかしくない、《正しい虚無の境界》が跋扈する、
「けれどそれは、やはり思いによって阻まれたのかもしれないのだよ。……予測を、信じられるか、瀬戸口春香？」
「理解は、しよう」
人々の思いはそれを拒否したんだね、と。
生きとし生ける者達の、せつなる願い。
「変化が急激すぎた、という事も確かにあったんだろう。ある不幸な男が少年に姿を変えるような、突如、三つ年を経るような、そして何よりも」
興信所や、アパート、編集部で、
笑い、騒ぐ事が出来ないような世界になる事を、誰もが拒否したかもしれない。だが、
一方では、少し、望まれた。相反する願い。
「この異界の似姿となるはずだった、その2nd Evolutionを、」ササキビ・クミノという少女、「今の姿として勝ち取ったのは、世界の私かもしれない、」歪だけどこの異界には相応しく、「この私が生まれた時、同時に無数の異界が生まれた。数にすれば、四百か、そしてきっと更に増える」
異界は人の願いで生まれた。この異界もそうだ。つまり、
つまり、
「《世界の》も《異界の》も関係なく私は、この異界を作った黒幕の一人だ」
殺しあう異界の創造主が一人。
すると、彼女は罪人なのだろうか。しかし、思うだけで罪になるか。それは人間が軽々しく決められる問題ではない、鉄の裁判所からそう音がする感覚。
春香は、その事に捕らわれない。
ただ、アフロを見ていた。被り物の。彼女が世界の自分から預かった、アタッシュケースの中に入っていた物。バラエテ異界の正体。
瀬戸口春香は知ったのだ。ならば、
彼の役割は再び終わった。知るだけの自分の役割、求めるだけの、それだけの、
それが――
◇◆◇
瞳を閉じようとする行為が、気に入らないササキビ・クミノは、
自分にピリオドを打つようなその行為が、気に入らない少女は、
その行為が、
「それだけがお前の役、か？」
寂しい、彼女は問う。
◇◆◇
「……何を、言いたいのかな」
瞳を開けて、視界、彼女。立ち上がってる、自分を見下ろしている、強く、けれど、違う次元の優しい視線を向けて。
「出番なんてものは、待っていて与えられるものじゃないと言っている。今までお前はそうやって、行動してきただろう」
知る為に、彼は、それは、
誰かに用意された使命ではなく、
「バラエテ異界を知りたいと願う姿を、世界の私が見かけなければ、私はここに居なかった。アフロを携えながら世界の私と供に、霊を殺していた」
けれど願いは、人の行動は、
、
「自由だ」
……それは、当たり前の事。
当たり前過ぎる事。
春香にだって解っている。実際、
「僕はそう、動いた」
だから君に会ったと笑えば、ササキビ・クミノは――無意識な微笑みを、自分で笑顔を作らない時だけみせる、優しい微笑みを。
その時世界が、否、異界が一変した、
晴れ渡る草原、霊と鬼の消滅。
一目見ただけで、平和と知れる。
◇◆◇
クミノは笑みを消しました。春香は立ち上がりました。
くるくるくると、語り合う。
「私は、行かねばならない」
「何をしに」
「世界を救う為に、未定だが、出来るならば、元凶に会いに」
「巫浄霧絵？」
「否、私から見れば彼女は傀儡。青の子の。まぁ今は一体化してるが、“願い”の傀儡には違いない」
「けれど彼女は、巫浄霧絵は、今は」
「何か、異変があったのだろうだな。……世界の私が八百万の霊を殲滅したにしては、霊の消滅が余りに急激すぎる、しかし、私の願いは変わりない」
「すべき事がある、か、あるいは、託すべき事が？」
「誰でもいいし、どちらでもいいがな」
「……このアフロを運び、あるいは自ら元凶に被せる事。くだらない事」
「だがそれこそ、この異界に、真面目すぎる異界に亀裂を与える方法、……一発ギャグと言おうか。そうだ、それでこそ、きっと」
「きっと」
、
「誰か一人は、呼び覚ませる」
青の子の中に眠る、バラエテ異界の誰か。
◇◆◇
三年間を過ごしたササキビ・クミノが望む物、
この異界が法則からも、……世界からも自由になる事。過去を、振り返らない事、今に生きる事、そういう事ども。
ならば瀬戸口春香は――
何一つ、決められてない。
それは。
かくして草原、二人は動き、
法則も敵も消えたこの異界で、生きながら。
◇◆◇
やがて、世界の自分の声が、聞こえた。
何かがあった事を確認するような。
例えば今、瀬戸口春香が、
知る事を止めたとしても、続けたとしても。
◇◆ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ◆◇
1166／ササキビ・クミノ／女／13／殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。
3968／瀬戸口春香／男／19／小説家兼能力者専門暗殺者
◇◆ ライター通信 ◆◇
＿|￣|.........○
すいませんでしたー！ いや本当海より深く空より高くすいませんすいませんでございました。申し訳ないです＿|￣|○
で、ではとりあえずスパっと個別宛に； あ、その前にバラエテ異界の終りについては、去年の夏ごろ納品物、夢の終りに書かれています。
ササキビ・クミノのPL様、異界と世界、二人分のプレイングが来ましたが、時間差が（おそらく他の参加者に配慮していただいた故にだと思われますが）あった事もあって想定外の事態でしたので、瀬戸口春香のプレイングと被る部分もあったので、考えと戦闘とプレイングを整理させていただきました。戦闘プレイングの方は後に納品する世界ササキビ・クミノの方で書かせて頂きます。
申し訳ありませんが、今後（といっても後一度ですが）参加する場合、世界と異界の二人分で行動するとしても、１キャラ１プレイングでお願いします。異界のページにあるこの世界の情報のその《2》にある通り、一方は喋り、もう一方はセリフをカギカッコで囲まない描写でやると思いますのでご了承ください。
メタ的な展開に持っていた部分があって、良く考えればその切り口は未だなかったもので感心しました。あと、まさかここでアフロが出るとはおもわなんだと思う同時、バラエテ異界という経緯を無視してない部分が流石というか。ご参加おおきにでした、アフロは最終依頼で参加PC共通の、プレイングにおける選択ツールにさせて頂きますが、優先度は一応ササキビ・クミノにあるんじゃないかなぁと（憶測か
瀬戸口春香のPL様、まずはすいませんでした。知らず知らずの内に、瀬戸口春香を異界にとって都合の良い存在として、自分自身使っていたと思います。彼に自由意志としてじゃなく、役割として知る事を強制していたとなれば、それは本来のゲームの主旨からは外れる、反省すべき事でした。
誠に申し訳ありませんでした。
……今回の行動自体、少なかったので、何時もどおりというかまた聞き手にしてしまいましたが。orz
舞台と違って現実は、（少なくともPLにとっては作り事ではないこの現実は）役割も自身で選択すると思っています。もし、まだこの異界に何かあり、お金に余裕があればまた参加をお待ちすると同時、いいえ、瀬戸口春香の行動は、ここで十分に果たした、とお思いであるならば、……えーとそのそれ以前に思いっきり遅延かましたあげくこんな感じになってるので、もう、悲しませてる感じがあるので、その場合、ありがとうございましたでorz
とにもかくにも参加おおきにでした。最終回依頼は、来週の予定、です、多分（をい
［異界更新］
異界のササキビ、八百万の霊殲滅を世界のに任せ、バラエテ異界を知りたい瀬戸口春香と対面。語り合う。
ササキビ・クミノが持ってきたアフロは、元凶とやらに被せれば、中に眠るバラエテ異界の住人一人を、おそらくは復活させられる。もしかすればそこからバラエテ異界事態のなんらかの再生も可能か？
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