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<東京怪談・PCゲームノベル>


All seasons 【今年も続く・・・】


□新年が明けまして□

 いったい何処から引っ張り出して来たのだろうか・・・。
 夢幻館のホールの中央には、デカデカと炬燵が置かれていた。
 普通にヒーターがあるにも拘らず、挙句ホットカーペットの上での炬燵の使用―――梶原 冬弥は思わず頭を抱えていた。
 「はぁぁ〜・・・大晦日はやっぱ此処でだよね〜。」
 トロリとした表情を浮かべながらそう呟いた桐生 暁の頭を冬弥はペチリと叩いた。
 「それはそれは、ワザワザココを選んでいただきましてまことに有難う御座いましたネー。」
 「ったぁ・・・ってか、何ソレ!?俺ってもしかして歓迎されてない!?」
 「違うよぉ〜!冬弥ちゃんは、ホットカーペットに炬燵置いてるって言うこの状況にイライラしてるだけぇ。」
 「・・・ったぁく、チッセー男だなぁ。」
 片桐 もなと神崎 魅琴が炬燵に入りながらそう呟く。
 「まぁ、和洋のコラボレーションとでも言っておきましょうか。」
 沖坂 奏都はそう言うと、にっこりと微笑んだ。
 そもそもホットカーペットの上に炬燵を置くと言う暴挙に出たのは、他でもない奏都だったのだ。
 「あ〜でも、良いねぇ〜。ぬくぬくv」
 「ねぇ〜!はぁ〜・・・蕩けちゃいそー。」
 暁の言葉に、もなも賛同する。
 2人でトロリとした顔を浮かべ・・・その背後ではソファーに座った冬弥が盛大な溜息を漏らす。
 「もう今年も終わって来年になるっつーのに、どーしてこーもしまりがねぇんだ・・・?」
 「ばぁか。たかだ明日になるだけじゃねぇか。」
 「そう言う夢もへったくれもない事言わないの!」
 もなが魅琴に裏拳を喰らわせる・・・丁度頭にクリーンヒットした・・・!!
 「ほらほら、もうカウントダウンが始まるぞ?」
 「冬弥ちゃん、そんな所にいないでこっち来なよっ!一緒にカウントダウンしよー!」
 「はいはい。」
 いかにも面倒そうな顔で冬弥は暁の隣に座ると、テレビの画面を見詰めた。
 どこかのライブステージが映っている中央に、デカデカと文字が浮かび上がる。

 5・・・・4・・・・3・・・2・・・1・・・

 「明けましておめでとう御座います!」
 いっせいに新年の挨拶をする。
 テレビの画面では、クラッカーやら花火やらが上がり、大変なお祭り騒ぎになっている・・・・・。
 「今年も宜しくお願いします。」
 暁が深々と頭を下げる。
 「こちらこそ、宜しくお願いいたします。」
 「あたしも〜!暁ちゃん、今年も宜しくね☆」
 奏都ともなが暁に挨拶をし・・・
 「よっしゃぁ!今年こそは暁とひとば・・・」
 「「下品」」
 「新年早々、魅琴ちゃんもお馬鹿さんだねぇ・・・。」
 奏都と冬弥の拳に、魅琴が力なく炬燵の上に突っ伏す。
 「ま、今年も宜しくされてやるよ。」
 冬弥がそう言って、くしゃりと暁の髪を撫ぜる。
 「でさ、初詣行きたくない?もなちゃん、魅琴ちゃんも・・・初詣、行きたいよねっ?」
 「あ、いーね、初詣!」
 「おぉ、良いんじゃねぇ?」
 「奏都さんも行きませんか?」
 「えぇ。ゼヒご一緒いたしましょう。」
 「ホラ、冬弥ちゃんも〜!」
 「・・・なんで俺だけ強制なんだよ・・・。」
 それは言わなくても分かっている事ではないか・・・。
 「さて、それでは扉へとご案内いたしましょう。」
 そう言って立ち上がると、奏都は全員を引き連れて一つの扉の前で歩を止めた。
 いつもと同じ要領で扉を押し開け―――

■初詣■

 御手洗、鈴を鳴らして二礼二拍一礼。
 作法に乗っ取って、暁はきちんとそれらの動作を済ませると手を合わせた。
 「冬弥ちゃんと恋人同士に・・・」
 ゴス・・・
 「ったぁ〜・・・」
 「テ・メ・エ・は、どーして毎回毎回毎回ブラックジョークしか言ねぇんだよっ!」
 ・・・別にブラックではないと思うのだが・・・。
 「あ、声に出しちゃいけないんだ?わかったよっ♪」
 「だぁぁぁっ!!声に出す出さないの問題じゃねぇっ!」
 「もー、冬弥ちゃん、五月蝿いよぉ。タダでさえも目立ってるのに、更に目立たせるような事しないでよ〜!」
 もなが唇を尖らせながらそう言う。
 確かに、夢幻館ご一行様はかなり浮いていた。
 それは勿論、五月蝿いからと言うのも理由の一つだったのだが、それ以上に見た目の問題が大きいのだと思う。
 これだけ顔立ちの整った集団も早々いるまい・・・・。
 「ってか暁!なにそんなに熱心に祈ってんだよ!なんだ!?呪いか!?」
 「モー。新年早々神様に呪いかけてどーすんの・・・。」
 暁はそう言うと、溜息をついた。
 そして、クルリと冬弥に向き直り、悪戯っぽい瞳を向ける。
 「何を祈ったか・・・?・・・んー・・・冬弥ちゃん怒るから言わないっ☆」
 何かを言いかけて―――冬弥は言葉を飲み込んだようだった。ガクリと肩を落とすその後姿がなんだか笑いを誘う。
 暁が願った事・・・それは、以前ツリーのオーナメントに願った事と同じ事。
 “今年一年、楽しく過ごせますように”
 それは、周りの人が幸せになると言う事とイコールで繋がれた願いだった。
 勿論暁自身はそんな事に気づいてはいない。まったくの、無意識での願いだった。
 「ねね、みんなおみくじ引こ〜っ!」
 暁がそう言って、おみくじの方に駆け出して行く。
 ガラガラと赤い筒を振り、中から飛び出た棒と同じ番号の紙を貰う。
 夢幻館の面々もガラガラとおみくじを引き―――
 「あ、俺大吉だぁ〜!」
 暁はそう言うと、おみくじを冬弥に見せた。
 「ほらほら、見て見て!俺達祝福されてるっぽいよ〜♪」
 そう言って指差すのは“恋愛”のところだ。

 『想いは通じ、一生の相手となるであろう』

 「ちょぉ待て。なぁんでそれが俺となんだよ・・・!」
 「想いは通じって書いてあるジャン!俺の想い人は、と・う・や・ちゃ・・・」
 バシリと冬弥が頭を叩く。
 「ったぁぁ〜〜・・・・!!」
 「自業自得デス。」
 「むー・・・冬弥ちゃんの馬鹿っ!」
 頭を押さえて涙目になりながらも、暁は冬弥に向かって腕を振り上げ・・・それを軽く冬弥がかわし―――
 「あ、見て見て!あたしも大吉っ!」
 もなが満面の笑みで暁におみくじを差し出す。
 「本当だ〜!おそろジャン☆なになに、健康運良好、破壊運・・・え・・・?」
 「なぁに?」
 キョトリと可愛らしく小首を傾げるもな。・・・破壊運なんて、暁の引いたおみくじにはあっただろうか?
 ・・・怖くて確認なんか出来ないけれども・・・。
 「俺は中吉ですね。」
 奏都がそう言い、にこやかに微笑む。
 強運の持ち主だと言うイメージがあるだけに、なんとなく、おみくじの信憑性を疑いたくなってくる。
 「奏都さんが中吉って、なんか珍しいね〜。魅琴ちゃんは?」
 「吉。ま、まーまーってトコじゃん?」
 「そっか。・・・んで、冬弥ちゃんは?」
 ニヤリと微笑みながら、暁は冬弥の手からおみくじを奪った。
 「わ・・・ばっ・・・!!」
 「大凶・・・。・・・・ごめん冬弥ちゃん・・・。・・・これは、返すよ。」
 「笑いながら言うな、笑いながらっ!!」
 何とか笑いを押し殺そうと、下を向いて歯を食いしばったが・・・肩が小刻みに震えているではないかっ!!
 「ったく・・・だからヤだったんだよ。おみくじ引くの・・・。」
 「はいはい、分かったから、分かったって。」
 ブツブツ言う冬弥の手を引いて、暁はお守り売り場の前まで来ていた。
 2人を見守るようにして、背後からは奏都ともな、そして魅琴がついて来る。
 「冬弥ちゃん!ほら、お守り!夫婦円満買う?」
 「ちょぉ待て。誰が夫婦だ!?だ・れ・が!」
 「俺と冬弥ちゃんw俺が旦那さんで、冬弥ちゃんが―――」
 「俺が妻か!?」
 「モー、仕方ないなぁ。それじゃぁ、俺が奥さんしてあげるよぉ。」
 暁は盛大な溜息をつくと、冬弥の腕に自分の腕を絡めた。そして、体をピタリと寄せ・・・・。
 「お帰りなさい、あ・な・た☆お風呂にする?ご飯にする?それとも、あ・た・し・・・」
 「そんなにシバかれてぇか?」
 冬弥の目が据わりそうになっている・・・!!
 蘇る記憶に、暁は少々焦った。
 「あぁっと・・・それじゃぁ、一応学生ですし?学業のでも買っとこうかな〜!」
 冬弥の腕から離れ、お守り売り場に走る。
 「ってか、学生ですし?って、なんで疑問系なんだっつーの。」
 「・・・そー言えばあたし、暁ちゃんが学校に行ってる姿って見た事ないかも。」
 「それはそうですよ。もなさんはずっと夢幻館にいるんですから。ずっと暁さんの傍にいるならともかく・・・。」
 「ま、俺は暁が学校に行く姿、毎日見てるけどな。」
 魅琴が自慢げにそう言い、ビシリとある1点を指差す。
 ・・・電柱・・・??
 「あれとかの影から、毎朝こっそり暁の通学路で待ちぶ・・・」
 「「「変態」」」
 冬弥からは蹴りを、もなからはパンチを、奏都からは裏拳を喰らった魅琴がその場で崩れ去る。
 「魅琴の発言は、冗談だか本当だか毎回わかんねぇんだよ。」
 「まぁ、今のは冗談でしょう?いくら魅琴ちゃんが暁ちゃんの事好きだからって、そんな事まで―――」
 「そう言えば最近、魅琴さんが朝早くから出かけて行くのですが・・・。」
 奏都の発言に、もなと冬弥が冷たい瞳で魅琴を見下ろす・・・。
 「下劣・・・・」
 「お前は人として最低だな・・・。」
 などと酷い言葉を浴びせられている魅琴の元に、暁が帰って来た。
 あぁ、なんてタイミングの悪い方なんでしょう・・・なんて、声にさえ出さなかったものの、奏都はひっそりとそう思ってしまった。
 「あれ?どーしたの?なんで魅琴ちゃんが・・・って、うわっ!?」
 「暁ぃぃっ!」
 魅琴が暁に抱きつき―――もなと冬弥の蹴りで再び地面に沈み込む。
 「暁ちゃん、この凶暴で凶悪で最悪な馬鹿から離れてっ!!」
 「え?え?魅琴ちゃんに何かあるの?」
 「お前は知らなくて良い・・・と言うか、知らない方が良い・・・。」
 冬弥がそう言って、暁を抱きしめ―――慌てて離した。
 「い・・・今のは、そう言う意味じゃなく・・・良いか、暁、今のは・・・」
 「モー、ちゃんと分かってますってば。それよりも、ハイ。」
 暁が冬弥の手に1つの袋を手渡した。
 ・・・どうやら先ほど買ってきたお守りらしいが・・・??
 「あ?なんだコレ?」
 カサカサと袋を開ける―――
 「厄除けのお守りアゲル。」
 ―――ニヤリ
 微笑んだ暁の目の前で、冬弥はガクリと肩を落とした。右手に厄除けのお守りを持って、今まさに、厄が憑きまくっていますと言うような顔をする。
 「お・・・お前が買ってくるか・・・??」
 「だぁってぇ。将来俺の伴侶になる人が、厄だらけだったら困るっしょ〜?」
 「まだ言ってんのかよ・・・。」
 「ちなみに、上半期に大接近のチャンスが・・・!!って、書いてあった・・・」
 「そんな無駄な情報はいらねぇっ!」
 冬弥がそう言って、それでもしっかりと厄除けのお守りはポケットに仕舞う。
 「・・・一応、礼言っとく。さんきゅ。」
 「どーいたしまして☆」
 可愛らしい笑顔を見せられて、冬弥が苦々しい表情で暁の髪をクシャリと撫ぜた。
 「とりあえず、帰ってなんかしよー!もー飽きたぁ。」
 罰当たりな事を叫びながら、もながジタバタとする。
 「それではいったん夢幻館に帰りましょうか。」
 奏都の言葉で、今年最初の初詣は幕を閉じた。

 「・・・待て・・・今年最初のってなんだ“最初の”って!もう行く事はないだろう!?」

 ―――それは不明である。

□羽子板大会□

 夢幻館に帰るなり、もながパタパタと自室に走って行き、とても懐かしいものを取り出してきた。
 「羽子板?」
 「そう!羽子板大会しない?墨もあるから、負けた場合は何か書かれるの☆」
 「あ、いーねそれっ!」
 盛り上がる暁ともなを尻目に、冬弥はほっと息をついていた。
 負けたら何かを書かれる=いつもの“アノ”話はなしと言う事だ。負けたら暁がどうのこうのと言う・・・。
 「よし!それじゃぁ冬弥ちゃん勝負!俺が負けたら俺が冬弥ちゃんの・・・」
 「だぁぁぁっ!!大人しく普通のルールでやれやっ!」
 「えー。それじゃぁつまんないじゃぁん。」
 「そう言う問題じゃなく、日本の伝統文化に触れると言う、清い心を持って・・・」
 「冬弥さん、そんな事はこれっぽっちも考えていないと言う事は、顔に出ちゃってますから。」
 サラリと奏都が指摘する。・・・いつも思うが、奏都の指摘はズバリ、的を得ているだけに痛い。言葉の切れ味も相当な威力で・・・・・。
 「モー、分かったよ。仕方ないなぁ。それじゃぁ、日本の伝統文化に乗っ取って、今回“ダケ”は賭けはなし。」
 「よし、それじゃぁやるか。」
 急に元気になった冬弥がもなから羽子板を受け取り・・・
 「それじゃぁ冬弥ちゃん、勝負!」
 暁と羽子板勝負をする事になった。
 羽根が飛び、カコン、カコンと言う乾いた音が響く。
 先に羽根を落としたのは冬弥だった。
 暁の放ったスマッシュが綺麗に冬弥の手前で落ちたのだ。
 「それじゃぁ、何書こうかなぁ〜♪」
 もなから墨と筆を受け取り、筆先にたっぷりと墨を吸わせ―――ニヤリ、暁は微笑んだ。
 迷う事無く冬弥の腕にデカデカと墨で文字を書く。

  『大スキv』

 「完成〜♪」
 「よりによって、目立つところに・・・」
 「って、あ!これじゃ片想いじゃん!」
 暁はそう言うと“しまった”と言う顔をした。とは言え、書けるのは1回限り・・・。
 「仕方ない。もっかい勝って『アキ命』とか書かなきゃ!」
 「なに恐ろしい事書こうとしてんだ!とりあず、チェンジだチェンジ!もな、やるぞ!」
 「もー・・・仕方ないなぁ。相手してあげるわ〜!」
 もなが肩にかかった髪を払う。少々色っぽい表情に、思わず「誰コレ」と言ってしまいそうになる。
 「もな、路線変更なら、もっとボンキュッボンの体つきに・・・」
 「黙れ」
 魅琴の言葉を笑顔で遮り、ついでに背中に跳び蹴りを喰らわすと、もなと冬弥は対峙した。
 「もなちゃん、勝ったら『アキ命』って書いといて☆」
 「分かった!それじゃぁ『アキ命、下僕上等、ヤラレキャラNo1』って書いとく♪」
 「ぜぇぇってー負けねぇ。」
 冬弥の瞳にやる気がみなぎる・・・!!
 「それじゃぁ、俺は魅琴ちゃんとやろっかな〜。」
 「おぉ。言っとくけど、手加減しねぇからな?」
 「望むところ。」
 暁はそう言ってニコリと不敵な微笑を浮かべると、羽根を弾いた。
 魅琴が素晴らしいコントロールで羽根を暁の取り難い所に落としてくる。それをなんとか返し・・・。
 先に羽根を落としたのは暁の方だった。魅事が軽く弾いた羽根が、暁の足元に一直線に吸い込まれた。
 「よっしゃ!奏都、墨と筆!」
 嬉々とした表情でそう言うと、魅琴は奏都から筆を受け取り、先にたっぷりと墨をつけた。
 「そうか、俺も書かれる可能性が・・・」
 ニヤリ
 何かを企んでいる微笑を浮かべた後で、魅琴が暁の細く白い腕に太い文字を―――
 「はっ・・・!魅琴ちゃん、ヤメテ!俺は冬弥ちゃんの物なのっ!」
 「テメェは俺のモンじゃねぇっ!」
 もなとの勝負を終えた冬弥が、そう怒鳴る。
 どうやらもなが負けたようだ。腕にデカデカと『ロケラン注意』と書かれている。
 「ミコトLOVEはダメ・・・。あ〜っ・・・あ〜っ・・・。」
 「よし、終了。」
 魅琴が筆を置く。
 暁の腕にはデカデカと『ミコトLOVE、お嫁さんにして』の文字が・・・。
 「・・・魅琴ちゃん、暁ちゃんは女の子じゃないよ?」
 「いーんだよ。これでお前は俺の嫁だ!」
 「うっ・・・。冬弥ちゃん・・・俺はもう・・・」
 魅琴に肩を抱かれながら、涙を拭う暁。
 「・・・・馬鹿だっ!!馬鹿の集まりだ!!!」
 「アキには、好きな殿方がおりました。アキは・・・アキは・・・その方のお姿をこっそりと拝見するだけで良かったのに・・・。それなのに、もう・・・アキは他の殿方のものになります。もう、貴方のお姿をこっそりと拝見する事も叶わなくなってしまい・・・アキは・・・。この先、何を心の支えにして生きて行けば良いのでしょうか?教えてください・・・アキは・・・アキは・・・。」
 裏声を出しながら崩れ落ちる暁。それをお姫様抱っこをする魅琴。
 「お前はもう俺のものだ!何処にも行かせねぇっ!一生俺についてくるんだ!」
 「あ〜れ〜・・・!!」
 暁が顔を両手で覆う。
 「・・・馬鹿だ!馬鹿ばっかだ!新年早々馬鹿ばっかだ!!!」
 冬弥が叫ぶ。乱暴に頭をかきむしり、叫びながらのた打ち回る。
 「ほら、冬弥ちゃん。アキ姫様を助けないと。」
 「馬鹿は馬鹿同士でつるんでろ!俺は部屋に行く・・・!」
 「え・・・でも、冬弥ちゃんしか止められる人は・・・」
 「もーイヤだ、新年早々だっつーのに・・・!!」
 「冬弥さん。魅琴さんが暁さんを部屋に連れて行ってしまう前に、どうにか助け出してください。」
 奏都の言葉に、冬弥はグルンと2人の方を見やった。
 「よぉっし!それじゃぁ、これから初・・・」
 「「「下品」」」
 奏都ともなが魅琴の頭を叩き、冬弥が蹴りを入れる。
 「だぁぁっ!おら、暁!こっちに来い!」
 苦々しい顔をしながら、冬弥が暁を引っ張る。よろよろとそちらの方に歩み―――ぴたりとその胸に身を預けた。
 「冬弥様・・・アキの事を想っていてくれたのですね・・・アキは・・・アキは・・・嬉しゅう御座いますっ!」
 暁がひしっと冬弥に抱きつき・・・
 「暁ちゃんってさ、裏声だと女の子みたいな声だよね。」
 「そもそも、地声がそれほど低いわけではないですからね。」
 「だぁぁ!!ひっつくな!そしてそのキショイしゃべり方をやめろ!ってか、ソコォ!!なに分析してんだよ!助けろよ!!」
 「冬弥ちゃん、冬弥ちゃん。」
 暁がパっと顔を上げる。普段通りの声に戻った暁に、ほっと安堵の表情を覗かせたのも束の間、冬弥の表情は凍りついた。
 「夫婦円満☆今年の上半期が勝負だねw」
 ニヤリと微笑む右手に握られた、夫婦円満のお守りがキラリと光る。


 「お前が大凶の原因だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 冬弥は力の限り叫ぶと、肩でゼーゼーと息をした。
 「酷いなぁ、モー!将来の伴侶に向かって・・・ね?冬弥ちゃん。俺はいつでも準備万端だから。は・や・く・ね☆」
 妖艶な微笑を浮かべてウインクをする暁を見て、冬弥は自分の運命を呪うと共に今年起こるであろう、受難の日々を想い・・・嘆いた。
 「んーでも、梶原 暁も悪くないよねwあ、それよりも桐生 冬弥の方が合うかな?」
 ニヤニヤとしながら考え込む暁の顔を、げんなりとした表情で冬弥が見詰める。
 「まぁ、何はともあれ、冬弥ちゃん、今年も宜しくね〜☆」
 暁はそう言うと、冬弥に抱きついた・・・・・・。


   今年もまた、宜しくお願いいたします☆  By夢幻館一同より




         〈END〉


 
 ◇★◇★◇★  登場人物  ★◇★◇★◇

 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

  4782/桐生 暁/男性/17歳/学生アルバイト・トランスメンバー・劇団員


  NPC/梶原 冬弥/男性/19歳/夢の世界の案内人兼ボディーガード
  NPC/片桐 もな/女性/16歳/現実世界の案内人兼ガンナー
  NPC/神崎 魅琴/男性/19歳/夢幻館の雇われボディーガード
  NPC/沖坂 奏都/男性/23歳/夢幻館の支配人
 
 ◆☆◆☆◆☆  ライター通信  ☆◆☆◆☆◆

 この度は『All seasons』にご参加いただきましてまことに有難う御座いました。
 そして、いつもいつもお世話になっております。(ペコリ)
 
 さて、如何でしたでしょうか?
 新年を夢幻館の住人と一緒に・・・なんだか新年早々大変な事になってしまいましたが(苦笑)
 暁様と冬弥は果たして夫婦になるのかどうか・・・(笑)
 魅琴が暁様LOVEで、もなも暁様大好き☆で・・・妙な関係図が成り立ってしまいそうな今日この頃ですが・・・。
 ちなみに副題の【今年も続く・・・】の後に入る言葉は“冬弥の受難の日々”だったりします・・・。


  それでは、またどこかでお逢いいたしました時はよろしくお願いいたします。