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<東京怪談・PCゲームノベル>


花逍遥〜冬に咲く花〜



■ 氷雪 ■

 先日まで行われていた期末試験の採点を無事に終え、後は卒業式と春休みを待つだけという長閑な日。嘉神真輝はふと思い立って、手土産と称した鍋の具材を大量に買い込むと綜月漣の自宅へ赴いた。
 春もすぐそこまで来ているのだろう。漣の自宅周辺は沈丁花の柔らかな香りで満ちており、その香に誘われた数羽のメジロが樹の周りを飛び交っている。
 つい先日新年を迎えたばかりだと思っていたのに季節は確実に移ろって行くのだな、とそんな事を考えながら、真輝は石畳の小道を抜けて漣の自宅前まで辿り着くと、そこにある光景に思わず顔をしかめた。
「……またかよ」
 見ると大晦日の時と同様に、玄関の引き戸が僅かだが開かれている。
 鍵をかけないのが常なのか、それともここで玄関を開けると再び別世界へすっ飛ばされるのか――。
 真輝は思わず腕を組むとその場に佇んで考え込んだ。
「二度も同じ手は使わねーよな。今回は事前に行く事伝えとらんし」
 普通に呼び鈴を押して漣が出てくるのを待てば良いだけなのだが、大晦日と寸部違わぬこの状況下で、無造作に綜月邸の玄関へ触わるのは躊躇われた。
 漣や四季神の傍に居ると必ずとんでもない事に巻き込まれる、という事が度重なっている所為か、どうにも疑心暗鬼になっていけない。だが、再び悪鬼扱いされて今度は牢獄にでも放り込まれたら、それこそ笑い事では済まされない。
 真輝は一度玄関を見上げると、呼び鈴を押す事はせずにそのまま中庭へ続く通路を歩き出した。
「玄関が危険なら中庭直行……っつーか何で家に入るだけなのに、ここまで考えこまねーといかんのだ?」
 首をかしげながらも、低木の植えられている通路を通っている時だった。
 中庭の方から子供のはしゃぐ声と、のほほんとした笑い声が耳に届いて、真輝は顔を上げた。どうやら漣と雪が庭先で遊んでいるようだ。
 真輝は「今回は無事に辿り着けそうだな」と、ほっと安堵の溜息を零すと、壁伝いに道を折れて漣へ声をかけようとした……のだが。
「おーい漣。遊びに…………!!?」
 道を曲がった瞬間、いきなり真輝の周囲を豪風が取り巻いた。
 風だけではない。風に煽られた氷雪がとてつもない勢いで真輝の傍らを吹きぬけてゆく。突然のことに真輝は一瞬よろめくも、持ち前の運動神経の良さから反射的に顔を覆うと、吹き飛ばされないよう両足へ渾身の力を入れて踏みとどまった。風は勢いを増し、氷の飛礫は斬るような鋭さをもって真輝を叩きつける。
 玄関を開けたら別世界。中庭へ行ったら猛吹雪。さてその後は一体何が起こるのか――
 などとこの状況下では考えられるはずもなく、とにかく吹雪から己の身を守る事だけを考えていた時。
「あー、まさきだ!」
 微かではあるが、風の音に紛れて雪(せつ)の声が耳を掠めて行った。と同時に、情け容赦なかった吹雪の勢いが、何の前触れもなくパタリと止んだ。

 流れる沈黙を、舞い戻ってきた小鳥のさえずりがかき消してゆく。
 やがて、暖かな太陽の日差しが自分の背中を照りつけている事に気付くと、真輝は半ば茫然としたまま両腕を下ろした。
 その動きで、腕に積もっていた雪がぱさりと軽い音を立てて地面へ落ちる。先ほどの猛吹雪で全身に氷雪がこびりついてしまったようだ。
 何が起こっているのかさっぱり解らず、真輝は緩慢な所作で己の身についた雪を払い落とした。前方へ視線を向けると、吹雪のせいで中庭にある全てが白銀に埋め尽くされている。芽吹き始めた梅や沈丁花も雪に隠れ、在るのはただ見渡す限りの白い世界。
 その中央に佇んで、驚いたようにこちらを眺めている冬王と、冬王に抱え上げられている雪(せつ)、そして縁側に座ってお茶を飲んでいる漣の姿を見留めると、真輝は独り言のような言葉を紡いだ。
「……なんでイキナリ吹雪いてんだここは」
 いまだ思考回路がしっかりと機能せず、とりあえず疑問に思ったことを口にしてみる。すると、漣が苦笑を零しながら真輝へ話しかけてきた。
「この上なくいいタイミングですねぇ。今直撃しませんでしたか?」
「…………これはもしかしなくてもつくねの仕業か?」
「ええ。雪ちゃんが雪だるまを作りたいと言うものですから、冬王様にお願いして中庭に雪(ゆき)を降らせて頂いたのですよ」
 その言葉に、真輝は思わず眉間に皺を寄せた。
「は? 雪だるま?」
 漣はお茶を一口飲むと、のほほんとした笑顔を向けてくる。
「じきに春が来ますからねぇ。その前に雪景色を楽しむのも良いかと思いまして。しかし何故また今日に限って中庭から?」
「…………」
 玄関には触らない方が良いと危惧して中庭から入った事が仇になったらしい。
 雪だるまを作りたいが為に冬王が吹雪を放ち、タイミング悪く自分がその直撃を受けてしまったのだとわかると、真輝は思わず拳を握り締めた。
「……漣の家に行けば確実につくねに会える事は分かった……素直に会えるかは別として!」
 額に怒りマークを付けながら、真輝は膝中程まで覆っている雪を蹴るようにして歩き出す。降ったばかりの雪は柔らかく、歩く毎に軽い雪煙を舞い上がらせるが、その分苦労することなく前へ進む事が出来る。
 やがて冬王の傍まで近づくと、雪(せつ)が冬王の手から離れて小走りに真輝の前へ進み出た。座敷童だからだろうか。雪に埋もれることもなく、その動きは軽い。
「まさき怒ってる? いっしょに雪だるまつくる?」
 少しは反省しているのだろう。コートの端をかるく摘んで顔色を伺ってくる雪(せつ)に、真輝は目を据わらせたまま腰を折った。
「……雪だるま作りたいんか?」
「うん。このくらいおっきいの!」
 初めのうちは「雪だるまを作るために俺はこんな目にあったんか!」と不機嫌さを露呈していた真輝だったが、両手をいっぱいに広げて一生懸命説明をしている雪の姿を見てしまうと、流石に怒る気が失せてくる。真輝は怒るかわりに溜息をつくと、雪の頭を軽く撫でた。
「ったく。しかたねーな」
「…………?」
「んじゃ、腹いっぱい食ってから雪だるまつくるか? 土産持ってきたんだ」
 首を傾げている雪に、真輝は持参してきたスーパーの袋を見せるように持ち上げる。
「なぁに? ごはん?」
「そ。冬とくれば『鍋』! つーわけで鍋すんぞ! 丁度良いから雪見鍋なんてどーだ?」
 にかっと笑って真輝は雪へ問いかける。途端に雪が頬を紅潮させながら大きく頷いた。
「クリスマスで勝手知ったる台所。好きに使わせて貰うからな、漣」
「突然ですねぇ。別に構いませんが、酒がありませんよ?」
「なら、漣は例によって酒の準備宜しく」
 時空移転の次は吹雪にすっ飛ばされそうになったのだ。文句は言わせないとばかりに真輝はサクサクと指示を出してゆく。すると、それまで三人のやり取りを眺めているだけだった冬王が、心配そうに真輝へ話しかけてきた。
「……大事ないか? 居るとは思わなかった。すまない」
「あー……いつもの事だが、今度はもう少し手加減してくれよな」
「努力しよう」
 冬王の真面目腐った物言いに真輝は笑うと、ふと面白い事を思いついて、手にしていた食材をどさりと冬王へ手渡した。
「何ならつくねも手伝うか?」
「……何を?」
「料理」
 真輝の言葉に、冬王は手渡された食材へ一度視線を落とし、次いで真輝を眺めると困ったような表情を浮かべた。
「だが、私は料理というものを作ったことがない」
「作った事ねーなら俺が教える。鍋は簡単に作れるから初心者向きだ。それに、自分で作った料理を食うのも、中々良いもんだぜ?」
 真輝は笑顔のまま冬王を覗き込んでそれだけ言うと、答えを待たずに雪と一緒に縁側へ向かって歩き出す。
 一人中庭に残された冬王は、束の間食材を手に思案していたようだが、やがてぽつりと言葉を零した。
「……洋服はあるか? 漣」
「ございますが……冬王様が着るのですか?」
 真輝と漣は思わず顔を見合わせると、二人同時に冬王へ視線を向けた。冬王は白い浄衣に身を包んでその場に佇んでいる。
「料理をするのであれば、着替えた方が良いだろう。それに……」
 そこで一度間を置くと、冬王はゆっくりと二人の方へ視線を向け、
「洋服というものを、一度着てみたかった」
 楽しそうな声色で、そんな言葉を返してきたのだった。



■ 美味しい鍋の作り方 ■

 常に和装束を身に纏っている相手が、いざ白いブラウスに黒のスラックスという井出立ちで現れると、何ともいえない妙な違和感を覚える。洋服を着たことで体のラインが出たからだろうか。普段はさほど気にならなかった自分と冬王との身長差が目に付いて、真輝は複雑な面持ちで冬王を見上げた。
「漣より背が高いっつー事は解っていたが……身長何センチあるんだよ」
「わからぬ。測る必要などあるのか?」
「いや、別にねーけど」
「それよりも、これは何という?」
 冬王は台所に置かれた調理器具を指差しながら真輝へと問いかけてくる。真輝は物珍しそうにしている冬王を見ると、冬王が指差しているものをおもむろに覗き込んだ。
「ああ。それはガスコンロっつーんだ。ここの取っ手を回すとだな……」
 言いながら上に置かれていた鍋を退かすと、真輝はコンロへ火をつける。
「火は調節出来るんだ。弱火、中火、強火……これで食材を煮たり焼いたりするんだが、火加減によって料理の出来も変わってくるから要注意な」
 ガスによって炎が生じるという原理がわからないのか、冬王はその場に固まったままじっとコンロを見つめている。
「……人間というものは面白いものを考え出すな。昔はこのようなものは無かった」
「いつの時代の事だよそりゃ」
 昔というのがどのくらい過去の事を指すのか解らないが、ガスコンロを見ただけで感心している冬王に真輝は思わず苦笑した。作るのは鍋料理だから、どちらかといえば初心者向けだが、冬王のこの様子を見た限りでは包丁を扱うことさえ難しいかもしれない。
 真輝は一旦コンロの火を消すと、冬王へ向き直った。
「包丁握ったこと……ねーよな」
「ないな」
「んじゃ、食材切るのは俺がやるから、つくねは出汁を作れ」
 真輝は買ってきた材料の中から昆布を取り出すと、それを冬王へと手渡した。
「鍋に水と昆布を入れて沸騰させるんだが、沸騰する直前に昆布を取り出さねーと良い出汁が取れんから、しっかり見とけよ」
「……それだけで良いのか?」
「そ。簡単だろ」
「……簡単過ぎないか?」
「…………」
 冬王の表情から察するに、簡単なのが不満と言うわけではないらしい。むしろ本当にそれだけで良いのかと不安に思っているように感じられて、真輝は「とりあえず今回は出汁を頑張れ」と言いながら冬王の背中を軽く叩いた。
 冬の神が昆布を片手に鍋と格闘している姿など、他では絶対に見ることが出来ないだろう。真輝は思わず笑みを零すと、やがて自身も調理に取り掛かった。


*


 野菜を切る小気味の良い音が台所に響き渡る。
 作るのは自分を入れて四人分。鍋をするには丁度良い人数だと考えながら、真輝は必要な具材を切り分けていく。すると、隣でじっと湯が煮立つのを待っていた冬王が、今更のように真輝へ声をかけてきた。
「ところで鍋というものは、どのような料理なのだ?」
「ん? ああ。鍋といっても色々あるんだが……キムチ鍋じゃ辛くて雪が食えなさそーだし。単なる寄せ鍋だと驚きが無くてつまんねーし。ってことで今回は牛乳鍋だ」
 真輝はニカッと笑いながら食材を切る手を休めると、既にキッチンテーブルに出してあった牛乳パックを指差した。
「基本的に鶏肉を使うんだが、他にも白菜、ごぼう、ブロッコリー、かぼちゃ……まぁお好みだな。牛乳鍋はとにかく出汁が肝心なんだ。昆布で出汁を作ったら、具が柔らかくなるまで弱火で煮込んで少しづつ牛乳を入れていくんだが……ここで沸騰させちまうと全滅」
「……詳しいな」
「だてに家庭科教師してねーからな」
 言うと、真輝は手にしていたごぼうへ再び視線を落とした。泥を落として綺麗に洗い終えると、図ったかのように同じ長さに切りそろえていく。すると、不意に冬王が声を出して笑った。
「なんだよ?」
「いや、楽しそうに作業をしているから、つい。顔が笑っているぞ?」
 言われて思わず、真輝は顔を引き締める。冬王は変わらぬ笑顔で話を続けた。
「我々はものを食べずとも倒れる事はないが、今度暇があれば他の者達にも教えてみると良い。朧や露月はどうか解らぬが、蔓は喜びそうだ」
 真輝の脳裏に、四季神達の顔が過ぎっていく。確かに、気位の高そうな朧王や露月王が真輝の誘いに乗ってくるとは思えない。逆に押しの弱い蔓王は自ら率先して料理を教えて欲しいと言いそうだな、と思い至ると、真輝は微かに笑顔を浮かべた。
「個性的で面白い奴ばかりだよなぁ、四季神って……俺も負けてねぇとか、そういう台詞は却下」
「……私は何も言っていないぞ?」
「そーかよ」
「思いはしたが口に出さなかった」
「オイ……」
 つっ込むべきなのかどうか、真輝は判断に迷う。
 冬王は湯気の昇り立っている鍋へ視線を落としながら、独り言のように言葉を紡いだ。
「個性的、なのだろうか。朧も露月も好き勝手にやっているが、それぞれの季節を愛しんでいるのであれば、私はそれで構わないと思う」
「けど大晦日にイキナリ時空転移っつーのもな……それより冬王が妻子持ちって方に驚いたが」
「……そうか?」
 微かに冬王の表情が穏やかになったのを感じながら、真輝は頷く。
「つくねも奥さんもおチビも強いな。そんな相手に廻り逢えるってのは、羨ましい気もするよ」
「羨むほどの事でもないだろう。いつか真輝もそういう相手に廻り逢えるのではないか。……恐らく」
「……何でそこで『恐らく』がつくんだよ」
「未来のことだからだ。先が見えないという事は、裏を返せば自ら自由に進んで構わないと言うことだろう?」
 つまり「廻り逢えるかどうかは真輝次第だ」と言いたいのだろうが、真輝はその言葉を聞き終えると、手を休めて考え込んだ。
 先ほどから、とても和やかに会話をしているように思うのだが、どうにも冬王は一言多い気がする。いや、言葉が足りないのだろうか。考えていることの断片だけを言の葉に乗せるから、聞いているこちらは冬王の言わんとするところを汲み取るために、思考を巡らさなければならなのだ。
「……奥さん大変だっただろーな」
 真輝は冬王には聞こえない程度の小声でぼそりと呟く。その真横で、湯が沸騰してきたのを見た冬王が、真輝へ声をかけてきた。
「沸騰してきたぞ」
「ん? ああ。そんじゃ昆布を取り出してから具を煮込むか」
「解った」
 冬王は真輝から菜箸を受け取ると、先ほどとは打って変わった素早さで、真輝が言った通りに作業をこなして行く。
「やれば出来んじゃねーか」
 冬王の手際のよさに驚いて、真輝が感心したように声をかけると、冬王は真顔で真輝を一瞥してきた。
「私を誰だと思っている」
 一応褒めてみたのだが、どうやら褒め言葉とは受け取ってもらえなかったようだ。冬王はそれだけ告げると、鍋の中へ具材を丁寧に入れ始めた。


*


 程よく煮込まれた鍋が客間の和テーブルへ置かれ、とりわける為の小皿を真輝が運んでいる時。タイミングよく、酒を買いに雪と外へ出ていた漣が帰宅した。
「おや、美味しそうな香りですねぇ」
「おー、帰ったか。何買ったんだ?」
 真輝は漣が客間へ入ってくると、一旦手を休めて漣が買ってきた酒へと視線を向ける。漣は言われるままにテーブルへとそれを並べて行った。
「順当にビールと日本酒ですよ。熱燗にしますか?」
「鍋が温かいからな。冷酒でかまわんだろ」
 二人がそんなやり取りをしていると、漣の後をついて客間へ入ってきた雪が、鍋を見るなり瞳を輝かせてテーブルへ走りよってきた。
「ごはん! まさきのごはん美味しいから好き!」
 言って、雪はきゃっきゃとはしゃぎながら漣の周りを飛び跳ねている。そんな雪を見ると、漣はテーブルに肩肘をついて苦笑を零した。
「雪ちゃん、それは暗に僕の作る料理が美味しくないと……」
「れんのごはんはお魚ばっかりでつまんない」
「何を言います。お魚はカルシウムが取れて健康に良いんですよ?」
 座敷童にカルシウムや健康が関係あるのだろうか。本来であれば、冬王と同様に雪も食事を取らずとも生きていけるように思えるのだが、漣は雪へ毎日しっかり食事をさせているようだった。
 真輝は漣と自分の間に座り込んだ雪の頭を撫でると、笑顔を見せる。
「雪もいっぱい食って大きくなれ」
「うん!」
「……俺は食っても大きくならんかったがな」
 先ほど台所で感じた冬王との身長差を思い出して、真輝がそんな独り言を呟いた時。
「生まれ持ったものだ。上背が無いのは仕方があるまい」
 そんな言葉を口にしながら、冬王が菜箸を手に客間へ足を踏み入れてきた。言う事は尤もだが、身長の高い者に身長の低い者の気持ちがわかってたまるか、と真輝は軽く冬王をねめつける。
「つくね……俺に喧嘩売ってねーよな」
「喧嘩を売っているわけではない。それこそ先ほど言っていた個性だろう? もっと良い方向に考えればいい」
「ははは。身長の話はさて置き、真輝君の料理が美味しいのは確かですからねぇ。全員揃ったことですし、そろそろ頂きましょうか」
 漣はのほほんとした口調でそう告げると、立ち上がって中庭に面した障子を開けた。午後の日差しが白銀一色の中庭に入り込んで、柔らかな色彩を生み出している。時計を見ると丁度13時を回ったところだった。
「まさき! ごはん終わったら雪だるま!」
「ちゃんと食って暖まってからだぞ? 雪(ゆき)の中で遊びまわって風邪ひかんようにな」
 真輝は先ほど冬王が持ってきた菜箸を手に、小皿へ全員分の食事を取り分けると各々の前へ置いて行く。
 そうして一通り並べ終えると、一度全員を見渡してから両手を合わせた。
 四人の「いただきます」という声が客間に響き渡り、その直後から夜遅くまで、賑やかな会話はいつまでも続いたのだった。




<了>



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】


【2227/嘉神・真輝(かがみ・まさき)/男性/24歳/神聖都学園高等部教師(家庭科)】

*

【NPC/冬王(つくばね)/男性体/不詳/冬の四季神】
【NPC/綜月・漣(そうげつ・れん)/男性/25歳/幽霊画家・時間放浪者】
【NPC/雪(せつ)/女性/452歳/座敷童】


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■         ライター通信          ■
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嘉神・真輝 様

 こんにちは、綾塚です。
 いつもお世話になっております。この度は『冬に咲く花』をご発注下さいまして有難うございました!
 恐らく冬王はガスコンロの存在も知らないのではなかろうか……と、コメディな感じで書かせて頂きました。出てまいります「牛乳鍋」ですが、正式名称は「飛鳥鍋」になります。牛乳の味はしないので非常に美味でございます(笑)
 それでは、またご縁がございましたらどうぞ宜しくお願いいたしますね(^-^)