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サクラウタ
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０．オープニング
「うっわぁ。すっご〜い…」
大木の周りを荒れ舞う桃色を目の当たりにして、驚愕する萌。
「…確かにな」
荒れ舞っている桃色、その実態は「桜」
桜の花びらが。どこからともなく溢れて周囲を桃に染めている。
しかし、妙な光景だ。
まるで、桜が この大木を護っているかのような…。
「で？どーすんの？ディテクター」
萌に問われ、言葉を返す事なく。
俺は大木に向けて銃を構える。
チャキッ―
「えっ！ちょ、ちょっと！」
幹か。枝か。それとも、別所か。
先ず、この桜吹雪の出所を探る必要がある。
という訳で、とりあえず大木と話してみようと。思った次第だ。
「待った待った待ったぁぁっ！！」
ドカッ―
全身でタックルして、俺を阻む萌。
「…何だ」
「いきなり それはないよ！可哀想じゃないかっ！」
背伸びをして胸倉に掴みかかり、真剣に訴える萌。
バシッと 萌の手を払い、襟を整え。吐く、ごもっともな台詞。
「…じゃあ、どうするんだ」
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１.
今年もまた、心待ちにするは、桜の季節。
うん…春が、もう、すぐそこまで来てます。
うん…もう少し。もう少し…。
目を伏せ、優しい春風に笑みを浮かべ街を散策する私。
大好きな季節の接近に、心躍る今日この頃。
「ん…？」
春風に混じって、鼻を擽る不思議な香り。
何だろう。何だか、懐かしい…。
私は、その香りに誘われるように。
街の外れへ外れへ…歩いて行く。
少し離れてはいるけれど、
それでも十分に理解る、大きな桜の樹。
その存在感に、私はポカンと口を開けたまま思う。
こんな所に、桜なんて…あったかしら？
「あれ？あっ！アリスちゃんだ。アリスちゃーん！」
ポケッとしていた私に、声が掛かる。
声を掛けてきたのは、萌さん。
手を振りながら駆け寄ってくる萌さんの姿が視界に飛び込み、
私は ハッと我に返って、ペコリと御辞儀をする。
「どうしたの？近くに用事？」
ニコッと微笑んで言う萌さん。
私は微笑み返して、言う。
「いえ。何だか、呼ばれたような気がして…」
「え？私に？」
キョトンとして言う萌さん。
私はクスッと笑い、首をフルフルと左右に振って、桜の樹を指差す。
「あの桜の樹に、です」
萌さんは私が指差した方向を辿るように見やって、
ちょっと、はにかんだ笑顔で言った。
「ん〜。正直、ちょっと困ってるんだよね」
「確かに…すごい桜吹雪ですね」
私が言うと、萌さんはウンウンと頷く。
遠くにいる男性を見やって、私は思う。
なるほど。あの方と一緒に、解決しようとしてるんですね。
この、桜吹雪を。
「お手伝いしますよ」
淡く微笑んで言う私。
「あ、ほんと？助かるよ。ありがと〜。あっ、でも何か用事があったんじゃないの？」
「いいえ。散歩していただけですから。ね？アンジェラ姉さん」
私が振り返って言うと、フッと姿を現したアンジェラ姉さんが、コクリと頷く。
「あれ…お姉さん、いたっけ？」
突然姿を現したアンジェラ姉さんに少し驚きつつ、言う萌さん。
私はフフッと笑い、「はい」と頷いた。
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２．
桜の樹と御話するのが、一番確実ですよね。
何かを望み事があるのなら、叶えてあげたいですし。
スッと桜の樹に向かって歩み始める私。
「あっ、ちょっと待って。アリスちゃん、無闇に近寄ったら…」
「怪我するぞ」
口々に警告する萌さんと、探偵さん。
私はニコッと微笑み、「大丈夫ですよ」と歩み続ける。
一歩近付く度に、桜吹雪の激しさが増していく。
まるで、近寄るなと言っているかのよう。
何だか、悲しいですね…。
アンジェラ姉さんが襲いくる桜吹雪を阻む為、
花びらは、私の体に当たる事はない。
どんなに強く吹き付けても。決して。決して。
そっと桜の樹に手を添えて、私は謳う。
あなたの望みは、何ですか？
あなたの望みは、何ですか？
うん…勘違いしないで下さいね。
私は、迷惑だなんて、思っていませんよ。
むしろ、嬉しく思うんです。
だって、こんなに早く、桜を見られるなんて思っていなかったから。
とても、とても綺麗ですよ。
あなたは、とても綺麗。
羨ましいくらい、綺麗です。
でもね。
涙にも見えるんです。それはもう鮮やかな、桃色の…。
私の気のせいなのかな？
そんな事ないのかな？
大好きな、あなたの事、もっと、ちゃんと知りたいから。
聞かせてくれませんか。あなたの、想いを。
「萌さん、探偵さん」
タタッと二人に駆け寄り、私は伝える。桜の想いを。
「…なるほどな」
「オッケー。任せて〜！」
私伝いに桜の想い、真実を理解した二人は快く協力を承諾。
「では、早速…」
私は微笑み、手を組んで。そっと口ずさむ。
奏でるは、優しく美しき…風の謳。
あなたを癒す、光の謳。
柔らかな風が、フワリと桜の樹を包み込む。
その光景に、一瞬見惚れる萌さんと。
「へぇ。大したもんだ」
そう言って銃を構える探偵さん。
「…来ます！」
邪悪な気配を察知した私は、桜の樹を癒し続けながら叫ぶ。
四方八方から飛んで来る邪鳥”サルハ”
許しませんよ。弱った桜の樹を甚振るなんて。
もう、二度と。
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３．
桜吹雪は、あなたの記憶。
遠い遠い、あなたの記憶。
人知れず、病んでいた あなた。
誰に助けを乞う事なく。ただ、ひっそりと息絶えた…あなたの記憶。
「って事は〜。さっきの鳥も、幻影って事？」
萌さんがキョトンとしながら言った。
私はコクリと頷く。
そう。今はもう、この世に存在しない幻影。
邪鳥も、この、桜の樹も。
スッと見上げると、桜吹雪をピタリと止めて。
桜の樹が、ゆっくりと消えて行く。
そう。あなたは、苦しんでいた。ずっと、ずっと。
気が遠くなる程、長い間。ずっと。
数百年前、病んだあなたは、襲われた。
邪悪な鳥”サルハ”に。
宿らせた桜を全て放って抵抗したけれど。
敵わず。芽吹く力を奪われたあなたは、そのまま、息絶えた。
毎年、自分を見上げる人々の微笑み。
その幸福を奪われたまま。
呼ばれたような気がしたのは、勘違いじゃなかった。
ごめんね。遅くなって。もっと、もっと早く。
あなたを癒してあげる事ができたら…。
「おい。これ…」
萌さんと二人、消え行く桜の樹を見やっていると、
探偵さんが、しゃがんで言った。
「なになに？…あっ」
ヒョイッと覗き込んだ先にあったのは、小さな芽。
私は微笑み、謳う。
期待を込めた、光の謳を。
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登場人物（この物語に登場した人物の一覧）
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【 整理番号 / ＰＣ名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
6047 / アリス・ルシファール （ありす・るしふぁーる） / ♀ / 13歳 / 時空管理維持局特殊執務官・魔操の奏者
ＮＰＣ / ディテクター / ♂ / 30歳 / ＩＯ２エージェント
ＮＰＣ / 茂枝・萌 （しげえだ・もえ） / ♀ / 14歳 / ＩＯ２エージェント ＮＩＮＪＡ
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ライター通信
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こんにちは。はじめまして。発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
アリスちゃん可愛いです。殺人的な可愛さです。
見た目もですが、能力や口調、性格、もう、全てが可憐。降参です（笑）
気に入って頂ければ幸いです。よろしければ また お願い致します＾＾
2007/03/23 椎葉 あずま
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