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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


誓いの銃 -ロスト-

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0.オープニング

まぁ、何度見た所で、状況は変わらない。
俺は、溜息混じりで煙草に火をつけ、天井を見上げる。
ソファに凭れて、目を伏せ辿る記憶。
規則正しく時を刻む針音が、鮮明に聞こえる。
…お前が知ったら、どう思うかな。
フッと脳裏を過ぎった懐かしい声。
あぁ、そうだな。お前は、きっと。こう言うだろう。
”何やってんのよ”
そう、呆れた顔で。頬を膨らませて。
理解ってるよ。俺の不注意だ。弁解の余地はない。
けれど、謝る事はしない。
何故って?
必ず、この手に。取り戻すからさ。

コツコツ―
扉を叩く音で、ハッと我に返り。
俺は来訪者を出迎える。
誰かと確認する事なく。
ガチャッ―

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1.

バタン―
開いたと思った扉が、瞬時に閉まる。
おいおい、何だよ、それ。さすがに、ちょっとヘコむわ。
俺はドカッと扉を蹴り、開けてくれよ、と催促。
ガチャ―
再び開く扉。
扉を開けた部屋の主は、俺の顔を見て、ハァと溜息を落とす。
「近くを通ったんでな。煙草、くれないか。きらしちまってよ」
ディテクターは、眉を寄せつつ、懐から煙草を取り出すと、それを俺に投げやる。
まぁ、普段から、お前さんは無愛想だ。
何考えてんのか、サッパリわかんねぇしな。
けれど、今日は格段に。
「何かあったのか?いつもより、三倍は無愛想だぞ。お前」
取り出した一本を咥え、煙草を投げ返しつつ言う俺。
ディテクターは目を伏せ、ボソリと言う。
「盗られた」
盗られた?何を…言いかけて気付く。
いつも腰元にある、銃がねぇ。
なるほど、そりゃあ三倍無愛想にもなるわな。
「天下のディテクター様から銃を奪うなんて、大した泥棒もいたもんだ」
俺はクックッと笑いつつ、靴を脱ぎズカズカと部屋の中へ。

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2.

豪快に割れた窓ガラス。
…こりゃまた、随分と大胆な手口だな。
これに、お前さんが気付かないわけないよな。
話を聞く限り、シャワーを浴びていた、ほんの十五分程の間に盗られた、と。
お前さんの行動を監視していたか、もしくは、
お前さんの行動を把握してる奴の犯行っつー確立がグンと跳ね上がったわけだな。
「部屋にありました、なんてオチはねぇよな?」
クッと笑い言うと、ディテクターはムッと眉間にシワを寄せる。
わっかんねぇぞ。お前さん、時々ヌけるからな。
気付いていないかもしれないけどよ。盗られた、と思い焦ったが、
ちゃっかり、どっかにしまってた、とか。
そういう可能性、ゼロじゃねぇんだ。っつー訳で。
ガタン―
バタン―
「おい、待て」
ガタン―
「おい」
グイッと首根っこを掴み、手当たり次第部屋を散らかそうとする俺を止めるディテクター。
「冗談だよ。冗談」
ハハッと笑い言うと、ディテクターはパッと手を離し、ハァと溜息を落とした。


ガチャッ―
バタバタバタ―
割れた窓ガラスを調べていると、
突然部屋の扉が開き、けたたましい足音が近付いてくる。
「ディテクター!今、そこで…って。あれ。伊葉さん…だ」
足音の主は、萌だった。
俺の顔を見て、キョトンとしている萌。
俺はツカツカと萌に歩み寄り、微笑んで言う。
「お早うさん。どした、そんな息切らして」
俺の言葉に萌はハッとして。
「銃っ!ディテクターの銃に似たのを持った女の子を見たんだよ!」
おっとぉ。こりゃあ、有力な情報が飛び込んできたなぁ、おい。
萌は、嘘なんてつかねぇし、洞察力も長けてる。
これで、探すの、だいぶ楽になったんじゃねぇか?
クルリと振り返り、良かったなぁと言おうとした時。
グイッ―
「んぁ?」
ディテクターは、俺の腕を引きダッと駆け出す。
うぉぃ。また、唐突な展開だな。
まるで、駆け落ち…冗談じゃねぇって?俺もだよ。

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3.

「なぁ、俺、これから仕事あんだよ。大事な会食」
腕を引かれつつ言う俺。
嘘ではない。これでも都知事だ。仕事は山積み。
けどまぁ、溜め込んでサクッと一気に片付けちまうから、あまり気にする事もない。
あ、会食ってのは嘘だったわ。悪ィ。
だって、お前…また面倒事に巻き込まれるパターンだろ。これ。
正直、めんどくせ…。
ハァ〜と溜息を落とす俺。
ディテクターは、俺の言葉を華麗にスルーし、且つ腕を掴む手の力をグッと強める。
いててて…あ〜…背中で語る男、ってのがピッタリだな。今のお前さんは。
何も言わずとも、伝わってくるよ。背中から。
黙れ、とか。いいから付き合え、とか。
お前さんの、そういう所。困った事に、嫌いじゃなくてね。
これ以上トンズラしようとすれば、殴りかかってきそうだし。
わかったよ。仕方ない。付き合ってやるよ。
少し、興味もあるしな。
お前さんの、そんな険しい表情。久しぶりに見たもんで。


「…道を間違えた、とかじゃないよな?」
部屋を飛び出し、駆けて約十五分。
脇目も振らず、ディテクターは、ここ…廃墟にやって来た。
腕を掴んでいた手をパッと離し、
「間違いない」
そう言って、スタスタと廃墟の中へ入っていくディテクター。
ものすごい自信だな。
女の子、って情報しかねぇのに。
俺は苦笑しつつ、ディテクターの後を追う。
可愛いコだと良いなぁ、なんて思いつつ。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

6589 / 伊葉・勇輔 (いは・ゆうすけ) / ♂ / 36歳 / 東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫

NPC / ディテクター / ♂ / 30歳 / IO2エージェント

NPC / 茂枝・萌 (しげえだ・もえ) / ♀ / 14歳 / IO2エージェント NINJA


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
納品が遅れてしまい、大変申し訳ございません; 連作第一話をお届けします。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/04/17 椎葉 あずま