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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


A doll of blue eyes --- Act.1---




―――その日、暁 天音(あかつき あまね)は夢を見た。

『……お願い………を…探して………お願い…』

それは、金の髪をもった少女の泣き声。

『もう一度だけ……もう一度だけ、会いたいの…』

それは、おそらく少女の切なる願い。
まるで自分に言ってきているかのように、何度も何度も繰り返す。
『探して』『会いたい』と…。
「―――誰よ、貴方」
少女にそう質問しても、返ってくる言葉は同じ。ただ、『探して』と『会いたい』としか口にしない。違う言葉も耳に入りはするが、その言葉も『私は』『何処にいるの?』といったもので、最後にはやっぱり『探して』『会いたい』に繋がってしまう。
「ちょっと、無視する気?……分かったわ。なら、百歩譲って私から名乗ってあげる。光栄に思いなさいよ?―――私は暁 天音。…さぁ、次は貴方の番よ。誰なのよ、貴方は」
人の名前を尋ねるときには自分から…という一般的な考えは天音にはなかったが、相手が答えないのでは話が進まない。珍しく一般的な考えに沿って自ら名乗るが…それでも少女が己の名を名乗る事はなかった。
そこで、気付いた。
「…まさかとは思うけど…貴方、私の姿が見えてないの?私は貴方が見えるのに?」
何度天音が声をかけても、少女は返答しない。どんな失礼な奴なのかと顔を凝視してやって気が付いたのだが…どうも少女の瞳に自分の姿が映っていないように思える。
―――いや、実際に写っていないのだろう。

少女の瞳には、自分は映っていないのだ。

『お願い………お願い…』

泣きながら訴える少女の姿を、天音はただ見ている事しかできなかった………。





「……?」

―――夢を見た。
金の髪の少女の泣く姿。
悲しげな声と切なる願い。
「…今の、夢?」
目覚めて、まず思ったのは先程までの夢は本当にただの夢であったのかという事。今、確かに自分は見慣れた天井と向き合っている。自分がいるのも布団の中だ。つまり、眠っていたという事。眠った時に見るものは夢以外にないのだろうから、夢には違いないのだろうが…その内容が内容だけに、単なる夢で終わらせて良いものかと考えてしまう。
「ふぅ……何でこういう時に限って暇なのかしらね?」
もしも夢の中の少女と会う事ができて、その上更に夢の少女が会いたいと言う人物を探し当てたら、謝礼は出るのだろうか?まぁ、本当に会えて探し出せたなら謝礼はちゃんと貰うが。
「このまま忘れても良いけど…暇つぶしぐらいにはなるかしら」
暇つぶしもできて、上手くいけば謝礼も貰えるかもしれない。…いや、貰ってやる。そうすれば一石二鳥だ。
「家賃は半年ほどたまってるし…うん、そうと決まれば行きましょうか?」
バサリと、天音は布団を捲り上げると着替え始めた。
「まずは夢の中の人を探さなきゃいけないわね」
錬金術に関する事ならば自分の専門なのだが、夢だとか霊だとか、そのテの事に関しては専門外だ。ならば専門家のところに行こうではないか。
「百か二百か…それ位は請求させてもらおうかしら」
ポツリと、成功してもいない、そして発生するかも分からない謝礼の事を呟いて、天音は部屋を出た。

目指すは、怪奇探偵がいる草間興信所―――




■■■




「…で?夢の中に出てきた人間を俺が探し出せるとでも?」
「怪奇探偵なんでしょ。無理とは言わせないわ」
草間興信所。
天音が着いた頃には日も高く昇っていて、時刻で言えば三時頃だった。ちょうどコーヒータイムだったらしく、ノックをして中に入れば草間 武彦が妹であり助手でもある草間 零からコーヒーを受け取っているところだった。そんな休憩時間にも構わず、天音が「探してもらいたい人がいるのよ」と言えばすぐに零がソファーに誘導してくれて、自分の分のコーヒーも淹れてくれた。武彦も人捜しの依頼かと思って天音から話を聞いたのだが…
「…確かにそのテの事件に巻き込まれやすいし、知り合いどもはそういう事件に俺を巻き込みたがる」
それが「怪奇探偵」と呼ばれる由縁だ。だが、本人的にはかなり不本意らしい。

コンコンと、新たな客を意味するノックの音が聞こえてきたのはその時だった。

「今日は来客日和ですね、兄さん」
ニコリと武彦に向けて小さく笑うと、零は客人を迎え入れるべく扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
「あの、草間 武彦さんはいますか?依頼したい事があるんですが…」
聞こえた声は男のものだった。子供という訳でもなく、けれども大人という訳でもない…中高生あたりの少年だろう。
(……?)
声に反応して見れば、確かにそれくらいの年代。おそらくは自分と同い年くらいだろう少年が、何故か肩にアンティーク人形のようなものを乗せている。
(十人十色とは言ったものね…)
十人いれば十通りの考えがあるように、十人いれば十人分の趣味がある。きっとあの少年は肩に人形を乗せて歩く趣味でもあるのだろうと思ったが…ふと、その人形と目が合った気がした。
(…人形なのに、目が合った?……?)
少年の肩に乗っているのは、どう見ても人形だ。サイズ的にそうとしか考えられない。
なのに、目が合ってしまった。
「お話の途中ですみません。あの、兄さん。この方も依頼したい事があるみたいなんですけど…」
きっと気のせいだ。人形と目が合うなんて有り得ない。
そう思って視線を武彦に戻すと、零がおずおずと「どうしましょう?」といった表情で武彦に意見を求めてきた。
「どっかの誰かさんが持ってきたような無理な依頼じゃないなら、俺は断然そっちを優先するがな」
「頼りない怪奇探偵ね。人探しもできないなんて」
「夢の中に出てきた人間を探せって言われてもなぁ、俺はそいつを見た訳じゃないから探すにも探せないんだよ。写真すらないんだろ?他をあたってくれ」
「写真はないわ。でも…」
もう一度、視線を少年の肩の人形に切り替えた。
…似ている。よくよくその人形を見ると、夢の中に出てきたあの少女にそっくりだ。
「でも、あーいう感じよ。あの人形と似ているわ」
「はぁ?」
思うがままに、天音は少年の肩の位置に向けて指を差す。武彦も、つられて零も指された箇所を見はするが…そこに、人形なんてない。
「だから、そこの少年の肩に乗ってる人形に似ているのよ。何度も言わせないで」
「何言ってるんだよ。人形なんてないぜ?大体、男が人形を肩に乗せて歩くハズがないだろう」
「貴方こそ何言ってるのよ。あの少年の肩に乗ってるのは、サイズ的に人形よ。ちゃんと乗ってるじゃない」
「あの…私にも見えませんが…」
「…見えない?」
武彦にも零にも、少年の肩に乗っている人形の姿は見えていないらしい。自分にはハッキリと見えているのに、どうして?
「あんた…こいつが見えてるのか?」
『うそーっ?!目が合ったと思ったの、気のせいじゃなかったんだー!!』
天音のその言葉に一番驚いていたのは、人形を肩に乗せている本人。そして…人形だとばかり思っていた、未だ少年の肩から離れない謎の生命体。
「ハッキリとね。それがどうしたのよ?」
「いや、今までこいつの姿が見えた人なんていなかったから驚いただけだ。気に障った言い方なら謝る。……ミシェル、まさか彼女は関係者か?」
「?」
ミシェルと呼ばれた謎の生命体は、少年の言葉のすぐ後に天音をジッと見つめた。夢の中で自分が少女を凝視したように、このミシェルという生命体は自分を凝視している。
(…このミシェルって子……似ているって言うより…)
同じだ。
似ているを通り越して、同じなのだ。
『………んーん。この子からは何も感じない。人形とは無関係だわ』
たっぷり間をあけて、ミシェルはそう答えた。ミシェルが感じたのは、天音のボーっとしているのかそうでないのか、分かりにくい雰囲気だけだ。
「私の話はもういいわ。もう、見つかったから。だから、これで終わり」
どうぞ怪奇探偵殿と話して下さいと、天音はそう言う代わりにソファーの端によって少年が座れるスペースを作った。次いで自分に淹れられたコーヒーを口にして、一息つく。
「おい。終わったなら帰るなりなんなりしろよ?まさか話を聞いていくつもりか?」
「そのつもりだけど?」
どんな依頼なのかも分からないのに、それを関係の無い人間に聞かれるのは依頼人からすれば迷惑行為だろうし、嫌がって話したがらないかもしれない。だが、天音はコーヒーを飲んで動こうとはしない。
「オレは構いません。こいつが見えてるみたいですから、もしかしたら何か手掛かりが掴みやすくなるかもしれませんし」
「…なら良いが。…で、何を依頼したいんだ?」
「はい。…オレは藤城 春也(ふじしろ はるや)です。草間さんに探してほしいものがあります」
「失せ物か。…何を探してほしい?」
「探してほしいのは―――一体の人形です。…草間さんは、『青い目の人形』をご存知ですか?」
「青い目をした人形か?そんなの探せばどこにでもあるだろう」
「そうではなく、アメリカから日本に贈られた人形の事です」
―――『青い目の人形』…それは、1927年にシドニー・ギューリック氏が冷めていく母国のアメリカと日本の関係を心配し、両国民の気持ちの橋渡しができないかと提案したもので、『人形計画』とも呼ばれている。現存する記録によれば、実に1万2700体もの青い目の人形がアメリカから日本に贈られ、日本からもそのお返しにと58体の三折り人形が贈られたのだが…14年後、不幸な事に両国は戦争を起こしてしまう。それぞれが贈りあった人形は、戦火や様々な理由で失われてしまい、戦後、確認された人形はアメリカ側が約30体、日本側が約200体のみ。
「草間さんにはミシェルの姿は見えないでしょうが…今、俺の肩にはミシェルが座っています。ミシェルは魂だけの存在で、俺以外には見えません。…彼女だけには見えているようですが」
チラリと、春也は一瞬だけ天音に視線を送った。一瞬後には視線を武彦に戻すと、続けて話す。
「ミシェルは、その青い目の人形の一つです」
「その本体を俺に探せと?」
「いえ、ミシェルの本体はオレの家に保管されています。草間さんに探してほしいのは…ミシェルと共に日本に贈られた、日本人の容姿をした人形です」
「変な話ね。日本に贈られたのは青い目の人形でしょう?それがどうして日本人の容姿なのかしら」
今まで話を聞くだけだったが、この時は天音も声に出して尋ねていた。確かに天音の言う通りだ。贈られた人形は金の髪に青い瞳。それが、どうして日本人の容姿をした人形まで一緒に贈られたのだろう?それでは「青い目の人形」という言葉は間違っているのではないか。
答えは、すぐに春也の口から語られた。
「…その人形を作ったのが日本人だったんです。そして、ミシェルとその人形は同時に作られた恋人同士。二体で一つの人形なんです」
『―――お願い、レンを探して!お願いっ…!レンに、もう一度会いたいのっ!!』
武彦に姿は見えていないはずなのに、声だって届いていないはずなのに、ミシェルはそれでも構わないと必死になって叫んだ。
「…やっぱり、貴方がそうだったのね」
夢の中の少女と、春也の肩に乗っているミシェル…同じなのではないかと思ったが、どうやら本当に同一人物だったようだ。夢の中の少女と同じ言葉まで口にしているのだから、確定だろう。
「口を挟むけど…ミシェルって言ったわね?私は暁 天音よ。…貴方、私の夢の中に出て来たのよね。そして今と全く同じ言葉を私に言い放ったわ。勝手に(夢の中に)侵入して一方的に要求を突きつけるのは強盗のする事よ?慰謝料を請求するわ。…金が無ければ(私の助手として)その体で払いなさい」
唐突に、天音はミシェルに向けてそう言った。言われたミシェルはもちろん、天音の言葉を聞いていた春也も武彦も零も、「何を言っているんだ?」という表情で天音の様子を窺った。だが、天音の表情は無表情。本気でそう思っているのか、冗談で言っているのか分からない。
『な…何よっ!私がいつあんたの夢に出たっていうのよ!そんなの知らないわよ!!それに、それに…!レンに本当に会えるんだったら、体ででも何ででも払ってやるわよっっ!!!!』
「………」
『…ちょっと。何とか言いなさいよ。そっちから言ってきたのよ』
「その言葉、本当ね?」
『え?』
「本当に会えたら、体ででも何ででも払ってくれるのね?」
『…本当に会えるなら、ね』
「そう。…なら、会えた時には体でも貰いましょうか。もちろん、人形本体の事よ。ミシェルの人形本体を成功報酬として貰うわ」
『は…?え?……それはつまり、一緒にレンを探してくれるっていう事っ?!』
「成功報酬として、ミシェルの人形本体が貰えるなら」
アンティーク人形自体が値の張るものが多いのだ。それが「青い目の人形」ならばどうだろう?その貴重さもあって、かなり価値のある人形のはずだ。コレクターに売りつければ良い値になるのは間違いないだろう。
天音はそこに目をつけた。
『……女に二言はないわ!手伝ってくれて、レンに会えたら…その後は私の本体をあんたにあげるわよ。良いわよね、春也』
「…オレに聞くな。お前の本体は祖父のものなんだ」
『でも、おじいさんから譲り受けたじゃない!今は春也のもののはずよ』
「………それで良いのか?祖父・オレと手に渡ったが、もともとはお前の人形だ。本当に良いのか?」
『良いわ。レンに会える可能性が広がっただけでも、十分な価値があるもの』
「そうか…なら、これ以上は何も言わない。…あんたがミシェルの人形をどうするつもりなのかは知らないが、もしも探していた人形が見つかった場合はミシェルの人形をやる」
見えていない武彦達からすれば春也の独り言にしか聞こえないのだろうが、見えている天音からすればちゃんとした春也とミシェルの会話だ。天音は春也の答えに満足して、「交渉成立ね」と呟くとミシェルに向かって手を差し出す。
「一応よろしく。報酬があるなら見捨てたりしないから安心して」
『あんた、女の子なのにお金大好きなのね。…ま、私が見てきた人間よりかは良い人だって思う事にするわ』
天音は変わらず無表情のままで、ミシェルはまるで挑戦者のようなどこか輝いた表情で互いの手を取り合った。
「なんとも微妙だが…協力者ができたみたいだな。じゃ、その人形の詳しい話を聞かせてもらおうか」
タバコに火を付けながら、武彦はペンと手帳を取り出した。
「はい。その人形の名前はレン。製作者の名前もレンです。『青い目の人形計画』で、ミシェルと共に日本に贈られてきた人形です。髪色も瞳も黒、典型的な日本人の容姿で…」
「で?」
「…これしか、情報がありません」
「やけに少ない情報だな…ま、やってみるだけやってみるさ。確実に見つけられる保証はしないが、引き受けた」
「有難うございます。宜しくお願いします」




■■■




「それで貴女は誰?ミシェルっていう名前は分かったけど、それ以上は話してなかったわよね?」
草間興信所前。
用事を済ませた天音達は外に出たのだが、聞くタイミングを失っていた質問を天音は春也の肩に座るミシェルに聞いた。
『そうだったわね。じゃ、改めて…私はミシェル・クラームよ。17のときに病気で死んじゃって、気が付いたら人形の中にいたの。いわゆる、魂の憑依ってやつね』
「なら、どうして夢の中に出てきたの?さっきは知らないって言ってたけど」
『本当に知らないわよ。でも…今まで私の姿って、人形所持者である春也にしか見えなかったのよね。天音に私の姿が見えるのは、その夢が原因かもしれないわね』
「夢を見なかったらココに来なかったろうし…そうかもしれないわね。じゃあ、年齢は?17っていうのはサバ読みすぎでしょ?没後数十年足しなさい」
『う、うるさいわねっ!私は17よ!誰がなんと言おうとも、心も体も17なの!』
「…あと少しで三桁ね」
女の子だからと言うべきなのか、ミシェルは年齢を答えようとはしない。確かに17で死んでいるのだから17だと言ってもおかしくはないが、数十年の刻を過ごしているのも事実なのでその年数を足してもおかしくはない。だが、そうなると17ではなく…天音の言葉通り、もうすぐ三桁の大台だ。
『私は17なの!ほら、他には何かないの?』
「…それじゃあ、ミシェルが会いたいっていう人について。人っていうか、探すのは人形だけど。とにかく、レンについて話してほしいんだけど?」
『レン…?……レンはね、私の恋人なの。本当の恋人。レンが私の為に、お互いの姿にそっくりな人形を作ってくれたの』
人形の製作者と人形を贈られた者は恋人同士で、作られた人形もまた恋人同士だった。
二人で一人、二体で一つ。
そんな関係だったが…
『…私もレンも、愛し合っていたのに…っ!』
二人は引き離され、それから暫くして二体も引き離されてしまった。
『……今はこれだけ。後は…もう少し時間が経ってから話すわ。必ず話す。天音は協力者だもの。でも…今は、これ以上は聞かないで』


「あぁっ!二人とも見つけたっ!!」


辺りはしんみりした雰囲気だった。決して暗くはなく、けれども明るすぎない雰囲気だったはずが…突然聞こえてきた誰かのその一声で、この場の雰囲気はぶち壊されてしまった。
「?」
怒るつもりなんて全くないが…はて、この声はどこから聞こえてきたのだろう?天音は辺りを見回してみるが、声の持ち主らしき人物は見当たらない。
「しかも女の子と一緒にいる〜っ!」
もう一度聞こえてきた声は頭上から投げかけられたような気がして…
「……天使」
見上げれば、視線の先には純白の翼を背にもった天使がいた。
その天使はバサバサと羽根を羽ばたかせながら、ゆっくりと下に降りてくる。
「この女の子って、ハルくんのお友達?」
「リューイか。…まぁ、似たようなものだ」
「ね、この子って私の姿見えてるかな??見えてるならお友達になりたーい♪」
どうやら春也の知り合いらしい。急な天使の登場に驚かないあたり、この天使はいつも突然現れるのだろう。ミシェルも動じていない。それにしても……やけにテンションの高い天使である。天使は春也の隣にいた天音を見つけると、目を輝かせていた。
「この天使も、人形探しの協力者…とは言わないわよね?」
「うわっ、凄い!ね、ね、今のって私の姿が見えてるって事だよね、ハルくん!」
「…だろうな」
「やった!!私はリューイ。貴方の名前は??」
「…暁 天音よ」
「じゃあ天音ちゃんね!今から私たちもお友達ね〜!」
「………」
現れたのは突然だったが、彼女…リューイの発言も突然だった。会って数秒で「今からお友達!」なんて言われた事のない天音は、さすがに呆っ気にとられたような顔をしてしまう。
「……そうね、それも良いかもしれないわね」
この天使、写真を撮ったら写るかしら?写ったら…いくらで売れるかしら?
…実は頭の中ではそんな事を考えていた天音だが、そんな事を考えているなど知らないリューイは子供のようにはしゃいでいる。
「リューイ、暁にはミシェルの姿が見えている。…レン探し、暁も手伝ってくれるらしい」
「そうなの?そっかー。天音ちゃんも手伝ってくれるんだね!ありがと!」
嬉々としてリューイは天音の手を握ってくるが、春也の言葉に疑問が浮かぶ。
レン探しを手伝うとは言ったが、春也とミシェルがレン探しをしている事をリューイも知っているのだろうか?リューイの口振りからはそうとれる。
「リューイも探しているの?レンって人形」
「直接的には手伝えないけど、まぁ、一緒にいる事は多いよー。私ね、神様の命令で人間界に降りてきてるの」
リューイが言うには、昇天してこないミシェルの魂を神様が気にしてリューイを監視役につけたらしい。ミシェルが昇天できないのはレンが関わっているのだろう。それは容易に想像できる。実際、その通りらしく、神様が定めた期間内にミシェルの魂が消滅してしまわないように、そして期間内にレンを見つけられなかったら強制昇天させる為にリューイは降りてきたのだと、分かりやすく説明してくれた。
(…期限つきか…)

「……天音ちゃんは、気付くかな?」
チラリと、リューイは何処かを見やって小さな声で呟く。春也にすら聞こえない位、小さな声で。
リューイの視線の先には…影が、ある。それは人間の人影で、それは先程からこちらの様子を窺っていて……でも、ただそれだけの影だ。
「さて、…今日はこれで帰るわ。早速調べに取り掛かりたいし。また、会いましょう」
『えぇ!じゃあね、天音』
「天音ちゃん帰っちゃうの?バイバーイ!」
「…またな」
それぞれ分かれの言葉を告げると、天音はこの場から立ち去った。









「協力者の登場…ね。さて……あの子はどんな事をしてくれるのやら」
影が動いた。
その影は天音とは反対方向に向かいながら呟く。
「最後まで、見届けさせてもらいますよ」
そう言って背中の向こう側の天音達に対し、軽く手を振って―――影は消えた。


物語が歩き始めた。
一人の少女が加わった事で、物語は確実に一歩を進んだのだ。


―――全ては、始まったばかり……








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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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PC
≪6920・暁 天音(あかつき あまね)・女・17歳・極貧錬金術師≫

NPC
≪藤城 春也(ふじしろ はるや)・男・17歳・学生≫
≪ミシェル=クラーム・女・永遠の17歳・魂だけの存在、霊体≫
≪リューイ・女・18歳・天使≫
≪見届ける者(みとどけるもの)・24歳・≫

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■         ライター通信          ■
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初めまして!朝比奈 廻です。この度はご参加有難うございました!
恋愛という事で、頑張って書かせて頂きます!第一話にあたる今回はさすがに出会い編なので何とも言えませんが、今後はプレイング次第で接し方とか変わってきますので、頑張って下さい!
では、有難うございました!楽しんで頂けましたのならば幸いです。次回がありましたら、どうぞ宜しくお願いします。

朝比奈 廻