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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


フリーマーケット・レン
ここは、アンティークショップ・レン。
店主、碧摩・蓮(へきま・れん)は困っていた。
何に?この曰く付きの商品の多さに。
このままではお店がパンクしてしまう。

最近はなるべく仕入れはしないようにしていたが、
曰く付きの商品を売りに来る客があまりにも多すぎる。

「お姉ちゃーん。遊ぼうよ。キャハハ」

としゃべるフランス人形に、

「お姉さん疲れてるからダメ」
「えー」

と会話する。
壺なんかのぞきたくない。
鏡になんて移りたくない。

……

疲れた蓮は客が置いていった地方新聞を読んでいた。
するとこのようなことが書かれていた。

「○日にフリーマーケット開催!参加者募集中」

そうだ!売れない在庫はここで処分してしまえばいいんだ。
もちろん命に関わるものはこちらで処分するとして。
面白い商品なら売れるかもしれない。

すぐさまフリーマーケットの準備をする蓮であった。


○日、日曜日。ふれあい広場でフリーマーケットが行われた。
皆手慣れたもので、洋服ハンガーを持参してたくさんの洋服を売ってる人、
いらなくなった本をずらりとならべている人、
ダンボールをテーブル、置き場所として利用してる人、
折りたたみテーブルで、自分のアート作品を並べている人。
皆それぞれ売りたい物も売り方も様々であった。

そこに二人の男女も遊びに来ていた。
名前は夜崎・刀真(やざき・とうま)、女の子の方は龍神・瑠宇(りゅうじん・るう)。
刀真は見た目18歳、瑠宇は13から14歳に見えるが、実際はもっと長く生きてるのだ。

わいわい騒いでる瑠宇を放っておいて、一つ良いTシャツをみつけた。
サイズも丁度いいし、なかなか悪くないデザインだ。
しかしよく見てみると洗濯のしすぎで、そで口が少し痛んでいた。

「なあ大将、ここ見てくれよ。ほら、この辺生地が傷んでるだろ。これでこの値段はちと高いよな?」

その服の値札には800円と書かれていた

「負けて300円というのはどうだ?」
「いくらなんでも、そこまで負けられません」
「じゃあ500円これ以上は譲れないな」
「……じゃあそれで取引しましょう」

刀真、500円お買い上げ。

と思ったら、瑠宇がいない。全くしょうがない奴だなぁと思いながら探しに行く。
するとぬいぐるみを抱えた瑠宇がいた。

「瑠宇〜頼むから単独行動はしないでくれよ〜」

と言った後、肝心なことに気がついた。

「まさかそれ買ったんじゃ……」
「んーん。買わずにだっこさせて貰ってるだけ」

刀真は内心ほっとして、瑠宇の腕をつかんで安売り商品を再び探しに行った。

「ねぇ!あのティーカップカワいいよ。ひよこちゃんだし」
「そういうのはいらないから、お前の服買おうな」
「わぁーーい」

そして女物の服を扱う店をまわってみた。
瑠宇は可愛いからそういう服を着せてやりたい。

そこでピンクを基調した白ユリの可愛いデザインのワンピースをみつけた。
「瑠宇コレ欲しい!カワいいもん」

しかしそれはブランド品で2000円だった。
がっかりする瑠宇。

するとそこの店員は売り場の中から黄色のチュニックを出してきた。

「これも似合うんじゃない?キャミソールとデニム短パンとセットならお安くしますよ」

黄色のチュニックはさっきのワンピースよりデザインは劣るが、白や黒の水玉が散らばっている。
キャミソールも可愛いデザインをして、デニム短パンもなかなかいい。
全部合わせて1000円で売ってくれるらしい。

「瑠宇。これにするか?」
「ウン。瑠宇もコレ気に入った!」

刀真、1000円お買い上げ。

ある程度収穫があったので帰ろうとすると、フリーマーケットの一角に黒いオーラをみつけた。

そこで刀真は、
「あんた…蓮、か?また妙なとこで会うな」
「妙なところってなんだよ。あたしはね、アンティーク商品の在庫を売りにきたのさ」
「命にかかわるものとか置いてないだろうな」
「そんなものは置いてない。店でも処分してるくらいだ。今回は軽いものしか置いてない」
「そのわりに、何かこの一角だけ人外魔境になってるように見えるのは、俺の気のせいか?」
「う……」

そこで蓮は全てを白状した。フリーマーケットに来ること自体が初めてで、
なるべく曰く付きの商品の中でも無害なものばかり集めて処分しにきたそうだ。

「どうすれば売れるんだろうねぇ。あたしより年喰ってるあんた達ならわかるかい?」

そこで刀真は、

「まず、こんなところで曰くつきの物を売ることがそもそもの間違い」

そのセリフに蓮は心臓をつらぬかれた思いであった。

「でも任せろ!俺は(自称)フリーマーケットの達人だ。手助けしてやるぜ!」

蓮はちょっと刀真が心強く感じた。

「まずは並べ方が悪いんだ。並べ方が。客は流し見していくもんだから、
 まずパッと目のつく品を前面に出して、足を止めさせなきゃ。例えばこの濃い色の壺。こういうもんは
 後ろの方に置いて、華やかなものや、お買い得商品を前に出す。一回やってみ」

そういうことで、物品の並べ方を一気に変えた。
お人形や雑貨類は手前の方に置き、壺や狛犬といったオカルトチックはものは後ろに置いた。

刀真の服の袖をぐいぐいと引っ張って、「瑠宇も手伝っていい?」と聞いてきたので、
「そこの蓮さんの許可を得たならいいぞ」
「はーい」

さぁ、勝負のフリーマーケットが始まった!

「どうぞー見て行ってくださーい」
「めずらしいものでいっぱいですよぉ」

その声につられて、客が少しずつ足を止めるようになっていた。

「買っていった男性の方全員にここの看板娘、瑠宇とのツーショット写メが撮れますよー」
「あー勝手に決めるなー」

なんて話している間にお客さんが来てくれていた。親子連れのようだ。


「えーと、こちらでおめしあがりですか?」

そのセリフを瑠宇が言った時から冷たい空気が流れ始めた。

「じゃあお持ち帰りですね。何をお持ち帰りしますか?」

すると親子連れのお子さんが、

「あのフランス人形が欲しい」

と言い出したら案の定、フランス人形はしゃべった。

「お譲ちゃん、買ってくれたら遊んでくれる?」

すると親子連れの女の子が言った。

「うわーー日本語しゃべれるんだー」
「私、かまってくれたらくれただけ、あなたに恩返しするわ」

そこで不安そうに両親は見る。それを見た蓮は、

「安心しな。心があること以外は何も悪いことしたりしないよ
 お子さんがその人形に飽きた時はウチの店に売りに来るといいさ」
「で住所などは……」
「住所なんかないよ。その人形を持ってふらふら歩くとたどり着くからね」

親御さんはこの人形に不安感を覚えたが、

「あたし、この人形が欲しい!」

実はこの家庭、共働きの一人っ子で、家に帰っても誰もいないことが多かった。
親御さんは人形のことが少し不安ではあるが、

「じゃあこの人形買いましょう」
「ありがとうございまーす」

と刀真と瑠宇は同時に挨拶した。

次にじーーっと見ている女性のお客さんがいた。手毬(てまり)を見ているようだ。
そこですかさずお客さんに話しかける刀真。

「手毬とか、そういう和のものに興味あるんですか?」
「えぇ。かんざしとか。着物も持っているんですけど、着るのはなかなか」

そこで蓮はやはり口を出す。

「その手毬はきれいなだけじゃないさ。自分の体調までわかるんだ。
 体調がいい時は軽いけど、疲れている時や体調の悪い時は重くなるんだ」
「えーーそんなこともわかるんですか。なんか素敵」

と何の疑いもなくそのお客さん買って行ってしまった。

その後は運命としか言いようがない。
美容学校の教師がいくらでも伸びるマネキンを気持ち悪がって売りにきた。
しかし。

「あたし美容師の卵なんだよねー。こういうのあると便利!」

と言って、専門学校生の女の子が喜んで買っていった。

続いてやっと男性のお客さんが来た。
瑠宇は元気よく、「いらっしゃいませー」と言うと、

「可愛い店員さんだねぇ。じゃなくて、僕は怪奇現象を研究している者なんだ」
「それならこれがおすすめですよー」

と瑠宇は「霊能力がなくても幽霊が見れるサングラス」を勧めた。

「これはいいね〜買わせてもらおうかな」
「ありがとうございますーー。あの希望者に瑠宇とのツーショット写メを
 撮ることになってるんですが、まだ一人もいないんです」
「そうなんですか?じゃあ一緒に」

お客さんの携帯カメラがパシャっと鳴った。
どれどれと出来上がった写真を見てみると……。
瑠宇がいるはずの場所が白く写っていた。

男の客は怖くなり、すぐに逃げていった。そこで刀真は、

「怪奇現象を研究してるんだったら逃げるなよ」

なんて思った。


あんまり商品を持ち込んでないだけあって、在庫も少なくなってきた。
あと残ってる在庫は……

過去を見ることができる水瓶
未来の自分が見える鏡
自分の死ぬ瞬間が見れる万華鏡
かぶると万人が恐怖する般若のお面
神社から盗まれたと思われる狛犬

終了時間も迫っていることもあって、蓮は、

「そうだねぇ。これが限界ってことかな。そろそろ片づけするよ」

急いで片づけに入る3人。

「実はこういうものを持ってきたんだ」
と蓮が言って、大きい袋を取り出した。

「四次元袋と言って、いくらでも入るし重くもないのよ」
「わぁ。素敵だねー」

四次元袋を持った蓮がにこりとあいさつしたところで、二本の手が蓮の前に差し出された。

「それ、なによ」
「バイト代」
「ウチの商品じゃだめかね?」
「貧乏なのはお互い様」

結局、蓮は売り上げ金額の半分を刀真達にやった。

「やったぜ。これで服は安く買えたし、給料は貰えたし、一石二鳥!」

刀真はそう言いながら、夕暮れ時を瑠宇と歩きながら満足そうにしていた。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【4425 / 夜崎・刀真 / 男 / 180歳 / 尸解仙/フリーター】
【4431 / 龍神・瑠宇 / 女 / 320歳 / 守護龍/居候】


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■         ライター通信          ■
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初めまして。ご依頼ありがとうございます。こういう形で個別に納品することは初めてで、
ほぼ同じ内容なんだけど、こちらは刀真を中心に、あっちでは瑠宇のみのエピソードもあり。
一応基本のストーリーは刀真モードなので、そちらをご覧になってから、
瑠宇バージョンのオリジナル部分を探してみると良いかもしれません。
またお会いできるのを楽しみにしています^ ^