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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ロスト・ボイス(後編)

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OPENING

零の喉に潜む妖を除去し、
一刻も早く、苦痛を取り除いてあげるべく。
武彦達は、学者を訪ねた。
学者の家は、古びた一軒家。
こんなところに、人が住んでいるのかと疑うほど、不気味な家だ。
武彦は、ソワソワしながら何度も呼び鈴を鳴らす。

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「気持ち悪ィなぁ。こんなとこに住めるなんて、よっぽどだぜ…」
不気味な学者宅を前に、腕を組みながら素直な感想を述べる隼人。
隣で、呼び鈴を鳴らしている武彦は、何というか、必死だ。
そんなに連打したら、壊れる…と思いつつも、隼人は何も言わず。
気持ちは理解る。急いてしまうのは、仕方のないことだ。
妹が自宅で苦しみながら待っているのだから。
”兄”らしい一面もあるもんだ、なんて感心していた隼人。だが…。
一体、一秒間の間に、何回押すのか…。
狂ったように呼び鈴を鳴らし続ける武彦に、隼人は我慢の限界。
「おい。ちょーっと、落ち着け」
「………」
ピンポン、ピンポン、ピンポン ―
「おい」
「………」
ピンポン、ピンポン、ピンポン ―
「………(むかっ)」
「………」
ピンポン、ピンポン、ピンポン ―
「落ち着けと言っとるだろがぁっ!!」
ビシィッ―
「痛ぇぇぇ!!?」
人の話を聞かない武彦の脳天に、隼人の制裁チョップが炸裂。
武彦は、その場に しゃがみこんで頭をさすっている。
腕を組みなおし、まったく…と呆れ返る隼人。
(こんなのが兄だと大変だわな)
そこらじゅうで武彦の噂は耳にする。
落ち着きがないだとか、子供っぽいとか、煙草臭いとか。
実際に接してみると、それらが全て事実であることが理解る。嫌というほどに。
扉の前で繰り広げられる漫才劇。
その様子を、窓から見ている人物がいた。
扉のすぐ横にある扉、カーテンの隙間から見える その人物は、とても美しい女性だ。
彼女に気付いた隼人は武彦に問う。
「おい。彼女か?」
頭をさすりながら立ち上がり、隼人が示す方向を見やる武彦。
カーテンの隙間から、こちらを見ている女性は、
武彦を見て呆れたように笑い、フルフルと首を振った。
”ヤレヤレ”といった表情だ。
彼女の様子に、武彦はハッとして、扉に手をかける。
カチャ―
鍵が…開いている。
「ん。何だ。開いてたのかよ」
組んでいた腕を解き、言う隼人。
武彦は扉を開け、玄関に入りながら呟いた。
「こいつは鍵をかけない主義だった。…忘れてた」
「………」
隼人は、敢えて何もツッこまず、武彦の後を着いて行く。

学者…というよりは、どこぞのモデル。
そんな雰囲気、風貌の女性。
学者は、高価そうな椅子に座り、優雅に読書をしていた。
読んでいた本を閉じ、それをテーブルの上に置くと、
学者は頬杖をついて、淡く微笑んで言った。
「仲良いのね。あなた達」
学者の言葉に武彦は、「そうでもないよ」と返しつつ、右手を彼女に差し出した。
「ふぅん…?」
学者はクスリと笑いつつ、棚から小瓶を取り出すと、それを武彦の手に乗せた。
小瓶を確認し、武彦は学者に問う。
「用量は?」
「全部。残さず飲ませて」
「了解。…んじゃ、今日は帰るわ。ありがとな」
頭を掻きながら、受け取った薬を隼人に渡して言う武彦。
薬を受け取り、隼人は学者に言う。
「あー。えと、どうもな」
「いいえ」
優しく微笑み言う学者。
挨拶とお礼もそこそこに、急いで、とんぼ帰り。
帰り際、リビングを去る前に武彦は言った。
「あ、ソワカ」
「なぁに?」
「零が治ったら、また改めて礼しに来るから」
「はいはい」


乗車し、シートベルトを締めて興信所へ急ぐ二人。
少し荒い運転をしながら、煙草に火を点ける武彦。
助手席で、隼人はニヤついて尋ねる。
「なぁ?」
「ん。何だ?」
「あの人、もしかして お前の前妻か?」
「何で、そうなるかな」
「…何となく」
「んなわけねぇだろ。ただの知り合いだよ」
「へーそう」
「………」
隼人の茶化すような態度に苦笑する武彦。
と、その時。
キュルッ―
「!」
妙な音が車内に響くと同時に、車がスリップ。
慌ててハンドルをグッと握りしめて、車体の揺れに堪える武彦。
隼人は咄嗟に、能力で一人車外へ早々と非難。
ドカッ―
大事故には至らなかったが、車は電柱に衝突。
甲高いガラス音から、左側のライトが粉砕したことが理解る。
ハンドルに頭を押し付け、ゲンナリとする武彦。
「…マジかよ。買ったばっかなのに…」
車外に非難していた隼人は、渡されていた薬の無事を確認した後、
テケテケと武彦の元へ。
「あぶねーあぶねー。だいじょぶかー?」
ケラッと笑って言う隼人に、武彦は眉を寄せて言った。
「”俺”は大丈夫。”俺”はね…」

今日は一段と冷え込みが激しい。
昨晩、珍しく雪が降った所為もあり、路面はうっすらと凍結しているようだ。
傷を負った武彦の愛車の中、隼人は何度も忠告した。
「安全運転でな」



興信所に到着した二人は、急いで零の元へ。
武彦はベッドで苦しそうにうなされていた零を抱き起こすと、
学者から貰った薬を隼人から受け取り、それを零の喉に落とす。
「ごほっ…う…」
どうやら、相当苦いものらしい。
顔を歪める零に、隼人は水を差し出す。
「大丈夫か?」
心配そうに見やる隼人と武彦。
零はスゥ、と息を吸い込み、フゥと息を吐き出す。
さっきまでは、呼吸すらままならなかったはずだ。
難なく深呼吸をこなせたということは…。
少し緊張した面持ちで、武彦は零に尋ねる。
「どうだ?」
零は自身の喉を撫でながら、恐る恐る…声を発してみた。
「…あ」
「おぉ!治ったか!?」
ニカッと笑って言う隼人。
「…あー。…うん。戻りました…」
自身の声を確認しつつ、嬉しそうに微笑む零。
良かった〜と脱力する武彦。
まぁ、安心したと同時に愛車の傷を思い出して、
違う意味でも脱力しているわけだが。

「ありがとうございました…本当に」
深々と頭を下げて、御礼を述べる零。
薬の効果は見事なもので、服用したと同時に零の喉は完治した。
大したもんだ、あの学者すげぇな〜…などと思いつつ、隼人は零の頭を撫でる。
「何もだ。気にすんな。でも、どうしても御礼がしたいってんなら、メシ恵んでくれ」
ニコニコと微笑みながら言う隼人。
零は、一言も”御礼をさせて下さい”なんてことは言っていない。
まぁ、まだ言っていないだけだが。零は、そういう子だ。
零の性格を知っている隼人の、フライングということ。
「ちゃっかりしてやがる」
苦笑しつつ言う武彦。
零はクスクス笑って言った。
「はい、是非。御礼をさせて下さい」
零のその言葉に、待ってました!とばかりに満面の笑みを浮かべて隼人は言う。
「とびっきり美味いヤツな。材料費は出すぜ〜」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7315 / 仁薙・隼人 (じんなぎ・はやと) / ♂ / 25歳 / 傭兵

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い

NPC / ソワカ・L・マージャリー (そわか・える・まーじゃりー) / ♀ / 28歳 / 学者


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

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2008.02.04 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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