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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


A doll of blue eyes---Act.1---



―――その日、樋口・真帆(ひぐち・まほ)は夢を見た。

『……お願い………を…探して………お願い…』

それは、金の髪をもった少女の泣き声。

『もう一度だけ……もう一度だけ、会いたいの…』

それは、おそらく少女の切なる願い。
まるで自分に言ってきているかのように、『探して』と『会いたい』を何度も繰り返す。
「貴女は誰なの?泣いてるの…?」
何度目かの時に真帆は少女にそう質問するが、返ってくる言葉は同じ。
少女の瞳に自分は映っていないように思える。
―――いや、実際に写っていないのだろう。
何度真帆が話しかけても、少女は少しの反応も示さない。

少女の瞳に、真帆は映っていないのだ。

『お願い………お願い…』

泣きながら訴える少女の姿を、真帆はただ見ている事しかできなかった………。




「…夢…?あれは誰かの願いだよね。あの子、泣いてた……」
―――夢を見た。
金の髪の少女の泣く姿。
悲しげな声と、切なる願い。
少女の瞳に自分は映らなかったけれど、少女に自分の声は届かなかったけれど、
「…会いたいんだ」
それだけは、はっきりと分かった。できる事ならば、少女の会いたいという人を探して、少女に会わせてあげたい。
「…私が、会わせてあげるから、だから」
もう、泣かないで。
心の中でそう呟くと、真帆は再び瞳を閉じた。
普通の人間ならば「あれは夢だったのだ」と、そこで終わってしまったかもしれないが―――真帆は、夢魔の血を引く「夢見の魔女」と呼ばれる家系に生れた魔女だ。まだ見習いではあるが、他者の夢の中に入り込む事ができる。もちろん自分が見た夢に入り込む事も可能だ。他者であれ自分であれ、その夢の内容を無理やり変える事はできないが、もう一度夢の中に潜り込む事で少女の願いを叶えてやれる何らかの手掛かりが掴めるのではないかと思った。
「あの子は…どこにいるのかな?」
探しているのは先ほどの夢の少女。少女が会いたいと言う人に、会わせてあげたい。少女に、泣いてほしくない。
「…いない」
…だが、金の髪の少女は見つからなかった。
どうしてだろう?自分の夢なのに。確かに夢の中に潜ったはずなのに、なのに夢に出てきた少女に会えないなんて。
「…力不足なのかなぁ…」
やはり自分が見習いで、力も経験も不足しているからなのだろうか?
「ん……?」
そう思い始めた時、夢に変化が起こった。
「あれ……え、ここって…草間興信所…?」
少女の姿は見つけられなかったが、その代わりに草間興信所の入り口が現れたのだ。
「草間さんの所に行けば、何か分かるのかな?…夢の中で一人で泣いてるのに、放ってなんて置けないよね」
放っておくなんて事、できない。目の前で涙していた少女を捨て置くなんて事、真帆にはできなかった。

―――だから、草間興信所へ行こう。

再び潜った夢の中に出てきたのだ。きっと何かが分かるはず。

きっと、何かが…。




■■■




「あ!」
「………」

草間興信所前。
あの後、真帆はすぐに出掛ける準備をして目的地である草間興信所へとやって来たのだが、そこで見知った少年と出くわした。
「春也さん?」
同級生の藤城・春也(ふじしろ・はるや)だ。彼は彼で真帆と出くわした事に驚いたらしく、すぐにいつもの表情に戻ってしまっていたが確かに一瞬だけ目を見開いていた。
「樋口か……ここに用なのか?」
言って、春也は草間興信所と書かれた案内板を指差す。
「うん。ちょっと気になる事があったの。春也さんも…」
用事があるの?
そう、口には出せなかった。…いや、出さなくとも分かってしまった。
春也の肩にはアンティーク人形ほどの大きさの女の子が、ちょこんと座っているのだ。自分が知る藤城春也という人間は、決して肩に人形を乗せて街を出歩くような人ではない。おそらく肩の女の子は霊か    何かで、それをどうにかするべく草間興信所へとやってきたのだろう。ここには通称「怪奇探偵」がいる。何とかしてくれるかもしれないと思うのもアリだ。
(でも…この女の子、何処かで会った事がある気がするなぁ……)
不思議とそう思った。だが、何処で会ったのかを思い出せない。
「春也さんも用事があるんだよね。じゃ、中に入ろう?多分、草間さん居ると思うから」
「…あぁ」
女の子と会った事がある気がするとは思ったが、その場では思い出せなかったので真帆は先に建物の中に入って行った。春也もこのまま立ち往生している訳にもいかず、真帆の後を追うようにして建物の中に入ろうとしたが、
『ちょっと春也』
途中、自分の肩に乗っている女の子…ミシェル・クラームに声を掛けられた。
「何だ?」
『今の子、誰?知り合いっぽいけど』
「同級生だ」
『ふーん。…あの子、私の姿が見えてたんじゃない?』
「今までオレ以外に見えた事がないのにか?リューイのような存在でもないんだ。見えてないだろう」
『そうかなー。何となくだけど、目が合った気がするのよねー』
「…気のせいだろ」
春也はそこで会話を終わらせると、今度こそ建物の中に入って行った。





「――どうぞ」
「あ、零さん、ありがとうございます」
「…どうも」
ノックをしてから中に入ると、やはり草間・武彦は居た。眠そうに新聞を読んでいる。出迎えてくれた武彦の義理の妹である草間・零は、真帆と、少し遅れて入ってきた春也の二人をソファーに案内すると二人に紅茶を差し出す。それに対して真帆と春也は礼を述べ、零は「いいえ」と言って武彦にはコーヒーを出した。零は全員に配り終えたところで、準備はできたと言わんばかりに武彦の後ろに立ってこれからの話を聞く体勢に入っている。
「で?何か用か?先に言っておくが、俺は探偵だ。霊関係はごめんだぞ」
出されたコーヒーを眠気覚ましとばかりに口にし、チラリと春也の様子を窺いながら言った。
見えはしないが、確実に何かはいる。
その思いが武彦にそう言わせたのだが、春也はそれを否定した。
「霊に関する事ではありません」
「…じゃ、何だ?お前さんから感じる変な気配と無関係なものか?」
「関係はあります。ですが依頼したいのは形あるものです。それを、探して欲しいんです」
「え?その肩にいる女の子をどうにかしてほしくて相談に来たんじゃなかったの??」
突然、武彦と春也の会話に真帆が割って入ってきた。真帆はずっと女の子の霊をどうにかしたくて相談に来たのだとばかり思っていたが、どうやら自分の勝手な思い込みだったようだ。
「樋口…お前、こいつが見えるのか…?」
『ホラ、やっぱり。この子、ちゃんと見えてるじゃない』
「え?え?」
何が何だかさっぱりだ。春也がここへ来たのはこの女の子をどうにかしてもらいたいからではなく、別の用事で、でも確かに女の子は人ならざるもので…しかも女の子の姿は自分と春也にしか見えていないらしい。武彦も零も首を傾けながら真帆たちの会話を聞いている。
「あの…春也さん?できればこの女の子について聞きたいなー…なんて」
「…こいつは『私はミシェル。ミシェル・クラームよ!』
「………」
女の子について聞きたい。そう言われ、実際に姿が見えているのだから話しても構わないかと春也が話そうとするのを遮って、ミシェルは自ら名乗った。…ちょっとだけ、春也が不機嫌になったのは内緒にしておこう。
「ミシェルさん…っていうんだ。私は樋口真帆。よろしくね。……幽霊、ってことになるのかな?」
『まぁ、そんな感じねー。私の今の本体は春也の部屋にある人形だし。でも、ちゃんと人間だったんだからね?』
「…おい」
『それにしても不思議よね。今まで春也以外の人間は私の姿なんて見えなかったのに。現にそこにいる探偵さんにも紅茶くれた子にも見えてないし』
「……ミシェル」
『ね、ね!私って幾つに見える?過ごした時間は長いけど、十代のつもり!』
「あ、あの、ミシェルさん…その…春也さんが怒っちゃってるよ?」
『へ?』
よほど自分の姿を見る事ができる真帆の存在が嬉しかったらしい。ミシェルは春也の事など忘れたように真帆に話し掛け捲る。しかも一方的に。真帆としては話しを聞いてやっても良いのだが…ミシェルが座る肩の提供者である春也から怒りのオーラを感じてしまっては、躊躇ってしまう。
『あ、ごめん。忘れてた』
あはは。そう笑って謝るミシェルからは、全く罪悪感が感じられない。本人は悪いと思っていないのだろう。
「……もういい。…それで、樋口には確かにミシェルが見えてるんだな?」
「う、うん。見えてるけど…あの、見えたらおかしかったのかな?」
「おかしい訳じゃない。…ただ、今までオレ以外の人間にはこいつの姿は見えてなかったから不思議に思っただけだ。…ミシェル、まさか樋口も人形の件に関わりのある人物だとは言わないよな?」
「………違うわね。この子からは何も感じないもの。人形とは無関係だわ」
たっぷり間をあけて、ミシェルは春也の問いに答えた。ジッと真帆を見つめてみたが、真帆から何かを感じる事はない。感じるのは、真帆のほのぼのというかおっとりというか、そんな雰囲気だけ。
「盛り上がってるところ悪いが、俺にも零にもミシェルって奴の姿は見えないし、声も聞こえない。話の要領がさっぱりなんだが。それに、お前さんは結局何を探して欲しいんだ?」
そこに武彦が会話に加わった。いい加減にしろと顔には書いてある。
話の要領を得ていないのは真帆も同じだったが、ミシェルの姿が見えて声も聞こえる分だけ武彦達よりはマシだろう。
「そう言えばそうだよね。ミシェルさんの事じゃないなら、何か違う事に関する探し物?」
「いや、ミシェルと深い関わりがある。ただ、さっきも言ったが形あるものを探してるんだ」
春也は武彦が加わった事によってようやく話が戻った事に安堵しつつ、口調を変えるとその内容を武彦らに話し始めた。
「探しているのは―――一体の人形です。…草間さんは、『青い目の人形』をご存知ですか?」
「青い目をした人形か?そんなの探せばどこにでもあるだろう」
「そうではなく、アメリカから日本に贈られた人形の事です」
―――『青い目の人形』…それは、1927年にシドニー・ギューリック氏が冷めていく母国のアメリカと日本の関係を心配し、両国民の気持ちの橋渡しができないかと提案したもので、『人形計画』とも呼ばれている。現存する記録によれば、実に1万2700体もの青い目の人形がアメリカから日本に贈られ、日本からもそのお返しにと58体の三折り人形が贈られたのだが…14年後、不幸な事に両国は戦争を起こしてしまう。それぞれが贈りあった人形は、戦火や様々な理由で失われてしまい、戦後、確認された人形はアメリカ側が約30体、日本側が約200体のみ。
「草間さんにはミシェルの姿は見えないでしょうが…ミシェルは、その青い目の人形の一つです」
(青い目の人形…そんなのが、あったんだ…確かにミシェルさんの髪は金だし、瞳は青だよね)
春也の話はとても興味のある内容だった。
真帆は心の中で呟くと、引き続き春也の話に聞き耳を立てる。
「その本体を俺に探せと?」
「いえ、ミシェルの本体はオレの家に保管されています。草間さんに探してほしいのは…ミシェルと共に日本に贈られた、日本人の容姿をした人形です」
「そりゃまた変な話だな。日本に贈られたのは青い目の人形なんだろう?それがどうして日本人の容姿なんだ?」
武彦の言う通りだ。贈られた人形は金の髪に青い瞳。それが、どうして日本人の容姿をした人形まで一緒に贈られたのだろう?それでは「青い目の人形」という言葉は間違っているのではないか。
(ミシェルさんと一緒に贈られた、日本人の姿の人形…)
あくまで話を中断するつもりはなく、真帆はただ気になった事を先程と同じように心の中で呟く。
答えは、すぐに春也の口から語られた。
「…その人形を作ったのが日本人だったんです。そして、ミシェルとその人形は同時に作られた恋人同士。二体で一つの人形なんです」
『―――お願い、レンを探して!お願いっ…!レンに、もう一度会いたいのっ!!』
武彦に姿は見えていないはずなのに、声だって届いていないはずなのに、ミシェルはそれでも構わないと必死になって叫んだ。
「え…この言葉って……夢の中の女の人と同じ…?」
話しを中断させるつもりはなかったが…気が付けば声に出ていた。
悲しげに訴えるミシェルのこの言葉に、真帆は気が付いたのだ。
「そっか……ミシェルさん、だったんだね…」
先ほどまでの騒ぎっぷりが、まるで嘘のよう。ミシェルの表情は、悲しみに満ちていた。

それは、真帆が見た夢の中の少女と同じ表情だった。
それは、真帆が見た夢の中の少女の表情そのものだった。

だからだ。だから、表でミシェルを見かけた時、何処かで会った気がしてならなかったのだ。
夢の中の少女は髪が長かったが、ミシェルはポニーテール。雰囲気も少し違っていたので気が付かなかったのだろう。
「その人形探し、私も手伝うよ。…ううん、手伝わせてもらえるかな?」
必死になって訴えるミシェルの姿を見て、我慢できなかった。
力になりたい。
真帆のその心が口を動かせた。
「―――夢を、見たの。金の髪の女の人が、泣きながら『探して』『会いたい』っていう夢。…今、分かった。あの夢の女の人はミシェルさんなんだって。ミシェルさんの思いが強かったから、きっと私は夢を見たんだと思うの」
私には、夢に関する能力があるから。
真帆は優しい眼差しのままで続けた。
「目が覚めた時、力になりたいと思った。ミシェルさんに悲しい顔をしてほしくないって思った。だから、お手伝いさせてくれますか?私にも出来る事があると思うの」
『あんた…』
「ダメ…かな?」
『そんな訳ないじゃない!大歓迎よ!!すっごく嬉しい!』
本当に嬉しかった。嬉しくて、ついつい真帆の首に抱きついてしまう。
ミシェルのその反応には、真帆も笑顔で「どういたしまして」と答える。
「…悪いな、樋口。助かる。オレ一人じゃこいつの面倒は見切れないと思ってたんだ」
「協力者ができたみたいだな。じゃ、その人形の詳しい話を聞かせてもらおうか」
もうすっかり目は覚めてしまったらしい。タバコに火を付けながら、武彦はペンと手帳を取り出した。
「はい。その人形の名前はレン。製作者の名前もレンです。『青い目の人形計画』で、ミシェルと共に日本に贈られてきた人形です。髪色も瞳も黒、典型的な日本人の容姿で…」
「で?」
「…これしか、情報がありません」
「やけに少ない情報だな…ま、やってみるだけやってみるさ。それで、あんたは何の用件で?」
「え?あ、」
急に話をふってきた武彦に、そういえば春也よりも先に入ってきた割には自分の用件を話してなかったのだと真帆は思い出す。だが、問題は既に解決済みだ。
「えっとですね、私の用事は…さっきお話した、夢についてだったんです。気になってもう一度夢に潜ってみたら、女の人…ミシェルさんに会えなくて、でも、代わりに草間興信所が出てきたので、ここに来れば何かあるんじゃないかなって」
「で、問題は解決したと」
「はい。…その、ごめんなさい」
「謝られても困るが…まぁ、とにかくだ。レンとかいう名前の人形探し、確実に見つけられる保証はしないが、引き受けた」
「有難うございます。宜しくお願いします」



■■■


『ね、レンの事聞かないの?春也は知ってるけど、あんたは…真帆は知らないでしょ?』
「知らないけど…」
草間興信所前。
用事を済ませたところで興信所を出た真帆達。外に出るとミシェルが不思議そうに聞いてきた。
「質問したいなぁとは思ったけど、でも、ミシェルさんが話したくないなら聞かなくても良いかなって。ミシェルさんから話してくれるまで待ってみようかなー…って」
『…ホント、春也の友達だなんて信じられないわ。…―――レンはね、私の恋人なの。本当の恋人。レンが私の為に、お互いの姿にそっくりな人形を作ってくれたの』
人形の製作者と人形を贈られた者は恋人同士で、作られた人形もまた恋人同士だった。
二人で一人、二体で一つ。
そんな関係だったが…
『…私もレンも、愛し合っていたのに…っ!』
二人は引き離され、それから暫くして二体も引き離されてしまった。
「ミシェルさん…」
それを聞かされた真帆は、まるで自分の事のように心に痛みを感じ、やはり力になってあげたいと再度そう思う。先程よりも、強く。
「レンさん、きっと見つかるよ。ミシェルさんのその気持ちがあれば、必ず見つけられるよ!」


「あぁっ!二人とも見つけたっ!!」


辺りはしんみりした雰囲気だった。決して暗くはなく、けれども明るすぎない雰囲気だったはずが…突然聞こえてきた誰かのその一声で、この場の雰囲気はぶち壊されてしまった。
「?」
怒るつもりなんて全くないが…はて、この声はどこから聞こえてきたのだろう?真帆は辺りを見回してみるが、声の持ち主らしき人物は見当たらない。
「しかも女の子と一緒にいる〜っ!」
もう一度聞こえてきた声は頭上から投げかけられたような気がして…
「あ…!」
見上げれば、視線の先には純白の翼を背にもった天使がいた。
「わぁ…天使さん!」
その天使はバサバサと羽根を羽ばたかせながら、ゆっくりと下に降りてくる。
「この女の子って、ハルくんのお友達?」
「リューイか。…まぁ」
「ね、この子って私の姿見えてるかな??見えてるならお友達になりたーい♪」
どうやら春也の知り合いらしい。急な天使の登場に驚かないあたり、この天使はいつも突然現れるのだろう。ミシェルも動じていない。それにしても……やけにテンションの高い天使である。天使は春也の隣にいた真帆を見つけると、目を輝かせていた。
「あの、私、天使さんの事、見えてます」
天使と会話する機会なんて滅多にあるものではないし、魔女という自分の立場的にも生きている内に会えるかすら分からないような存在だ。少しだけ緊張しながら、けれども笑顔を忘れずに声を掛けると、天使は更に目を輝かせて真帆の前まで移動してきた。
「うわっ、凄い!やった!!私はリューイ。貴方の名前は??」
「あ、私は樋口 真帆って言います」
「じゃあ真帆ちゃんね!真帆ちゃんはハルくんのお友達なんだ?」
「はい。同級生なんです」
「敬語いらないよー。そっか、じゃあ…私もお友達になって良い?」
「え?」
「おい、リューイ。…悪いな樋口、こういう奴なんだ」
現れたのは突然だったが、彼女…リューイの発言も突然だった。会って数秒で「友達になって良い?」なんて聞かれた事がない真帆は、呆っ気にとられたような顔をしてしまう。すぐさまフォローに入ってくる春也だが、まるで自分が悪いのだと言っているように聞こえたリューイは「えー」「だってお友達になりたいんだもん」…などと小さく反抗している。
「ご、ごめんなさい。別に嫌とかじゃなくて…会ってすぐにお友達になろうって言われた事なかったから、少し驚いちゃって…でも、凄く嬉しい!宜しくね、リューイさん」
口を尖らせているリューイにそう言ってやると、その真帆の言葉に更に更に目を輝かせ、まるで新しい玩具を買ってもらった子供のように喜んだ。
「リューイ、樋口にはミシェルの姿が見えている。…レン探し、樋口も手伝ってくれるらしい」
「そうなの?そっかー。真帆ちゃんも手伝ってくれるんだね!ありがと!」
嬉々としてリューイは真帆の手を握ってくるが、春也の言葉に疑問が浮かぶ。
レン探しを手伝うとは言ったが、春也とミシェルがレン探しをしている事をリューイも知っているのだろうか?リューイの口振りからはそうとれる。そういえば、天使であるリューイと二人の関わりも知らない。
「えっと、リューイさんも手伝ってるの?」
「直接的には手伝えないけど、まぁ、一緒にいる事は多いよー。私ね、神様の命令で人間界に降りてきてるの」
リューイが言うには、昇天してこないミシェルの魂を神様が気にしてリューイを監視役につけたらしい。ミシェルが昇天できないのはレンが関わっているのだろう。それは容易に想像できる。実際、その通りらしく、神様が定めた期間内にミシェルの魂が消滅してしまわないように、そして期間内にレンを見つけられなかったら強制昇天させる為にリューイは降りてきたのだと、分かりやすく説明してくれた。
(そっか…期間があるんだね)
それで草間興信所に足を運んだのだろう。
「ミシェルさん。私、いっぱいお手伝いするから。だから、いっぱい頑張ろうね!」
『…プッ。何よ真帆、いっぱい頑張るって。…変なのー。……でも、悪くはないわよね』
再びかけられた真帆からの励ましの言葉に反応するように、ミシェルは真帆の肩に腰をおろした。
『いっぱい、頑張りましょうか!』
「…うん!!」
真帆は満面の笑みでミシェルに返す。ミシェルも、その目に希望の光を見せて笑った。
「真帆ちゃん、いい子みたいだね」
「…あぁ」
まるで古くからの知り合いのように接する真帆とミシェルの姿を見て、リューイも春也も口元を緩めてしまう。
「……真帆ちゃんは、気付くかな?」
チラリと、リューイは何処かを見やって小さな声で呟く。春也にすら聞こえない位、小さな声で。
リューイの視線の先には…影が、ある。それは人間の人影で、それは先程からこちらの様子を窺っていて……でも、ただそれだけの影だ。
「私も入れてー!!」
リューイはその影の存在を口にする事はなく、忘れるかのようにして真帆とミシェルの輪の中に飛び込んでいった。
「お前なぁ…」
呆れながらも、それを止めようとはしない春也。春也はポケットに手を突っ込むと「オレは帰るからな」と言って一人で歩き出してしまう。
「あ、春也さーん!」
『待てコラー!!』
「待てー!あははは!!」
そして真帆達は先行く春也を追いかけた。





「協力者の登場…ね。さて……あの女の子はどんな事をしてくれるのやら」
影が動いた。
その影は真帆や春也達とは反対方向に向かいながら呟く。
「最後まで、見届けさせてもらいますよ」
そう言って背中の向こう側ではしゃぐ真帆や春也達に対し、軽く手を振って―――影は消えた。


物語が歩き始めた。
一人の少女が加わった事で、物語は確実に一歩を進んだのだ。


―――全ては、始まったばかり……





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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PC
≪6458・樋口 真帆(ひぐち まほ)・女・17歳・高校生&見習い魔女≫

NPC
≪藤城 春也(ふじしろ はるや)・男・17歳・学生≫
≪ミシェル=クラーム・女・永遠の17歳・魂だけの存在、霊体≫
≪リューイ・女・18歳・天使≫
≪見届ける者(みとどけるもの)・24歳・≫

公式NPC
≪草間 武彦・男・30歳・草間興信所 所長≫
≪草間 零・女・不明・草間興信所 見習い探偵≫

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■         ライター通信          ■
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初めまして!朝比奈 廻です。この度はご参加有難うございました!初めての受注でしたので、気合入れて書かせて頂きました。
樋口さまはとても可愛らしく、そして優しく、朝比奈のイメージで書かせて頂いたところが幾つかあったのですが、何か問題がございましたらご指摘お願いします。
では、有難うございました!楽しんで頂けましたのならば幸いです。次回がありましたら、どうぞ宜しくお願いします。
朝比奈 廻