コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


ローズヒップ・ダンス

------------------------------------------------------

0.オープニング

「うっわぁ!すっごい!大っきい〜〜!!」
ピョンピョンと飛び跳ね、興奮する萌。
俺は腰元から銃を取り、構えて思う。
花と言えど…ここまでデカいと、不気味でしかないな。

異界の外れにある、植物研究所。
そこで事件発生。
花が、巨大化して研究所員達を襲っている。
被害者は既に二十人を越えた。
幸い、死者は出ていないものの。
このままでは、研究所が滅茶苦茶になる。
そこで、駆り出されたのが、俺と萌。
さっさと始末しちまおう。
俺達は不気味に蠢く巨大な花を前に、
奴の到着を待つ。

------------------------------------------------------

1.

RRRRR―
「勇ちゃん、携帯鳴ってる」
秘書である竜也に声を掛けられ、
後部座席で仮眠を取っていた俺は、欠伸しつつ電話を取る。
「はいよ」
『あっ、伊葉さん?』
「おー。どした。萌」
『お忙しい所、申し訳ないんですけど、ちょっと協力して欲しくて…』
「協力?」
電話をかけてきたのは萌で。
萌は早急な協力依頼を飛ばしてきた。
どうやら、大変な事になってるらしい。
萌の必死な説明が、銃声で聞き取れないのが何よりの証拠だ。
「了解了解。ちょっと待ってな」
俺は、そう告げて電話を切ると、身を乗り出して。
車を運転する竜也に言う。
「目的地変更だ。D-35区の植物研究所な」
竜也は眉を寄せて返す。
「…駄目です。公務優先。何度言わせるの」
「バッカ。可愛い女の子の頼みを、俺がスルーできるわけねぇだろ」
ペシペシと頭を叩かれて、竜也はハァ、と溜息を落としつつ。
ハンドルを切り、俺の言うとおり目的地を変える。


「よぉ。待たせたな」
煙草を咥えつつ、ボンネットの上で笑って言う俺。
俺の姿を確認した萌が、駆け寄ってくる。
「ちょっと…勇ちゃん。そこ、乗んないで」
「うっさい。ヒーローは格好良く登場する義務があんだよ」
「…ふぅん」
馬鹿にしているような竜也の態度に苦笑していると、
萌はボンネット上の俺を見上げて言う。
「伊葉さん、来てくれてアリガトですっ」
俺はニッと笑い。標的を見やる。
少し離れた位置にいるものの、十分にわかる。巨大な薔薇。
「…何アレ」
苦笑しつつ言うと、萌は身振り手振りを交えて説明してくれた。
ふーん。なるほどね。
「これは、ちと真面目にいかんとな」
俺は、そう言って煙草を投げ捨てると、颯爽とボンネットから降り。
優雅に、且つ大胆にジャケットを脱ぎ捨てると、
シャツの第二ボタンまでガッと外して、仕上げにネクタイを緩ませる。
「よっしゃ…やるか」
パンッと手を叩き気合注入。
俺の、その姿を見て竜也は車から降り、
俺が投げ捨てた煙草を踏み消し、拾って言う。
「早く終わらせて下さいね」
俺はササッと脱ぎ捨てた”高価な”ジャケットを拾い竜也に預けて、
「おぅ」一言そう言い、萌と一緒に、標的に向かって駆け出す。

------------------------------------------------------

2.

っはは。薔薇というだけあって、やっぱ棘を飛ばしてくるんだな。
お約束な奴だぜ。まったく。
「伊葉さん、さすが…!」
風と大地に眠る白虎の力を解放させ、
襲いくる棘を物ともせずに一直線に標的へ向かう俺。
薔薇の棘は、少し離れた位置で携帯を弄っている竜也にも襲い掛かる。
「あっ…ひ、秘書さんが!」
慌てて引き返そうとする萌。
俺は、萌の腕を掴み言う。
「大丈夫。心配いらねぇよ」

ブゥン…―
自身と車を包み込むように、三角の結界呪符。
結界に当たり、バラバラと無様に地に落ちる棘を見やりつつ。
私は、電話の向こうで若干不愉快になっている偉人に謝罪。
「すみません。少し遅れます」

「な?大丈夫だろ?」
クッと笑って言う俺。
萌は、笑いつつ頷く。
さてさて。花弁を全部落としちまえば良いんだっけか。
簡単っちゃあ簡単だが。数が多いな。
まぁ、三人でかかれば、どって事ねぇか。
「ディテクター!サボんなよ!」
ケラッと笑って言うも、ディテクターはシカト。
はいはい。今日も無愛想ですねっと。
俺は白虎の力で。
萌は体技で。
ディテクターは銃で。
次々と花弁を落としていく。
「っはー…。シンドいな、こりゃあ」
花弁の多さに、額に滲む汗を拭って言う俺。
そこへ、ススッと竜也が歩み寄ってきて言う。
「早くして下さい」
…呪符がグレードアップしてやがる。
最初は三角形だったのに、今や六芒星の形だ。
このヤロウは…自分は安全圏に居といて、よくもまぁ…。
「うっさい」
苦笑しつつ返すと、竜也はスッと携帯を耳に宛がい言う。
「だ、そうです。もうしばらくお待ち下さい。すみません」
ギョッとする俺。バカやろう。何してんだ、お前さんは。
真空刃を飛ばし、花弁を落とす俺。
竜也は携帯を耳から離して言う。
「何なら、手伝いましょうか?」
あー…。ははは。ムカッとすんなぁ、お前さんの、その優しい笑み。
いつまで経っても、ムカッとすんなぁ。
「いらねぇよ。残り、一枚だ」
俺はヘッと笑い、地をグッと踏みつけて空を切り裂くように高く飛び上がると、
最後の花弁に制裁を下す。
「捕らえよ、我足…大地と大気に眠る、白虎の力を!」
己の足に宿る、白虎の力。
フッと軽くなる体。
俺はクッと不敵に笑い、クルリと身を捩って、花弁を左から右へ蹴り払う。
バサッ―
地に落ちる、巨大な薔薇の。最後の花弁。

------------------------------------------------------

3.

「よっしゃ。終わりだな。後始末は任せた」
俺は着地するや否や、ディテクターと萌に言い、
慌てて竜也に駆け寄って言う。
「電話は?」
「さっき、一旦切りました。現在、約束の時間を四十分オーバーしてます」
やっべぇじゃねぇかよ。
俺は竜也からジャケットを受け取ると、
それを羽織りつつ急ぎ足で車へ向かう。
そんな俺の前に立ちはだかるは。
研究所の所長。
所長は嬉しそうに感謝の言葉を並べる。
「あーあーあー…礼なら、あっちの二人に言ってくれ。俺ぁ、急いで…」
そう言うと、所長はニコリと微笑んで。
「いかがですかな?」
この世のものとは思えぬ程良い香りの茶葉を掌に乗せて言った。
…こいつは、また。酷く美味そうな香りだ。
ローズヒップティってのが引っかかる所だが。
茶葉を前に黙り込む俺。
そんな俺の首根っこを掴み、竜也は言う。
「駄目です。そんな暇ありません」
だよな。だよな。そうだよな。
俺も、そう思うよ。でもな…でも…ほら。
「折角だし…なっ」
ヘラッと笑って言う俺。
竜也はムッと眉を寄せたが、俺と同じく。
茶葉の魅力に勝てず。携帯でキャンセルを告げる。
携帯を懐に戻し、ハァ〜と溜息を落とす竜也に、
俺は苦笑して問う。
「ご立腹だったか?」
「当然です」
ハハッと笑う俺。
竜也は車のエンジンを切ると、小さな声で呟いた。
「まったく…勇ちゃんは」
「っははは。お前もだっつーの」
俺はケラケラ笑って、竜也の肩をパシッと叩く。

------------------------------------------------------


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

6589 / 伊葉・勇輔 (いは・ゆうすけ) / ♂ / 36歳 / 東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫

7063 / 九原・竜也 (くはら・たつや) / ♂ / 36歳 / 東京都知事の秘書

NPC / ディテクター / ♂ / 30歳 / IO2エージェント

NPC / 茂枝・萌 (しげえだ・もえ) / ♀ / 14歳 / IO2エージェント NINJA


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
           ライター通信          
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。

仲間PCとの共同参加、ありがとうございます。
伊葉氏&竜也氏、お二方とも物凄く素敵で、大好きです^^
また、この二人のお話を紡げたら良いな、と心から思います。

気に入って頂ければ幸いです。よろしければ また お願い致します^^

2007/05/2 椎葉 あずま