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トラブル・ハグ
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０．オープニング
「ちょっと、離しなさいっ！」
ドカッ―
「うぐ」
鳩尾に私の肘が入り、その場に倒れこむ男性。
私は襟を整え、スーツをパパンッと払って溜息。
「はぁ…まったくもう。迷惑な奇病ね」
「編集長ー！大丈夫ですかっ！！」
「遅いっっ！！」
バシッ―
「痛ぁっ！」
頬に私のビンタをくらい、その場にしゃがみ込む、三下…さんした君。
私は腰に手をあて、見下ろして言う。
「集合時間は、とっくに過ぎてるわ！あなた、やる気あるの！？」
「す、すみません…。捨て猫が…」
「言い訳は聞きたくないわ。さっさと取材！」
「は、はいっ」
近頃、評判の奇病。
その名は”トラブル・ハグ”
迷惑な抱擁。その名の通り。
感染した者は、見境なく異性に抱き付く。
タチの悪い感染者の場合、チカラ任せに押し倒し、それ以上を要求する。
まったくもって、迷惑な奇病だわ。
女性の感染者より、男性の感染者が多いというのも、また問題よね。
編集部にも被害を受けた若い女の子が何人か居て。
随分と落ち込んでしまっているのよ。
仕事が手につかないくらい。
立派な勤務妨害だわ。とても迷惑よ。腹が立つわ。
だから、取材をしつつ、何とか出来ないものかと。
思っているんだけれど。
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１.
「…はぁ〜」
腰に手をあて、肩を落とす麗香さん。
私は駆け寄り、麗香さんの背中を叩く。
ポンッ―
「こんにちはっ」
麗香さんはパッと振り返り、私を見ると苦笑して言った。
「…タイミング、悪いわねぇ」
「何がですか？」
キョトンとする私。
麗香さんはピッと前を指差して溜息を零す。
麗香さんが指し示した先には三下さんがいて…。
「うわぁぁー！！」
悲鳴を上げつつもニコニコしながら、女性に追いかけられていた。
これは、もしやっ…。
「アレですか。突然のモテ期到来ですか」
ふざけて真顔で言う私。
「そんなワケないでしょ」
パコッ―
麗香さんは、持っていた書類で私の頭を叩いて笑う。
「あははっ。ですよね〜。えーと、急に抱きついてくるやつですよね。これ」
女性に捕まり、嬉しそうな悲鳴を上げる三下さんを見つつ言う私。
「何。知ってるの？」
麗香さんは前髪をかき上げて言う。
「今朝、サーカス団内でも大騒ぎになったんですよ」
鞭を構えて言う私。
「あらぁ、そうなの。大変だったわね」
麗香さんは襟を整えて身構えつつクスリと笑う。
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２．
「好きだぁぁぁ！！」
背後から近づいて来る愛の言葉。
私は振り返らずに、ヒュンと鞭を振るう。
バヒュッ―
「うっ…わぁぁぁぁっ！！」
振るった鞭の衝撃波によって、空高く舞い上がる感染者。
「たーまやーぁ！」
ケラケラ笑いながら言う私を見て、麗香さんは苦笑しつつ言った。
「…惨いわ」
次々と抱きつこうと寄って来る感染者。
このままじゃあ埒が明かないわ。
感染源、元を絶たないと…。
「好きだぁっ！！」
「あー…もうっ、邪魔っ！！」
私はムッと眉を寄せ、パチンと指を鳴らす。
すると、私の影からヌヌヌッとパートナー達が出現。
ライオン、虎、豹。みんな、とーっても可愛いメスよ。
ニコリと微笑む私。
「ぎゃあああー！！」
「ガルルルルー！！」
猛獣達に追いかけられる感染者達。
私は辺りを見回し、電柱に凭れてグッタリとしている感染者を発見すると、
彼に駆け寄り、頬をペチンと叩いて。
「あなた、いつからおかしくなったの？何か、変なものでも食べた？」
ジッと顔を見つつ問う。
虚ろな意識で、焦点の定まらぬ目で。
感染者である男性は、ポツリポツリと真相を零した。
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３．
行商人…まさか、あの人じゃないわよねぇ。
苦笑しつつ、犯人であろう行商人を追う私。
私の後をついて歩く三下さんがハハハと笑いつつ、
「いや〜参った参った」
と嬉しそうに言うと、
「役立たず」
ゴツッ―
「あ痛ッ」
麗香さんの鉄拳制裁が三下さんの頭に落ちた。
犯人であろう行商人は、見た事のない男性で、私は若干ホッとしつつ。
「さぁて。どうしてくれましょうか」
ニッコリと微笑んで言う。
追い詰められて壁に手をつき、額に汗を滲ませる行商人。
これだけ多くの人に迷惑をかけたんですもの。
覚悟は、出来てるわよねぇ。フフフ…。
ヒュッと鞭を振るう私。
その直後、感染者達を追っていた猛獣達が、続々と私の元へ帰って来た。
「あ、ご苦労様…」
優しく笑って、影の中へ戻そうとするも。
「ガルルルゥ…」
「あっ？こら、あなた達…」
猛獣達は、行商人が持つカゴに群がる。
カゴの中には、問題の饅頭が沢山…。
「ガルルルルーン！！！！」
「ぎゃぁああああ！！」
「ちょ、何で僕までぇっ！？わぁぁあああ！！」
饅頭を食べた猛獣達は、恋をした。
追い掛け回される行商人と三下さん。
「お腹、空いてたのねー」
クスクス笑う私と、
「取材は…彼等がダウンしてからね」
フフフと笑って言う麗香さん。
事件の翌朝、新聞の一面に踊る”トラブル・ハグ”の文字。
私はフレンチトーストを頬張りつつ、クスッと笑って。
朝のパフォーマンス練習を終えて、のんびりとくつろいでいるパートナー達に言う。
「ねぇ、見て。あなた達、新聞に載ってる」
「ガルル…？」
「すっかり、有名人…じゃない、有名獣ね〜。取材はお断りしますか？」
「ガルルルン」
「あははっ。そうよね。忙しいもんね〜」
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登場人物（この物語に登場した人物の一覧）
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【 整理番号 / ＰＣ名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
6788 / 柴樹・紗枝 （しばき・さえ） / ♀ / 17歳 / 猛獣使い＆奇術師？
ＮＰＣ / 碇・麗香（いかり・れいか） / ♀ / 28歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集長
ＮＰＣ / 三下・忠雄 （みのした・ただお） / ♂ / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集員
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ライター通信
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
遅れてしまい、大変申し訳ございません。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします＾＾
2007/06/04 椎葉 あずま
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