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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


VS アクアスネーク

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0.オープニング

「まぁ、今更だけどさ」
溜息混じりに あたしが言うと、少女はキョトンとして言った。
「はい?」
「物好きだよね。あんたって子は」
目を伏せ、クスクスと笑う あたし。
少女は、少しはにかんだ笑顔を返す。
自覚がないわけじゃあないんだよね。この子は。
まぁ、あたしも似たようなもんだし…強くは言えないけれど。
「さぁて…」
目の前でクネクネと動く不気味な巨大蛇を見上げ、
あたしは常連客リストをパラリとめくる。

誰に頼もうかねぇ…。

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1.

ガチャッ―
カランカランと鈴の音が響くと同時に、私は挨拶を。
「こんにちは〜。団長に頼まれて〜…」
言い終える前に、私はクッと息を飲んだ。
目の前でキラキラと輝く青い蛇に…心奪。
「おやおや…これはまた、良い所に来たねぇ」
小さな冊子をパタンと閉じて、私を見やる蓮さん。
私は、目を輝かせて問う。
「何ですかっ。この綺麗なコっ」
少し興奮気味の私。
問うと同時に、私の目は、見慣れぬ少女を捉える。
ちょっとオドオドした少女の姿。
蓮さんの背中にヒョイッと隠れて、私を見やる、その眼差し。
悟った私は、ニコッと微笑み少女に問う。
「御話、聞かせてくれるかな?」


ふむふむ、なるほど。
このコは、あなたの大切なペットなのね。
なるべく手荒な真似はせずに、大人しくさせて欲しい、と。
そして、連れて帰りたい、と。ふむふむ。
私は、腰に手をあて、水蛇を見やりながら少女に問う。
「このコは、普段…何かに封印していたりするのかな?」
私の問いに、少女はコクリと頷き。
ポケットから、小さなガラス玉を取り出して見せる。
オーケー。
いつもは、こんな風に不機嫌っていうか、狂暴じゃないのよね。
何か、不愉快な事でもあったのかしら?
その辺、じっくりと聞きましょうか。ねっ。
スッと鞭を取り出し、構える私。
不安そうに、それを見つめている少女。
私はクスッと笑い、少女の頭をポン、と叩いて言う。
「大丈夫よ。もう、これ以上、あなたが悲しむ顔なんて、私、見たくないもの」

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2.

さてさて…とりあえず、キミの能力といいますか、チカラといいますか。
そこら辺を見せてもらおうかな。
ペチンと床を鞭で叩く私。
すると、叩いた箇所から、ポンポンポンと無数の蛙が飛び出す。
蛙達を見た途端、水蛇の動きは激しくなり。
猛スピードで、蛙達に食らいついた。
ふむふむ。大きさの割に俊敏なのね。
食らわれてはシュウッと煙となって消えていく蛙を見つつ、冷静な私。
「カ、カエルさん…死んじゃってるんですか?」
切なそうに言う少女。
私はクスッと笑い、手をヒラヒラと振って、
”違うよ”のジェスチャーをしつつ、鞭を左右にユラリと揺らす。
黒い鞭の しなる様を、蛇に見立て。
ジワジワと詰め寄り、威嚇する私。
水蛇は、食らったはずの蛙の感触を楽しめぬ事に、少々イラ立っている御様子。
故に、体をクネクネと動かし、私の鞭に容易く翻弄される。
フフッと含み笑いを浮かべる私。
さて、どうしよっか。一気にいっちゃいましょうか?
でも、折角のショータイム。もう少し、ゆっくりと…。
「…きゃっ!!」
余裕で構えていた私。思いがけず、出来てしまった隙。
そこを見逃さず、水蛇はシュルリと私の身体に巻きついた。
「…うんっ」
渾身の力を込めて足掻いても、ビクともしない。
逆に身体は締め付けられていくばかり。
…参っちゃったな。
ギュウッと締め付けられる感覚と痛みに、少し顔を歪める私。
「あっ…ど、どうすればっ…」
蓮さんの服をクイクイと引っ張りながら泣きそうな表情を浮かべる少女。
水蛇は、勝利を確信したかのように眼をギラリと輝かせ、私の喉に舌を這わせる。
カタン、と席を立ち、加勢しようとする蓮さん。
あら、嫌だ。ちょっと。本気?
私が、この位で根を上げるとでも?
冗談じゃないわっ。みくびらないでよ?
クッと口角を上げ、私は目を伏せる。すると。
バチッ―
閃光。
私の身体から、ほとばしる電流。
その衝撃から、ピシッと背筋を伸ばすような体勢になる水蛇。
目を開いては、電流を弱め、水蛇の様子を伺いながら。
何度も何度も、目を伏せ、電流を流す。
眩しさにギュッと固く目を閉じる少女と、
再び椅子に腰を下ろし、淡く微笑む蓮さん。

うん、残念ね。キミの負けよ。
電流が通った事で、少し荒れる水蛇の綺麗な水面。
あぁ…折角、綺麗なのにね。そろそろ、キツいな…。
痛む心に切なさを覚え始めた時。
クタリと私の肩に頭を乗せて、
水蛇は”ゴメンナサイ”と、私に頬ずりをした。

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3.

「大人しく、このコの言う事を聞く?」
優しく撫でながら私が言うと、水蛇はコクコクと頷き、教えてくれた。
不機嫌だった、理由を。
「よしよし。良い子ね。はい、ご褒美よ」
ニコニコと微笑みつつ、水蛇の口元に餌を運ぶ私。
「す、すごいですね…こんなに、あっさりと…」
餌を美味しそうに食べる水蛇に歩み寄りつつ、言う少女。
私はクスッと笑う。そんな事ないのよ。
思いの外、元気でヤンチャだったから、少しだけ。
少しだけ、焦ったんだから。


「ありがとうございました」
深々と頭を下げる少女。
私は微笑みつつ、少し首を傾げて返す。
「どういたしまして。散歩、マメに連れて行ってあげてね」
「はいっ」
少女が多忙だった為、ここ数日、散歩に連れて行ってもらえなかった。
小さなガラス玉の中で、水蛇は嘆いていたの。
とても、とても楽しみにしていたから。
大好きな、あなたとの散歩を。

「ご苦労さん。さすがだねぇ、猛獣使い」
満足そうに微笑む蓮さん。
店を出て行く少女に手を振りつつ、私は笑う。
「報酬は、あの腕時計が良いです」
この間来た時から目をつけていた、水色のオシャレな腕時計。
「好きにしな」
蓮さんの許可が下りた途端、
私は小走りで腕時計が飾られている棚に歩み寄る。
うんうん。やっぱり、凄く綺麗。
こうして見ると、あの水蛇に、ちょっと似てるかも…ね。
…おっとっと。いけない、いけない。
喜んでる場合じゃないわ。目的、これじゃないもの。
「団長が頼んでた”古書”下さいな」
「はいはい」

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

6788 / 柴樹・紗枝 (しばき・さえ) / ♀ / 17歳 / 猛獣使い&奇術師?

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 沢渡・ハルカ (さわたり・はるか) / ♀ / 12歳 / アクアスネークの飼い主


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。

納品が遅れてしまい、申し訳ございません;
気に入って頂ければ幸いです。よろしければ また お願い致します^^

2007/04/06 椎葉 あずま