コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


VS シャドウキャット

------------------------------------------------------

0.オープニング

「ちょっと、一回引っ込めとくれよ」
「…いや、ちょっと無理でさぁ」
頭を掻きながら言う、いつもの行商人。
あたしはムッとした表情で男を見やり、言う。
「無理って…どういう事だい」
「あれを破壊しないと、どうにもならないんですよね」
”あれ”と言って男が指さしたもの。
それは、真っ赤な宝石。
ただ、そこに在るのではなくて。
「フーーーッ!」
その宝石は、毛を逆出てて、あたし達を睨み付ける”猫”の額に在る。
影猫、シャドウキャット。
太古、異国で大量に繁殖した妖。
こいつの爪で引っかかれると、厄介なんだよ。
発熱、嘔吐、幻覚症状。ロクでもない症状が次々襲ってくる。
行商人の男は、この影猫が封じられたブレスレットを、
異国の少女から譲ってもらったらしい。
少女曰く”中の猫は、絶対外に出さないでね”だそうだ。

…出してるけどね。今。
ブレスレット自体が高値のつく素材故、
こいつは、この猫を何とかしたいんだろう。
だからといって、何の相談もなく急に出すとは…。
まったく、呆れた男だよ。
何とかしてくれる、と思ってるあたりが、また腹立たしい所さね。
さて…どうしようか。
また、あのコに解決してもらおうかねぇ。

------------------------------------------------------

1.

うーん。何と言いますか。懲りないですね。あの行商人さん。
もう、何度も同じような目に遭ってるのに。またですか。
…もしかして、何とかなるからって楽しんでるんじゃないかしら。あの人。
そうだとしたら…困ったサンですね。ほんとに、もう。
私は半ば呆れつつ、依頼人の待つアンティークショップへ向かう。


「やぁやぁ!紗枝さん。こんばんは〜!」
店に入るなり、カウンターに身を隠しつつ手を振って言う行商人さん。
その表情から、私は悟る。
はい。思ったとおり。
この人は、困ったサンの模様です。
「毎度どうもです」
苦笑しつつ、ペコリと頭を下げる私。
店内を物凄いスピードで駆け回る黒い影を見やり、フゥと溜息。
電話越しに色々と説明は聞いたものの。
実際、目の当たりにすると…ちょっと面倒そうですね。これは。
宝石を割れば良い、との事だけど…うーん。手こずっちゃう予感。
私は、巨大な懐中電灯をパッと出現させ、影猫を目で追いつつ笑う。

------------------------------------------------------

2.

カチリと入れる、懐中電灯のスイッチ。
いつぞやの虎ほどではないけれど、店内を眩く白い光が包む。
「まぶっ!」
突然の光に目をやられ、カウンター内でしゃがみ込む行商人さん。
私はモーニングスターを出現させ、それを手に取り構えて言う。
「今日は暴れないで、そこで大人しくしてて下さいねっ」


光に包まれて不安になったのか、
影猫は更にスピードを上げて店内を駆け回る。
ガシャン―
ガチャンッ―
影猫がビュンビュン動き回る所為で、店内は滅茶苦茶。
「ん、もぅ!落ち着きないなぁ」
ビュッと振り回すモーニングスター。
掠めもせず、空振り。
やっぱり、駄目ね。姿を追うので精一杯。
ほんの少しでも、一ヶ所に留まってくれれば楽なんだけどな。
まぁ、当然、そうはいかないわよね。
うーん。どうしたもんかな。
考えつつ、闇雲にモーニングスターを振る私。
「紗枝さ〜ん。やる気あります?」
カウンターに隠れつつ、苦笑して言う行商人さん。
失礼ねぇ。ちょっと、やる気なく見えるかもしれないけど、色々と考えてるんだから。
まったくもう。見てるだけのクセに、小言を言うんだから…。
ドカッ―
「ニ゛ャッ!!」
「あ」
ブンブンと振り回していたモーニングスターが、たまたまヒット。
影猫の尻尾にヒット。
すると、影猫の額の宝石が眩く輝いた。
なるほど。それ、大きなダメージを受けると光るのね。わかりやすぅ。
「鏡で、光をっ!」
蓮さんと行商人さんに、声を張って指示する私。
二人は指示された通り、鏡を使って宝石が放つ光を反射させる。
懐中電灯の明かりと、自身の宝石の光。
四方八方から光を浴びる影猫。
影、というだけあって。光には、めっぽう弱いご様子。
影猫はバタバタと店内を駆け回る。
光から逃れるように、必死に。
「さぁ〜。観念しなさいっ」
私は商品が飾られているテーブルや棚に登りつつ、影猫を追い詰める。
「………」
店を滅茶苦茶にされ、ムッと眉を寄せる蓮さん。
私は苦笑しつつ、パンッと両手を合わせて見せる。
ちゃんと片付けますから。終わったらっ。

------------------------------------------------------

3.

追い詰められ、店の隅でフーフーと怒声を上げる影猫。
私はニマリと笑い、勝利を確信する。
「ふふっ」
けれど、あなどれない。動物の底力。
「フゥッ!!」
影猫は鋭い爪を振り、私に向かって飛び掛る。
っとととと。
その爪に引っかかれると厄介、なのよね。
私、高熱でダウンとか。寝込んでる暇なんてないのよ。
毎日忙しいし、団長にも叱られちゃうわ。
私はニコリと微笑み、モーニングスターをブンッと振り回す。
みるみる大きくなるモーニングスター。
その大きさに、蓮さんと行商人さんはポカンと呆気に取られ見上げている。
ドカッ―
クリティカルヒット。
巨大化したモーニングスターは、影猫の頭部に直撃。
その場にパタリと倒れる影猫。
パラパラと床に落ちる紅い宝石の破片。
はいっ、終わりっ。お疲れ様でした〜。


「いやぁ。助かりました!ありがとう。紗枝さん」
私の手を取り、嬉しそうに笑う行商人さん。
…随分と、アレね。馴れ馴れしくなりましたね。クスクス笑う私。
「あの〜…紗枝さん。解決してもらって早々、こんな事言うのも何なんですが…」
俯き、照れくさそうにヘヘッと笑う行商人さん。
あら?何これ。何だか、告白とか。されちゃう雰囲気?なーんて、ね。
私は首を傾げて言う。
「何ですか?」
行商人さんは、懐から綺麗なブレスレットを取り出し、私に見せる。
わぁ、綺麗。くれるんですか?
そんな…気を使わなくても良いのに。
私はクスクス笑いつつ、手を差し出す。
「このブレスレットがね。物凄く高値で売れるんですよ」
「…へ?」
行商人さんの言葉に、一瞬呆ける私。
そこへ、蓮さんが説明を加える。
「要するに、その猫が邪魔だったって事さね」
「………」
はぁ。なるほど。それで何とかしてくれ、と依頼してきたんですか。
何というか…見上げた商人魂ですね。
何だろ…うまぁく使われたような、この敗北感?

「でも、このコの家は、そのブレスレットなんじゃないですか?」
気を失ったままの影猫を撫でつつ言う私。
邪魔だった、なんて。あんまりですよ。可哀想です。
そのブレスレットが他の人の手に渡ってしまったら、このコは…。
うーん………。
私は、影猫をジッと見やりつつ考える。
どうにか、できないものかと。
すると、行商人さんはポン、と私の肩を叩いて言う。
「じゃあ、仲間に入れてやってくれませんかね?紗枝さんのサーカスの…」
「えっ…」
サーカスの…ですか。
うぅーん。私が独断で決められる事じゃないのよね。こればっかりは。
私の、多くのパートナーの内の一匹…って事なら問題ないとは思うけど。
…とりあえず、団長に話してみない事には、どうしようも。ね。
「じゃあ…預かるって形で」
私が言うと、行商人さんは「ありがとうございます!」と何度も頭を下げた。


滅茶苦茶になった店の後始末をしている最中、
目を覚ました猫は、すっかり大人しくなって。
自ら、手伝いを買って出た。
俊敏な動き、周りに溶け込む順応性。
うーん。もしかしたら、面白い技とか、覚え込ませる事出来るかも…。
「紗枝さ〜ん!バケツ、こっちに下さ〜い!!」
「へっ。あっ、あぁ。はーい」

------------------------------------------------------


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

6788 / 柴樹・紗枝 (しばき・さえ) / ♀ / 17歳 / 猛獣使い&奇術師?

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 早川・太助 (はやかわ・たすけ) / ♂ / 25歳 / 行商人


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
           ライター通信          
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/04/30 椎葉 あずま