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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


花見に行きましょう 2007

 3月末、ポカポカ陽気の洗濯日和。が、様々な温度の変化で、桜前線は4月あたりかそれより早くか分からない。
 あやかし荘管理人因幡恵美は、洗濯物を干している。嬉璃はぬくぬく縁側でひなたぼっこ。
 いつの間にか居る猫の草間焔。
 そろそろ本当の春も近い。
 あやかし荘にある桜が、桜前線の予想より早くか遅くか分からないが、少しずつ綺麗な花を咲かせている。
「そろそろあの時期ぢゃな」
「ええ、そうね、嬉璃ちゃん」
 ふたりはにっこりと微笑む。
「花見をするべく皆を呼ぼうぢゃないか」
「はい、場所は大所帯を考えて近くの桜並木公園が良いでしょう」
「うむ。今から楽しみぢゃ」
 桜は数日もすれば満開になるだろう。心躍る良い天気である。


〈裕介と樟葉と?〉
 田中・裕介が住んでいるマンションの一室。古ぼけたサイズが立てかけられていた。大鎌ががたがたとうるさい。
「なにか、不吉なことでもあるのか?」
 田中裕介は、契約武器の大鎌が異常なほど動いていることに驚きを隠せないでいる。しかし、なぜか、遊びに来ていた静修院樟葉が部屋を覗くと、すぐに収まった。
「? なんだったんだ?」
「闘気ではない、何かに反応したのでしょうね?」
「なんですか? それは?」
「春の暖かさ? ほら、新芽萌える時よ?」
 しれっと、言う。
 確かにこの鎌の素材は世界樹一部とも言うべき物、つまりは植物だ。季節の変わり目にふるえても不思議ではないかもしれない。
「……。先輩がそう言うなら……まあ、いいですが。」
 契約してから云とも寸とも言わないこの鎌が、動くことが奇妙だったが、ふと、気づく。
「暫く使っていないから、拗ねているのか? 季節に関わりなく。」
「それもいえるかもね。しかし其れを使う事がない世の中が良いと思うわ?」
 樟葉は微笑んだ。
 たしかに、平和な世の中がよい。しかし、事件がないと何かつまらない。結構微妙なものだ。
「そうそう、あやかし荘で花見をするそうですよ? 今の彼女を連れて花見見物というのはどう?」
 話を切り替えるため、樟葉が両手の平を軽く叩いて、ニヤニヤしながら裕介に言った。ニヤニヤというかニヨニヨがふさわしい笑いだったが。
「お節介真無用です! とはいっても、それも良いかも。」
 と、裕介は鎌を片づけ、心なしかスキップしている感じで部屋を出た。
 暫くして、
「まったく、翁さん。不用意ですよ。」
「……む、すまぬ。いかんせん虫食いが怖くてのう。」
「それより、春の暖かさにぼけたのかしら?」
「……。」
 どうも樟葉には弱いらしい。
「まあ、こういう時期ですから、思い人に会いたいのは分かりますけど? どうするのです? いくら不可視でも、裕介が2匹になるととんでもなくなります。」
「匹……! なんと、儂もナマモノ扱いか?」
「そうじゃなくて?」
「……。」
 其れはアレが決めることだろ。と、突っ込みたいが、やめておく。
「そのことについてだが、樟葉よ。頼みがある。」
 と、樟葉に耳打ち(?)する大鎌の翁であった。


〈集合〉
 幸い当日は晴れて、風もそれほどきつくなかった。もっとも、この霊山に影響及ぼすほどの風が来るのか不明だが。あやかし荘に通じる山道と一般道がつながる場所に、大仰な檻のトラック二台が止まっていた。柴樹・紗枝とアレーヌ・ルシフェルがその周りで立っている。サーカスの衣装ではなく、普段来ても違和感のない春を感じさせるジャケットにパンツルックである。
「ミリーが私たちを誘うなんて、珍しいわね。」
「ですわねぇ。無口であまり人と関わりないのに。」
 同僚の2人はミリーシャの誘いに驚いた。
 電話越しで、嬉璃から「柴樹は動物使いぢゃろ? なら、敷地内で猛獣ショーでもしてくれないか」とかも言われ、今の檻付きトラックがあるわけである。
「中の2人、出たがっているね?」
 折から猛獣の咆吼が聞こえる。
 白虎・轟牙というホワイトタイガーと、百獣・レオンというライオンが入っている。柴樹が「出かける」と聞いたので、わくわくしているのだ。あと、獣の本能で、このあやかし荘の立つ霊山に何かを感じるらしい。
「はいはい、落ち着いて。」
「がるるるる(檻から出たいー)」
 そう言うやりとりをしていると、あやかし荘の道から、ミリーシャがやってきた。
「……おはよう……。」
「おはよう! お招きありがとね!」
 同僚とのやりとり。
 そして、続々参加者がやってくるのだが、まずはこの大仰なトラックに驚いてしまう。無理はない。
「な? 何が居るんだ? トラ?」
「ライオンもいる!」
「移動動物園? それなら、ウサギや山羊やら、フェレットじゃないのか?」
 蓮也と狂華、天空剣門下生数名は目を丸くしている。狂華は檻に近づいて、まじまじと見ている。零も此処まで間近に純粋な動物を視ていないので、驚きを隠していない。
「面白い参加者ね。居間まで小動物は居たけど、此処まで大きな動物はいなかったわ。」
 シュラインも驚いていた。
「いや、しかしどうする? 噛み付かないか? 大事になるぞ?」
 草間は安全性に不安を覚えた。
 柴樹は胸を張って、
「安全、この子達は、しっかりしつけているから!」
 と、自信満々に答えた。
 猛獣使いの言うことであるが……。イレギュラーは居る。イレギュラーの代表は言わずともお察しだろうが。
「大丈夫、噛み付かないから撫でて良いよ。」
「ほんと?!」
 お、檻越しだが、狂華は白虎を撫でる。白虎は猫特有の“喉撫で声”で鳴いた。
「かわいいなぁ。」
 影斬は渋い顔をしているのだが、撫子が笑って。
「大丈夫とおもいますから、義明くん。」
「む、いや、別にあやかし荘にはいるのは良いのだけど。このままだと、別の意味で人だかりができる。はやく彼らをあやかし荘に入れよう。」
「あ、そうだ! 野次馬来たら大変だものね!」
「新聞のネタになったら大変だ。」
 2頭の猛獣をトラックから降ろすと、その2頭は行儀良く“お座り”してから、柴樹の指示通りに山道を歩くのであった。非常によく訓練されている。
 しかし、白虎がいきなり止まる。
「どうしたの?」
 柴樹が不安そうになる。白虎が苦しんでいるのだ。
「うががが……。っぺ(何か喉に!)」
 と、吠えると、なかから小麦色の丸い毛玉が転がり落ちた。その物体は、不気味に動き出し、手足が生え、しっぽが飛び出てある形の生物になる。
|Д゚) うはよー
 かわうそ?だった。
「また妙な出方して! 初めての人が驚くじゃないか!」
 蓮也と狂華が小麦色を小突いた。
|Д゚) 気分
|Д゚) いよー、かわうそ? の かわうそ? なのだ
「気分でもしゃれにならない!」
 蓮也の脳天チョップ。
|Д゚) 痛い
 気を取り直し、お互い挨拶と世間話をしながら、目的地に向かって行った。 小柄の狂華は、白虎に乗せられて進んでいた。

 少し遅れて、榊船亜真知と黒榊魅月姫がやってくる。もちろんトラックがあるので首をかしげる。
「何か居るのでしょうか?」
「かなり大きな動物みたいね。」
 と、先を進む。
 少し楽しそうなことが起こりそうで、でわくわくする。
 反対方向からは響カスミがやってきた。
「これはおはようございます。先生。」
 亜真知は深々とお辞儀をして、挨拶をする。
「はい、おはよう。榊船さん。そちらは?」
「黒榊魅月姫です。従妹になります。」
「はじめまして。」
「はい、初めまして。」
 顔見知りであるので、雑談をしながら、あやかし荘に向かった先で、猛獣がまったり寝そべっているところを、亜真知達が驚く事に無理はなく、カスミは気絶してしまうハプニングが起こったのは言うまでもない。
柴樹「さすがに無理があったのかなぁ?」
|Д゚) さぁ?

 田中裕介と星月麗花が歩いて来た。
「気持ちが良い日ですね。私はまた麗花さんと一緒に花見ができることが嬉しいです。」
 裕介は微笑みながら麗花に言う。
「べ、べつにわ、わたしは暇じゃないんですけど! えっと、猊下が珍しくまじめにお仕事してくれたおかげで、私、休暇が取れて、だから、あやかし荘のお花見はいつもの事だから、行くだけです! 田中さん、其れをお忘れ無く!」
 と、何に緊張しているのか、どもりながら麗花は食ってかかっていた。
 フンとそっぽを向く麗花の耳は赤くなっていた。
 その照れ具合が裕介にはたまらないらしい。
 当然、麗花も裕介も、目の前のトラックを不思議に思いながら、あやかし荘に進んで、あとはご想像の通りのパニックになるわけである。
嬉璃「サプライズ、楽しいぢゃろ?」
裕介「心臓に悪いですよ。」


 デルフェスと樟葉、翁(鎌の状態)はすでにあやかし荘にいたので、こういった被害はなかった。
 ミリーシャから
「レオン……と……白虎……。あ、ライオン……とトラの……名前。彼ら……くる」と聞かされていたのだ。
「何か楽しい、お花見になりそうですねわ。」
「大問題が怒る前触れじゃない?」
 そうそう驚くこともない。
 現れた猛獣に、興味が湧くぐらいだった。
 樟葉煮だけ聞こえる声で、翁は囁く。
「では、儂は静香と……。」
「はい、ごゆっくり♪」
 と、翁はどこかに去っていった。
 もちろん気づいているのは、樟葉以外誰もいない。


〈開始〉
 ある程度、そろったところで、綺麗になっている桜林にたどり着いた。かなり広くてゆったりできる。既に、レジャーシートも敷いてあり、その場で三下と、歌姫が座って、皿などを確認していた。
「おお、未開の地のオアシスって感じで良いかも!」
 と、誰かが言う。
「遭難するとか無いことが幸いだ。」
 草間が苦笑した。
「じつは三下さんが一度遭難を……。」
 恵美が、隅っこの方で苦笑している三下に目を向けた。
「さすが三下さんだ。」
 若い衆が頷く。
「もう、三下ってトコトンついてないですわねぇ!」
 アレーヌが呆れていた。
 さて、小麦色はカメラを手に取る。
|Д゚) はい、試し撮り。ちーず
「ちーず!」
 と、ノリノリな人は乗って写真に納められていた。

「さて、お弁当拡げて準備しましょう!」
 恵美が一声あげると、おー! と喝采が上がり準備が始まった。
 撫子と狂華、恵美は一度あやかし荘の台所に戻って仕上げに取りかかるという。シュラインとデルフェス達はてきぱきとパックを皆がとりやすいように並べていった。
 こういうときに力がある男衆と猛獣は役に立つ。重たい備品などを軽々持つのは影斬と蓮也にビール瓶などを箱にいれてから、台車につなげたレオンと白虎に引っ張らせる。
「がう?(俺たち雑用?)」
|Д゚) ふふふ。(パシャ)
「がるる(なあ、白虎、このカワウソ美味かった?)」
「ぐる……。(不味い)」
|Д゚) がくがくぶるぶる
「がう(なら、口から出て来るな)。」
 撫子と狂華は台所で料理の仕上げをしているとき、
「茜姉(あかねえ)、遅いね?」
「待っているのでしょうね。皇騎ちゃんを。」
「あ、そうか♪」
 狂華も撫子に懐いていた。
「おーい、向こうはだいぶそろったぞ〜? 撫子さんお願いします。」
 蓮也が声をかけた。
「はい、わかりました。行きます。荷物がなければ運ぶのを手伝って頂けませんか?」
「私もしよう。」
 そして、重箱に入った豪華な撫子の重箱が持ち込まれたときには、全員から喝采が上がった。

 誰かが走ってくる。2人分の足音。
「遅れてしまいました! 済みません!」
 宮小路・皇騎だ。その後ろから長谷茜も来る。
「もう、何してたの! 待ち合わせから1時間遅れるなんて!」
「えっと、捲くのに手間取りまして! 済みません!」
 と、喧嘩しながら走ってきている。
「また仕事さぼってるのか……。」
 草間は苦笑していた。
「さて、これでそろいましたね。では、コップに飲み物を注いでください〜。」
 恵美が全員に言う。
|Д゚) 未成年、のんじゃだめお
「お前が飲ませるだろう。」
 と、顔見知りが全員これに突っ込んだ。
|Д゚) かわうそ? そんなことしないもん
 目を潤ませて、言うが……説得力がない。
 全員のコップに飲み物が注がれる。
「では、お花見を始めます! 乾杯!」
「かんぱ〜い!」


〈珍事の前の説明〉
 幸い風は強くなく(あっても蓮也の“傘”が何とかするので問題なく)、暖かい日差しの中での花見。シュラインや撫子、茜、そして蓮也の弁当が並べられており、飲み物も様々にある。日本酒の類が多いのは、持ってくる人間の性格や背景からと思われる。シュラインも草間も酒全般好きのようす(草間は個人的にはウィスキーが良いらしいが、風情という物を大事にしている感がある)だ。もちろん撫子、影斬は日本酒党なのだ。桜の木の下でワインなども良いが(デルフェスが持ってきた)、何となく、日本酒が情緒有って良いだろうと、思う人も多いかもしれない。其れとは話は変わるが、かわうそ?に酒瓶を待たせないようにしっかり固めている。しかし、流石にアレに目を光らせるほど気を張れるわけはなく、結局小麦色の手によって、酔わされ、飛んでもないことになるだろう。あと、ミリーシャが人の3倍は食べたかもしれない。残ることは先ず無いだろう。
 シュラインの作った弁当は、小降りの色々なおにぎりだ。具が、雑魚と紫蘇、青菜など入っている、健康によさそうだ。王道の白ご飯のみもあり、其れを海苔で来るんで食べるわけである。色鮮やかに、卵焼きにブロッコリーなどを添えている。デザートは桜の花びらを塩漬けにしたチーズスフレらしく、これは一寸、能力者に頼み、冷蔵してもらっている。コーヒーとジュースも彼女が持ってきている。
 撫子の弁当はもう豪勢かつ大量なので、色々入っている。一般の門下生が数名いるので、参加者数は、30名以上なのだ。弁当屋に頼んだ方が良いほどの量なので、前日までに仕込んでいた。もちろんそこで蓮也達道場の常連が手伝っているわけである。茜と蓮也の協力がなければ此処までできない。 対大所帯のデザートは亜真知担当だ。和洋折衷にあり、後々楽しみである。

|Д゚) つーか、まあ……
|Д゚) 団子より花!
|Д゚) おにゃーのこよん!

 そこの小麦色が、騒がしいので、説明しよう(かわうそ?「なんと!」)。
 たいていは気ままで、普段着慣れて(町中を恥じることなく歩け、警察にもとがめられる事もない、服装である事を強調しておく)服を着ている人々は多い中、おめかししている女性陣がいる。天薙撫子おとなしめの肝を好んでいるが、更に大人びた着物を着ている。それは、藤色無地の着物にて参加だ、綺麗だが縁の下に居ることを示しているのであろう。逆に亜真知は桜の花弁模様が印象的な着物で、魅月姫は漆黒に白のゴスロリワンピースである。狂華は少しピンクっぽいブラウスに、赤いジャケットにミニスカート、可愛い帽子だった。目を引くことは明らかである。

 各々が、他の人の世話をしたり、一緒にいたい友人と会話していたりと、花見を楽しんでいる。猛獣が居ても其れは全く気にもしなかった(三下は怖がって隅に隠れている)。


〈共通珍事:手品〉
 ある程度、飲んで食べたころ、サーカス集団は嬉璃から言われたことを実行することになった。
「そろそろ始めますか。」
「……うん。」
「まいりますわよー。」
 テントの中ではかなり露出の激しい衣装でやっているのだが、普段着でもできる。
「えでぃーすあんどじぇんとるめん! 本日は我々サーカス団をお招きして頂きありがとう!」
 柴樹紗枝がいつの間にか設置されているステージに上がった。
 様々に話をしている人々が柴樹の方を向いた。柴樹の隣におとなしく白虎とレオンが座っている。
|Д゚) ←設置謎生物
|Д゚) ←これが彼らにマンガ肉もどきを渡している。賄賂らしい。
「ありがとう、かわうそ?」
|Д゚)b
「では、まずは私が彼を使ってショーをごらんあれ!」
|Д゚) 聞いてねぇ!
 と、有無を言わさず大きなマジックボックスに小麦色を詰め込んだ。箱の上から、顔だけ出している状態になる。
|Д゚) きゃー
「大丈夫だ。お前なら。」
「ええ、かわうそ?様、怪我なされませんわ。ええ、それはもう。わたくしが保証しますわ。」
「楽しそうですね。」
 草間や、デルフェスなど、小麦色にからかわれた経験のある者達は、笑いながら言った。
 どういう意味で大丈夫なのかはさておき、
|Д゚) 動物虐待!?
「都合の良い時だけか弱い動物扱いされても困るわ。」
|Д゚) ?!
 そして、柴樹は細剣を数本持ち(そのアシスタントは無口なミリーシャ)、箱に突き立てる。
|Д゚) おう!?
|Д゚) ツボにきくー
「(命中してる?!)」
 柴樹蒼白、しかし、
|Д゚) うそっぷ
 にたりと笑う小麦色を見ると、鞭の音が響いたので、ナマモノは押し黙った。柴樹の顔が一瞬般若に見えたのは気のせいですましておく。
「はい、次参ります!」
 アレーヌと柴樹が交互に何本も突き刺さる中、ナマモノは動じない。
|Д゚) おおお
|Д゚) どどどどどどど
 これは、最終的に“箱”を貫通しているところを見せて、全てを抜いて、箱から対象を出せばなんと無傷、という手品。しかし、この小麦色が“それだけで”済ますわけはない。十数名は、この結果がどうなるか“普通の結果”ではなく、もっと“違う結果”になるのだと確信していた。予想できないとすれば、ナマモノを初めて見たサーカス団の少女達と、魅月姫ぐらいである。
 そして、残り5本のところ……柴樹が剣を箱に刺すと……。
|Д゚) びよーん! 脱出――!
 小麦色は、そのまま大樽に詰められた海賊をナイフで刺して飛び出したら負け、と言うあのゲームと同じ演出をしたのである! しかし飛び方は尋常ではない。かなりの早さで飛んでいった模様だ。
 それは、流石のサーカス団も(ある程度予想はしているが)驚く。ミリーシャも目を丸くしていた。
「えええええ!?」
「おとなしくしてなさいよー! ナマモノ!」
 柴樹とアレーヌは、大声で天高く飛んでいった小麦色を怒鳴っていた。
「流石ナマモノ、唐突さは相変わらずだ。」
|Д゚) ふははは!
|Д゚) あとで柴樹、×ゲーム(ドップラー効果)


〈屋根の上から〉
 桜が舞い散るあやかし荘。その屋根には2人の男女が座っていた。大鎌の・翁と静香である。
「こうして花見が出るのは、良い気持ちじゃ。」
 翁は言う。
「ええ、そうですね。美しい花です。」
「わしとしては、この花見の他におぬしをみて美しいと思っておるが。」
「もう、翁様は。お口が上手。契約者が好色になった影響をうけていることがよく分かります。」
 静香はいきなりのほめ言葉に驚きつつも、頬を膨らまして言い返す。
「む、此はしてやられたか。」
 翁は苦笑した。
「ふふふ。」
 静香は微笑んで、周りを舞う。
「ここははやり、詩で遊びませんか? 私たちなりの桜の遊び方で。」
「そうじゃな。」
 こうして、詩を作り歌い、その返句を詠う遊びに興じる。
 下では、人々が和気藹々と賑やかに花見を楽しんでいる中、この2人の精霊と意識は此もまたゆったりとした時間を過ごしている。
「わたくしは、翁様がこうしてきてくれることで、嬉しいです。」
 静香は微笑みながら翁に言った。
「これは、ワシも嬉しい。静香が愛おしい。」
「ありがとうございます。孤独という寂しさが薄れていく事があります。」
 静香は舞うのをやめ、翁の隣に座り、彼に寄り添った。
「静香……。」
「翁様。」
 お互い手を重ね、心のぬくもりを感じ取る。
 静香の心情世界も、桜色一面であった。
 翁の心情世界も、彼女の世界に似てきた。
 心地よい感覚に、眠気が襲う。
 いつしか翁は眠ってしまった。
「可愛い寝顔です。」
 静香は、翁の髪を梳かしながら、頭を撫でて彼に膝枕をしていた。
「茜の方は上手く言って居るみたいですね……。でも、一寸悲しいです。」
 彼女は呟いた。


〈宴が終わって〉
 夕暮れ時。できあがった人の介抱や、片づけに追われながらも、一段落がつく。しっかりゴミの分別と、掃除をする。酒に酔って石化した人も開放され、酔いは残るも、気分は良いらしい。
 そして既に月夜。それぞれ、思い思い、帰宅するのであった。

 翁が目を覚ます。
「む、眠ってしまったか。」
「はい。たいそうお休みになったようです。」
「そうか。静香の膝枕は気持ちが良いのう。」
「もう。翁様は。」
 クスクス笑う静香に、今度は翁が。
「精霊に足がしびれる云々は置いておき、今度はおぬしの番だ。」
「え? はふぇ!?」
 翁は、軽く静香を抱きしめて、彼女を自分の膝枕に寝かせた。
「はう。恥ずかしいです。」
 真っ赤になっている静香。
「何を言うか。ずうっと膝枕していたのでは、疲れるだろうに。」
 翁は、笑いながら彼女の頭を撫でる。
「もう……。翁様……。」
 既に甘える子供の様な声を出している静香であった。
 翁は静香の髪を手櫛で梳かし、静香もじっとしていた。夜桜が綺麗に映える月夜は幻想的な気分にさせる。翁に、いつ逢えますかとか尋ねている。
「また近いうちに、逢うとしようじゃないか。」
「はい、茜も色々忙しいようです。でも、お願いが。」
「なんじゃ?」
「茜はあなた様を嫌っております。人に好かれるようになってくださいませんか?」
「む、そ、それはど、努力しよう。」
 ――数千年もかけてできた性格なので難しいかもとはおもうがのう。
 やおら静香は起きあがる。
「? どうした?」
「茜が家に着きました。恋人は親御さんの護衛に連行されたみたいですね。」
「よく分かるな。」
「ええ、私の家ですから。」
 微笑む静香だった。
 そのことが今日の別れの時期。
 お互い、また逢うことを確かめて、帰路につくのであった。
「また、今度。じゃな。」

 また春が来れば、こうして花見をしたい。そう願いながら、また、明日を迎えるのである。


END


■登場人物
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生・巫女・天位覚醒者】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【1098 田中・裕介 18 男 孤児院手伝い+なんでも屋】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体…神さま!?】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2213 御柳・狂華 12 女 中学生&禍】
【2276 御影・蓮也 18 男 大学生 概念操者】
【4682 黒榊・魅月姫 999 女 吸血鬼(真祖)/深淵の魔女】
【6040 静修院・樟葉 19 女 妖魔(上級妖魔合体)】
【6788 柴樹・紗枝 17 女 猛獣使い】
【6811 白虎・轟牙 7 ♂ 猛獣使いのパートナー】
【6813 アレーヌ・ルシフェル 17 女 サーカスの団員】
【6814 ミリーシャ・ゾルレグスキー 17 女 サーカスの団員】
【6877 大鎌の・翁 999 男 世界樹の意識】
【6940 百獣・レオン 8 ♂ 猛獣使いのパートナー】

■|Д゚) 通信
|Д゚) おつかれなりよ
|Д゚) いや、結構まったりだったり、騒がしかったり
|Д゚) 久々の大人数
|Д゚) 結構苦労したとか滝照直樹、言ってる
|Д゚) 猛獣いたので、急遽桜並木公園ではなく、あやかし荘敷地内に変更
|Д゚) その方が安全。とおもった。
|Д゚) また、よろしくなり


かわうそ? & 滝照直樹
20070329