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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


誓いの銃 -プロミス-

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0.オープニング

お前との約束を忘れた日は、一度もない。
ただの、一度も。
取り戻した銃を手に、俺は夜空を見上げる。

なぁ、見てるか?
あいつ…あんなに大きくなったんだな。
とても、お前によく似ていたよ。
お前が戻ってきたかと見紛うほどに。

なぁ、見てるか?
あの日も、こんな夜だったよな。
星が綺麗な、夜だったよな。

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1.

少女が涙ながらに語る真実。
それは、あの無愛想な男の過去にまつわる切ない話。
ひととおり話を聞いた俺は、少女…カナに告げる。
「要は、あの冷血野郎に一泡吹かせたいわけだな」
「……ぇ、えっと」
躊躇いがちに頷くカナ。
まぁ、復讐したいだなんて悪どい事を考えてるわけじゃねぇのは、理解ってるさ。
お前さんみたいな可愛い子が、そんな事考えるわけねぇもんな。
ただ、自分に他人のように接するアイツが嫌なんだ。
無関係じゃないのに。
まるで無関係のように。
お前には関係ないってな感じで接されるのが嫌なんだよな。
だからといって銃を盗んでも何の解決にもならねぇ。
そのへんの気配りは、出来るようにならねぇとな。
立派なレディには、なれないぜ?
「んじゃ、ちょっと協力してくれ。何のこたぁない。簡単な演技をな…」



キキキキキィッ―
俺とカナの目前で華麗なドリフトを決めて停まる車。
舞い上がった砂にコホンコホンと咳をするカナ。
俺はカナの背中を撫でやりつつ、苦笑して言う。
「おいおい。もうちっと静かに登場できねぇのか」
俺の言葉に窓から、竜也は溜息交じりに言う。
「…突然呼び出しておいて、文句ですか」
「はははっ。悪ィ悪ィ。ま、協力してくれや。すぐ終わっから」
俺と竜也の会話に、首を傾げるカナ。
「あぁ、こいつは竜也。俺の秘書だ」
「ひ…秘書…?」
目を丸くして驚くカナ。
竜也は車のドアを開け、カナに歩み寄りつつ言う。
「これはこれは可愛らしいお嬢さんだ。はじめまして。サボリ魔都知事の秘書です」
「おま…そういう事言うなよ」
「事実です」
「と、都知事さん…って。えぇ…?」
驚きの隠せないカナ。
俺はケラケラと笑って言う。
「まぁ、そんな事は、どうでもいい。作戦会議といこうぜ」
「…どうでも良くないですよ」
「うっさいよ」

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2.

まぁ、お互いにどうすれば良いかなんてこたぁ、とっくに理解ってんだ。
ただ、怒りとか後悔とか、そういう感情がな。それを邪魔してる。
それさえ振り払っちまえば、簡単に解決する問題さ。これは。
「っつーわけで、俺はディテクターを殴ります」
「説明になってません」
「話しただろ。あいつに一泡吹かせんだよ」
「…組織の一員同士の私闘はご法度ですよ」
「お前って頭固いな。何とかならんの?それ」
「なりません」
ただ喧嘩するだけじゃねぇよ。
ちゃんと目的があるんだ。文句は言わせねぇぞ。
それに、頑固なアイツを真正面向かせるにゃあ、これが一番なんだ。
荒療治だけどな。
俺の説明に、竜也はヤレヤレと肩を竦めるも、作戦了承に至った。



「いたいた。んじゃ、作戦開始な」
物陰に隠れつつ、ディテクターの背中を見やって言う俺。
「いつでもどうぞ」
竜也は瞬時にカナの周りに結界を張って言う。
いいねぇ。お前さんの、仕事早いトコ、好きだよ。俺ぁ。
んじゃ、行きますか。
タタッと駆け出し、ディテクターの前に立ちふさがる俺。
「……何だ」
眉を寄せて不愉快そうに言うディテクター。
おいおい。不機嫌だなぁ。
大事な銃は手に戻ったってのに。どうしたんだい?
俺はクッと笑い、ディテクターに告げる。
「彼女、処理したから」
「…処理?」
「お前にゃ、まだ連絡いってねぇか?組織の命令でよ。始末したよ」
「………」
顔色の変わるディテクター。
わっかりやすいなぁ。お前さんも。
俺は俯くディテクターに追い討ちをかける。
「銃は戻ったから、あの娘にゃ、もう用はねぇだろ」
「………」
来た道を引き返そうとするディテクター。
俺は白虎の力を全開にし、それを阻む。
「…どけ」
「行ってどうすんだ?あの娘の遺体に手でも合わせてくんのかい?」
「…どけ」
懐から銃を取り出し、俺に向けて構えるディテクター。
よしよし。いいね。思ったとおり、作戦通りだ。
俺はクッと笑い。
「…一度、お前さんと勝負したかった」
そう小声で告げて、牙を向く無愛想を迎えうつ。




結界の中、二人の戦いにオロオロとする少女。
私は少女の頭を撫でやりつつ、ハァと溜息。
やっぱり、そういう事でしたか。
まぁ、それが真の目的ではないのは理解りますけど。
まったくもう…あなた達二人がぶつかり合う事が、どれだけ大きな事か。
その辺、考えて欲しいものですね。
飛んでくる銃弾を弾く、最高レベルの結界の中。
私は戦いを見守りつつ少女に告げる。
「詳しい事はわかりませんが、彼…ディテクターが引き返そうとしたのが答えだと思いますよ」
「………」
銃を駆使し、戦うディテクターを見やって無言の少女。
私はクスリと笑い、少女の肩をポンと叩いて。
「あとは自分の心に素直になるだけです」
そう言って、戦う二人に向けて自身の右腕を伸ばす。
「あの…何を…?」
不安気な表情で私を見上げる少女。
私は優しく微笑んで。
「この芝居に、幕を下ろします」
そう言って、呪符の力で気を纏った無数の銃弾を二人に向けて放つ。
ドヒュヒュヒュヒュヒュッ―
「うぉぁぁぁぁぁ!?」
「…っ!?」
ドヒュヒュヒュヒュヒュッ―
「ちょ…おま…竜也ぁぁぁ!!やりすぎ!やりすぎだぁってぇぇ!!」
「……ぅぉぉ!!」
飛んでくる銃弾を避けつつ必死な二人にクスクス笑う私。
「あの二人を止めるには、この位せねばならないのですよ」
撹乱する二人を見やりつつ冷静に言う私に、
少女は、オロオロするばかり。

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3.

全てが芝居だと明かし、ディテクターとカナを対面させる。
二人は、まるで付き合いだしたばかりのカップルのように、ぎこちなく。
けれど、確かに歩み寄っていた。
俺は、後は二人の問題だ、と竜也を連れて、その場を去った。

「まったくよぉ…やりすぎなんだよ。お前は」
頭を掻きつつ言う俺。
竜也は、しれっと返す。
「何の事です?」
「…もういいよ。結果オーライだしな」
あの二人が、この先どうなるか。
それは、さっぱりわかんねぇ。
歩み寄って仲良くなるかもしんねぇし、
前と何ら変わんねぇかもしれない。
でも、まぁ…前とまったく一緒って事ぁないだろうな。
しかし、ディテクターも感情のコントロールが下手だよ。
もういい大人だってのに。
どうしていいかわからず銃を盗んだカナと、何ら変わらねぇな。
「まぁ、素直に物事を見れないのは、俺も同じだけどよ…」
ポツリと呟く俺。
竜也は車のドアを開けつつ言う。
「はい?何か言いました?」
「や。何でもねぇ」
助手席に乗り込み、フゥと息を吐く俺。
竜也はハンドルを握り、髪を整えつつ言った。
「次は、あなたの番ですよ」
「んぁ?」
見やり首を傾げる俺。
「あなたの問題を解決する番だ、と言ってるんです」
問題…ねぇ。
わかったよ。わかってるよ。仕事だろ。
溜まりに溜まった都知事の御仕事だろ。
「わーったよ。車、出せ」
目を伏せ、溜息混じりに言う俺。
ブゥゥゥゥゥゥン…―

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

6589 / 伊葉・勇輔 (いは・ゆうすけ) / ♂ / 36歳 / 東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫

7063 / 九原・竜也 (くはら・たつや) / ♂ / 36歳 / 東京都知事の秘書

NPC / ディテクター / ♂ / 30歳 / IO2エージェント

NPC / カナ / ♀ / 13歳 / ディテクターが、かつて愛した女性の妹


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
連作第三話をお届けします。 ダブル参加ありがとうございます!楽しかったです…v
気に入って頂ければ幸いです!また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/07/18 椎葉 あずま