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トラブル・ハグ
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０．オープニング
「ちょっと、離しなさいっ！」
ドカッ―
「うぐ」
鳩尾に私の肘が入り、その場に倒れこむ男性。
私は襟を整え、スーツをパパンッと払って溜息。
「はぁ…まったくもう。迷惑な奇病ね」
「編集長ー！大丈夫ですかっ！！」
「遅いっっ！！」
バシッ―
「痛ぁっ！」
頬に私のビンタをくらい、その場にしゃがみ込む、三下…さんした君。
私は腰に手をあて、見下ろして言う。
「集合時間は、とっくに過ぎてるわ！あなた、やる気あるの！？」
「す、すみません…。捨て猫が…」
「言い訳は聞きたくないわ。さっさと取材！」
「は、はいっ」
近頃、評判の奇病。
その名は”トラブル・ハグ”
迷惑な抱擁。その名の通り。
感染した者は、見境なく異性に抱き付く。
タチの悪い感染者の場合、チカラ任せに押し倒し、それ以上を要求する。
まったくもって、迷惑な奇病だわ。
女性の感染者より、男性の感染者が多いというのも、また問題よね。
編集部にも被害を受けた若い女の子が何人か居て。
随分と落ち込んでしまっているのよ。
仕事が手につかないくらい。
立派な勤務妨害だわ。とても迷惑よ。腹が立つわ。
だから、取材をしつつ、何とか出来ないものかと。
思っているんだけれど。
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１.
目を閉じ、プラスティックの杖をつきながら歩く私に、突然掛かる声。
「パティさーん！！」
それは聞き覚えのある声で。
私は振り返り、微笑んで言う。
「こんにちは、三下様。どうしました？そんなに慌てて…」
三下様は、息を整えつつ、やぶからぼうに。
「手伝って下さい〜」
そう言った。
「手伝いですか？構いませんが、一体どのような？」
問うと、三下様は理解り易く説明してくれた。
「なるほど。奇病の類ですね。ところでこれは、取材ですか？それとも討伐ですか？」
ニコリと微笑んで問うと、三下様は少し考えてから返す。
「両方…ですかね」
「わかりました。では、少々お待ち頂けますか。準備して参りますので」
ペコリと一礼し、私は取材に必要なメモとペン、
討伐に必要な仕込み杖を取りに、一旦自宅へ。
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２．
「お待たせしました」
準備を終え再び合流すると、
三下様は、ヘコヘコと頭を下げつつ言った。
「いやぁ、すみません。無理言っちゃって」
「まったくだわ。いつもいつも、ごめんなさいね、パティ」
三下様に続いて言ったのは、碇様。
私はフルフルと首を振り「構いません」と返す。
「ついさっき、わかったんだけど…。どうやら感染源はこれ。この饅頭らしいのよ」
饅頭を差し出し言う碇様。
私は饅頭を受け取ると、その香りを確かめてから、
ポイッと自身の口に放る。
「ああっ！？」
「ちょ、ちょっとパティ…」
揃って慌てる三下様と碇様。
私は饅頭を味わいつつ淡々と言う。
「味わってみなければ、わかりません」
「そ、それは、そうかもしれないけど…」
心配そうに私の顔を覗き込む碇様。
うん…とても甘い餡子で、とても美味な…。
味わえたのも束の間。
カッと熱くなる喉と頬。
「………」
言葉を発さなくなった私をジッと見やる、お二方。
その一方、三下様に。
芽生え抱く、不思議な感情。
みるみる大きくなるその感情は、抑える事が出来ず。
ガバッ―
「わぁぁぁっ！！？」
私は三下様に抱きついた。
「ちょ、ちょっとパティ！！気を確かに！それは三下くんよっっ！！？」
抱きつきたくて、触れたくて仕方がない。
その症状の持続は、およそ三十分。
三十分が経過すると、何事もなかったかのように元に戻る。
迷惑な奇病ではありますが、放っておいても、さほど害はないかと。
かと言って、この事態を引き起こした犯人を許すという事にはなりませんが。
「………」
自分が直接体感した症状をメモしつつ、私はハッと思う。
「…どうしたの？パティ」
「大丈夫ですかぁ？」
不安そうな顔をする二人に、私は呟く。
「もしかしたら、これ…稀代の媚薬なのかもしれません」
「え？」
キョトンとする碇様。
もし、そうだとしたら。放っておくワケにはいきませんわ。
「確保です。確保！とにかく確保しなくては」
「ちょ、ちょっとパティ！どうしたのよ、急にっ…」
「パティさんが、ご乱心だぁ〜…」
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３．
組織に電話をし、多額の金を用意した私は、
饅頭を売り歩いていた行商人と接触するや否や、
持っている饅頭を全て引き渡しなさいと命じた。
「な…何だってんだ」
行商人は、私の威圧に押され、少々戸惑っている様子。
「悪い話ではないでしょう。引き渡せば釈放される上に、大金が手に入るのですから」
私が言うと、行商人は金が偽物なのではと念入りに確かめ、
偽物ではないとわかると、
「変な奴だな」
そう言い捨てて金を受け取り、
持っていた饅頭を全て置いて、逃げるように、その場を後にした。
「取材…し損ねたじゃない。どうしてくれるのよ」
文句を言う碇様。
私は、目の前の大量の饅頭を前に、怪しく微笑みつつ何度も謝罪。
「そんなにムキになって欲しがるなんて、もしかしてパティさん、好きな男でもいるんですかぁ？」
苦笑しつつ言う三下様。
私はクスリと笑って。
「さぁ…どうでしょう」
満足気に、そう言った。
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登場人物（この物語に登場した人物の一覧）
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【 整理番号 / ＰＣ名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
4538 / パティ・ガントレット （ぱてぃ・がんとれっと） / ♀ / 28歳 / 魔人マフィアの頭目
ＮＰＣ / 碇・麗香（いかり・れいか） / ♀ / 28歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集長
ＮＰＣ / 三下・忠雄 （みのした・ただお） / ♂ / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集員
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ライター通信
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こんにちは。お久しぶりです＾＾発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
遅れてしまい、大変申し訳ございません。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします＾＾
2007/06/04 椎葉 あずま
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